(内容)
激動の「幕末年代史編」ついに完結!
シリーズ累計500万部を突破した大人気歴史ノンフィクションの最新刊。高杉晋作が長州・功山寺で決起した1865年から、大政奉還、王政復古の大号令を経て明治維新がなる1868年までの激動の4年間を通して、「明治維新とは一体何だったのか?」を鮮やかに解き明かす。
(感想)
全21巻中10巻を費やした江戸時代がようやく終了、ついに御一新まで来ました。そして最新刊読了です。やっと読書が発刊に追いつきました。
圧倒的な戦力差があって負けるはずのない方が負ける時って、油断、判断ミス、運・不運、ヒーローやラッキーボーイの出現、いろいろなことが起きるもの。でも、そういうもの全部をひっくるめて歴史の必然、時代の流れ、天命というものなのでしょう。
岩倉具視と薩長のやり方はいかにも乱暴で因循姑息です。卑怯といっても良い。でも、元をただせば徳川幕府も主筋の豊臣家を滅ぼし覇を唱えた武力政権、それが謀略と武力で負けたのだから因果応報かな。
封建領主の盟主となった徳川幕府は、彼らを武装解除させたのちに自らも武装解除しました。武士達は、リストラされることなく、武士の精神性を維持したまま官僚に。そして厳格な身分制度の下で、進歩を嫌い前例を踏襲する、多人数による非効率な官僚組織が形成されました。
貨幣経済の進展により、米が給与の武士は貧窮し、身分でいえば最下層の商人が台頭する中で、黒船という外圧が発生。江戸時代250年の平穏で危機管理能力と戦闘能力を喪失した徳川幕府は、根拠のない楽観論と問題の先送りを繰り返し、その権威は失墜しました。
新しい日本の形の模索する混沌の中、最後の数年で、日本は最も過激な、徹底した体制のリセットを選ぶに至りました。失ったものも多かったのですが、日清・日露戦争までの歴史を見るに、多分これが歴史の正解だったのでしょう。
「生き残るのは最も強いものではなく、最も環境に適応したものである」、維新から続く綱渡りのような歴史を乗り切ることができたのは、やはり雑草のような適応力を持った新しい力が日本の頂点にいたからだと思います。
この幕末編3巻を読んで一番すごいなと思った人物は、やはり勝海舟。負ける側の幕府に彼がいてくれたおかげで、日本は徹底的なリセットを最小限の犠牲で行えた。彼が暗殺されずに最後まで残ったことが、日本の最大の幸運だったかもしれません。