(内容)
日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。
「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。
すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論。
(感想)
10年ほど前に、新書としては稀有なことに、265万部の大ベストセラーになった本です。いかついタイトルの割には平易な内容で、すっと読めました。
本は直接関係のない話なのですが、、、
仕事の関係で4年間香港に住んでいました。香港にも一応四季らしきものはあるのですが、1年のうちほぼ半分が夏、最低気温が10度くらいになる冬は数週間程度でした。
イメージとは違って山がちで緑の多い国なのですが、木々の葉は常に緑で、花壇では夏の一年草と思っていた花が一年中咲いていました。
桜の木はありません。桜の花は寒い冬がないと咲かないのです。花が咲かなければ、枝がまっすぐに伸びず、虫も付きやすい、桜ほど街路樹に向かない木はありません。
私のジョギングコースである神田川沿いは、桜並木の遊歩道になっています。
夏は青々と葉が茂って直射日光をさえぎり、冬は丸裸になって弱々しい日の光を降り注がせてくれます。
厳冬の間も花の芽はしっかりと開花の準備をしていて、毎年この季節になると丸裸だった木があっというまに満開の花で埋まります。
そのわずか10日後には花びらは水面を桜色に染め、木々は新緑の衣を纏い始めます。
桜の花がこれほどまでに日本人に愛されるのは、その花の見事さと儚さ、散り際の潔さが、私たちの魂に共鳴するからなのでしょう。
「諸行無常」「もののあはれ」を解する心情を、私たちは日本の豊かな四季に育んでもらったのです。
私たち日本人のDNAには、先祖代々、日本の風土に育まれた、独特の情緒が組み込まれているんだ。