(あらすじ)
高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある企みに気づく。
(感想)
探偵ガリレオシリーズの「禁断の魔術・ガリレオ8」の中の「猛射つ(うつ)」を長編に書き下ろしたもので、このシリーズでは「容疑者Xの献身」「聖女の救済」「真夏の方程式」に続く4作目の長編。
でも、この長編、今までのものとはかなり趣が違いました。
今までの3つの長編は、科学トリックは控えめで、むしろ犯人を中心にした人間ドラマというべきものでした。直木賞をとった「容疑者Xの献身」などは、物理学はほとんど無関係、というか、犯人が最初かわ分かっている倒叙ミステリで、湯川准教授は完全に脇役。
でも、この「禁断の魔術」は、レールガン(超電磁砲)という、湯川が伸吾に作り方を教えた装置が重要な役割を果たします。
教え子が、それも自分が教えた知識を使って、、、そのとき湯川が取った行動は、、、
文庫本の帯に「ここに登場する湯川学は、シリーズ最高のガリレオだと断言します」という東野さん自身のことばが書かれているとおり、湯川自身が人間ドラマを見せてくれます。
書き出しから話に引きずり込まれて、ほとんど一気読みでした。
うまいんだよなー、安定した面白さです。安定しすぎていて、展開が読めてしまうのが難点といえば難点でしょうか。