夜のピクニック(恩田陸) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

夜ピク


(あらすじ・内容)
 夜を徹して八十キロを歩き通す、高校生活最後の一大イベント「北高鍛錬歩行祭」。三年間わだかまっていた想いを清算すべく、甲田貴子は一つの賭けを胸に秘め、当日を迎えた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る。ノスタルジーの魔術師が贈る、永遠の青春小説。   

(感想)
「夜ピク」(と略すとちょっとやらしい)、05年の本屋大賞、及び吉川英治文学賞新人賞受賞作です。

夜ピク


多部美華子さん主演の映画を先に視聴、これはぜひ本も読まねばと手に取りました。
映画のキャッチコピーは「みんなで夜歩く。ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう」
ヒロインの多部さん、貫地谷しほりさん、加藤ローサさんらが高校生役、適度にコミカルで、それでいて切なくなる、まさに青春の1ページ、良い映画でした。06年の映画なので、多部ちゃん、実年齢も高校生だったんですよね、この頃。 この映画を見て以来、ずっと彼女のファンです。貫地谷さんも、こういうコミカルな役どころ、うまいなー。

貴子は、高校最後の歩行祭に、今まで話をしたことがなかったクラスメイトの融に声を掛けるという、自分自身に賭けをしました。貴子の不自然な様子を、周囲は恋と勘違いするのですが、ふたりには恋とは違う特別な事情がありました。

前半は、何も起こらない、歩いているだけ。中盤も、やはりたいしたことは起こらない。貴子、何やってるんだ、早くしろ!みたいなワクワク感とドキドキ感。
やがて、海外へ転校した親友の杏のたくらみが奏功、友人たちの協力もありやっと二人は心を通わすことができます。でも、彼女に勇気をくれる機会を与えたのは、歩行祭という行事、その特別なシチュエーションそのもの。

自分はマラソンをやるので、とにかくみんなで一晩中歩くというその行為に無条件にはまりました。
100kmマラソンとか、山岳の24時間レースとかに出ると、レース中は必ずなんでこんなバカみたいなことしてるんだろと 思います。でも、ゴールした瞬間にそんな気持ちはどこかへ行ってしまう。 レースは、人生を凝縮したようなもの。いろんなことが起きるのだけど、苦しかったことは忘れ、楽しかったことだけが記憶に残ります。
高校生の時に、かけがえのない友人と、そういう体験ができるのって、うらやましいです。きっと、いくつになっても、一生、思い出せるんだろうな。

「みずみずしい」ということばがぴったりの青春小説、今のところDVDをレンタルして映画を2回、単行本をブックオフに売った後、文庫本で買いなおして本を2回、時々たまらなく読み返したくなる、大好きな作品です。