(あらすじ・内容)
第一次世界大戦が終結して間もない1924年、欧州の小国、ソヴュール王国の聖マルグリット学園に留学した九条一弥は、天才的な頭脳を持つ美少女ヴィクトリカに出会う。気まぐれでわがままなヴィクトリカに翻弄されながらも、二人は様々な事件に出会い、解決していく。
ヴィクトリカは、ソヴュール王国を陰で操るブロワ侯爵が、山奥に住む謎の一族、古代セイルーン王国の娘を略奪して産ませた娘で、ブロワ侯爵は、来るべk時に彼女の頭脳を利用するために、彼女を学園に軟禁しているのだった。ヴィクトリカの複雑な出生による哀しみや、素の可愛らしさに惹かれていく一弥は、彼女をなんとかそこから救い出したいと願うようになる。ヴィクトリカも無私の想いで自らに接してくる一弥に惹かれるようになっていくが、そんな二人をあざ笑うかのようにソヴュールという国家の闇が、さらには世界の歪みが彼らを呑みこんでいく。時は第二次世界大戦前夜、時代が二人をも無情にも引き離す。
(感想)
直木賞作家、桜庭一樹さんの長編ミステリー・ライトノベル。
GOSICKⅠ~ⅧとサイドストーリーのGOSICKsが4冊で全部で13冊(GOSICKⅧは上下巻)。長いです。
天才的な頭脳を持つ「灰色狼の末裔」ヴィクトリカのアームチェア・ディテクティブで、ワトソン役が九条一弥。協力して降りかかる事件を解決していく、ふたりの信頼と愛の物語。
第2巻で、故郷の「名もなき村」、古代セイルーン王国の長老が「ふたりは離れ離れになる。しかし心は一生離れまい。」と予言していましたので、これは普通のハッピーエンドにはならないのだろうなと思っていました。
やがて、ヴィクトリカの凄惨な生い立ちが明らかになっていくとともに、予言通り、時代が二人を切り裂きます。ヴィクトリカはブロワ侯爵によって連れ去られ、戦争に利用される。帝国軍人の三男坊の一弥は母国へ戻り、そして戦場へ送られる。
ああ、これはもう、いけないのかなという過酷な状況、このあたりは本当にハラハラしながら読みました。しかし、自らの身に科せられた謎を解き終えたヴィクトリカは、信じられぬ行動力を発揮、単身一弥の故国である極東の小さな島国へとたどり着き、彼の実家に身を寄せた。やがて大陸よりの引き上げ船が港に着きます。家族とともに、かつての留学生の少年を港で待っていたのは、、、
とまあ、こんなお話でした。
本作は、アニメ化され、11年1月から全24話が放映されました。
なんと、最終巻のGOSICKⅧ(神々の黄昏)の下巻が発刊される前に、アニメの最終回が放映されてしまい、これにはびっくり。
第二次世界大戦で引き裂かれたふたりのその後が最終巻、最終話だったのですが、アニメはあっさり1話で話をまとめ、うーん、これは、アニメ17話と本1冊では尺が合わないし、原作はアニメとは違う別の結末が用意されているのではないかと気をもみました。結果は、、、細部はいろいろと違っていたものの、ラストはほぼ全く同じで、やや拍子抜けしました。
アブリル、セシル先生とゾフィ、グレヴィール、この小説の脇役陣、結構好きだったんですよね。
戦禍から立ち上がって、それぞれの人がそれぞれの人生を歩み始めました。
本筋とは全然関係ないけど、戦争が終わって、鎖で施錠されたマルグリッド学園の門をセシル先生が開けるシーン、好きです。戦禍から立ち上がって、それぞれの人がそれぞれの人生を歩み始めました。
願わくは、第二期で、この愛すべき人たちの人生が、また、一弥とヴィクトリカの人生と交差しますように。