(あらすじ)
ある雪の日、シュロッターベッツ・ギムナジウムのアイドルだったトーマ・ヴェルナーが陸橋から転落死し、ギムナジウム中が騒然となる中、委員長であるユリスモール・バイハンのもとにトーマからの遺書が届く。事故死とされていたトーマの死が自殺であること、トーマが死を選んだ理由が自分自身にあることを知り、ユーリはショックを受ける。
数日後、ギムナジウムに亡くなったトーマとそっくりの転校生、エーリク・フリューリンクがやってくる。エーリクを見るたびにユーリはトーマと重ねてしまい、怒りや憎しみをあらわにすることすらあるのだが、そこにエーリクの母の事故死の知らせが入り、悲しみにくれるエーリクをユーリは慰め、これを機会に2人は次第に心を通わせていく。
エーリクはユーリへの気持ちを深めていくが、心の傷を呼び覚まされたユーリは再びかたくなな態度を取るようになる。しかし、ひたすらユーリを愛し信頼を得たいと願うエーリクの言葉から、ユーリは、トーマがユーリの罪を自ら引き受け、あがなおうとし、そのために自分の命を代償にしたのだと悟る。そうしてユーリは、自分を取り巻く多くの愛と幸福、そして自分を見守っていた周囲の人々に気づく。
あらすじ、どう書こうか迷って、結局wikiの記述をコピペしました。なるほど文字にしてしまえばこういう話なのだけど、読んで受ける印象はかなり違う。
『ぼくはこの半年間ずっと考え続けていた 僕の生と死と それからひとりの友人について』
詩文のような一節から物語は始まります。この作品は、あまり漫画って気がしない。上質な文学作品の香りがします。
この作品が書かれたのは1974年。当時はBLなんて言葉はなかった。同時期で少年愛を描いた作品としては、竹宮恵子さんの「風と木の詩」が有名だけど、こちらはあれほど性愛的ではない、語られる愛は哲学的ですらあります。
20世紀初頭くらいの時代設定かなと思っていたのだけど、西ドイツなんて単語が出てきていたから、1950年ごろなのかな。男子全寮制ギムナジウムという閉鎖社会を舞台にしたジュブナイル・ストーリー。無償の愛、試練と葛藤、少年たちの成長の物語といってしまえばそれまでなのだけど、抒情的な味わい、独特のプラトニックなエロスが漂う作品です。
ここ2,3年、ほとんど漫画は読まなかったのだけど、萩尾望都さんは昔すごく好きで、でも、この作品はなぜか読んだことがなくって、すごく気になっていました。「11人いる」「スターレッド」、萩尾さんの作品はSFものが好きだったのですけど、こういうのもなかなかいい。