「風に立つライオン」(さだまさし) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

 

 

 

 

 

 

風に立つライオン

 

 

 

 

(あらすじ・内容)
1987年、熱い志を持つ日本人医師・航一郎は、恋人を長崎に残し、ケニアの病院に向かった。劣悪な環境で奮闘する航一郎の前に、激しい銃創を負った少年兵・ンドゥングが運び込まれる。心を開かないンドゥングだったが、航一郎の熱さ、優しさを受け、少しずつ変わっていく。 ンドゥングがついに航一郎に心を開く場面がクライマックス。彼は叫びます。「自分は9人の人を殺した」と。 「お前は9人の命を奪ったのなら、10人の命を救わなくてはならない」との航一郎のことばに、元少年兵は医師となる決意を固る。
しかし、その後、航一郎は、志半ばにかの地で帰らぬ人となる。
2011年3月、医師となったンドゥングは、津波に襲われた石巻を訪れる。そこで出会った避難所明友館のリーダー・木場に航一郎の面影を見る。木場と共に被災者に寄り添うンドゥングは、ある日、かつての自分と同じような目をした少年に出逢う。
ケニアの日本人医師から、かつての少年兵、そして被災地の子供へ。「心」のバトンが繋がった。
さだまさしの名曲をモチーフに書き下ろした、80年代の長崎、ケニア、2011年の石巻をつなぐ、壮大な「希望」の物語。感涙長篇。

今から20年くらい前、自分自身を鼓舞するための歌をあつめたテープを作って、よく聞いていました。 20曲くらい選曲した中で一番好きだったのが、さだまさしさんの「風に立つライオン」。
香港駐在だったころ、一人ビクトリア・ピークに登って、この歌を聞きながら、香港の夜景を見下ろして「負けねーぞ!」って叫んでました。
 自分にとってそんな想いのある歌が、さだまさしさん自身の手で小説になりました。

歌が最初にあって、私同様この歌が大好きだった大沢たかおさんが、「自分が主演の映画にしたいから、この歌をモチーフに小説を書いてよ」と、さだまさしに頼んで実現したのがこの小説。
もちろん、映画も見ました。月並みな表現ですが「感動的」でした。そうとしか言えないです。歌も、映画も、小説も。

震災に見舞われた恩人の母国日本、廃墟となった石巻に立つ医師ンドゥング、小説でも、映画でも、この場面がプロローグになってます。
私も ボランティアで石巻には3回ほど行きましたが、あの光景は忘れられません。
あの時、自分は、確かに、「俺はいまここで日本のために頑張るために、俺の今までがあったんだ」と自然に思えました。 自分は日本のために何をするべきかを、真剣に考えていました。
あの震災で日本が失ったものは大きかったけど、日本人として得たものも確かにあった。
 我々は、あの大きな喪失と引き換えにせっかく得たものを、風化させてしまってはいけない、自分のそんな気持ちを思いださせ、志を分けてくれた、そんな映画であり、小説でした。 

この歌のさだまさしさんのメッセージ、「ぼくは現在を生きることに思い上がりたくないのです」をかみしめたいと思います。

キリマンジャロの雪、それをささえる紺碧の空
ぼくは風に向かって立つライオンでありたい