(あらすじ)
人間の農場主が動物たちの利益を搾取していることに気づいた牧場の動物たちが、革命を起こして人間を追い出し、「豚」の指導の下で「動物主義」に基づく「動物農場」をつくりあげる。
動物たちの仲間社会で安定を得た彼らであったが、不和や争いが絶えず、最後は理解できない混乱と恐怖に陥っていく。
(感想)
この小説、高校のころに原書で読もうとして挫折した記憶があります。それと、石ノ森章太郎さんの漫画で読んだ記憶も。
とにかく旧支配者の人間を追い出す革命の成就後、すぐに指導者である豚たちの堕落が始まる。
最初は牛乳を飲んだり、リンゴを独り占めしたりする些細なものだったが、次第に横暴な行為がエスカレートしていく。ナポレオン豚は、子犬を自分の手で育て軍事力として所有すると、内部の権力抗争を始め、ライバルのスノーボール豚を陥れて追放し、自分の都合のよいようにルールを書き換えていく。
実に分かりやすい寓話である。
1945年に書かれたこの作品、当時のソビエト連邦を揶揄したものであることは間違いない。ナポレオンはスターリン、スノーボールはトロッキー、メージャー爺さんはレーニンでしょう。
でも、独裁者が生まれる構図ってのは、いつの世も変わらないもの。私は、この小説を、北朝鮮の赤い皇帝に脳内変換して読んだ。金正恩も金正日も、将軍様は豚に変換しやすかったもので。
いわゆるディストピア小説である。
ディストピアといえば、同じオーウェルの「一九八四年」、ブラッドベリの「華氏451度」、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」、ハクスリーの「すばらしい新世界」あたりが有名どころ。
でも、近未来、並行未来の管理社会を描いた小説の多い中で、おとぎ話的にストレートな比喩で書かれたこの作品は、サクッと読めて私のお気に入りである。