Books HIROKUMA 入荷のお知らせ | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

Books HIROKUMA 入荷のお知らせ

 猫の本棚にあるBooks HIROKUMAの本を入れ替えてきました。

 

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 何度も書いていますが、このお店は店主の樋口尚文さんが映画監督・評論家ということで、映画関連の書籍が揃っています。

 また樋口さんと交流のある俳優さんや映画・ドラマの関係者の方々が棚主になっています。

 そこで僕は、映画関連の本がよく動くのではないか?と考え、当初はそういった本を中心とした品揃えにしていました。

 日本の特撮関係の本も充実しているので、それならば!とGWの頃から海外のVFXの専門誌「cinefex」のバックナンバーや、スターウォーズの関連本を置いてみました。

 ところが2ヶ月ほど経った今でも、これらの本は全然動きません。想定していた客層と違うのか、それとも元々映画に一家言のある人たちが集まる場所なので、生半可な品揃えでは納得させられないのか。

 店主の樋口さんも、映画にこだわらず、いろんなジャンルの本が揃ったバラエティのある棚にしたい、とおっしゃっていました。

 そこで今回、ガラリと品揃えを変えてみました。 

 僕は映画はもちろん大好きですが、アウトドアや旅に関する本も大好きなジャンルのひとつです。

 7月29日に閉館する岩波ホールでの最後の上映作品「歩いてみた世界 ブルース・チャトウィンの足跡」が公開中ということもあり、歩くことや旅に関する本を揃えてみました。

 

 まずは野口健「ヒマラヤに捧ぐ」

 

 

 登山家の野口健さんが、2015年4月25日に起こったネパール大震災に現地で遭遇。復興活動に奔走しながら、長年ヒマラヤに通い続けた野口さんならではの視点でヒマラヤの大自然とネパールの人々の暮らしを写した写真集。

 

 続いて石川梵「時の海、人の大地」

 

 

 昨年公開の映画「くじらびと」で第31回 日本映画批評家大賞 ドキュメンタリー賞を受賞した写真家の石川さんが、20年以上にわたり取材してきたライフワークともいうべき世界各地の様々な祈りを写真とエッセイで綴った集大成。

 わけあって2冊持っていたので、この素晴らしい1冊を、ぜひどなたかにお譲りしたいと思います。

 

 3点目は加藤則芳「メインの森をめざして」

 

 

 加藤さんは国内外のトレイルを旅してきたバックパッカーの第一人者。日本のロングトレイルの普及と、自然保護のために尽力してきました。ところが2010年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症。闘病中も講演やインタビューなどの活動を続けましたが、2013年4月17日に亡くなられました。

 その加藤さんがアメリカの14州を貫く3500キロのアパラチアン・トレイルを、2005年から約半年をかけて歩き、そこで出会い、体感したアメリカの自然や文化、人々との交流の記録。加藤さんの魂のトレイルを感じてください。

 

 4点目は寺林峻「富士の強力 小俣彦太郎伝」

 

 

 

 「強力」とは、登山者の荷物を背負って案内する人。

 50年にわたり富士登山の荷揚げ人兼ガイドとして登り続け、戦後登山の大衆化を見守ってきた「最後の強力」の小俣彦太郎の一代記。

 

 5点目は今回のイチオシ!ドニー・アイカー「死に山:世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相」

 

 

 これはマジで面白いです!!

 タイトルだけ見るとホラー小説かと思うかもしれませんが、実話です。

 「ディアトロフ峠事件」とは、1959年2月、ソ連のウラル山脈で起きた9名の大学生たちの遭難死亡事故で、今もその原因について様々な憶測が飛び交っている山岳史上最大のミステリーのひとつ。その真相に迫るノンフィクション。

 こう書くと、トンデモ本のように思えるかもしれませんが、この本の優れている点は、丹念な取材に基づいて書かれていること、つまりジャーナリズムの基本に立って冷静に書かれているところです。

 それだけに、世に溢れている陰謀論や宇宙人襲撃説を鮮やかに論破し、事件の核心に迫っていくところが面白いのです。

 詳しくは以前に書いたブログでもお読みください。

 

 

 

 

 6点目は椎名誠「南島だより」

 

 

 

 作家であり写真家でもある椎名誠さんが、1991年に製作した映画『うみ・そら・さんごのいいつたえ』の撮影時に、ロケ地の沖縄県石垣島での体験をエッセイとモノクロ写真で綴ったもの。観光地ではなく、生活の場としての石垣島が映し出されていて、どことなく懐かしい感じがします。

 南の島に行きたくなります。

 

 7点目は橋本倫史「ドライブイン探訪」

 

 

 今やドライブ中の休憩スポットと言えば、道の駅やファミレスが中心だと思いますが、昭和の高度経済成長期に全国のロードサイドに存在したのがドライブインでした。

 その多くはファミレスなどの外食産業に押され徐々に姿を消していますが、まだまだ全国各地に個性的なドライブインが存在します。そんなドライブインを著者の橋本さんが取材し、まとめた1冊。車という視点で、戦後の日本経済の歩みが見えてくる、ユニークなノンフィクション。

 

 最後は伊達雅彦「傷だらけの店長」

 

 

 この本だけ、旅・アウトドアとは違うジャンル。実は僕の棚でよく動くのが、本や書店に関する本。そこで新たに1冊加えました。

 この本の著者はペンネームですが、某書店の元店長です。店長時代に体験した書店の仕事の過酷さや不条理な現実を記した1冊。さながら書店版「蟹工船」はたまた「女工哀史」とも言うべきでしょうか。

 お客さんにとっては本屋さんは楽しい空間ですが、その裏側には人知れぬ書店員さんたちの並々ならぬ苦労があるのです。本好き、書店好きならば、ぜひ知っておいてほしいことです。

 

 以上が今回の新規追加分です。

 明日から猫の本棚のBooks HIROKUMAに並んでいます。

 気になる1冊があれば、ぜひ立ち寄って手に取ってみてください!