帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

今村昌平監督生誕100周年〜「黒い雨」

 今年は映画監督の今村昌平さんの生誕100周年。これを記念して川崎市アートセンターでは、今村監督作品を月替わりで上映する特集が始まりました。

 今村監督は川崎市アートセンターのある川崎市麻生区に日本映画大学を築きました。その縁で川崎市アートセンターには、今村監督が「楢山節考」「うなぎ」で受賞したカンヌ映画祭のパルムドールの盾が展示されています。日本でパルムドールが誰でも気軽に見られるのはここだけです。

 

今村昌平監督のパルムドール受賞盾

 

 その今村監督特集の第一弾が「黒い雨」。1989年の作品で、この年のキネマ旬報ベスト10で1位になり、カンヌ映画祭ではフランス映画高等技術委員会賞を受賞しています。

 

映画「黒い雨」ポスター 今村昌平監督作品

 

今村昌平監督「黒い雨」上映会ポスター

 

 原作は井伏鱒二。広島に落とされた原爆の惨状と、被爆した人々の戦後の苦悩を描いています。

 全編モノクロの作品ですが、爆心地の地獄のような悲惨さ、そして被爆者が戦後受け続けた偏見と原爆による後遺症が発症することへの恐怖が、丁寧に描かれています。

 

 上映後に現日本映画大学学長で今村監督の御子息の天願大介氏と映画監督の細野辰興氏のトークショーがありました。

 日本では原爆を扱った映画を作ろうとしても、なかなか金銭的な支援が受けられず、今村監督が金策に苦心したことが語られました。またロケに関しても被爆地であった広島市の許可が下りず、撮影のほとんどは隣の岡山県で行われました。

 日本は世界で唯一の被爆国であるのだから、広島や長崎で起きたことを伝える作品を作るのならば、大手映画会社や国・行政が全面的にバックアップするべきだと思うのですが、どうもそういう発想はないようです。実際「黒い雨」以外にも広島・長崎の原爆を扱った作品はたくさんありますが、大手映画会社が手がけた作品は、少なくとも僕は思い当たらず、ほとんどがインディーズや独立プロの作品だったような気がします。やはりアメリカに対する忖度があるのでしょうか?

 「黒い雨」は今から37年前の作品ですが、この作品の持つメッセージ性は、おそらく公開当時よりも今の方がはるかに強く突き刺さってくるように感じました。

 今年は広島と長崎で81回目の被爆の日を迎えました。両市の市長は「力による正義」「核の抑止力」に依存する世界の流れに危機感を訴えました。高市政権も「力による正義」「核の抑止力」を声高に主張し、その流れに乗ろうとしています。

 一体なぜ世界はこのようになってしまったのでしょうか?

 被爆者が高齢となり、後10年もすれば、ほとんどの被爆者はこの世からいなくなり、原爆の恐怖の語り部がいなくなることが危惧されています。原爆のリアルを伝えられる人がいなくなりつつあります。

 そんな時代に差し掛かっているからこそ、「黒い雨」のように普遍性を持って原爆の恐ろしさを伝える映画が作られ、時代を超えて上映されていくことに大きな意義があると思います。

 名作であるからということはもちろんですが、なぜ核兵器が忌むべきものなのかをあらためて考えるためにも、この映画なこれから先も何度でも繰り返し観られるべき作品だと思います。

 

 

 

 

 

17年目

 今日で脊髄損傷者になってから17年目になりました。

 車椅子生活は続いていますが、もう一度自力で立って歩くことをあきらめてはいません。

 昨年から新たな取り組みとして、ロボケアセンターでのトレーニングを始めました。

 ここではサイバーダイン社が開発した装着型サイボーグ〝HAL〟を使ってトレーニングをしています。

 身体を動かそうとすると脳から電気信号が発せられ、脊髄を通じて動かそうとする身体の部位に送られます。その際、微弱な生体電位信号が皮膚上に漏れ出しています。HALはこの微弱な生体電位信号を感知し、装着したサイボーグユニットの関節を動かそうとします。

 一見簡単そうに思えるかもしれませんが、これが実はかなり難しいのです。

 例えば膝を伸ばそうとします。頭の中では膝を伸ばすイメージを作っているのですが、実際には曲がる動きになってしまうことがよくあります。動けばまだ良い方で、どれだけイメージしても全く動かないこともあります。

 HALの良いところは、自分のイメージした生体電位信号をグラフに可視化して見せてくれるところです。トレーニング中は、目の前に設置されたタブレットPCに表示される生体電位のグラフを見ながら、自分のイメージが正しく伝わっているのかを確認できます。

 イメージがバッチリ合うと、びっくりするくらいスムーズにユニットが稼働します。

 1回1時間半のトレーニングですが、非常に集中力を要するので、たいして動いていなくてもかなりヘトヘトになります。

 

 今やAIを搭載したロボットが、人間と同様、あるいはそれ以上の動きができるようになってきています。

 人間だってトップクラスのアスリートは、信じられないような動作を見せてくれます。つい先日開催されたサッカーのワールドカップでも、サッカー選手たちが人間技とは思えない妙技をたくさん見せてくれました。

 彼らの超絶なテクニックは、もちろん持って生まれた才能に負うところもあるでしょうが、いちばん大切なのは日々のトレーニングの積み重ねなのだと思います。

 AIも人間の動きを何万回、何千万回と学習することによって、人間とほとんど変わらない動きを実現しています。

 世の中のほとんどのことは、反復することで実現できることなのだと思います。

 

 脊髄損傷者は、脊髄を損傷した部位から下は動かせないので、自分にはもう動かす能力がないのでは、と考えがちです。しかし脳の中でのイメージは、必ず何らかの生体電位信号を発しています。それを可視化し、動きに繋げてくれるHALは、自分の可能性を再確認させてくれます。

 まだHALを使ってのトレーニングは1年ですが、少しずつ手応えは感じています。来年の今日は、新たな報告ができるように反復を続けていきます。

1970年代の傑作をスクリーンで!「カプリコン・1」&「サスペリア PART2」

 先週、今週と1970年代の傑作をスクリーンで堪能しました。

 まずは1977年の「カプリコン・1」。現在「午前十時の映画祭・16」で公開中です。

 

カプリコン・1 映画ポスター 宇宙飛行士と飛行機

 

 このブログでは以前にも紹介していますが、まさかスクリーンで観られる日が来るとは思っていませんでした。

 テレビ放映やビデオでは何度も観ていますが、やはりスクリーンで観ると新たな感動があります。

 オープニングのジェリー・ゴールドスミスによるメイン・タイトルが一気に気持ちを盛り上げてくれます。

 何と言ってもクライマックスの複葉機とヘリコプターによるスカイ・チェイスが最高です!大きなスクリーンで観ると、このシーンが映画史上最高のスカイ・チェイスと言われる理由にあらためて納得します。

 昨年公開された「ミッション・インポッシブル:ファイナル・レコニング」のクライマックス・シーンに影響を与えているのは間違いありません。

 ネット配信でも視聴可能ですが、ぜひスクリーンで体験してほしい作品です!

 

 もう1本は、1975年の「サスペリア PART2」。現在、神保町のミニシアター・シネマリス「サスペリア」と共に上映中です。

 

サスペリア PART2 ポスター:血まみれのホラー映画

 

 「PART2」と付いていますが、製作されたのはこちらの方が先。しかも「サスペリア」とは何の関連もありません。「サスペリア」が日本で大ヒットしたためそれにあやかり、同じダリオ・アルジェント監督の作品ということで、無理矢理「PART2」というタイトルを付けて公開されました。

 「サスペリア」が魔女を扱ったホラーだったのに対し、「PART2」は連続殺事件を追うスリラーで、いわゆる〝ジャーロ〟映画です。初期のダリオ・アルジェント監督はこのジャンルを得意としていました。ジャーロとは、猟奇殺人をスタイリッシュな映像や斬新な音楽で表現したジャンルです。

 僕が初めて「サスペリア PART2」を観たのは中学生の時。「月曜ロードショー」で放映されたのを観ました。ゴブリンの作曲した音楽や、何度も流れる子どもの歌声、人形などの小道具が何とも不気味で、トラウマ級の記憶となりました。しかしなぜか妙に惹かれてしまったのも確かです。

 今回は4K修復完全版での上映でした。数十年ぶりの鑑賞で、細かいところは忘れていましたが、少年の頃に観て強烈に印象づけられたいくつかのシーンははっきりと覚えていて、ゾクゾクしながら再確認しました。

 クローズアップを多用したメリハリの付け方や、シネマスコープを活かした構図など、アルジェント監督のセンスが随所に発揮されています。

 今見るとツッコミどころもそれなりに多いのですが、少年時代に感じた不気味さは、今も映画全編から漂っており、やはりアルジェント監督の傑作のひとつだと思います。

 今回見直してみて面白かったのは、主人公の行きつけのバーが、エドワード・ホッパーの代表作「深夜の人たち(原題:Nighthawks)」のバーとそっくりだったことです。アルジェントもホッパーのファンだったのでしょうか?

 

ホッパー「深夜の人たち」のダイナー風景

 

 それとエンドクレジットを見ていて気がついたのが、特殊効果を担当していたのがカルロ・ランバルディだったこと。この人はその後、「エイリアン」「E.T.」でアカデミー視覚効果賞を受賞しました。

 

 

 

 

 

 

「高千穂遙×安彦良和 クラッシャージョウ ARTWORKSー小説イラスト集」

 今週は昨日紹介した「映画パンフ大百科」の他にもう1冊、僕の胸をときめかせる本の発売がありました。

 それは「高千穂遙×安彦良和 クラッシャージョウ ARTWORKSー小説イラスト集」です。

 

クラッシャージョウ ARTWORKS 高千穂遙 安彦良和

 

 一般発売は7月30日なのですが、神保町の書泉グランデで先行発売があったので、待ちきれずに購入しました。

 

 「クラッシャージョウ」は1977年にシリーズ第1作が刊行された高千穂遙さんによるスペースオペラ小説。スペースオペラとは、宇宙を舞台にしたSF冒険活劇。当時の日本には、まだ本格的なスペースオペラはなく、「クラッシャージョウ」が日本初のスペースオペラと呼ばれました。翌年にはシリーズの2〜5作が続けて刊行され、さらに「スター・ウォーズ」が日本で公開され、1978年は日本においてスペースオペラ元年と称されました。

 僕が「クラッシャージョウ」を初めて読んだのは1982年。当時は中学3年生で、故郷の石川県から神奈川県に引っ越してきたばかりの頃でした。

 その時のクラスメイトで仲良しになった女の子が「クラッシャージョウ」の大ファンで、彼女に薦められて読み始めました。すでに「スター・ウォーズ」に魅了されていた僕にとって、「クラッシャージョウ」の世界観は、まさにドンピシャでした。

 その頃はシリーズ6作目まで刊行されていましたが、あっという間に全部読み、僕も「クラッシャージョウ」ファンになりました。

 「クラッシャージョウ」の魅力は主人公のジョウと、彼の仲間であるアルフィン、タロス、リッキーが毎回繰り広げる冒険物語であるのはもちろんですが、小説のカバーアートと文中に挿入される挿絵を描いた安彦良和さんの絵の魅力に負うところがとても大きかったのです。

 安彦さんは元々はアニメーターだったのですが、その画力は業界でも注目されていました。

 「クラッシャージョウ」の著者である高千穂さんは、小説を刊行するにあたり、安彦さんの絵でなければダメだ!と固執し、この最強タッグが実現しました。

 今回刊行されたイラスト集には、「クラッシャージョウ」シリーズで使用された挿絵が全て収録されています。文中のイラストは鉛筆描きの下絵と完成版が併記されていて、安彦さんの画力を再認識できます。

 またカバーアートは、最初に刊行された朝日ソノラマ文庫版と、その後改訂版が出たときに描き直されたもの。さらに2000年代になってハヤカワ文庫に移籍してから新たに描き直されたヴァージョンの3つを比較して楽しめます。

 元々上手かった安彦さんの画力が、さらに洗練されていく様子がよくわかります。

 

 1983年には高千穂さんと安彦さんがオリジナル脚本を書き下ろし、安彦さんが監督した映画版「クラッシャージョウ」が公開されました。

 この映画を「クラッシャージョウ」を僕に教えてくれたクラスメイトの女の子と一緒に観に行きました。女の子と二人で映画を観に行くのはこれが初めてで、つまり初デートでした。

 彼女とは卒業後、別々の高校に進学したこともあり、それっきりになりましたが、僕にとっては青春時代の甘酸っぱい思い出です。

 映画を観終わった後に二人でそれぞれ買った「クラッシャージョウ」のパンフレットは、そんな思い出の品でもあります。

 これが昨日のブログで書いた「クラッシャージョウ」のパンフレットが人生の3冊のひとつである大きな理由です。

 

クラッシャージョウ:安彦良和イラスト集

 

 「クラッシャージョウ」は来年で刊行から50周年。記念の新作が出ないかと楽しみにしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画パンフ大百科

 あなたは映画を観た後、パンフレットを買いますか?

 僕は10〜30代の頃、映画を観た後は、よほどつまらない映画でない限りは、大抵パンフレットを買っていました。

 その頃(1980〜1990年代)のパンフレットの価格は、600〜800円が主流でした、現在では1000円を超えるのは当たり前になっています。そんなわけで、最近は観てかなり満足した映画や、資料的な価値のありそうなものだけを買うようにしています。

 また我が家の収納能力にも限界がきているので、数年前に自宅のリフォームを行った際に、かなりの量のパンフレットを処分しました。

 とは言え、今でも年間30冊前後はパンフレットを購入しているので、数百冊のコレクションがあります。

 僕のように映画ファンで、パンフレット・コレクターの人はかなりいると思います。

 そんな人たちにおすすめしたい本が今週発売になりました。

 それが「映画パンフ大百科」です。

 

映画パンフ大百科 日本独自のクリエイティブ世界

 

 この本を作ったのは「映画パンフは宇宙だ!(通称PATU)」という、映画のパンフレットを偏愛する有志の人々の集団。

 この集団のことは以前から知っていて、彼らが主催するイベントに参加したこともあります。また彼らが発行しているZINEも何冊か持っています。

 そんなわけで、この本の発売を楽しみにしていました。

 

 早速手に取ってみると、お〜、これはマニアックだ〜!!という充実の内容。

 面白いパンフレットの紹介のみならず、日本における映画パンフレットの存在意義から、パンフレットの歴史、制作過程、デザイナーや執筆者へのインタビュー、パンフレット愛に溢れた著名人たちのコラムなど、パンフレット・コレクターならページを繰る手が止まりません。

 

 最近のパンフレットはデザインの凝ったものが多く、映画パンフレットの世界では大島依提亜さんと石井勇一さんという2人のデザイナーの作品が人気を集めています。僕の場合は、映画の内容ではなく、この2人がパンフレットをデザインしているから、という理由で映画を観ることがあります。もちろんパンフレットも買います(笑)。

 このようにアート性も高くなってきている映画パンフレットですが、僕が映画に興味を持ち、パンフレットを買い始めた頃は、観た映画の内容を思い出すために必須のアイテムでした。

 僕が映画を好んで見始めたのは「未知との遭遇」「スター・ウォーズ」を観た1970年代の終わり頃から。特に「スター・ウォーズ」は人生を変えるくらいの衝撃を受け、観終わった後、パンフレットとテーマ曲のサントラシングル盤レコードを映画館の売店で買ってもらいました。

 そして帰宅後は、毎日のようにレコードを聴きながらパンフレットを隅から隅まで何度も読み、「スター・ウォーズ」を繰り返し脳内再生していました。

 まだネット配信はもちろん、ビデオレンタルもない時代です。映画を追体験するには自分の記憶しかなく、その記憶を補完するために映画のパンフレットは欠かせないアイテムでした。

 その「スター・ウォーズ」のパンフレットは、今もコレクションとして大切に保管してあります。 

 

 「映画パンフ大百科」の巻末には、映画が大好きな著名人たちの選んだ「人生の3冊」が載っています。みなさん、なるほどな〜、とうなづけるものばかり。

 そこで僕も人生の3冊のパンフレットを記しておきます。

 

 まずは日本のSF映画「惑星大戦争」

 これは僕が生まれて初めて買ったパンフレットです。ここから僕のパンフレット・コレクターとしての道が始まったという意味で、欠かせないパンフレットです。パンフレットの左隅に、最初の1冊目ということで「NO.1」と書いてあります。

 

映画パンフ「惑星大戦争」の表紙
 
 ちなみにこのパンフレットは同時上映だった「霧の旗」と一緒になっていて、反対側から開くと「霧の旗」のパンフレットになっています。昔は2本立上映の時には、こういう作り方のパンフレットが結構ありました。
 しかし「惑星大戦争」と「霧の旗」の2本立って・・・。

 

霧の旗 パンフレット 昭和レトロ 映画

 

 次が「スター・ウォーズ」。これはもう説明の必要はないでしょう。

 

スター・ウォーズ パンフレット

 

スター・ウォーズのXウィングとタイ・ファイターの戦闘

 

 3冊目は「クラッシャージョウ」

 

クラッシャージョウ 映画パンフレット表紙

 

クラッシャージョウのアニメーションシーン集

 

 日本が誇るアニメーターにして超絶美麗絵師・安彦良和さんが初監督した作品。安彦さんのファンだから、ということもあるのですが、実はもっと大きな理由があります。

 それは次のブログで書きます(笑)。

 

 

 

 

 

神保町百景・9 〜 ささま

 猛暑の日が続いていますね。

 神保町も今週は毎日30度を超えています。

 書店巡りも命懸けです(笑)。でも行ってるけどね。

 そんな神保町界隈に、一服の涼を感じられる場所があります。

 駿河台下から千代田通りを皇居方面に向かうと、左手にその場所はあります。

 それは和菓子の「ささま」。1929年創業の老舗です。

 お店の前にある植え込みが心地よい日陰を作り、風格のある店構えと相まって、涼しげな雰囲気を醸し出しています。

 夏にこの前を通るとホッとします。

 季節ごとの和生菓子も芸術品のようです。今の季節は涼を感じさせる久寿桜や水羊羹が揃っています。

 神保町のお土産にもお薦めです。

 

神保町ささまの涼しげな佇まい

 

和菓子 ささま 神保町店外観

 

すべての〝ウルトラ〟世代必見!「THE ORIGIN OF ULTRAMAN」

 ウルトラマン誕生60周年を記念して制作されたドキュメンタリー「THE ORIGIN OF ULTRAMAN」を観ました。

 

ウルトラマン誕生60周年ドキュメンタリー「THE ORIGIN OF ULTRAMAN」ポスター

 

 これは1960〜1970年台のウルトラマンを観て育った世代にはたまらない内容でした。

 ウルトラマンについて語る人々がすごいです!

 ギレルモ・デル・トロ(映画監督)、是枝裕和(映画監督)、小島秀夫(ゲームクリエイター)、庵野秀明(監督・プロデューサー)、樋口真嗣(映画監督)、ニコラス・ウィンディング・レフン(映画監督)、桜井浩子(初代ウルトラヒロイン)、その他多数!

 僕の記憶にある最初のウルトラマンは、おそらく4〜5歳の頃に見ていた「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」でした。「ウルトラマン」は僕が生まれる前に放送が始まっていたので再放送でしたが、「ウルトラセブン」はリアルタイムだったのではないかと思います。

 僕もちろんですが、この映画に登場し、ウルトラマンを語る人々は、ある意味その後の人生をウルトラマンの影響下で生きてきた人々です。

 庵野秀明監督はそれを「呪い」と呼んでいました。ウルトラマンの呪いからは一生逃れられず、何を創ってもウルトラマンの影響からは逃れないと。

 この映画に登場したクリエイターたちはみんなそうなのだと思います。

 日本のみならず、世界的な名声を得ている映画監督ですらウルトラマンの素晴らしさを熱く語ってくれる。その姿に日本人として誇らしく感じました。

 ウルトラマンの誕生に寄与した円谷英二さんを始め、多くの傑作エピソードの脚本を手がけた金城哲夫さん、怪獣のデザインや美術を手がけた成田亨さんについてのエピソードは、いずれも実に興味深いものでした。

 特に成田さんが怪獣をデザインするに当たって自らに課した怪獣のデザインの三原則が記憶に残りました。それは、

 

 1・動物をそのまま巨大化はしない

 2・奇形化しない(手足や首が増えたような妖怪的な怪獣は作らない)

 3・身体が破壊されたような気味の悪い怪獣は作らない(内臓が見えたり、血を流したりしない)

 これは子供への影響も考えつつ、純粋なデザインの美しさを求めたからだったようです。確かにウルトラマンに登場した怪獣の多くは、今まもなお高い人気を誇る魅力的なデザインのものが多いと思います。

 また成田さんが息子に向かって「子供に見せるものだから真剣に作らないといけない」と言ったことも印象に残りました。

 これらの信念は、時代を超えて今もなお、エンターテイメントを作る上では忘れてはいけない大切なことだと思います。

 

 ウルトラマンが単なる勧善懲悪のヒーローものであったなら、ここまでの影響力はなかったでしょう。しかしウルトラマンの作り手たちは、独自の哲学と信念を持って、ひとつひとつのエピソードを真剣に世に送り出していました。だからこそ、言葉や文化を超えて世界中の子どもたち魅了し、その中から世界的なクリエイターたちが産まれていったのだと思います。

 ウルトラマンを見て育った世代はもちろん、これから映像クリエイターを目指す人たちにこそ見てほしいドキュメンタリーです。

洗練された会話劇に魅了される「急に具合が悪くなる」

 今年のカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を獲得した濱口竜介監督の最新作「急に具合が悪くなる」を観ました。

 

急に具合が悪くなる 映画ポスター

 

 3時間16分の上映時間をまったく感じさせない、緻密で洗練された脚本による会話劇。そして、生きることの喜びと希望にあふれた物語でした。

 原作となった宮野真生子さんと磯野真穂 さんの往復書簡からなる「急に具合が悪くなる」も読みました。これはぜひ原作も読むことをお薦めします。映画を観てからでも観る前でもどちらでも結構です。

 原作は哲学者である宮野さんと文化人類学者である磯野さんとの手紙でのやり取りです。宮野さんは癌を患っており余命わずかを宣告されています。そんな中、生きることの意味を二人は手紙で問いかけ合います。

 この中で交わされる病や生命に関する哲学的エッセンスが、映画にしっかりと反映され、それも感動的なドラマとなっていることに驚かされます。

 カンヌ交際映画祭で女優賞を受賞したヴィルジニー・エフィラさんと岡本多緒さんのやり取りが本当に素晴らしいのです。舞台がパリで、岡本さん演じる舞台演出家の真理がここに公演のために訪れているという設定なので、会話の半分以上はフランス語です。しかしエフィラさん演じるマリーは東京に留学した経験があるという設定なので、彼女は日本語も話します。

 フランス語、日本語の会話がシーンによって使い分けられること、また介護施設で働くマリーと末期癌を患った真理が命の意味、生きることの意味を問いかけ続ける姿に、人間の普遍的な生命についての物語となっていて、誰もが共感できるものだと思います。

 主演の二人の他に、日本から長塚京三さんと黒崎煌代さんが出演しています。長塚さんは日本から来た舞台俳優という設定で、劇中劇で見事なひとり芝居を演じます。またご自身がフランス留学の経験があり、映画の中で流暢なフランス語を披露してくれます。ラストシーンでも重要で感動的な芝居を見せてくれます。

 黒崎さんは昨年観た「見はらし世代」で注目していた役者ですが、今作では長塚さんの知的障害のある孫の役で、素晴らしい演技を見せてくれます。彼の存在も物語の中で大切なポイントになっています。

 癌のみならず、老い、障害など、誰にでも起こり得る人生の不安要素を描きながらも、希望を捨てず、より良く生きるとは何かを、静かに、しかし力強く語りかけてくる傑作です。

 また観に行きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

2026年上半期 映画のベスト10

 しばらくブログの更新ができていない間に、今年も後半に入ってしまいました。

 そんなわけで今年上半期の映画のベスト10です。

 まずは日本映画から。

 

【日本映画のベスト7】

 

みんなおしゃべり!映画ポスター

 

1・みんなおしゃべり

2・黒の牛

3・メモリィズ

4・BLACK BOX DIARIES

5・ミックスモダン

6・ジュンについて

7・小屋版 八ヶ岳に生きる 劇場版

 

 実は今年の上半期はあまり日本映画を観ておらず、10本選べなかったのでベスト7です。

 「みんなおしゃべり」はコミュニケーション不全バトルの傑作です。現代社会の分断と不寛容を鮮やかに切り取り、笑い飛ばしてくれます。

 続いて外国映画です。

 

【外国映画のベスト10】

 

映画『シラート』ポスター:砂漠の道を進む人物

 

1・シラート

2・落下音

3・1975年のケルン・コンサート

4・シンプル・アクシデント 偶然

5・オールド・オーク

6・センチメンタル・バリュー

7・サンキュー、チャック

8・アイ・ワズ・ア・ストレンジャー

9・ただ、やるべきことを

10・LOST LAND/ロスト・ランド

 

 「シラート」にはぶっ飛びました。特に予測不能の後半の展開は驚愕です。

 「落下音」は非常に難解な作品ですが、それでも強烈な印象を残しました。

 「1975年のケルン・コンサート」は、今年いちばん元気の出た作品。

 「オールド・オーク」「アイ・ワズ・ア・ストレンジャー   」「LOST LAND/ロスト・ランド」は現代の難民問題を、それぞれ独自の視点で描いています

 

 今年の上半期は映画館で52本の映画を観ましたが、そのうち3分の1近くは旧作のリバイバルでした。最近は名作のみならず意外な作品が4Kやデジタルリマスターで再公開され、これはこれで映画ファンにとっては嬉しいことです。

今週末は、たまがわBOOKフリマ

 先日もこのブログに書きましたが、今週末の日曜日に玉川高島屋で開催される「たまがわBOOKフリマ」に出店します。

 出品する本の選書と値付けもだいたい終わりました。

 そこで当日出品予定の本の一部を紹介。

 

たまがわBOOKフリマ 出品予定の本

 

 どうです、何か気になる本はありましたでしょうか?

 

 

【たまがわBOOKフリマ】

たまがわBOOKフリマ開催告知ビジュアル

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>