日本呼吸器学会の英文誌Respiratory Investigationに呼吸機能イメージングの総説が本年1月に掲載された1)。責任著者は形態機能学術部会長の中村秀俊埼玉医大教授で、学会理事長や肺生理専門委員長など、重鎮の方々が共著者として名を連ねている。ダイナミックCTのセクションの執筆担当者は東北大学の黒澤一教授で、全部で19編の文献が引用されている。

 

閉塞性換気障害の診断は最大努力呼気検査の1秒率(FEV1/FVC)でなされる。最大努力呼気中の気道の動態を知ることは臨床上の最重要課題で、ダイナミックCTこそがこの課題に応えられるモダリティである。1秒量は呼息開始後1秒間の呼出気量であるから、前後3秒間の動態撮影で足りる。緩徐な呼息よりも撮影時間は短くてよい。通常の知性と好奇心の持ち主であれば最大努力呼気の動態画像を欲するはずである。ところが、本セクションで引用された19編のうち、気道の動態に関する文献はわずか4編で、最大努力呼気での撮影は皆無である。

 

黒澤氏はNEJMに掲載された自著2)をセクションの冒頭で紹介している。しかし、この文献は原著論文ではなく1ページ、約100語の画像紹介記事で、総説の引用文献としては不適格な体裁である。本ブログで以前言及したように(臨床呼吸機能講習会について | コペルニクスな呼吸器学 (ameblo.jp))、NEJMの記事には肺内の2本の気管支しか示されていないが、多くの呼吸器学会員が目にしているオリジナルのCT動画では気管膜様部が呼気時に内側にシフトしている。肺内のわずか2本の気管支よりも気管の動態が呼吸抵抗に大きく影響することは黒澤氏自身よく承知している。黒澤氏がどうしても総説で自著を紹介したいのであれば、気管の画像も提示すべきである。

 

4DCTの日本人放射線科医の論文が2編引用されているが3,4)、いずれも緩徐な呼息での撮影で、本文には大気道の断面積と1秒率は無相関だったと記されている。呼吸器を専門にしている医師であれば(放射線科医であっても)、緩徐な呼息では1秒率が意味をなさないことを知らないはずがない。彼らの論文には読者を欺く意図があると言わざるを得ない。本総説にはこの結果は記されていないが、彼らの論文の欠点に対する言及は一切ない。総説の著者の面々も読者を欺く意図があると言わざるをえない。

 

私は本セクションの訂正を求めて1月24日にLetter to Editorを投稿したが、3月26日に「正式な査読を経て掲載された論文に対する訂正要求は受け入れられない」との理由で掲載拒否の通知を受けた。Editorと査読者、著者らにとって「正式な査読」とは、末梢気道閉塞仮説を守りぬき、縦隔内気道虚脱の不都合な真実を隠し通すことなのだろう。彼らはRespInvestの読者だけでなく、医療従事者と患者をも欺いている。外圧による大掃除が必要な時が来ているように思われる。

 

文献:

[1] Nakamura H, Hirai T, Kurosawa H, Hamada K, Matsunaga K, Shimizu K, et al. Current advances in pulmonary functional imaging. Resp. Invest. 2024; 62: 49-65.

[2] Kurosawa H, Kohzuki M. Images in clinical medicine. Dynamic airway narrowing. N Engl J Med 2004; 350:1036.

[3] Yamashiro T, Moriya H, Tsubakimoto M, Matsuoka M, Murayama S, On behalf of ACTIve Study Group. Continuous quantitative measurement of the proximal airway dimensions and lung density on four-dimensional dynamic-ventilation CT in smokers. Int J Chronic Obstr Pulm Dis 2016;11:755-64.

[4] Nagatani Y, Hashimoto M, Nitta N, Oshio Y, Yamashiro T, Sato S, et al. Continuous quantitative measurement of the main bronchial dimensions and lung density in the lateral position by four-dimensional dynamic-ventilation CT in smokers and COPD patients. Int J Chronic Obstr Pulm Dis 2018; 13: 3845-56.