前ページの記事で示した一般演題の中に、COPDの疫学研究が3題(#3、#7,#10)、周術期管理が1題(#9)ある。これらの演題の抄録に呼吸器学会のCOPD死亡率減少プロジェクト(木洩れ陽2032)に関する記載はないが、1人の演者が「木洩れ陽プロジェクト」のスライドを供覧して詳しく説明された。したがって、当初予定されていたシンポジウムのテーマは木洩れ陽プロジェクトであり、これら4題がその内容であったと推定される。実際、5月26日に初めて開示されたプログラムには、80分の一般演題と90分のシンポジウムが組まれていた。これまでのタイムスケジュールによると、一般演題6題とシンポジウム4題に相当する。この時点でシンポジウムのタイトルが明示されなかったのは、厚労省と日本呼吸器学会が本プロジェクトを公示する前だったからであろう。
木洩れ陽プロジェクトの不備についてはエムスリーへの寄稿文で述べているが、私だけでなく多くの呼吸器学会員から、想定を上回る厳しい批判が寄せられたのではないかと想像する。そのため、ギリギリになってシンポジウムを中止し、会長の焼き直し講演に振り替えたのだろう(会長講演は呼吸器学会の際の講演と全く同じで、質疑時間はなかった)。プロジェクトの責任者として呼吸器学会のホームページに名前のある平井豊博京都大学教授、室繁郎奈良医大教授、川山智隆久留米大学教授、柴田陽光福島医大教授、杉浦久敏東北大学教授は、全員が閉塞性肺疾患研究会の世話人であるのにどなたも現地参加しておられなかったことが、その傍証である。
奇妙なのは、5月26日にタイムスケジュールが開示されているのに、一般演題の募集期限が5月31日まで延長されていることである。過去11年間、一般演題を申請してきた私の経験では約2か月前に採択通知が届いていたが、今回はプログラムの開示時点で採択通知が来なかったので、不採択になったのではないかと心配した。私の演題は、肺気腫の呼気時喘鳴の音源は末梢気道ではなく気管であるとの主旨だからである。採択通知が届いたのは開催まで1か月を切った7月3日で、プログラムの変更に気が付いたのが7月17日頃だった。新たなプログラムではシンポジウムがなくなり、一般演題が11題に増えていた。5月26日時点の一般演題6題とシンポジウム4題に追加募集1題が加わり、11題になったと考えるのが妥当である。そうすると、5月26日の時点では、私の演題を不採択にする予定だったという推測が高い確度をもって成立する。木洩れ陽プロジェクトの推進者で私の現地参加を不快に思わない人はいないからである。
過去にCOPD関連の研究会に演題を申請して不採択になった経験が1回ある。2013年のPneumo Forum(日本べーリンガー社主宰)で、本ブログの過去記事にも記している。当時は理不尽な不採択をアピールする方法がなかったが、今はブログなどインターネットで発信できる。私の演題を不採択にできず、木洩れ陽プロジェクトのシンポジウムも開催できないのでは、オープンに参加者を集めることはできない。そのため、演題名を伏せたクローズドの開催形式に着地したのだと、私は推測する。
現状の閉塞性肺疾患研究会に未来はない。末梢気道閉塞仮説に基づいたCOPDの疾患概念と呼吸機能検査の解釈は誤りだったことを認めるしか未来はない。現地開催に姿を見せなかった木洩れ陽プロジェクトの面々(平井、室、河山、柴田、杉浦先生)は、閉塞性肺疾患研究会だけでなく呼吸器学会からも姿を消して、後進に道を譲っていただきたい。