2023年7月29日に第96回閉塞性肺疾患研究会が開催され、私は「肺気腫の呼気時喘鳴の理論的検討」を発表した。本ブログの前の記事で、毎回開催されていたシンポジウムが無くなったことを記したが、他にも大きな違いが2つあった。現地参加(東京駅新丸ビル)は世話人と演者だけで、他はWeb参加のみという形式である。当日の現地参加者は一般演題の演者10名(1名はビデオのみ)と世話人約10名(座長、会長を含む)、Web参加者は約30名とのことだった(リモート発言はなし)。コロナ禍以前は収容300人程度の会場で開催されていたのと雲泥の差である。閉塞性肺疾患研究会のホームページによると世話人の人数は34名なので、私を除く参加者がほぼ全員関係者の、クローズドな会だった。

 大きな違いの3点目は、7月24日頃に公開された最終プログラムに一般演題の演題名が記されていないことである。参加登録(費用5,000円)をすると抄録集が閲覧でき、そこで初めて一般演題の演題名を知ることができる。数10年の私の研究人生の中で、演題名が前以って公開されない研究会に参加したのはこれが初めてだった。参加登録者のみに抄録が開示されるのは通常だが、演題名すら非開示にしたのはなぜなのだろうか。合理的な理由はないと私は思うので、以下に演題名を記す。テーマごとにアレンジされていないので、おそらく申請日の順に並んでいると思われる。当初予定されていたシンポジウムが中止されたのはなぜなのか、研究会がクローズドになったのはなぜなのか、について私なりに推測したことを次のページに記す。

 

1.東京農工大学・北岡裕子 「肺気腫の呼気時喘鳴の理論的検討:計算流体力学による音源推定」

2.福岡歯科大学・松元幸一郎他 「ヒト気道系における超微細粒子および粗粒子沈着特性を予測する数値流体―粒子力学モデルの作成」

3.九州大学・河床健司他 「地域高齢住民におけるpreserved ratio impaired spirometry と認知症の関連:久山町研究」

4.筑波メディカルセンター・嶋田 貴文他 「喘息患者におけるAirway to lung ratio の臨床的意義」

5.北海道大学・清水薫子他 「気管支喘息患者における新旧定義の気管支拡張薬反応性検査値に関連する因子の検討」

6.東北大学・齋藤拓矢他 「慢性閉塞性肺疾患における新規炎症性肺胞マクロファージの同定」

7.慶應義塾大学・島田嵩他 「脂肪量指数(FMI)および除脂肪量指数(FFMI)のCOPD に与える影響の差異の検討」

8.順天堂大学・小村萌起他 「加熱式タバコIQOS の慢性曝露はマウス肺にアポトーシスと肺気腫を誘導し、そのエアロゾルに含まれるプロピレングリコール曝露がその一因となる」

9. 新潟大学・穂苅諭他 「呼吸器内科医が関わる慢性閉塞性肺疾患の周術期管理の取り組み ~術前呼吸リハビリテーションプログラムを導入して~」

10.京都大学・寺田悟他 「正常体重COPD 患者における骨格筋減少、筋質低下と、冠動脈石灰化・骨密度低下・健康寿命喪失との関連」

11.慶應義塾大学・笹原広太郎他 「ピークフロー変動可視化・共有スマホアプリを利用した気管支喘息の診断・管理の取り組み」