「52ヘルツのクジラたち」私たちは誰も孤独じゃない | 『Pickup Cinema』

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(C)2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

2024年製作/135分/G/日本 監督:成島出 出演:杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨ほか 配給:ギャガ 劇場公開日:2024年3月1日 ★2月5日オンラン試写で鑑賞

東京から海辺の一軒家に一人で引っ越してきた三島貴瑚(きこ=杉咲花)。ミステリアスな彼女の存在はすぐに小さな町で噂になった。

ある日、貴瑚は親から「ムシ」と呼ばれ虐待を受けている長髪の少年(桑名桃李)と出会う。彼は声を発することができなかった。貴瑚は少年の中に自分に通じるものを感じとる。

貴瑚には、辛く哀しい過去があった。愛されたいと願う母からは虐待を受け、家に閉じ込められたまま母の再婚相手の介護をさせられていたのだ。

ある日、母からひどい言葉を投げつけられた貴瑚は、死ぬつもりで街を彷徨っていた。車に轢かれそうになった貴瑚を救ったのは岡田安吾(志尊淳)こと安さんだった。安さんは貴瑚の親友・牧岡美晴(小野花梨)の同僚だった。

安さんは、貴瑚が口に出せずにいたSOSを敏感に感じとってくれた。やがて貴瑚は徐々に自分を取り戻し、上司(宮沢氷魚)とも恋をし元気に美しくなっていった。

「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのこと。

貴瑚、安さん、ムシと呼ばれる少年…。他人には聞き取れない苦しさを抱えた三人の心のうち、生き方を描きながら、親と子の関係、ヤングケアラー、虐待、LGBTQなどについて深く考えさせられる。そして、孤独だと思っていても、きっと理解してくれる存在があることを信じたくなる物語。

2021年本屋大賞を受賞した町田そのこの同名小説の映画化。

貴瑚が暮らす一軒家の海を見渡すテラスの雰囲気がとても気持ち良くて、冒頭のシーンからスッと入っていける作品なのだけれど、予備知識なしに鑑賞した私にとってはまさに衝撃の連続。示唆に富んだ映画だった。