「37セカンズ」性、そして母との関係に揺れ動く、脳性麻痺の女性の挑戦と成長を描く | 『Pickup Cinema』

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2019年/115分/PG12/日本・アメリカ合作 配給:エレファントハウス 監督・脚本:HIKARI  出演:佳山明、神野美鈴、大東駿介ほか

 

脳性麻痺のユマ(佳山明)は、漫画家志望の23歳。

出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足の自由が利かない。

「一人じゃ何もできないでしょ」が口癖の過保護な母親(神野美鈴)を鬱陶しく思いながら暮らしている。

友人の漫画家のゴーストライターをしている彼女は、上手く自己主張をできないもののいつか自分も漫画家としてデビューしたいと願っていた。

ある日、ユマはアダルト漫画の募集広告を見て、思い切って応募する。

しかし、想像だけで濡れ場を描いていたユマに対し、編集長は「性の経験がないと良い作品は描けない」と指摘する。

ユマは派手な洋服に着替え、性体験をするためにネオン輝く歓楽街へと足を踏み入れる。

そこで出会ったのは、夜の街で遊ぶ障がい者やデリヘル譲。

性に目覚め、新しい世界を経験し、少しずつ成長していくユマだったが、娘の変化に気づいた母は激怒。反発したユマは家を飛び出してしまう。

そこで母が隠してきた家族の秘密を知ることに…。

一般公募で100人の中から選ばれた主演の佳山明自身も、出生時に数秒間呼吸が止まったことで脳性麻痺になり社会福祉士として活動していたという。

ともすれば暗く湿っぽくなりがちな物語だが、本作では明るくポップなタッチでユマの気持ちや行動が描かれている。

障がい者へのイメージも変わり、自らがいかに偏見や思い込みで世の中を見ているかを思い知らされた作品。

ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督の長編デビュー作。

第69回ベルリン国際映画祭で2冠に輝いた話題の人間ドラマ。