それではまず骨の転移( 以下骨転移と略します)はどのように発生するのかその機序から説明していきましょう。
皆さんは骨はどのような機能持ってるか考えたことがありますか?学校の理科の授業で内臓の役割というのは学習するのですが、その時に「心臓は血液を送るポンプ」、 「肺は酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する」、 「腸は栄養を吸収する」など習いますね。骨は大きく分けて3つの機能があります。まず第一は体を支える柱のような機能です。骨がなければ人間は立つことも歩くこともできません。次は血液を作るという役割です。白血球も赤血球も骨の中にある骨髄組織で作られます。特に背骨(脊椎)や骨盤がその機能の多くを担っています。 3番目はカルシウムを代表とする栄養素を蓄えているという役割があります。がん細胞が骨を侵すと、まずこれら3つの機能が阻害されます。
骨というのは木のように固い組織で表面は多くの場所で平滑です。その上にがん細胞があってもこの中に入り込んで行くのは難しそうです。がん細胞自身では骨を壊す事は実はできないのです。それではどうしてがんは骨を壊して中に生着できるのでしょうか?生きている木が新陳代謝を繰り返しているように、骨も新陳代謝を繰り返しています。古い骨は破骨細胞と呼ばれる細胞が壊して、そこを今度は骨芽細胞と言う細胞が新たに骨を作っていきます。骨転移というのはがん細胞がこの骨の代謝のメカニズムを利用して骨に入り込んで成立します。まずがん細胞が破骨細胞に「骨をもっと壊せ! 」と言う指令を出します。こうすると骨の表面に破骨細胞が集まり、骨を壊していきます。その骨が壊れた部分にがん細胞が入り込んでいきます。この骨の中には上で述べたように様々な栄養素が蓄積されています。がん細胞は骨に入り込んでこの栄養素を吸収して増殖が加速します。そしてこの増殖したがん細胞がさらに新たに「骨をもっと壊せ! 」という指令を周辺にある破骨細胞に出します。すると周辺の骨がさらに壊されてがん細胞が生着するスペースができ、そこに入り込んで骨から出てきた栄養素を吸収してまた増殖します。このようにがん細胞が破骨細胞を奴隷のように働かせて骨を壊しまた自分自身を増殖させていくのです。
ここ10年間で骨転移を抑え込むため標準的に使用されるようになったゾメタやランマークと言う骨修飾薬は、骨粗鬆症でも使用される薬剤ですが、この破骨細胞の働きをブロックして骨転移を抑制するものです。