それでは、どのようながんの骨転移がうまく治療するのに困難なのでしょうか。私どもの経験からは①大腸直腸がん、 ②甲状腺癌、 ③腎癌、 ④肉腫、以上の骨転移がうまくコントロールするのが難しいと思っています。その理由はこれらのがんの骨転移は放射線治療に対する感受性が低いからです。
さて、この骨転移における放射線治療に対する感受性というのはどのようなことを意味するのでしょうか?おそらく放射線治療の教科書見てもこれについては書かれていないと思います。骨転移の放射線治療に対する感受性は大きく4段階(Very high, High, intermediate, Low)に分類されます。
Very highとは、
・脊椎転移による下半身麻痺があっても、発症早期であれば放射線治療により腫瘍は急速に縮小し、麻痺が回復する
・疼痛も照射により急速に回復する。
・骨破壊も照射により修復される
という特徴を持ったがんです。具体的には、骨転移で発見された前立腺がん(未治療前立腺がん)、悪性リンパ腫、Ewing肉腫を代表とする、小円形細胞肉腫、小細胞肺がん、が含まれます。
Highとは
・脊椎転移による下半身麻痺があっても、発症早期であれば放射線治療により麻痺が回復する場合もある。
・疼痛も照射により急速に回復する。
・骨破壊も照射により修復される。
・放射線治療の効果は最低2年間は継続する。
という特徴を持ったがんです。具体的には、ホルモン治療が効かない前立腺がん(ホルモン不応前立腺がん)、乳がん、非小細胞肺癌、多発性骨髄腫が含まれます。
乳がんや前立腺がんの骨転移は症例数は非常に多いのですが、いずれも放射線治療の感受性が高いという特徴があります。またホルモン治療も有効です。そのため適切な放射線治療を行い、ホルモン治療を継続していれば骨転移で破壊されていた骨が再生して骨の強度が回復する現象がよく見られます。この骨の強度が回復する事で痛みも著しく緩和されますし、背骨では骨折や麻痺の発生が防げます。肺癌は、乳がんや前立腺がんほど放射線治療の感受性が高くは無いのですが、先に述べたように分子標的薬の効果が高いため、肝(キモ)となる部位に放射線治療をしておけば、後は抗がん剤治療でうまくマネジメントできる場合が多い。逆に残念ながら抗がん剤治療が効かない場合は、病状の進行が早く、生存できる期間が短いため、その場合骨転移は大きな問題とはなりにくい。