それでは、どのようながんが骨転移を発症しやすいのでしょうか?これについては正確なデータはありません。しかし臨床として症状を起こすあるいは起こしそうになり、治療を要する事態になる骨転移の原発巣はわかります。治療を行った骨転移で最も頻度が高いのが肺がんです。次に多いのが乳癌、そして3番目にくるのが前立腺がんです。この3者で骨転移の半数を占めます。これは90年代からほとんど変わっていません。しかし最近の変化としては、胃がんや大腸がんといった消化器癌の転移が増えてきました。これには2つの理由があります。第一には消化器癌に対する抗がん剤治療が進歩したため、以前は治療の対象にならなかった骨転移が治療の対象となってきたことです。特に胃がんの骨転移は2000年以前は目にすることはあってもほとんどは状態が悪く短期間のうちに死亡するため治療の対象とはなりませんでした。消化器内科を専門とする医師たちもそれをわかっていたため整形外科や放射線治療科に骨転移の治療についてコンサルトする頻度が低かったと記憶しています。第二には特に大腸および直腸がん自体が増えたことです。特に女性においては乳癌と大腸癌がトップ2となっています。母集団が増えたために骨転移も増えた、という構図です。第3に消化器内科医自体の骨転移に対するする意識が高まったこともあると思います。

 しかし難しい事は「骨転移の頻度が多いがん」と「骨転移の治療に難渋するがん」が一致しないことです。先ほど述べたように肺がん骨転移は最も頻繁に見られます。近年は治療のメインストリームがイレッサ、タグリッソなどのEGFRTKIと呼ばれる分子標的薬(になってきました。このEGFRTKIは骨転移に対しても著明が効果を示します。そのためこれらの薬が使える場合は薬が効いてる間は骨転移もトラブルを起こす事は稀です。そのため多発骨転移であってもマネジメントが非常に楽になりました。乳がんや前立腺癌もホルモン治療と呼ばれる治療法がここ20年で劇的に進歩しました。このホルモン治療は骨転移にも奏功することが多いため肺がん同様、ホルモン治療が有効なうちは俺転移もトラブルを起こしにくい状態が続きます。さらに乳癌や前立腺がんは前世紀から骨転移が多いことが専門とする医師の間にも知れ渡っていたので、骨修飾薬の投与に積極的であることも良い方向に働いています。さらにもともと乳がんは混合性骨転移、前立腺癌は硬化性骨転移が多く骨折しにくい性質があります。以上のことから肺癌、乳がん、前立腺がんという3大骨転移起こしやすいがんは管理が容易になっています。