③一方正常な生体内では通常見られない異常な細胞が増殖したもの 

このパターンは①および②に比べると少し厄介です。まず細胞の増殖速度が前2者に比べると早いので進行が早い。そして通常の組織と違うものが発育するので、症状を起こしやすいのです。そのため単純に良性と表現するのではなくaggressive (攻撃的な) benign (良性)と表現されることもあります。腹部や消化器領域で言えば顆粒細胞腫、デスモイド、骨に発生するものは骨巨細胞腫、軟骨芽細胞腫などが該当します。顆粒細胞腫や骨巨細胞腫は稀に内臓に転移して生命を脅かすものもあります。脂肪腫と間違えられやすい高分化型脂肪肉腫もこれに含まれると考えて良いでしょう。ほぼ共通して言えるのは.何も治療をしなければかなりの大きさまで病巣拡大を続けてしまうことです。骨に発生すれば最初は痛みだけですが.進行すると骨折をきたします。明治期までの期間にこの疾患にかかった人は適切な診断や手術が不可能でさぞ困ったことだと思います。腕に発生した高分化型脂肪肉腫で、少し大げさですが、振袖のような形に発育して服を着ることができなくなり困ってしまった患者さんを見たことがあります。

 ではがんはこれらに比べてどのような点が特徴的なのでしょうか?私は3つの特徴があると考えます。

第一は何も治療を受けない場合、発生した場所で際限なく(患者さんが死亡するまで)周辺の組織を破壊しながら拡大していくことです。そのためある一定の大きさを超えると周辺の組織(皮膚等)を食い破って外に飛び出してきます。乳がんなどでよく見られる現象です。近くの血管を破って大出血を起こすこともあります。

第二は血管やリンパ管を伝わって離れた場所に新たな病変を作ることです。これを、転移といいます。医学的にはがん細胞が血管に入り離れた遠い場所に流れていってそこに生着することを「血行転移」、がん細胞がリンパ管を伝わって転移していく現象を「リン行性」といいます。

第3は進行した場合腫瘍そのものから体を蝕む物質を出し、それにより異常に痩せたり、食欲が無くなったり、発熱することが起きることです。こういった状態を悪液質といいます。

では次に「がん」と「癌」を違いについて述べます。