「行こうか」とペンギンが言う。

 

ペンギンの表情をどう読み取るかはロールシャハテストのように自分の主観が反映

されてるように感じてしまう。

 

実際石膏のようなペンギンの顔に大した変化はないのだ。

 

声色はどうだろう。低く聞こえるそれは均一で抑揚や感情を抜き取ることは出来ない。

 

しかし、私は感じるのだ、決して前向きではない。

 

彼がこれからなにをするのかどこに連れていくのかは分からない。

でも彼自身それに対して前向きではない。

 

悲壮感?閉塞感?

 

分からない。

 

彼が私に危害を加えるような人物でないことは分かるけど、

私には彼の行動が前向きなものだとは思えない。

 

小さい電灯だけが下がる部屋から彼はさらに先のドアを開ける。

 

ドアまで行くとさらにそこから下に向かって暗い階段が続いていた。

 

湿っぽくかび臭い匂いが充満している。太古の昔から隠されていた通路のように。

 

「待って」と私は言った。

 

「どうした」とペンギンは沈鬱な表情を浮かべて私に振り替える。

 

「これだけは確認しておきたいわ」

 

「うん」

 

「私はあなたを全面的に信用するわ」

 

「?」ペンギンは首をかしげる。

 

「私は間違っているのかしら」

 

ペンギンは肩を落とし俯く。

 

「ふむ。君のその判断は今回に限っては間違っていない。僕が君に危害を与えることはないし、

そして、恐らく共通認識で君を正しい方向に導いていると思う……

ただこれから先の君のそういった妄信が仇になってしまうことはあるかもしれない」

 

「どういう意味?」

 

「なにが善でなにが悪なのかの判断をこれから君はしていかなければならないんだ。

そういう時に直観や妄信は君の判断を鈍らせてしまうだろう。様々状況が違うベクトルに向かう時、

君は確かな判断をしなくちゃいけない。重い任務だとは思うが僕は君に託すしか方法がないからね」

 

「この階段を下っていくとこで分かるのね」

 

「君がこの階段を下っていかないことにはなにも始まらないんだよ」

 

「それはジンに繋がっていくのかしら」

 

「ジンだけじゃないさ。様々なことに繋がっていく」

 

「でも、あなたはそれを私に説明しないのね」

 

「時間がないんだ。急ごう」

 

狭い通路になっている階段を両手を壁に這わせながら降りていく。

 

やがてまたドアが現れ、ペンギンがそれを開くと地下鉄の駅が姿を現す。

 

それまでの暗い階段と違ってプラットフォームは電光が眩く光、

それに照らされる床は大理石のように光を清潔に反射していた。

 

向かいには下りか上りか知らないけど逆方向にいくプラットフォームすらある。

 

間に無機質な2本の線路。

 

見渡した限り人はどこにもいなかった。