Davis 第14話 【耳で聴く小説】 | Hiroumi.Metaverse

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仮想通貨のファンダメンタルズ分析



スワロウタウンで起きた事件では飛行機の墜落とドローンバイクの墜落があり、走行している車やバイクはすべて停止してしまったというのだ。
滑走路から飛び出した飛行機と遥か上空を飛んでいた飛行機の墜落である。さらにドローンバイクは100機以上の墜落があった。

これはさすがに事故ではなく、事件だと考えられた。走行中に止まったのは、すべてのEVカーと電動バイクである。
スワロウタウンの敏腕の刑事がガソリンで動く車とバイクは、無事だったことに気づいた。

スワロウタウンの住民もマスコミも警察官たちも飛行機の墜落2機とドローンバイクの墜落100機に気を取られて肝心な部分を見過ごしていたがスワロウタウンでも大きな事件を解決することで有名な刑事がガソリンで動く車とバイクは無事だったと報告している。

2048年ではガソリンで動く車とバイクは、かなり珍しかった。電動車、電動バイクが主流で、ドローンバイクは最近増え始めたところだった。

2020年に起きた世界恐慌の後、世界中の国でたくさんの暴動が起きて、戦争になり、米国でも多くの街がスラム化していたがカリフォルニア州の一部の地域は正常に機能していた。
その中でも近未来的な超高層ビル群の街を作り、人々に希望を与えたのがスカイタウンだった。

スカイタウンの西にあるスワロウタウンや南のグリーンタウンは、そこまで近未来的ではなく、昔ながらの情緒ある街並みを残していた。

2030年以降は、仮想通貨の普及とプラットフォームの利用があらゆる企業で行われ、EVカーは自動操縦と領域管理の技術が使われるようになった。さらにスカイタウンでは、住民たちが体にマイクロチップAIを埋め込んでいるため自動操縦は人工衛星を使った自動操縦とAIによる自動操縦の二通りが使い分けできるようになっていた。

仮想通貨のプロジェクトチームが開発したプラットフォームによって、航空会社はその技術を利用して飛行機の空域管理を行っている。飛行機の飛行中に起きる接触事故を防止するため空路が重ならないように空域を管理するシステムを作ったのだ。

同じようにドローンバイクやEVカー、電動バイクは盗難防止のために領域管理されているのだった。本人以外は始動させることができなかったり、盗まれた車やバイク、ドローンバイクが海外に出荷されても国ごとに領域管理されているため、正規店が販売した国以外では始動させることができなかった。

スワロウタウンの敏腕刑事は、航空会社のプラットフォームと街全体を覆うプラットフォームが何者かによってシステムがハッキングされ、不正なコントロールが行われたと睨んでいた。
その刑事の名はウィルソンという。シングルの黒革のジャケットに身を包んだクールな男である。

このとき既に世界各地で異変は起きていた。

プラットフォームのハッキングとプログラムの書き換えやクラウドコンピューターへの悪意のある情報の強制的な共有である。

スカイタウンの住人たちが体に埋め込んだマイクロチップAIのバーチャルアンドロイドが通信して情報を得ているクラウドコンピューターに悪意のある情報が流れるとマイクロチップに入った人工知能に悪影響を及ぼすことがあるそうだ。

「ネット上で共有される情報を提供しているクラウドコンピューターを利用することによって、マイクロチップの大きさを縮小して体内に埋め込むカプセルの大きさを小さくし、性能を向上させることに成功しているのだがクラウドコンピューターに悪意のある情報が流れるとマイクロチップに入った人工知能の判断が狂ってしまうことがある」と講習会で教授が熱心に説明している。

とても若くて美人な大学教授の一般向けの講習会で真摯に話に耳を傾けているのは敏腕刑事のウィルソンだった。講習会ではカジュアルな服装をした大人が多い中で一人だけ最前列でシングルの黒革のジャケットを着た男がいるので美人教授のリカはその存在が気になっていた。

講習会に集まっている人たちはだいたいは企業のエンジニアである。技術者の多くはメガネをかけてボサボサの髪型だったが、一人だけ何か得体の知れない知的でクールな雰囲気を漂わせている黒革のジャケットを着た男が最前列に座っている。
リカは「この人は一体、何をやっている人なんだろう?」とウィルソンの容姿を不思議に思い興味が湧いていた。

講習会が終わり、資料を整理してかばんに詰め込むリカにウィルソンが話しかける。リカは笑顔で質問に答え、楽しそうな雰囲気だったが一方、ウィルソンはまったく笑わず、会話は淡々としているのだった。

最後にウィルソンが名刺を渡したときに刑事であることがわかり、リカはその容姿と話し方に納得するのだった。