Davis 第13話 【耳で聴く小説】 | Hiroumi.Metaverse

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仮想通貨のファンダメンタルズ分析



現実世界のメインコンピューターの前で仰向けに寝転がっていたニコルが起き上がった。3Dゴーグルを外してニコルが言う。
ニコル「デービスは戻ってきてるよね?」

ニコルは、かけがえのない相棒のデービスを気にかけた。
ロイドは、「ああ、もちろんだ」と返事をして、右手の親指を立ててニコルのほうに笑顔でポーズをキメた。
ルーシーは、社長にシステムが正常に戻ったことを報告した。
ニコルは、ザイオンに3Dゴーグルを手渡しで返した。ザイオンから「今から警察署に報告に行くのならこれを持っていけよ」とマイクロカードを手渡された。

ニコル「ザイオン、ありがとう。ルーシーもロイドもありがとう。じゃあ、僕、急いでるから行くね」

スカイタウンが元に戻ったのは嬉しいがバーチャルアンドロイド・マザーの言葉がニコルは気になっていた。

もしかしたらクラウドコンピューターを介して、”悪意のある情報を強制的に共有させた”人物がどこかにいるかもしれない。
これはほっとけない。もし、今回、捕まえなければまた同じことをやるはずだ。

エレベーターで30階に上がったニコルは、イーロン・ゴールド社長に挨拶をしてから警察署へ向かった。
仮想世界でさっき30階に上がって、社長室にいるバーチャルアンドロイド・マザーに会ったところなのでなんだか変な気分がするニコルだった。
それはデービスも同じで仮想世界と現実の世界の区別がつきにくい状態である。

ニコルは屋上に行き、ドローンバイクを始動させて警察署へ向かった。

警察署に行くと今まで”待機”の状態で流れていなかった情報が一気に流れたので署内はパニック状態になっていた。
ニコルが警備ロボットに拘束された情報とイーロン・ゴールド社長が「あれはシステムトラブルだった」というフォローの連絡も同時に報告されていた。
スカイタウンで非常事態が発生していたことがわかって警察官たちが現場に出動して、警察署にはほとんど誰も残っていなかった。
介護ロボットが暴走してスカイタウンの住人をビルから放り投げたことも報告され、現場には救急車が出動して、そこへマスコミが駆けつけて騒ぎが大きくなっていった。
ニコルは警察署に残った警察官にマイクロカードを渡して、今までの経緯を説明した。

次の日から1週間、テレビとマスコミで、この話題で持ちきりだった。

インターネット経由での連絡、報告が多くなった2048年では、”情報が止まる”ということ自体が異常事態である。
その原因は未だにわかっていなかった。

介護ロボットが暴走してスカイタウンの住人をビルから放り投げたことも大きく注目を集めた。
殺人事件と事故の両方から警察の捜査は開始されることになった。

イーロン社のメインコンピューターのバーチャルアンドロイド・マザーが言ったようにクラウドコンピューターを介して悪い情報を強制的に共有した組織、またはハッカーはいるかもしれない。
もしくはまったく別の要因かもしれないが・・・。

ニコルの生活は、とりあえず元に戻ったが、ニコルの父親は、あの日から少しずつ情報を集めて、原因を調べているようだった。
ニコルの父親はシステムプログラマーなので、今回の件で、ハッキングの可能性とクラウドコンピューターの弱い部分を研究して今後の対策に役立てたいと考えているようだ。

ニコルがエマに連絡して、スカイタウンが元に戻ったことを告げると彼女は喜んでいた。電話越しの声で、とても心配してくれていたことがわかった。

スカイタウンの非常事態から一ヶ月が経ったが、あれが事件だったのか、事故だったのか未だに不明のままだった。しかし、異変が起きたのはそれからのことである。
スカイタウンから西にあるスワロウタウンで飛行機やドローンバイクが次々に落下する非常事態が起きたのだ。そして、走行中の車はすべて停止してしまったらしい。

これは瞬く間に全米でニュースになり、ハッキングと事件の可能性が濃厚となった。