Davis 第11話 【耳で聴く小説】 | Hiroumi.Metaverse

Hiroumi.Metaverse

仮想通貨のファンダメンタルズ分析



メインコンピューターの前でイーロン社の従業員3名とニコルはバーチャルアンドロイド・マザーに会う準備をしている。
スカイタウンのすべての状況を統括するマザーがハッキングされている場合、マザーと接触すればニコルの体に埋め込まれたマイクロチップAIに影響を及ぼす可能性がある。
ハッカーにメインコンピューターをハッキングされて、ウィルスを流されていたら今回のような事件になることは十分に考えられるのでニコルたちは、慎重に事を進めようとしていた。

ニコルのバーチャルアンドロイドであるデービスを仲介して、ニコルとバーチャルアンドロイド・マザーが会話をしてシステムの状況を把握する作戦だが、どういう結果になるのか予測不能である。
ロイドがメインコンピューターにUSBケーブルを挿して、ノートパソコンを開いた。まずはウィルスをチェックするようだ。
ザイオンは台車に大きな液晶モニターを載せて持ってきた。ルーシーは床にタオルケットを敷いて、ペットボトルをタオルで包んだ簡易枕を用意した。

ニコルは、ザイオンに手渡された3Dゴーグルを装着して、タオルケットの上で仰向けに寝転んだ。ペットボトルの簡易枕に頭を乗せて、「いつでもいい」と言わんばかりの状態である。
ルーシーは、ニコルの手を握り、「大丈夫、あなたならきっとできるわ」と囁いた。

ロイドのセキュリティチェックが終わり、どうやらウィルス感染の可能性は低いことがわかった。ハッカーの仕業ではなさそうだ。
しかし、それならどうしてスカイタウンではイーロン社の偵察機のドローンが溢れかえり、介護ロボットが暴走しているのか説明がつかない。
おまけにスカイタウンの住人たちのマイクロチップAIにも異変がある。ニコルたちの家族のマイクロチップAIが変だったように・・・・。

不可解な点がたくさんあり、謎は深まるばかりである。

ルーシーは、ニコルの右手にマジックテープで端末機を固定して、端末機から出ているコードをメインコンピューターのUSBポートに挿した。
ザイオンはニコルが装着した3Dゴーグルと台車に乗った液晶モニターをUSBケーブルでつないだ。

今回の作戦は、ニコルのバーチャルアンドロイドであるデービスがメインコンピューターが作り出した仮想世界に入り、そこでバーチャルオフィスの最高責任者であるマザーに会うことが重要である。マザーに会うことができたら3Dゴーグルを装着したニコルがデービスを仲介して、会話に参加できるようになる。

その様子はザイオンが持ってきた液晶モニターに映し出される。従業員の3名の役割はロイドがノートパソコンでリアルタイムに起きる異常を調べて、ルーシーは社長に現場の様子を伝えて連携をとり、ザイオンは必要に応じて電子機器を用意し、ニコルのサポートに徹するようだ。

マイクロチップAIを体に埋め込んだ人間は、宿主となり、バーチャルアンドロイドの干渉を受けることがあるが宿主である人間が仮想世界に入ることは珍しい。そして、メインコンピューターを統括するバーチャルアンドロイド・マザーへの干渉は、今まで行った人間は誰もいなかったのだ。

スカイタウン構想の計画段階から、プログラマーは、メインコンピューターを統括するバーチャルアンドロイド・マザーに非常時の際は、人間が干渉・交渉できるように設計していたが今まで大きなトラブルがなかったので一度もその機能を使ったことがなかった。

仮想世界に入る試みは非常に危険だと云われているため、イーロン社の従業員も入りたがらなかった。そのリスクがわかっている従業員たちはイーロン・ゴールド社長の緊急の招集にも関わらず、3人しか集まらないという始末である。

他の従業員たちは自分の持ち場から離れずに、いつもの作業をしているのだった。ロイド、ルーシー、ザイオンの三名は非常に優秀でイーロン社に忠誠を誓い、会社を良くしたいと心から思っていた。
ロイドは役員に選ばれ、プログラマーとしても会社のトップにいる。ルーシーは補助システムを管理し、ザイオンは器用なエンジニアである。

ロイドがメインコンピューターへアクセスする準備が完了したので合図を出した。ルーシーが3Dゴーグルをして仰向けに寝転んだニコルに話しかける。
ルーシーの「ニコル、今から仮想世界に行くわよ」と言った言葉を聞いて、ニコルはうなづいた。

ロイドはノートパソコンのエンターキーを右手の人差し指で押して、ニコルのバーチャルアンドロイドであるデービスはメインコンピューターが作り出した仮想世界に転送された。
デービスの視点はニコルの3Dゴーグルに映し出され、それと同時にザイオンが用意した液晶モニターにも映し出されていた。

仮想世界は、疑似地球となっていてデービスはイーロン社のビルの前に立っていた。ニコルが声をかけた。
ニコル「デービス、イーロン社に入ってバーチャルアンドロイドのマザーに会って来てくれないか?」
デービスは驚いて、キョロキョロしたがニコルの姿は、そこにはなかった。
デービス「了解しました。ここは仮想世界ですね。いつもと逆で私に体があり、ニコル様は声だけなので驚きましたよ」

デービスは一歩ずつ階段を上がり、イーロン社の本社ビルの入り口のドアを開けて中に入って行った。