藤島コラム⑯「男子ホッケー-五輪への長い道 明暗-」 | ひろどんの歌声日詩♪
「男子ホッケー-五輪への長い道 明暗-」

2012年5月8日 東京新聞夕刊「スポーツが呼んでいる」


 無念の幕切れ。

中継の放送席まで沈黙してしまう。

かすかに場内アナウンスの音声が聞こえてくる。

「1対2で南アフリカが勝ちました」。

日本のスコアを先に伝えたのが妙に切ない。


 男子ホッケー、44年ぶりの五輪行きはならず。

出場12カ国の最後のイスを争うロンドン五輪世界最終予選のファイナル、岐阜県グリーンスタジアムでの緊迫の接戦を日本は落とした。

遠くメキシコ五輪から続く長い迷路はまだ終わらない。

 凱歌に酔った南アフリカは、これで3大会連続の五輪参加なのだが、しかし、その道もまた短くはなかった。

「予選突破までは長く険しい道のりだった」。

グレッグ・クラーク監督は母国の通信社にそう心境を吐き出している。

同代表は、昨年9月のアフリカ予選を実は突破していた。

国際オリンピック委員会(IOC)と国際ホッケー連盟(FIH)のルールでは、ロンドン行きは確定である。


 では、なぜ日本と激しく争ったのか。

返上したからである。

南アフリカ政府のスポーツ統括組織(SASCOC)は「それだけでは五輪参加にふさわしくないと見なした」(IOLニュース)。

アフリカ予選は国際レベルに達していないとの見解だ。

もっとも、その決勝はエジプトに1-0なのだから評価は厳しい。

枠は各大陸予選敗退国で世界ランク最上位のスペインにゆずられ、南アフリカは最終予選に回った。

公式には「強化のためにあえて試練を」ということなのだろう。

でも日本戦のスコアを考えても「あえて」の域は超えている。


 南アフリカの女子代表にはスポンサーがついているのに男子に大きな援助はない。

主力の多くは欧州でプレーをしており、今回もチーム来日の3日後に合流するなど長期拘束は難しい。

予選の突破は簡単ではない。

 現場の指導者の立場では、出場を決めてからじっくり強化をしたいところだ。

政府筋は、おそらく財政事情を考慮して五輪参加団体を絞りたかった。

その対象がホッケーだった。

いざ突破してしまえば「これで力はついた」と総括もできるがリスクは大きかった。


 日本のホッケーは格のある競技なのにマイナーと遇される。

最後に競った相手もまた楽を許されてこなかった。

五輪出場とは恵まれた者のみならず、恵まれぬゆえの底力を競う場でもある。