「男子ホッケー-五輪への長い道 明暗-」
2012年5月8日 東京新聞夕刊「スポーツが呼んでいる」
無念の幕切れ。
中継の放送席まで沈黙してしまう。
かすかに場内アナウンスの音声が聞こえてくる。
「1対2で南アフリカが勝ちました」。
日本のスコアを先に伝えたのが妙に切ない。
男子ホッケー、44年ぶりの五輪行きはならず。
出場12カ国の最後のイスを争うロンドン五輪世界最終予選のファイナル、岐阜県グリーンスタジアムでの緊迫の接戦を日本は落とした。
遠くメキシコ五輪から続く長い迷路はまだ終わらない。
凱歌に酔った南アフリカは、これで3大会連続の五輪参加なのだが、しかし、その道もまた短くはなかった。
「予選突破までは長く険しい道のりだった」。
グレッグ・クラーク監督は母国の通信社にそう心境を吐き出している。
同代表は、昨年9月のアフリカ予選を実は突破していた。
国際オリンピック委員会(IOC)と国際ホッケー連盟(FIH)のルールでは、ロンドン行きは確定である。
では、なぜ日本と激しく争ったのか。
返上したからである。
南アフリカ政府のスポーツ統括組織(SASCOC)は「それだけでは五輪参加にふさわしくないと見なした」(IOLニュース)。
アフリカ予選は国際レベルに達していないとの見解だ。
もっとも、その決勝はエジプトに1-0なのだから評価は厳しい。
枠は各大陸予選敗退国で世界ランク最上位のスペインにゆずられ、南アフリカは最終予選に回った。
公式には「強化のためにあえて試練を」ということなのだろう。
でも日本戦のスコアを考えても「あえて」の域は超えている。
南アフリカの女子代表にはスポンサーがついているのに男子に大きな援助はない。
主力の多くは欧州でプレーをしており、今回もチーム来日の3日後に合流するなど長期拘束は難しい。
予選の突破は簡単ではない。
現場の指導者の立場では、出場を決めてからじっくり強化をしたいところだ。
政府筋は、おそらく財政事情を考慮して五輪参加団体を絞りたかった。
その対象がホッケーだった。
いざ突破してしまえば「これで力はついた」と総括もできるがリスクは大きかった。
日本のホッケーは格のある競技なのにマイナーと遇される。
最後に競った相手もまた楽を許されてこなかった。
五輪出場とは恵まれた者のみならず、恵まれぬゆえの底力を競う場でもある。