長男が通う中学の、お父さん同士の集まりの日。
飲んで飲んで、飲みまくった5時間半。
とっくに終電は終わり。
さてタクシーでも拾おうかとフラフラ歩いていると・・・
「なんじゃコラーッ!」
と、突然の怒鳴り声。
見れば道の反対車線で、坊主頭にタンクトップ姿で肩を怒らせた若い男が、力の限り叫んでいる。
その背後には、ボンネットを開けて停車している軽自動車が。
車が故障したのだろう。
こんな夜中で誰も助けてくれないから、相当怒っていたようだ。
「どうしたー?」
道の反対側に向けて叫ぶ。
若い男がサッとこちらを向き、何やら怒鳴り返してくる。
怒鳴りながら4車線の道を渡ろうとしているので、
「そこで待ってろ!」
と制し、こちらから向かい側に渡る。
「エンジンがかかんねーんじゃコラ!」
私を前にして、果敢にも怒鳴り続ける。
「セルは回るのか?」
という定番中の定番の質問をしても
「エンジンがかかんねーんじゃコラ!」
と怒鳴り返す。
苦笑。
「どれ、キー貸せや」
と言って手を出すと、素直にキーを渡してくれる。
車外でキーをひねる。
セルは元気に回る。バッテリーは問題なし。
エンジンは始動する。点火系統も問題なし。
しかしアイドリング状態になると、ストンとエンジンが止まる。
「直せんのかコラ!」
診断中も怒鳴り続ける若い男。
車に乗り込み、エアコンやラジオなどを止め、アクセルをポンポンと煽りながらエンジンを掛ける。
ある程度アクセルを開けておけば、エンストはしないようだ。
「なんでエンジンかかるんじゃ!」
明らかにトーンダウンしている(笑)
「アクセルは常に少し踏んだままにしてな。
クラッチ切ったときやニュートラルにすると
エンストするから、少し踏み続けてな。
行きつけの工場があるだろうから、
明日診てもらえよ」
最初の勢いはどこへやら、分かりましたと素直に頷く若い男。
「酒飲んでないだろうな。飲んでたら運転はダメだぞ」
飲んでません、大丈夫ですと素直に答える若い男。
あるいは非番の警察官と勘違いしたのかもしれない。
いずれにせよ、怒鳴った相手に助けられたのだから、さぞや居心地が悪かろう。
「気つけて帰れな」
と言って手を差し出す。
若い男が握り返してくる。
軽く握撃を加える。
「ガタイいいな。格闘技か何か、やってるのか?」
握りながら尋ねると、いえやってませんとのこと。
強く握撃を加える。
若い男の重心が浮く。
そこで許してやった。
背中を向けて歩き出す。
その背に若い男が声をかけてきた。
「じゅんたです!ありがとうございました!」
「おーじゅんた、縁があったらまた会おう!」
そう言って別れた。
格上、格下という言葉があるが、ああ、これが格が違うという事なのねと、ふと思った。
ある程度まで修行が進むと、格下の相手に対しては、怖いという感情がなくなってしまう。
だからいつも通り冷静に対処できたようだ。
これが合気道で言うところの「始めから勝ってる」の域なのかも知れない。