・・・つづき。
師匠の無事を確認した私は、籬(まがき)港に係留してある船を見に行く事とした。
籬港は師匠の道場から、2キロほど離れている。
当然海沿いだから、被害はもっと大きいだろう。
陸(おか)に打ち上げられたのならまだいいが、沖合に流されたり、最悪転覆しているということも考えられる。
考えは悪い方に、悪い方に再現なく広がってしまうものだ・・・
師匠の道場を出発。
北浜からイオン方面へ向かう道路は壊滅状態だから、塩釜警察署の前を通って45号線方面へ向かう。
しかしこちらも酷い。ガレキと車が道を塞いでいる。
家一軒が丸ごと流されて、道路の真ん中に鎮座している。
家をギリギリかすめながら、慎重に車を進める。
仙石線の高架が見えてきた。その下を45号線が走っている。
だがそこでそれ以上進めなくなった。
・・・道が完全に水没しているのだ。
水深が浅いのならば行けないことはないのだが、何が沈んでいるかは分からない。
軽トラを止めて、自転車を降ろす。
水没していない抜け道を通る。
1辺が50cmはありそうな角材が道を塞いでいる。
一端は家屋に突き刺さり、斜めになって横たわっている。
その上を、自転車を持ち上げて乗り越える。
やっと45号線に出ても、流されたガードレールが、折れ曲がりながら道を塞いでいる。
まず自転車を向こう側に渡し、それからまたいで乗り越える。
国道45号線は完全に遮断されている。
車は一台も通らない。
通るのは自転車と、歩行者のみ。
国道なのに。
仙台から北へ物を運ぶ、物流の大動脈なのに。
籬港に近づく。
港付近にあった練炭の工場から、大量の練炭が流出し、そこかしこに黒い塊となって転がっている。
車に踏みつけられ、黒い轍となって無残な姿を晒している。
プロパンガスの供給所から、大量のガスボンベが流出し、ゴロゴロと転がっている。
傷だらけで、黒い油が付着している。船の燃料となる重油なのだろう。
ニッサンのディーラーは、ガラスが割れ、壊れた車が折り重なっている。
これを片付ける社員の苦労を想像してしまう。
最悪の状況を思い浮かべながら、船に近づく。
向かい側の桟橋には、鋼鉄製の船が打ち上げられている。
籬の桟橋は、至るところで地盤沈下。
水面を見ると、軽自動車が1台沈んでいる。
誰も乗っていなければいいが・・・。
ようやくうちの船を発見。外見は全く問題ない。
打ち上げられてもいないし、傷もついていない。
いつも係留していある所に、プカプカと浮かんでいる。
ロープや浮きの類も全く無事。
思わず脱力する。
あの津波が襲いかかったというのに、奇跡としかいいようがない。
同じ籬に係留してある船でも転覆した船が何隻もあるというのに・・・。
二つ隣の船は、津波をかぶってエンジンルームにまで浸水し、営業再開は不可能だという。
ほんの数メートルでかくも被害が違うとは・・・。
#後日談。実は全く無傷ではなく、ロープを結えつける鉄骨の上端に乗り上げ、
#船の先端側面に穴が空いていたという。
#鉄骨は水面から4メートル以上の高さがある。
#つまり4メートル上下したということになる。
とにかく写真を取る。
船は無事。これを父親に伝えなければならない。
船の無事は確認できた。
次は七ヶ浜の親戚の安否である。
・・・つづく。