・・・つづき。
国家試験も近づいてきた。
過去問を解いても,模擬試験を解いても,コンスタントに8割正解できるようになった。
だんだん仕上がってきたのだ。
講習会の終了試験を翌週に控えたある日,教室に掲示された内容を見て,かなり脱力を覚えた。
「3月6日及び9~12日の5日間は,国家試験対策を行います。全員出席して下さい。」
これまでの講習会は,国家試験対策ではなかったっつーこと?
自動車整備振興会のやる事はよく分からん・・・。
国家試験に向けて順調に仕上がった以上,別途国家試験対策を受ける必要はないのだが,必須だから仕方がない。
この頃から,私の中に妙な余裕が生まれていた。
国家試験で必ず出題される
「6気筒エンジンのバルブタイミング問題」及び
「オートマチックトランスミッションのプラネタリギヤ問題」
を短時間で解答するノウハウを独自に編み出していた。
自動車整備士の過去問や模擬試験を掲載したサイト,その他受験に役立つサイトのアドレスも知っている。
この情報,私だけが知っていていいのだろうか?
国家試験は,誰かを蹴落として自分が合格する試験ではない。
この教室にいる面々を蹴落とす必要は全くないのだ。
だがこの教室にいる面々は「商売敵」でもある。
その時ふと,年末に行われた忘年会の光景を思い出した。
仙台で自動車整備工場を営む方々の忘年会。私は社長と共に参加した。
そこには同業者の方々と楽しそうに酒を酌み交わす社長の姿があった。
そうだった。この教室にいる面々は「同業者」だったんだ。
この教室にいる面々と,いつか酒を酌み交わす日も来るだろう。
私のノウハウを5ページにまとめ,原稿を自動車整備振興会のスタッフに渡し,人数分コピーして配布してもらった。
「ほーっ」
「なるほど」
という声が教室から聞こえてくる。
講師も興味深げに眺めていたが,ちゃっかり1部持っていった。
苦痛の5日間を終え,修了試験も無事に終えた。
後は国家試験を残すのみとなった。
・・・つづく。