岡山満喫編~灯台~⑥ | 武産合氣道 大和/宮城野合氣修練道場 稽古日誌

武産合氣道 大和/宮城野合氣修練道場 稽古日誌

「神奈川県大和市」及び「仙台市宮城野区」にて岩間スタイル合気道を稽古する「大和/宮城野合氣修練道場」道場長鈴木博之のブログ。IT関連、自動車整備、資格試験、震災関連など、様々な情報を提供しています。

・・・つづき。


帰りの車の中で「組織化の弊害」について内田さんと話し合う。


「組織」にはメリットもあるだろうが,こと「武道」に限ってはデメリットが多い。


広げようとすると,技が薄まって伝わってしまう。
5人や10人ならばまだ目が届くし,直接手を取って教える事もできるが,50人や100人に目が届くはずがないし,ましてや直接手を取って教える事などできやしない。


道場を建てようとすると,お金が必要になる。
そうなると,下げたくもない頭を我慢して下げなければならないし,教えたくない人にも我慢して教えなければならない。


道場を建てたら建てたで,維持費がかかる。
そうなると,門下生をどうにか繋ぎ止めなくてはならなくなる。毎月の指導料がないと,電気代や水道代,電話代や固定資産税が賄えなくなるのだ。それこそ,門下生に媚を売るような事すら必要になるだろう。


傘下の道場を立上げ,育てた門下生をそこへ送り込む。
門下生は稽古しに来たはずなのに,組織運営に駆り出される。
うまく行っていればそれでいいかも知れないが,生徒が集まらない,生徒が辞めてしまったなどと言われ,責任を問われたりしたら,その門下生は気持ちが離れてしまうだろう。下手すると大好きだった合気道すら辞めてしまうかも知れない。


門下生を集めようと宣伝すると,望まぬ客も訪れるようになる。
「曲者」(色々な武道や流派を,どれも中途半端にかじってきた人)や
「流れ」(どこでも相手にされなくて,色々な道場を転々とした挙句に流れ着く人)
も訪れる。
そういった連中が,他の門下生の足を引っ張り始める。

だが追い出せない。そういう門下生に限って熱心に通い,多くの指導料を納めてくれるからだ。


どうだろうか。


こうなると,「道場長」に求められる能力はもはや「経営」や「政治」の能力である。

それは「武道家」としての能力とは全く別のものではないだろうか?


以下に,先人の言葉を引用しよう。


----------------------------------------------------------------------


「宗教組織や組織的な活動によって真理に到達することは不可能である。自分は追随者は望まない。永遠を見つめ、真に生き、何の束縛も受けない自由な人間がいてくれれば充分である」
「真理は道なき道であり、いかなる組織体とも無縁である」


ジッドゥ・クリシュナムルティ(1895~1986年) インド生まれの宗教的哲人


----------------------------------------------------------------------


 緒家の庇護を受け,援助を受けるためには,自分自身と門人たちを鍛える事に劣らぬ精力をもって,緒家へはたらきかけねばならぬ。
 世辞も言わねばならぬし,汚濁のふるまいもあえて仕てのけなくては,大金を得ることはできぬ。
 金がなければ,道場の拡張はのぞめない。
「やってやれぬことはなかったが・・・どうも,日々道場へ出て,おもいきり稽古をせぬことには,生きている甲斐がなかった。おのれの芸へ打ち込めば打ち込むほど,名利とは遠くなる。ま,たとえば,わしが,世の中を巧みに泳ぎまわり,わが道場を押しひろげたとする。そうなれば,また,その大きく広がった道場を持ちこたえるために,芸をそっちのけにして世の中を泳いでまわらねばならぬ。そうしたら,十年や二十年は,またたく間にすぎてあしまい,あっとおもうたときは,わしの剣術がつかいものにならなくなっていよう。よほどに強い奴があらわれたりして,勝負をいどまれたとき,なまくらになったわしの体も,手足もいうことをきいてはくれぬというわけじゃ。これでは何のために道場をひろげたのか,わけがわからなくなってしまう。
 いっそ,金がほしいのなら,剣術にかぎらず,別の商売をしたほうが,どれだけましなことかと・・・まあ,そう考えたわけさ。
 いずれにせよ,わしは生得,剣術がすきだったのだ。そこで,立身出世のほうはあきらめたのじゃ。」


「剣客商売7 隠れ蓑」 池波正太郎 著 新潮文庫 より引用 


----------------------------------------------------------------------


「組織の中間にいる人達は,それに相応しくない人達がほとんどじゃないですか」


テレビ朝日「オーラの泉」に出演した際の,丸山弁護士の言葉。


----------------------------------------------------------------------


「でもね,俺の経験からすると,あれもこれも並習する人は,見えない技術の世界,つまり,神気や内気の技術の世界が分からない人だね。目に見える技術はすぐに行き詰るからね。どうしても体格とパワーの壁を越えられないから。それで,他の門派に手を出す,行き詰る,また他に行く,こういう悪循環だね。」


「【青春拳法開眼小説】カンフーガール」八神かおり 著 文芸社 より引用


----------------------------------------------------------------------


もちろん,組織作りを行ったからと言って上記のようになる道場長ばかりではない。組織が大きくなっても真摯に技の研鑽に取り組む尊敬すべき道場長もまた,存在するのである。


・・・


内田さん宅に到着。


例年通り,直会,二次会に参加した後,そのまま直帰するため,荷物は持って出かける。


なので荷物を整理する。


「内田さん,荷物にはまだ若干の空きがございます」


今年も図々しくおねだりする。


「毎日新聞でいいかな?」


ハハハと笑う。


これも毎年恒例。


「鈴木,焼酎持ってけ」


内田さんが焼酎を荷物に詰めてくれる。


その気遣いが嬉しい。


ありがたく頂戴し,直会会場へ向かったのであった・・・。


・・・つづく。