・・・つづき。
そして合同稽古当日。
ノロノロと起き上がる。頭が痛い。
これも毎年恒例。
もう1本のマグロを解体し,刺身と骨はだきを作っておく。
今度は身を無駄にする事無く,上手に刺身を作ることが出来た。
内田さん起床。
朝食は,昨夜の鍋の残り汁で作った内田さん特製のおじや。
疲れた胃にスッと入り込む。
これも毎年恒例。
坂谷さんご一行が到着。
学生がゾロゾロ。
次々と内田さんの二教を食らい,悲鳴を上げながら下に落ちる学生達。
これも毎年恒例・・・になるのだろう。
合同稽古へ移動開始。
行きの車中の,助手席は私。
これも毎年恒例。
車の中で,今年1年あった事を話す。
「師匠」と仰いでいた人物の醜態を目の当たりにし,叱り飛ばした事,その後の凋落ぶりを見て残念に思っている事,大鉈を振るって組織改革を行った事,等など。
「また同じ事を繰り返すぜ。
そういう奴はな,懲りねぇんだよ。
どこへ行ってもな,何をやってもな,
また同じ事を繰り返すんだ。」
内田さんの答えを「そのと~り」と頷きながら聞いた。
どんな話題でも「なるほど・・・」と思わせる答えが返って来る。
人の3倍は人生経験を積んでいるのか,もしくは人の3倍の密度で生きているのだろう。
・・・
会場到着。
会場の外まで,気合の声が聞こえてくる。
もう中では「祭」が始まっているのだ。
御輿はない。
半被もない。
だが腕をグッと差し出せば,
「お願いしま~す」と掴んでくる。
それを気合を入れて投げ飛ばす。
そういう「祭」なのだ。
祭へ飛び込む。
若い力,ヤングパワーで次々と掴みに来る。
「流石は内田さんのお弟子さんだな~。」
「掴みが強いわ~。」
そう思いつつ,投げ飛ばす。
中には何度も掴みに来てくれる学生さんも。
そして合同稽古開始。
「パン!パン!」
100名超の合気道家が織りなすニ礼ニ拍手が,毎年キッチリと揃う。
感心を通り越して感動を覚える。
早めに顔を上げ,内田さんに視線を送る。
今,年が明けた。
新年最初の技を食らうのは,他の誰でもない,私だ。
「鈴木!」
「はいっ」
飛び出して行って,内田さんの腕を掴む。
右,続いて左。
スパッと気持ちよく体の変更を決められる。
「はいどーぞ」
「お願いしまーす」
その瞬間から,怒涛の氣合いが道場一面に響き渡る。
「あァッ!」
「ィエイ!」
「ヤーッ!」
後藤さんと目が合う。
「明けましておめでとうございます」
「今年もひとつ,ご贔屓に」
「わははは」
技の合間に,ナニワの商人よろしく挨拶を交わす。
そして諸手取り呼吸法。
この技を食らうのは,坂谷さんしかいない。
代役はいない。坂谷さんでなければダメなのだ。
その後は諸手祭。
諸手取り呼吸法の氣の流れ。
「次々と掛かれ~」
内田さんの指示が飛ぶ。
次々と掛からなければならない。
「者ども,出あえ出あえぃ」
「おぉーっ」
時代劇よろしく吼える。
鼓舞する。
次々と掛かる。
絶妙のタイミングで綺麗に投げが決まったり,
慌てて飛び出して目前でコケたり。
内田さんが笑っている。
あっという間の1時間。
ニ礼ニ拍手がキッチリと揃い,新年を迎える祭が無事終了した。
しかしその後も,祭は続く。
祭で火照った身体を冷やしたくないのかもしれない。
恒例となったポージング。
道場の真ん中に歩み出て,グッと腕を出す。
「オッシャー」と吼える。
たちまち諸手で掴まれる。
投げ飛ばす。
掴まれる。
投げ飛ばす。
また掴まれる。
また投げ飛ばす。
10人以上投げて,一瞬波が引いた。
フッと氣を抜いた刹那,「オーッ!」と坂谷さんが掴みに来た。
「オーッ!」と応え,腕を出す。
手を抜いたら失礼だ。
凄まじい圧を感じつつ,どうにか技に入り,投げる。
投げの途中も圧が途切れない。
明らかに去年の坂谷さんよりも強くなっている。
体制が崩れつつもどうにか投げる。
坂谷さんの腕を掴む。
思いっきり圧をかける。
去年の私ではない。
だが坂谷さんも去年の坂谷さんではない。
技に入られる。
崩される。
ヤバい,身体が泳いだ。
飛ぶしかない。
「ィエィ!」
投げが綺麗に決まり,大きく飛ばされる。
すかさず坂谷さんがポージング。
「オーッ」
歓声が上がる。
「美味しいとこ取られた~」
と思いつつ,汗まみれの顔で互いに頭を下げた。
ボクサーは試合後,互いを「拳友」と呼び,称え合うという。
合気道家は互いを「道友」と呼んで称え合う。
我々はまさに「道友」なのだ。
大満足のまま,帰りの車に乗り込んだのであった・・・。
・・・つづく。