・・・つづき
講義は順調に進んだ。
試験問題の解答解説だけではない。
その技術的背景も含めて講義する。
自作の演習問題にも挑戦してもらう。
現場のSEだからできる,コツや失敗談も織り交ぜる。
私が「こういう講義をして欲しかった」と思う講義をしているのだから,技術者としてはつい聞き入ってしまうのだろう。
講義中はできるだけ合宿の事は考えないようにした。
気持ちがいわきに飛んでしまっては,受講生の方々に対し失礼である。
講義終了後も,できるだけ質問を受け付ける。
熱心な受講生を残しては出発できない。
現場での開発経験もないのに,試験に合格しただけで講師をしている人もいるという。
お客さんのために一行でもコーディングした事のない人が,何故講師として受講生の前で偉そうに技術を語れるのか,私には全く理解できない。
また,自分の講義が終わったらさっさと帰ってしまう講師もいるという。
本業をおろそかにするとは,講師としての自覚がないのだろう。
そんな講師にだけはなりたくないという思いがある。
ようやく受講生が全員帰宅された。
楽な服装に着替えてバス停に向かう。
気持ちがすっかり切替わり,心がいわきに飛ぶ。
丸一日立ちっぱなし,しゃべりっぱなしの仕事。
膝が痛い。自分の体重を感じる。
昨夜は遅くまで講義の準備をしていた。
バスに揺られると,一気に眠気が襲ってくる。
目を閉じる。
次に目を開けたら,もういわきだった。
ようやくいわき合宿の始まりである。
・・・つづく。