暮れも押し迫ったある日のこと。
お客さんから一本の電話が。16:30にオイル交換のため入庫との事。
当日は3級ガソリンエンジン基礎の講習会があり,17時には工場を出なくてはならない。
しかし16:30を過ぎてもお客さんが来ない。渋滞か何かに引っかかったのだろう。焦りを覚えつつも待つ。
オイル交換の手順はすっかり頭に入っている。今回はエンジンオイルのみ交換。所要時間は長くても約10分だろう。
ようやく入庫したのは16:40。大急ぎでオイル交換を終え,お客さんを送り出し,さて急いで出かけるかーと思ったその時,
「あーちょっと待ってけさい」
帰ろうとするお客さんを,社長が引き止めた。
見れば,お客さんの車が止まっていた位置にオイルが点々と落ちている。社長はこれを見逃さなかった。
オイルはエンジン下部のドレンプラグを外して抜き取り,エンジン上部のオイル給油口から給油する。
もちろん,ドレンプラグを閉めた事は確認済。ではどこから漏れたのか?
再びお客さんの車をジャッキアップ。社長が下に潜ると,ほどなくして原因が判明した。
オイルエレメント(エンジンオイルのフィルタ)が緩んでいて,そこから点々と漏れていたのである。
何という事か!普段なら絶対に見逃さないであろうオイル漏れに,全く気づかなかったのである。
原因はオイルエレメントの劣化。オイルエレメントを交換し,漏れたオイルはスチームで丁寧に洗浄の後,お客さんに引き渡した。
「やるべき事以上の気配りをする事」
「お客さんを引き止める勇気を持つこと」
講習会には遅刻したが,遅刻を補って余りある程の貴重な教訓を学ぶ事ができた。