今回完成したコンパチブル・アンプですが、出力管のフィラメント電圧と、バイアス抵抗値を切り替えるだけで、挿し替え出来るばかりでなく、前段のドライブ管についても同じピン接続の相当管、類似管、あるいは一部の特性が似ている球が挿し替え出来ます。ご参考までに前段ドライブ管の挿し替えによる動作データーを末尾に記しておきます。
また、整流管も何種類かそのまま挿し替えができます。更に整流管は挿し替える出力管によって見た目のバランスだったり、B電圧の微調整をすることができます。いわば今回のシングル・アンプは実験用のテスト・アンプとしても使えそうです。
なお、使用した出力トランスU-808は、古いタイプのものですが、真空管アンプらしい音をよく表現できるトランスだと思います。昔、(昭和50年ころ?)に購入したもので、当時は1個6,000円位だったと思います。
---- 試聴結果(感想)----
今回の各出力管での試聴結果ですが、駄目耳なのであまり書きたくないのですが・・どの出力管でも共通して言えるのは、芯のある輪郭のはっきりとしたエネルギー感があることでしょう。また、ボリュームを上げていってもどこでクリップしているのかが良くわからないくらい「うるささ」をあまり感じません。
今回は古い回路のトランス結合、パラレル・フィード回路によるコンデンサーを通したトランス結合ならば、周波数特性も低域までよく伸び、またドライブ管のプレート抵抗(rp)はあまり気にしなくても回路設計ができると思うのですが、今回のトランス結合は、1次側に電流を流す設計なので、NC-15との相性を考え、このトランスの規格にできるだけ近いrpの適合球を使用するため前段のパラ接続は止めたのです。
なお、前段のドライブ管の違いによる音の差は駄目耳なのでよくわかりませんが、プレートの大きい12BH7-Aが最も音に余裕があるみたいなものを感じます。(ご参考に末尾に手持ちの球での動作実測値を記しておきます)
整流管についての音の違いは、ほとんどわかりません。5U4Gや、5Y3Gなどの直熱管と5AR4(GZ34)、5V4Gなどの傍熱管との音の違いも正直あまりわかりません。マニアの方のブログなどを読むと同じ整流管でもメーカーによって音がああだ、こうだと音の違いを書かれていますが、ただただ「すごい耳の持ち主だな~」と感心するばかりです。
※オシロスコープが壊れてしまったので出力などの測定ができません。表記の出力は真空管規格表を参考にした推定値です。
■45(整流管5U4G)
整流管に5U4Gを使用した場合の45の動作は前回報告のとおり、規格表の動作例とほとんど同じ動作となっています。
Ⅰp(プレート電流):36.7mA
Eg(グリッド電圧):-55V (Rk:1.5KΩ)
RL:5KΩ 出力:約2W
しかし、5U4Gは45より背が高いので見た目のバランスにはSTタイプの5Y3G(5Y3-GTのG管)が合いますが、B電圧は少し低くなります。聴感上はあまり変わりません。
整流管に5Y3Gを使用した場合の45の動作は下記のとおりです。
45の規格表でのプレート特性曲線からみた動作点(バイアス)もほぼピッタリになっています。(古い球なので長寿命化のためにもこの動作がおすすめかも・・)
Ⅰp:34.7mA
Eg:-52V (Rk:1.5KΩ)
RL:5KΩ 出力:約1.8W
5Y3Gを挿した時の写真を撮ってみました。45との見た目のバランスも良いとおもいます。因みに45はフィルコ製、整流管はレイセオンです。ドライブ管ですが、45はバイアスが深いのでμの高い12AT7(6201)や、5965が良いかもしれませんが、今回はμ=40の12R-LL3(NEC製)を使用しました。12AV7も良いと思います。(12R-LL3と、12AV7はあまり見かけない球だと思いますが・・)
音の感想ですが、クラシックの交響曲などフルオーケストラの音楽を聴くのには、重低音など多少パワー不足と思うかもしれませんが、能率の高いスピーカーなら全く問題はありません。クセのない芯のある音で、輪郭もシャープで特に中域がきれいです。クラシックだと独唱曲など人の声が心地よく、「タチツテトやサシスセソ」などの子音に金属的な鋭さや、摩擦音は感じられないまろやかさもあります。45は素晴らしい名球だと思います。
■2A3(整流管5U4G)
2A3の場合、規格表の動作例とほとんど同じ動作となっています。
Ⅰp:59.3mA
Eg:-44.5V (Rk:750Ω)
RL:2.5KΩ
出力:約3.5W
※整流管に5R4を使用すると少しB電圧が下がりますが、聴感上はあまり変わりません。
2A3はRCA、ドライブには東芝製の12BH7-Aを使用してみました。
2A3はマニアの中には音がぼける・・と、評価される方もおられますが、このトランス結合では、ぼけた音は感じられません。
低域から高域までバランスのとれた臨場感のある音と言っていいでしょう。
ドライブ管との相性ですが、μは低いのですが、12BH7-Aが他の球よりプレートが大きいせいか?少し音に深みが加わるように感じます。クラシックだとピアノのソロなどが良く合います。ピアノ・ソナタなどを聴いていると眼の前で弾いているようです。(ちょっとオーバーかな?)音楽のジャンルは選びませんが、クラシック音楽が最も合う気がします。
■300B(整流管5AR4)
整流管に5U4Gを挿した場合には、この回路だと面白いことに2A3とほとんど同じ動作になります。
今回は、整流管に傍熱管の5AR4(GZ34)を挿してみました。この5AR4は東芝製のゴールデン・シリーズのもので袴が金属製となっています。この球は、アンプつくりの仲間で「常陸管球の会」の今は亡きKIYOさんから頂いたものです。
300BにはウエスタンのWE300B、ドライブには12AU7(テレフンケン製ECC82)を使用してみました。
整流管に5AR4を使用した場合の300Bの動作は下記のとおりです。
300Bの規格表でのプレート特性曲線からみた動作点(バイアス)もほぼピッタリになっています。
Ep:245.5V (310V-48V)
Ⅰp:64mA
Eg:-48V
RL:2.5KΩ 出力:約4W位
※整流管は5V4Gや、CV378、WE274-Bなどもそのまま挿し替えできます。
(WE274-Bは持っていませんが・・・)
WE300Bの音ですが、トランス結合で、比較的狭帯域だと思うのですが、低域から高域まで非常にバランスが良く、情報量がとても多い感じで音に艶やかさがあります。臨場感やエネルギーも文句なし! 聴く音楽のジャンルは、クラシックでもジャズでも何にでも相性が良いでしょう。
300Bとしては低電圧での動作ですが、不満はまったくありません。450V位での定格いっぱいの動作例がありますが、そこまで必要なのだろうか、5V/1.2Aのフィラメント規格でプレート損失40W!・・信じられない!
このアンプ回路でWE300Bアンプというと、WE300Bマニアの方から笑われそうですが、この程度の動作でも十分にWE300Bの良さは出ていると思います。
前段ドライブ管の挿し替えによる動作データー (ご参考)
現在、手元には同じピン接続の相当管、類似管、あるいは一部の特性が似ている真空管で、そのまま挿し替え出来そうな球が結構あります。かなりラフな使い方で真空管に詳しい方からクレームがきそうですが、挿し替えた場合のEp:プレート電圧、Ⅰp:プレート電流、Eg:グリッド電圧(バイアス)の実測値(動作)は下記のとおりでした。(メーカー等により多少の違いはあると思いますが・・)
※出力管は45、整流管5U4G使用の場合の実測値です。
(Rkが1KΩなので電流の計算が簡単!)
・12AU7/ECC82 (Ep:140V、Ip:4.8mA、Eg:-4.8V)
・5814-A (Ep:137V、Ip:4.8mA、Eg:-4.8V)
・5963 (5814-Aと同じ)
・12BH7-A (Ep:129V、Ip:5.6mA、Eg:-5.6V)
・12R-LL3 (Ep:165V、Ip:3.9mA、Eg:-3.9V)
・12AV7 (Ep:174V、Ip:4.8mA、Eg:-4.8V)
・5965 (Ep:176V、Ip:3.8mA、Eg:-3.8V)
・12AT7(6201) (Ep:202V、Ip:3.0mA、Eg:-3.0V)
なお、同じピン接続でも12AX7は、rpが高すぎて挿し替え出来ません。
いずれの動作でも最大プレート損失はオーバーしていません。これらを挿し替えた場合の音の違いですが、駄目耳なので変化はあまり感じません。しかし前述のようにプレートの大きい12BH7-Aが最も音に余裕があるというか、力強さみたいなものを感じます。ただし、増幅率(μ)は、上記の球の中では最も低いので入力感度は低くなります。(オシロスコープが壊れてしまったので詳細な入出力特性はわかりません) しかし、プリ・アンプ(コントロール・アンプ)を使用するので、入力感度に問題はありません。高い感度を求めるなら12AT7(6201)が使用できます。
このコンパチブル・アンプの回路図はこちらです。
↓
45/2A3/300Bのコンパチブル・トランス結合シングル・アンプの製作④ / 前段回路の変更
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。