はじめに (シューベルトのミサ曲について)

 今回紹介する曲は、シューベルトの「ミサ曲第6番変ホ長調D.950」です。

シューベルトのミサ曲と言うと、第1番から第6番までのラテン語で作曲された6曲と、ドイツ語のミサの「奉献祭用の声楽曲と主の祈り(通称:ドイツ・ミサ曲D872)」があります。

ドイツ・ミサ曲については以前、このブログでも紹介しましたが、讃美歌集に近い形式で短い旋律が1番、2番、3番のように繰り返される曲で、弦を除いた管楽器と、ティンパニ、それとオルガンと合唱のみで演奏されます。なぜ吹奏楽なのかはわかりません。 なお、この曲についての過去の投稿記事は末尾記載のアドレスから見てください。

 

 シューベルトのミサ曲の特徴ですが、古典的なミサの形式や言葉よりも、メロディーを優先させた作品と言ってよいかもしれません。中には通常文の一部をカットした曲もあります。

ラテン語の6曲のミサ曲のうち、1番から4番まではシューベルトが17歳から19歳までに作曲されたもので、5番、6番が晩年に作曲されています。10歳代に書かれた4曲は、宗教曲としての深さは浅いのですがシューベルトらしい美しい旋律が魅力です。

 その中でも特にHIROちゃんは、一般のアマチュア合唱団で全曲を歌ったこともある、第2番ト長調が好きな曲となっています。

 晩年の第5番、第6番は、それまでの4曲とは少し違っています。第5番変イ長調は、素朴で清冽さもみられますが、同じころに作曲されたベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」の影響からか、手の込んだ大胆な曲となっています。そのため、作曲当時は受け入れられず、シューベルトにとっては失敗作だったようです。

 

 さて、「第6番変ホ長調」ですが、シューベルトが亡くなる年に作曲された最後のミサ曲で、第5番の大胆さとは異なり、伝統的な様式に従って作曲されています。

このミサ曲は独唱部分が少なく、ほとんどが合唱ミサ曲ですが、「クレド」の中間部( Et  incarnatus  est )で歌われるテノール2人による二重唱からの部分は、たとえようがないほど美しい旋律となっています。この曲の中では最も美しいところでしょう。

 

・・・ 「ミサ曲第6番変ホ長調」のライブラリー ・・・

この曲は結構有名な曲なので多くの指揮者が録音していますが、HIROちゃんの架蔵音源はLPとCDで次の6枚です。簡単に紹介します。

 

エーリッヒ・ラインスドルフ指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベルリン聖ヘドウィッヒ教会合唱団

ピラール・ローレンガー(S)、ベティー・アレン(A)、フリッツ・ヴンダーリッヒ(T)

マンフレッド・シュミット(T)、ヨーゼフ・グラインドル(B) ※LPレコード

 

 

 この曲を初めて購入したLPレコードです。全体的にどちらかと言うと穏やかで自然、清潔な演奏とでもいうのでしょうか・・・。ベルリン・フィルとベルリン聖ヘドウィッヒ教会合唱団が質を更に高めています。この演奏のもう一つの特徴は、「クレド」の中間部で歌われるテノール2人による二重唱で、HIROちゃんの大好きなフリッツ・ヴンダーリッヒの素晴らしい美声が聴けることでしょう。

 

カール・ベーム指揮/ウィーン・ホーフムジークカペレ/ウィーン少年合唱団

ペーター・シュライヤー(T)、ヴェルナー・クレン(T)、ヴァルター・ベリー(B)、他

※1976年ウィーン宮廷礼拝堂での収録映像(DVD)

 

 

 ニホンモニター(株)から発売されたDVDで、映像のため、どうしてもベームの指揮を注視することが多くなるのですが、この演奏の特徴は何と言っても女声合唱部分を少年合唱としていることでしょう。また、ソプラノとアルトの独唱者もウィーン少年合唱団の団員が歌っています。全体的に透明感があり礼拝堂でのミサの雰囲気もあります。

また、「クレド」でのテノール2人による二重唱には聴き惚れてしまうほど美しく、ここでのボーイ・ソプラノも素晴らしいと思いました。

 「ベネディクトゥス」でのアルト・ソロの少年の声がやや弱いのがチョットだけ残念か・・・

なお、ウィーン・ホーフムジークカペレという楽団は多分、ウィーン・フィルのメンバー?による少人数の楽団名だと思うのですが、よくわかりません。弦が美しい音です。

内面性を少し抑えたような感じですが、全体的に力強く抑揚のある表現の演奏です。

 

 

ヴォルフガンク・サヴァリッシュ指揮/シュターツカペレ・ドレスデン

ライプツィッヒ放送合唱団、ヘレン・ドナート(S)、インゲボルク・シュプリンガー(A)

ペーター・シュライヤー(T)、ハンス=ヨハヒム・ロッチェ(T)、テオ・アダム(B)

 

 シューベルトのミサ曲全曲など宗教合唱曲と、世俗的合唱曲集を収めた11枚組BOXの中の1枚。

細やかな表現と、荘厳な雰囲気が実に素晴らしい演奏。独唱陣の豪華さと、合唱の見事さで、シューベルトの美しい旋律が堪能できます。なお、このBOXの他の「ドイツ・ミサ曲」や、「世俗合唱曲集」も文句なし。素晴らしい。

 

 

カルロ・マリア・ジュリーニ指揮/バイエルン放送交響楽団&合唱団

ルート・ツィーザク(S)、ヤルト・ヴァン・ネス(A)

ヘルベルト・リッペル(T)、ウォルフガング・ビュンテン(T)、アンドレアス・シュミット(B)

 

 

 1995年 4月24-28日 ヘルクレスザール・ミュンヘンでのライヴで、ジュリーニ/バイエルン放送交響楽団によるシューベルト録音シリーズの1枚。

崇高な祈りを感じさせる細やかな合唱の表現が見事な演奏です。遅めのテンポですが心が洗われます。

 

ヘルムート・リリング指揮/バッハ・コレギウム・シュトゥットガルト

ゲーヒンガー・カントレイ・シュトゥットガルト、  他

 

 

 ドイツ・ヘンスラー原盤でブリリアント・レーベルから発売されたシューベルトのミサ曲全集6枚組BOXの中の1枚です。

バッハ・コレギウム・シュトゥットガルトは、合唱指揮者として知られるヘルムート・リリングの指揮するゲーヒンガー・カントレイ(聖歌隊)と共演するために、リリングが設立した常設ではない、いわば寄せ集めのオーケストラです。

聴いた感じは小編成の合唱団とオーケストラのようですが、オーケストラの管楽器の音が時に、やや大きいところが気になると言えば気になります。合唱指揮者らしく合唱に重点を置いた演奏でしょうか、合唱の録音も鮮明。各声部のバランスがとれた表現が素晴らしい演奏です。

 

ゲオルグ・ロベフ指揮/ソフィア・フィルハーモニック・オーケストラ

ブルガリア国立合唱団、 他

 

 

 シューベルトのミサ曲全集5枚組の中の1枚。マルクス・クリード指揮/リアス室内合唱団&ベルリン放送交響楽団による「ドイツ・ミサ曲」が入っていたので、これが聴きたくて購入したBOXです。この「ドイツ・ミサ曲」は、非常に良い演奏なのですが、ミサ曲の第1~6番の演奏はイマイチです。ステレオ録音ですが音もイマイチのためか合唱も冴えませんし、ソリストもイマイチで音程が若干不安定なところも・・・他のミサ曲のソリスト達が入れ替わり立ち代わりでメンバーが変わっています。おそらく合唱団の団員でしょう?

第6番ですが、この曲の総譜ではどうなっているかわかりませんが、「グローリア」や、「サンクトゥス」など随所でオルガンが使われています。しかし、「グローリア」でのオルガンの音がデカすぎて耳障りに感じます。

 

 今回の投稿は架蔵している6種類だけでしたが、ゲオルグ・ロベフ指揮/ソフィア・フィルハーモニック・オーケストラ&ブルガリア国立合唱団の演奏を除けば、ラインスドルフ、ベーム、ジュリーニ、サヴァリッシュ、リリングの5種類は、すべてお薦めで良いと思います。

 

この「第6番変ホ長調」は、アバドや、クーベリック、アーノンクールなども録音しています。機会があれば、これらの演奏も聴いてみたいところです・・・

アーノンクールは、とんでもない奇抜な演奏だろうか・・?

 

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シューベルトの「ドイツ・ミサ」 

 

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。 (^.^)/~~~