本編に入る前に告知をさせてください。

今週末、9月5日(日)夜11:00から加藤ひろあきがNHKBS1の番組「市民が見た世界のコロナショック7月〜8月:BS1スペシャル」に出演致します!

 

 

タイトルにある通り、この番組は各国に住む人がそれぞれの視点でコロナと向き合っている様子を追いかけたドキュメンタリーになります。

実はここ一ヶ月弱、インドネシアでの生活の様子、特に新型コロナウイルスにまつわる出来事や行動、考え方、そしてワクチン接種の様子などをこの番組に密着取材してもらっていました。

密着取材といってもNHK BS1の撮影クルーがこちらに来たりはできないので、基本的には自分で撮影を行いながら、その時々で心境をモノローグで語ったり、特には妻のアリーナと話したりということを一ヶ月弱続けていました。

上記の特設サイトでは「予告編」を観ることもできますので、是非です。

 

 

海外に住む日本人である僕が新型コロナウイルスとどう向き合ってきたのかをなるべくリアルにお届けしたつもりです。是非、ご覧頂ければ幸いです。

 

 

さて、今日はまた新型コロナウイルスを取り巻くインドネシアの状況をお伝えしたいと思います。「PPMM:公衆活動制限」が9月6日まで延長されているインドネシアですが、ジャカルタに関してはかなり数値が改善してきており、ここから先は段階的に行動規制を解除していく方向で動いています。

 

毎週行われる活動制限の効果測定で「レベル」の調整が行われているわけですが、じゃカルタ、バンドゥン、スラバヤ、スマランというジャワ島の比較的大きな都市では「実験的規制緩和」が行われており、ここでうまくいった実験結果がやがて他の地域にも適応されていくという流れが続いています。

 

 

上記のリンクの記事の中でも触れているように、上述の4都市については路面店、モール内の店問わず、飲食店での飲食が解禁になっています。

キャパシティーの制限はあるものの、店内飲食が解禁されたことは店側にとっても非常に希望の持てる方針だと思います。

これがジャワ島内の他の地域、もしくはジャワ島外へも今後は拡大されていくと考えられています。

 

その際にポイントになってくるのが「ワクチン接種」です。

これまでもこのブログ内で書いているように、インドネシアは基本的に「ワクチン接種をしていないと何もできないし、どこにも行けませんよ」という方針です。

いわゆる「ワクチンパスポート」っちゅうやつですね。

少なくともこのインドネシアで生きていくのであれば、これはもう避けようのない事実です。「打たない」という選択肢がほとんど残されていないのは個人的にはずっと疑問を持っている点ではありますが、これがこの国の現実なので仕方ないです。

 

その「ワクチン接種」に関して、インドネシア国内で格差がかなりでてきているよというのが今日紹介するニュース記事のテーマです。

 

 

まずは、現在インドネシア国内で最もワクチン接種率の少ない州が「ランプン」になります。「ランプン」はスマトラ島の東端にあり、ジャカルタからでも車ごとフェリーに乗って移動できるような場所です。

 

第一回目の接種を終えている人が13.12%、第二回目の接種を終えている人は7.99%と統計が出ています。ちなみにジャカルタの接種率は第一回目接種が118.82%、第二回目接種が71.44%となっています。

 

どうして、こんなにも差が開いてしまうのか?

これは別にランプン州がワクチン接種をサボっているとかでは全くなく、中央政府からワクチンが配られてきていないからなんですね。

 

政府の発表によると、ワクチン接種がなかなか進んでいない地域として「ランプン」「北マルク」「西スマトラ」「西カリマンタン」「パプア」の名が挙がっています。

これらの地域の首長たちは以前からワクチンのストック不足が深刻であることを政府に訴えており、ワクチンがスムーズに規定数提供されないため第一回目の接種も人数の制限を設けて躊躇せざるを得ない状況だというのです。

 

 

北スマトラメダン市の市長もジョコウィ大統領に対して、ワクチン接種を加速させる方針は構わないが、このようなワクチンのストック状況では第一回目の接種は終えられたとしても、第二回目の接種は行えない状況で、スピードがまったく上がらないと苦言を呈しています。

 

「政府のワクチン接種の方針がそもそも間違っている」と批判しているのが、以下の記事です。メディアソースは「tirto.id」です。

 

 

この記事はまず、8月7日の東ヌサトゥンガラでの出来事からスタートしています。

 

マルリンダさん(仮)がワクチン接種会場に朝の8時に到着、そこにはすでにざっと400人ほどの人がワクチン接種を待っている。マルリンダさんは本来7月27日か28日に第二回目の接種を受けるよう第一回目の接種の際に指示を受けていた(第一回目の接種6月29日)が、ワクチン接種の情報があまりにも少なく、さらにワクチンのストック不足も重なってこの日まで接種が延期されていたとのこと。

 

ワクチン接種ができる保健所のような施設が開くことがわかり、昼12時の接種予約を取り付けたものの、午前11時にはすでにストックが底をつき、口論になったり、怒って帰る人が続出。結局マルリンダさんもワクチン接種を受けることが出来ず、8時から並んだこの日も結果的に無駄足になりました。

 

マルリンダさんは、ワクチン接種の情報は非常に限られていて、運良く情報が受け取れたとしても限定100人だけだったりでなかなか接種できない。中には何時間も歩いて接種会場に来たり、移動費も馬鹿にならない状態でやってきて結局打てませんでしたとなることが多い。ワクチン接種はだれもが平等に受けられる状態にないと主張しています。

 

この記事の中では「Warga Rentan」というカテゴリーが話題になっており、「Rentan」を辞書で調べると「病気などに感染しやすい、抵抗力がない」と出てきます。(最新インドネシア語小辞典:佐々木重次編)

 

要は「Warga Rentan:新型コロナウイルスに感染する可能性の高い人」ということになります。この「Warga Rentan」にワクチン接種が行き届いていないことが問題だとされています。

そもそも、政府はこの「Warga Rentan」に当たる人たちの基準を明示しないままこの用語を使用していて、記事はその点も問題提起を行っています。

 

WHO:世界保健機関はこのいわゆる「Warga Rentan」に当たる人たちの規定を設けていて、その中には少数民族、ジェンダーマイノリティー、身体障害者、貧困層、家を持たない人、衛生環境が劣悪で居住区がが密集している人、移民や低賃金労働者、紛争下にいる人、などをその対象としています。

 

インドネシアはこのWHOの規定を参考にしながらも、いわゆるLGBTと呼ばれる「ジェンダーマイノリティー」はこの「Warga Rentan」の中には含まれないと明確に否定しています。

 

 

さらにはWHOが定める優先順位「医療従事者、高齢者、感染する可能性が高い人たち(Warga Rentan)」も参考にはするが、それをそのまま適用はしておらず、政治家・公務員を優先に接種を行いましたが、これも記事の中で批判されています。

優先接種はそこが先じゃないだろう、と。

 

これについては公務員には教師や役所などで不特定多数の人と対面して仕事をしなかればならない方も含まれているので、それらの仕事を止めないためにも優先的に摂取すると言うのは必ずしも間違っているとは言えないのではないかと個人的には思っています。

 

ともあれ、ワクチン接種がインドネシア全土に渡ってスピード感を持って行われているとは到底言えず、今後はこの格差解消とワクチンストック問題を解決していかなければならないでしょう。

記事は「ジャカルタの接種が100%になったとしても、『インドネシアはもう安全だ』などとは絶対に言えない。ジャワ島で接種率が上がってもその人たちが自由に移動できるようになり、ワクチン接種がなかなか進まない地方にウイルスを持ってくることに繋がる」とも警告しています。

 

「ワクチンパスポート」化が進むインドネシアではありますが、現状はまだまだその道のりは長いよということを今日はお伝えしました。

ただ、ことジャカルタに関して言えばかなり進んでいるので、そのギャップ解消が本当に課題ですね。

 

今日の記事も何かしらあなたの役に立っていれば幸いです。

それではあなたにとって、

今日が昨日よりちょっとでもいい日でありますように。

 

ひろ。