2日続けて非常に熱い試合が続いた。しかもこれまであまり主役になることのなかった2人の活躍が決勝点となった事が非常に嬉しかった。
ひとつは9月17日の対ヤクルト戦で、最終回二死1,2塁の場面での門脇誠の劇的なサヨナラヒットである。
これまでこういう場面では必ず代打を出していた原采配には疑問を呈していた。
以前にも触れたが、ピンチの場面で投手を救うファインプレーや勝利に絡む走塁等のここぞという場面で魅せる勝負勘の良さこそが私の注目する門脇の魅力なのである。
その流れを断ち切るかのような交代には毎回辟易していたのだが、ともかくそんな門脇にようやく巡って来たチャンスであり、悔しい想いをぶつける機会ではある。
だがその分余計にプレッシャーのかかる場面であり、散々チャンスの場面で信用してもらえなかった事で自信を無くしているのではないかと心配だったのだ。
それを跳ね除け、ファウルで散々粘った末でのヒットは本当に見事だった。
当たりは勿論良かったが方向は紙一重であり、セカンド山田の横っ跳びはライナーアウトの可能性もあっただけに、門脇の執念とここぞという場面での勝負強さを実感した打席であったのだ。
続いて9月18日のヤクルト戦だ。
前回、前々回とトラブルで先発を飛ばして久々の登板だったグリフィンだが、こちらは苦しいながらも吉川の好プレイにも支えられ、5回まで何とか無得点に抑えた。
途中経過は省くが同点のまま12回裏まで進み、巨人の攻撃で代打の北村拓己の二塁打。
続く岡田は送ることが出来ずやや雲行きが怪しくなったが、ここでも続く2番門脇が執念を見せる。
当たりはボテボテのショートゴロで一時はアウト判定となったが、リクエストで内野安打をもぎ取るのである。
やはりどんな当たりでも全力疾走する重要性を感じる場面であった。
そうして一死1,2塁で打席に立ったのは3番、増田大輝だ。
実は3番は坂本だったのだが、8回の攻撃の際代走として増田と交代しており、そのまま三塁の守備についていたのだ。
増田大輝はまさに縁の下の力持ちという言葉がぴったりとハマる巨人の中堅選手である。
守備では内外野全てのポジションをこなせるユーティリティプレイヤーだ。
以前の話だが大敗して使える投手がいなくなり、野手でありなからマウンドに立った事もある。
一軍の試合で未経験なのは捕手だけという冗談のような経歴の持ち主なのだ。
その万能ぶりから身体能力の高さがうかがえるが、当然のように足も速く一時は代走の切り札としての役割も担っていた。
ただ残念ながら打撃成績が今ひとつだったためにこれ程の凄い選手にも関わらずレギュラーが取れなかったのだ。
私は以前から増田の扱いが不満だった。そして不憫に感じていた。
巨人のどの守備に付いてもレギュラーと遜色ない動きを見せるのに、打てないという理由だけ(それが最も痛いのだが)で定位置につけず何年も控えとしてベンチにいる事が多かったのだ。
どのタイミングでどのポジションで出るのかもわからず、それどころか守備固めなのか代走なのかすらも判らない状況で毎試合準備するのである。
レギュラー争いではなく、便利屋として起用されることが明らかな上、その日試合に出れるかどうかも判らない状況、しかも試合に出れば完璧にこなす事が普通、という結果を求められるのだ。
そのような状況の中で毎試合準備するのは肉体的には勿論、精神的にも相当きつかったのではないかと思う。
特に最近では若手が台頭していたことあり、なかなか出場の機会もなく危機感も感じていたはずだ。
そんな時に巡ってきた増田の打席。
増田には申し訳無いが、いつもならこの巡りと采配にガッカリとした空気が流れたはずである。
というのも坂本の足の不安もあり、終盤塁に出た坂本に代走を出し、そのために打順が乱れて勝てる試合をみすみす逃す場面も何度かあったのだ。
これは本当に申し訳無いが、正直私もこのパターンかと一瞬思ってしまったのである。
だが増田はそんな周りの空気にも負けず、見事に守護神である田口からサヨナラヒットを放つのだ。
しかも職人増田らしく、逆らわず右中間への当たりは流石である。
2試合連続のサヨナラ勝ち、しかも新旧野球職人の活躍による勝利であり、しかも久々に増田が脚光を浴びたのが最高に嬉しかったのである。