4月に逝った方について少々

通夜に向かった時点では、こういうのは心の中にとっておけばと思っていた。

それでも、あまりにも溢れる「優勝チームの引き立て役」という宮地さん像は違うなという思いと、編集サイドも追悼文にポジティブだったこともあり拙文を上げた。

 

 

 

 

故人への思いは、コラムで書いたものが大方なので書き足すものはないが、喪主も含めて関係者とは「本人はきっとグラウンドで死にたいと言ったかな」と話した。そんな事を言い張る大人気の無さも宮地さんの魅力だった。でも、その生涯の長くをラグビーに囲まれ、逝ったのは本望だろう。こんな素敵な生き方って、そうあるもんじゃない。

 

もうあのダミ声が聞けないのは寂しいが、声もお顔もそう忘れるようなもんじゃない。どこかでひょいと声を掛けられそうな気もする。

 

「ジブン、まだ書いとんの? もっとええ記事書かんとあきませんがな」

 

ありがとうの思いしかない宮地さん。

天国からのラグビー観戦楽しんでください。

 

 

 

(本来、SNSで呟く案件が、深夜に書き進める中で伸びてしまったので、やむなくぶろぐの体裁にしています)

 

ふむふむ、2試合で平均得点67.6、同失点12。

アジアでは圧倒的な力の差は、しっかりと証明した。実際のゲームを見ても、失礼ながら旧香港はやはりクラブチームレベルだろう。日本にとっては「ここ」が主戦場ではない、ではいけないという2試合だった。

 

ちなみに、開催地となったカザフスタン随一の都市は、その日本語表記が林立する。元来は「アルマトイ」。カザフ大使館HPでは「アルマティ」となり、イントネーションは「アルマトゥイ」。通信社表記は未だ「アルマトイ」かも知れないが、今回は中継でもなんとなくそう聞こえる「アルマティ」で。イントネーションは「ティ」と「トゥ」の中間なんだよな。

 

実際、今回のメンバーを見ても、経験値の高い選手に新たな力を入れた編成。ワールドカップへ向けた〝新体制〟の始動という位置づけなら、こんなものかという大会でもあった。

 

ピッチ上では、このレベルでプレーする意味があるのかと感じさせた松田凛日がトライだけではなく、アシスト、チャンスメークでも圧倒的な攻撃力を見せた。この人、やはり海外でプレーしたほうがポテンシャルは引き出されるだろうな。その一方で、〝若い力〟ではPR藤殊華がインパクトを残した。まぁ、ほとんどの選手がインパクトを残したのではあるが…。

 

男子日本代表でも強力スクラムで鳴らした久富雄一から、その名は聞いていた。

 

「僕が見た中では、日本で一番スクラム強い子です。なので、1番から3番に転向勧めましたから」

 

女子チームのスポットコーチ経験もある〝ドミ〟さんが力説するのを聞いて、かなり信憑性はあると感じていた。明治大-神戸製鋼でHOとしてプレーした高之(現スティーラーズ・チームマネージャー)を父に持つ。しかし、25歳で選ばれたこのツアー、カザフ戦途中出場で初キャップ、この旧香港戦で初スタメンと遅咲きなのは、相次ぐ怪我も祟ったとドミさんから聞いた。

 

そんな藤さんだったが、「3」を背負ったゲームでは前半終盤のスクラムで、相手トイメンの1番を仰向けにするほどめくり上げる強さを披露。自らトライもマークする〝おみやげ〟も手に入れた。

 

ちなみに、この第2戦も失点は12点だったが、後半の初失点は、CTB古田真菜の得意技でもある最上のジャッカルをオフフィートと判断されたPK速攻から奪われたものだったが、あれは「自立していない」というジャッジが厳しすぎる。正当な判断なら、日本のPKで自陣からエスケープ出来ていただろう。

 

すこしチームを持ち上げたが、特に立ち上がりのプレー精度の低さはかなり首を傾げて観ていた。「立ち上がり」だからミスもあるとも解釈出来るが、「このレベルの相手に、あの精度」とすこし厳し目にみてしまう。ムーヴでのパス繋ぎ、ラインアウトと、すこし溜息が出てしまうプレーもあった。

 

これもカザフ戦後に呟いたが、日本が、もしかしたら男子以上に強みにしなくてはいけないスピードは、このクラスの相手だからOKというレベルだと感じさせられた。というのも、繰り返しになるが、ジャパンが戦わなければいけない相手は、遥かに上のステージにいるからだ。しかも、欧州勢は女子6か国対抗、南半球・北米でもパシフィック4、クラブレベルのスーパーラグビーと、追走する日本より更に充実した強化環境を確保している。

 

W杯、WXV2で勝つには、やはりスピードは武器にするべきだろう。だが、アジアでの戦いを観るとどうだろうか。

 

すっかりお姉さんになった新主将のSH津久井萌(とはいえデビューが早いのでまだ26歳)が、ラックに入ってしまうシーンを散見したが、その多くはブレークダウンに辿り着く選手が、日本が理想とするスピードではまだ十分サポートし切れていない印象だ。松田凛日がタッチ際を駆け抜け、内に切れ込んだプレーも何度も観たが、上位国にスピードでプレッシャーを掛けるためには、その内に切った後のラックに、もっと周到に準備されたサポート選手が駆け付けている状況を用意出来ていなければ難しいだろう。


冒頭の少し乱暴な書き方も、このアルマティの2試合も、相手にカザフや旧香港ではなく、イングランド、ニュージーランド、カナダらをダブらせながら観ると、どうしても粗が目についてしまうものだ。

 

この2試合で感じたのは、このアジア最強トーナメントについては、日本は女子版ジャパンXVやジュニアジャパンで十分だろう。もし、選手やスポンサーへの配慮で「テスト」と扱うならそれもOKだが、実質ここから代表に挑んでゆくセカンドチームでの参戦で十分だと感じながらの観戦だった。理想としては、カザフ行きではなく欧州やオセアニアへのエアチケットが必要だろう。

 

この上位国との格差については、すこし警戒して世界の流れを観る必要があるだろう。敵地でオーストラリアを倒した2022年シーズン辺りをピークに、日本は徐々に世界トップの争いからは後退が続いていると、個人的には感じている。「WXV」というありがたい大会も2シーズンを終えたが、日本は未だ〝ディビジョン2〟であり、よりプロ化を推進するトップネイションズとの格差を埋めるための有力な材料、環境は十分とは言い切れない。

 

その一方で、カザフ戦の後にも少々触れたが、このアジアの2か国の競技力を引っ張り上げるには、日本が手を差し伸べる義務もあるだろう。2度目の〝祭典〟を呼びたいのなら尚更だ。

 

アルマティでの2試合160分。オンラインでの観戦で、頭に残ったのは、更に入ステージでの強化の必要性と、アジアへの眼差し。随分と性格の異なる2つの宿題が残された大会が終わった。

 

 

 

専門外のスクラムについてのおはなし。

 

みちのくへの旅など〝寄り道〟したため、3月に予定していたネタを遅ればせながらアップした。せっかく遅らせたので、4月にも実は北与野にあった〝虎の穴〟を再訪問して、付け足しをしてから編集サイドに最終稿を手渡した。

 

2年前に〝開校〟した後、この教室の存在を知り「おや」と思っていたが、失礼ながら、企画倒れに終わる可能性も考えていた。開校1年以上が過ぎ、運営も出来ているのかという思いもあり、ペコさんに直接連絡。「先ず概要を聞かせて」とお会いしたら、概要のヒアリングがそのまま取材になってしまった。裏を返せば、それほど聞き応えのあるハナシだった。

 

 

 

 

今や堀江翔太や稲垣啓太がスポットを浴びる時代だが、それでもまだまだフロントローの〝市民権〟は十分とは言い難い。誰もに持て囃される時代じゃない。まぁ、それが出来ているのはジョージアだけかも知れないが…。

 

個人的にはフロントローという稼業は、究極的には縁の下の力持ちでいいとは思う。独り歩きするイメージで褒め称えられるのではなく、いかに仕事をやり遂げられたか。その中で、ペコさんが訴える通り、このポジションでも「輝ける場」はあるのは真理でもある。いや、むしろTBやバックロー以上に構造的であり理論的、そこに情緒的な要素が加わるのがフロントローの、そしてスクラムの世界だろう。

 

 

▲ペコさん曰く「昭和の練習ですよ」。その通りのメニューでスクラム師を育てる

 

 

普段は寡黙でシャイな男たちだが、スクラムを組むことにかけては雄弁だ。そして、組み合う瞬時に、両サイドがどう相手より優位に組むのか、個々にはどう首をとるのか、駆け引きと権謀術数を巡らせるフィジカル且つサイコロジカルな勝負を、80分の中で刻々と繰り返す。味わい深い、尚且つ人間臭いポジションだ。

 

今は亡き岡仁志監督を同志社に訪ねると、よくこうこぼしていたのを思い出す。

 

「もう今は、新入生は怖くてスクラムをよう組ませられんわ」

 

高校で1.5mルールーが導入され、中学では実質上ノンコンテスト。そこで、いきなり大学に入って先輩らとフルコンタクトで組み合うのは、当時でも危険なことと認識されていた。幸いなことに、大工大高(現常翔学園)ら全国トップクラスの強豪高校の指導者たちがスクラム練習を怠らないために、まだ組み合う経験を持ちながら大学に進学してくる新入生もいるのが救いだが、多くの高校ではそこまでスクラムを学ばないまま進学してくるのも現実だ。

 

2歩も3歩も引いてみれば、今でも、否今だからこそ更に、テストラグビーでも重要なファクターのスクラムを、大学1年で初めて本格的に組み始めるという現実は、代表強化には大きな疑問符が付く。勿論、安全面、とりわけスクラムの場合は、頚椎を痛める深刻な怪我も間違いなくある中で、ユース世代においそれとハードに組むことを求められないという世の流れもある。

 

 

▲コラム内に登場する南部くん。〝颯2世〟を目指す

 

 

だが、発想を「組ませない」から「安全に組む」という転換が、1.5mルール導入後、ここまで長きに渡り手付かずのまま放置されているのは議論の余地はあるだろう。

 

より安全に、そしてペコさんが唱えるように、よりスクラムを組むことを楽しめる環境をどう作っていくか。これは、未来を担う世代から「いま」の大人たちへ突き付けられた宿題のようなものだ。

 

 

かなり消化試合の様相に転じた日曜日。なので、すこしライトなお話しでのおさらいを。

 

とはいえ、秩父宮のカードは、入替戦回避を賭けた80分。

両チームには重要な1戦ではあったが、土曜日同様に下剋上なしの結果に終わった。

 

相模原にとっては、後半途中で4点差まで迫りながら、詰め切れない悔しい敗戦。だが、元を辿れば勝負のキーでもある立ち上がりに、3連続トライ献上が致命的過ぎた。〝追う側〟であるはずのチームが、何度かのソフト〇ックなタックルから崩されては、もう弁解の余地はない。

 

0-21から覚醒したように攻守に奮闘して、上手く試合を運べば勝てる圏内まで迫れたことは、苦い黒星の中での収穫だ。確定した〝大一番〟での自信に繋げられれば。

 

で、脚光の浴びるものは他の記者諸兄に任せがちではあるが、今回は浴びる方をおさらいしておこう。

 

1週間前の試合会場で、事前にチーム広報からお知らせがあったものだが、相模原戦後に横浜の至宝ファフ・デクラークの退団会見が行われた。

 

「日本での思い出は」「再び日本でプレーする機会は」というありがちな質問は、最初から興味なし。そこらは、諸々の記事に書かれているだろうから、そちらをご覧あそばされて、聞きたかったのは1点だけ。なるべく多くの記者に質問してほしいと思いつつ、こんな質問をファフにぶつけた。

 

「昨秋のスプリングボクス戦をみても、日本は遥かに格差があった。すこしでも近づけるために、4年間経験した日本のラグビーには何が必要なのか。感じるものがあれば教えてください」

 

コメント力の高いファンも、すこし時間を置きながら「う~ん、難しいなぁ」と呟き、こんな話をしてくれた。

 

「インターナショナルのラグビーはフィジカルの強さとセットピースがより大事になる。日本はスキルの高い選手もいるし、いい選手も沢山いて、どのチームもハードワークするけれど、厳しい戦況になると、そういうフィジカルとセットピースのところですこし疲れてしまうイメージがある。そこを改善出来れば、本当に素晴らしいチームになり、接戦が出来ると思うよ」

 

このレベルの選手になると、誰も言葉選びが慎重になるのだが、その中でも明確に「フィジカル」「セットピース」と指摘してくれたことがありがたい。誰でも分かっているような事ではあるが、ファフのような百戦錬磨のボカが指摘することの重みはある。

 

ファンの〝さよならゲーム〟が入替戦にならなかったことが、この日のポジティブファクターではあった。シーズンはクライマックスを迎えようとしている段階だが、その先に、否クライマックス途中からワールドカッププレイヤーが動き出す。

 

ファフの残した日本ラグビーへのヒントを、どう克服していけるか。新たに始まるRNCで7月に当たるイタリア、アイルランド、フランスは、その試金石としては最良の相手だ。7割方固まりつつあるジャパンスコットの中で、さらにどんなインパクトを加えて、戦術を構築していけるか。

 

ファフも今年10月で35歳の齢を迎える中で、会見でもボカを目指す気持ちも語っていた。深緑のジャージーを掴んだとしても、組み合わせ上、日本との対戦が実現するのは最速でも決勝トーナメント準々決勝と、かなり先の朧げな夢ではあるが、この世界屈指の#9が残してくれた金言を桜のジャージーが実現出来れば、2015年の衝撃を再現するような80分になるかも知れない。

 

 

【おまけ】

ファフについて書いたので、もう一つ小噺を。

試合後の囲み取材。横浜のCTB梶村祐介くんに話を聞いた際、最後にこんな冗談ばなしをした。

 

「じゃ、ファフ無き後は金髪ロン毛は梶村くんが継承するということで!」

 

ご本人、笑いながらこう冗談を切り返してくれた。

 

「金髪は無理ですが、来週の最終戦は皆でファフブランドのブリーフでも履いていきますよ」

 

ファフといえば、ワールドカップ制覇の後のロッカーでの南アフリカ国旗のブリーフ姿で注目を浴びたが、話題に乗じてオフィシャル・ブリーフ等を販売する副業にもチャレンジ中だ。ファフが去った後も、ブリーフは日本ラグビー界に残されるか。梶村くんには「じゃあ、日本のブリーフ総代理店でも副業にして頑張って!」と囲み取材を終わらせた。

 

 

 

結論からいうと、土曜日のリーグワンでは〝風〟は吹かなかった。

 

3試合全てが〝トップ6〟生き残りに関わるゲーム。金曜日の下剋上に続く変化を期待したのだが、全て上位チームの勝利に終わったため、戦前の混戦模様が80分後にはプレーオフ進出チーム確定という結末になった。

 

観戦したのは秩父宮でのBL東京(6位)vs静岡BR(8位)。3カードの中でも最も〝勝者が笑う〟一発勝負度の高い試合だったが、リーグ連覇中の6位が力の差を見せた。

 

勝負の肝はブレークダウンに尽きる。

 

ターンオーバー獲得数のスタッツだけを見れば7対6と大差はない。だが、試合が進み、個々の選手の消耗も進む中で、勝者が接点でのファイトで優位に立った。スタッツに残るターンオーバー、そしてジャッカル以外にも、BL東京の接点でのファイトに重圧を受けた静岡がサイドエントリー、オフフィートとミスを繰り返し、数値以上の格差を生んでいた。

 

脳震盪での長期離脱から復帰2戦目のCTB眞野泰地、LOジェイコブ・ピアース、途中出場のFL木戸大士郎もヘッドオンで突っ込むような必死のブレークダウンファイトで気を吐いた。今季が終われば府中を去るリッチー・モウンガの50キャップを称えるにはいい戦いぶりになった。

 

中でもインパクトを残したのはSH高橋昂平。長らく1年後輩の杉山優平の控えとしてベンチスタートを続けてきたが、今季第4節相模原DB戦から「9」を背負ってきた。

 

この1歳差の2人は同じポジションでも明確にキャラクターが異なる。優平がパスワークを軸に攻撃的な9番として筑波大時代から注目を浴びた一方で、昂平は防御とブレークダウンでのファイトというSHらしからぬ強みをみせてきた。その「らしからぬ」プレーが、この日はいつも以上に勝利へのエッセンスになっていた。

 

167㎝、79㎏。典型的な和製SHの規格だが、この日のターンオーバー数はジェイコブと並ぶ両チームトップの3回。15-22とリードされた直後の前半36分は、一度はラックでターンオーバーされたボールに絡んでPKを奪い、その後のWTBジョネ・ナイカブラのトライに繋げた。62分には、自陣22mライン内で3度スクラムを選択した静岡の右展開で、CTBセミ・ラドラドラの突進に、眞野のハードタックルに続くジャッカルで窮地を救った。73分にも、猛反撃を仕掛けた相手に、今度は木戸のタックルとシンクロして再び絵に描いたような3度目のジャッカルを決めた。

 

「FWの後ろに立っているので、絡み易いポジションだと思うし、僕の強みにしている武運。真っ向勝負は最初から分かっていたので、僕らも1週間準備してきた。ここまでちょっと僕らが受けてしまう試合があったので、今日は本当に皆が熱を持っていいディフェンス出来たかな。静岡は1人ひとりいいキャリー出来る選手がいるが、すこし孤立してしまうケースもあったので、僕個人としては狙えるところは狙っていこうと意識していました」

                          

本人はこう両チーム最多のターンオーバー(全てジャッカル)を振り返ったが、先発起用を決めたトッド・ブラックアダーHCはこう評価する。

 

「いままでパスだったりSHとして課題があるかなと思っていた。その中で強みは、今日見せたようにジャッカル。タフに。しんどいところに頭突っ込んでいける選手だが、課題が残っていて去年まで入ったり出たりだったが、シーズンオフは9番を自分のものにするぞという気構えで取り組んできた。課題を克服してチャンスをしっかりと掴んでいる」

 

恩師でもある専修大監督・村田亙は華麗な個人技で日本代表でも不動の9として活躍したが、その華やかさとは正反対の〝武器〟で魅了する。本人は今季「9」を背負い続ける成長をこう振り返る。

 

「僕自身、パス、キックのクオリティーをしっかり見つめ直して、スキルコーチと一緒に取り組んできた。シーズン前の鹿児島合宿あたりで、トディ(ブラックアダーHC)からも『自分らしさを出していったら』と話してもらった。(試合に)出られないときはチームに合わせようという気持ちだったが、自分の強みを出していかないと出られないなと考えて、それが上手く繋がっています」

 

優平もここで「21」に甘んじる選手でも才能でもない。歴史を紐解けば、その村田亙を筆頭に、伊藤護、藤井淳、吉田朋生、現役の小川高廣ら歴代府中の9番は日本代表にも選ばれてきた。この個性の全く異なる2人の9番も、十分にジャパンを狙える圏内だ。昂平、優平の争いの先に、桜の9番も見えてくる。

 

高橋が象徴するこの日の接点ファイトは、主将リーチマイケルがチーム全体に対していいリードをしてきたようだ。前週、勝てばプレーオフ進出にリーチがかかる10位横浜E戦で26-50と大敗。黒星もさることながら、その不安定さに先行きの不透明感を残した。結果的に一騎打ち状態となった静岡戦へ向けては、「ディフェンスもアタックもコリージョンエリアに拘ってやってきた」と振り返るように、相手も身上とするブレークダウン勝負をキーポイントに置いて再始動したが、火曜日のフィジカルなセッションの出来が悪く、スキッパーは練習メニューの〝追試〟を指示。翌日のオフを跨いで、木曜日の練習で再びブレークダウンメニューをハードにやり直して、チームも激しさを取り戻したという。

 

ゲームを見ての印象では、単なる激しさよりも、ダブルタックルや接点でのセカンドマン、サードマンの寄りとサポートも意識、反応で相手を凌いでいた。攻撃権を持っても接点からのボールリサイクルで微妙に精度を欠いた静岡と僅かな差が、トップ6入りとプレーオフ進出失敗という大き過ぎる差に結びついた80分だった。

 

無事PO進出で3連覇への可能性を残した勝者だが、諸手を挙げて喜んでいる状態ではない。静岡が目立っていたものの、イージーにボールを手離すシーンは少なくない。トップ4チームに比べると、この日の2チーム同様「微差」ではあっても、明らかに差がある。その一方で、意識してフィジカルエリアでのバトルで善戦したこと、攻守と左足キックでキーになる眞野、アタックの軸になるCTBロブ・トンプソン、1年ぶりに復帰したWTBジョネ・ナイカブラの見事な回復ぶり、ラインアウトの精度アップなど、勝つための素材は整いつつある。立ち上がりのスコアチャンスなどで、さらにキャリーとチャンスも作れるHOアンドリュー・マカリオを、さらにキャリーとして生かすフェーズを作れれば、戦闘力はさらに上がるだろう。

 

参考までにだが、前半14分のジョネの自らのグラバーキックを好捕してのトライは、今季奮闘するFL山本浩輝の超絶オフロードの為せる業。こういう脇役(失礼ながら)が働き始めると、この先の戦いには大きなプラス材料だ。

 

主将マイケルが会見で呟いた一言が、いまのチーム状態をよく物語っている。

 

「特別なことはしていない。初めてちゃんとラグビーをしたという感じ」