▲1年後の夢舞台へ加速するクワイエット・ジャパンの選手たち

右から岸野楓、小林建太、岡村大晃)。自分たちの活躍でデフラ

ビー、そして聴覚障害を持つ仲間たちの新たな可能性を切り開く

 

 

静かなる勇者たちについて少々

 

ずっと気懸りながら、書く機会を逸してきた〝もう一つの日本代表〟。

すべて小生の消極性のせいではあるが、8月のあるイベントがいいきっかけとなった。

 

長らく現場で一緒に取材をしてきた成見宏樹くんたちSRU(スコットランド協会ではなさそうだ https://sru.or.jp/)が主催した講演会。正式には「セミナー」と称するようだが、この言葉はなんとなく水晶の印鑑売りつけられそうなので使わずに。話者も、諸々の現場でおそらく20年近い親交がある柴谷晋。それ以上に会場がチャリ10分というチカバのムサコ(断じて言うが武蔵小杉ではなく武蔵小山!)というロケーションがモチベーションになった…かも知れない。

 

 

 

 

 

講演前はデフラグビーの〝総論・概論〟のようなコラムを構想していた。ANSWERコラムで初めて扱うカテゴリーということもあった。だが、2時間あまりの講演を聴くうちに「知りたい」「書きたい」という欲望がさらに増殖していくのを感じていた。それは話者のハナシの巧みさもだが、それ以上に彼が語る〝静かなる男たち〟の挑戦が、総論よりは少々踏み込んだ内容で書くに値すると感じたからだ。

 

で、講演を終えたご本人と〝茶話会〟での雑談で、講演を聴いて浮上したクエスチョンと聞き切れなかったものを補完するためのインタビューをすることに。後日、彼の地元の庶民派イタリアンで、なかなかのイワシのパスタを楽しみなら追加取材をして、強化合宿期間中に練習見学と選手から話を聴いた。

 

 

 

 

小生も中学生時代からのJohn Bonhamのドラムスを聴きすぎでさやかな難聴ではあるが、聴覚障がい者、とりわけデフプレーヤーたちの苦労を考えれば、当然のことながら比べようのないものだ。その一方で、だからといって、あまり「違い」を強調するのも好みじゃない。それでも敢えてこの言葉を使うのは、やはり「違い」の中にわれわれが日常ではなかなか得られない「学び」があるからだ。

 

 

 

 

それは、いかにコミュニケーションというものが重要かという発見であり、この言葉が網羅する幅広い要素の中には、まだ十分に〝開拓〟されていない手法が残されているのではないかという可能性だ。それをデフラグビーと柴谷HCの取り組みから読み取ることが出来るのではないだろうか。彼らは「クワイエット」と名乗るが、フィールドの上でのコミュニケーションを見ると、この言葉に反して驚くほど〝雄弁〟だ。

 

多くのファンが日本代表だ、〇〇大学だと贔屓チームの振る舞いに一喜一憂する楕円の季節が深まる。その中で、是非、彼らの挑戦に一瞥でもいいので、関心を持ち、良ければ練習(試合もあるが)に足を運んでいただきたい。JDRFUのHP(https://deaf-rugby.or.jp/)を見れば、その活動スケジュールや活動報告が記されている。小さな一瞥の積み重なりが〝静かなる勇者〟をさらに奮い立たせ、大きな支え、やがては新しい、いいchapterへと繋がればいい。

 

 

 

 

はいはい、行ってきましたよ。

ワラビーズ!

21日の月曜も取材対応が準備されたが、その予定がJRFUを通じてリリースされたのが、なんと21日17:59…。てなことで、火曜に来日初のメディアセッション参加となった。

 

本日のキャストはこの2人。

 

SHジェイク・ゴードン(写真右)

LOジェレミー・ウィリアムズ(同左)

 

なかなか悪くない。32歳のベテランSHと、売り出し中の若手セカンドローというバランスのある人選。特にジェレミーは昨年デビューと思ったら、すでに20キャップと、その期待度を感じさせる数字もある。

 

でも、個人的にはジェイクだ。

お恥ずかしながらの江戸川キャップ2にとっては同じ#9としてキャラの立った存在だ。

185㎝、89㎏のSH。ボールを鷲掴みにするようなダイナミックなパスは、到底真似の出来ないものだが観る者を魅了する。

 

日本代表に対して聞くと、こんな印象を話してくれた。

 

「いろいろな映像を見ています。先ずはとても速いチームだなという印象です。どこからでもボールを動かしてくるし、すごく早い展開でボールを回してくるのですこし危険な相手ですね」

 

その速さについては、「A」が先週末の大阪で、手を焼きながらも「XV」を1トライに封じ込んでいる。思うに、日本のスピード対策はワラビーズでもしっかり準備出来ているのではないかと質問をぶつけると、こんな切り返し。

 

「あのゲームはワラビーズの皆で観ていたが、互いに速いテンポのゲームが出来ていた印象です。そこで、オーストラリアAの方がダイレクトなプレーが良かったのかなと思っています。でもジャパン(XV)は何をして来るか分からないというところがあった。彼らは自陣深いところからも結構仕掛けてきていたので、フィジカルな部分も踏まえて警戒はしています」

 

語っているようで、大したことは語ってない――。32歳のベテランは、日本サイドにとってプラスになるような情報はほとんど出さずに〝大きなフレームの中〟での話に終始しているなという印象だった。日本のスピード、奇襲という特性(一般的)を挙げ、エディーと桜のジャージーが仕掛けてくるであろう、自分たちワラビーズの基本を崩してこようとするプレーに動じず、スタンダードを貫くことにフォーカスすれば、地力の差は明らかにある。こんな思いで、チームは準備を進めているのだろう。

 

それは、エディーに関係した質問でも明らかだった。ワラビーズが史上初のプール戦敗退を喫した2023年までのHCで、退任前後は大揺れとなった指導者だが、ここも32歳のジェイクはキッパリと語っている。

 

「今週はそういう(エディーがらみの)マインドセットじゃなくて、試合に集中しなければいけないのです。ジャパンに対して、いい準備が出来ればいいなと思っています」

 

おそらくはメンバー全員で共有している認識なのだろうが、今週土曜の千駄ヶ谷での80分だけにフォーカスしようというマインドセットの固さを感じる。2年後の母国開催となるワールドカップは、オージーにとっては特別なイベントになるのは間違いないのだが、若手セカンドローのホープも〝一貫性〟を貫く。

 

「ホーム開催はもちろん楽しみです。自分が選ばれれば、個人でも家族も本当に誇らしいことだと思うが、あまり先の事は考えてはいけないと思っています。とにかく今、何が出来るのかが大事。今だったら日本戦へ向けて何が出来るのかに集中して、それを1試合ずつやっていければいい結果に繋がると、基本的には考えています」

 

なので、今週からテストマッチにかけてワラビーズに触れる際に、結構キホンになる「日本戦の意味」というお題についても、肩透かしなコメントに終始してしまった。先ず、質問はこんな内容で。

 

「ヨーロッパのツアーも含めての質問だが、わざわざ1度日本に立ち寄るという煩雑さもある中で、この日本戦はどういう位置づけの試合になるのか」

 

ヨーロッパで待ち受けるイングランド、イタリア、アイルランド、フランスというゴージャスな対戦相手のことを踏まえると、日本戦はそこへのステップアップとなる1戦なのかという意図の質問だ。そのゲームを、ヒースロー直行ではなくわざわざ東京に寄り道してまでする価値はあるのかという問いかけでもあったが、いずれか応えられる方にいう投げ掛けに応じたジェレミーの回答はこんなものだった。

 

「テストマッチということで全てを出さなければいけない試合だと思っています。日本は、先ほども話したようにタフですし、速さもあるし、とてもフィジカルで、スキルに溢れたチームなので、我々としてはとにかく全力を出して勝ちに行くのが目標だし、他の試合はまだしっかりと見ていないので、とりあえずこれかた(次の)試合に全力で集中しています」

 

なんだか〝インプット感〟漂うコメントだが、「そうじゃなくてぇ~」という場でもないのでそのまま聴いていたが、土曜日までの期間で再度誰かにぶつけるべき宿題が出来た。

 

そんな中で、土曜の80分をわずかにイメージさせる言葉を、若いセカンドローはこぼしている。

 

「(日本は)ボールを展開してくるし、クイックタップも使ってくる印象なので、それにどう対応していくかがキーになると思う。なるべくブレークダウンを止めて、遅くするということを注意しています」

 

さらに、こんなコメントも「!」と感じ取った。

 

「ジェイクも話していたように、日本はスキルに長けた選手が沢山いるので、どう止めるかというのがキーになると思います。自分たちもしっかり体を張って相手のラックを押さえるところが重要になると思う」

 

日本代表対策を語る上で、「ブレークダウンで受圧をかける」という文言は、「スピード」「クイック」という単語と同じ常套句かも知れない。だが、「足が速いのでやっかいだ」「スピードを警戒しないと」というセリフと異なるのは、自分たちがどういうプレーをしたいのかが読み取れること。目新しい何かがあるわけじゃないが、やはり日本戦のフォーカスポイントはこんなところだろうなと感じさせるメディアセッションだった。

 

接点での下働きが期待される24歳のLOとしては、ここでどれだけ働けるかが、次戦へ繋がるポイントと考えているのだろう。オーストラリアAが、ジャパンXVの求めるテンポで球出しさせなかったように、千駄ヶ谷でもブレークダウンから桜のジャージーにクイックボールを出させないというプランなのは間違いない。

 

裏を返せば、すこしずつ組織的にゲームを進められるようになってきたジャパンが、どこまで自分たちのテンポで接点からボールを出せるか。ここはバックファイブがどこまでワークを高め、2人目、3人目のサポートでゴールドジャージーを上回れるかが肝。ジャパンの場合はフロント3人の機動力も交えての勝負になる。

 

付け加えるなら、エディージャパンでも負け試合で相手に〝差〟をみせつけられるケースが多く、「XV」も露呈した展開を読む力の足りなさを、どこまで伸ばせるのか。ここは時間の掛かる課題ではあるので一朝一夕で改善されるものではないのが現実だが、即効性のある対策としては、選手それぞれのコーリング、リーダーたちの判断も重要になってくる。

 

なんだか主語がゴールドジャージーから桜のジャージーに替わってしまったが、ここらを改善出来ているようなら、調子を上げ続けるビジターも苦しめることになるかも知れない。

 

キャプテンポジションで国歌斉唱に臨んだ奥井章仁(右)。ガ

ッチリ肩を組んだ廣瀬雄也と未来のジャパンを支えていけるか

 

 

アサヒスーパードライCHALLENGE MATCH 2025  

JAPAN XV ●7-71〇 オーストラリアA@大阪・ヨドコウ桜スタジアム

 

 

コラムは「テスト」からという判断で、取り敢えず〝前哨戦〟はメモ書きで。

 

なんとも凄まじい負けっぷりの〝準テスト〟。なにわは阪神に沸き、世界はオオタニに沸く中で、しれっと見過ごしてもらえたら…という大敗だった。

 

HCを担ったニール・ハットリーも、いつもの温厚、泰然とした物腰から考えると、幾何か「ピり」っとした表情で、会見に臨んだ。

 

「タフな1日でした。相手は13人のワラビーズがいて、最近スーパーラグビーのシーズンを終えたばかり。こちらは準備に3日間しか与えられなかったし、大学生といった若い選手が多いチームです。なので、この結果には誇りを持っていいと思う。そして、この結果をしっかり受け止めて、ギャップをどう埋めていくかを意識しないといけない」

 

もちろん大敗を満面の笑顔で語られても困ってしまうので、表情もコメントも適切なものだったのだが、何%かは「落胆」という感情に支配された物腰だったと感じている。言い訳のようにも受け止められる言葉もあるが、むしろ若いメンバーたちのショックを、どう言葉で和らげられるかという〝配慮〟を感じさせた。

 

あまり選手とコーチを比較するものではないが、その状況の中で〝キャプテンデビュー〟となったFL奥井章仁(トヨタヴェルブリッツ)は、苦しい言葉を使いながらも、頷けるコメントをコーチ以上にしていたのに感心させられた。

 

「僕らのディフェンスのフォーカスポイントとして、最初の5歩を上がるというのがあるんですが、そこのところで5歩上がることが出来なくて、パッシブになってしまった。だから受けてしまって、相手のブレークダウンがクイックテンポでボールが出てしまった。どんどんクイックになると、僕らのセットが遅れてきて、それを繰り返してしまった。その5歩が出来なかったのが原因かなと思います」

 

 

 

 

つぶらな瞳でこう語ったが、出足の5歩を素早く、激しくいくことで、相手が加速、トップスピードにギアを上げる前に重圧を掛ける。あわよくばそこで仕留める――。そんな勝利の方程式を準備して臨んだゲームだったが、キャプテンが指摘した通り〝金星への第一歩となるはずだった最初の五歩〟で大方の勝負は付いた。

 

ワン・オン・ワンのフィジカルで重圧を受け、強みのはずの組織も、起点のスクラム、ブレークダウンで後手を踏み、渡り合えるレベルに達していなかった。攻守の起点になるこの2か所、つまり接点とセットピースでヘコまされると、ほとんどのチームは自分たちのラグビーを貫き、そして勝つことは諦めるしかない。そして「5歩」でプレッシャーを掛けられなかったことで、ゴールドジャージーは攻め込む余地=スペースを手にして、思い切り仕掛けてきた。対するホストは、1つ1つのフェーズアタックが接点での圧力でブツ切りにされ、ラインアタックが加速することはなかった。

 

敗者でもいくつかの見せ場はあった。WTN植田和磨(コベルコ神戸スティーラーズ)は、開始直後の敵陣22mライン内へのパントをタップ。ノックオン(相手アドバンテージで快勝)ではあったが、トライチャンスの機運は作った。チームとしていただけなかったのは、そのタップボールを相手に生かされ、9-10-15と繋がれ一気に自陣へ攻め込まれた〝脆さ〟だが、そのカウンターも植田が自慢の快足でキャリアーに追いついてタックルするなど、一連の攻守に渡る好パフォーマンスを見せた。スタッツを見ても、ボールキャリー10回はFB矢崎由高(早稲田大3年)の12回に次ぐチーム2位(ゲーム3位)と、なかなか見せ場が少ないゲーム展開の中でかろうじて〝上〟へのポジティブポイントを残した。

 

〝但し書き〟をしておくと、開始17分の相手に90mを5人で繋がれたトライは、植田のショートパントからのカウンターで奪われた。勿論、植田の後方にいた残り14人が猛省するトライではあったが…。

 

メンバー中、すこし大袈裟に表現すれば一枚上の能力を印象付けたのは、キャリー1位と紹介した矢崎。前半22分、ミッドフィールドの左展開で、バックドアを使うことで出来た相手防御ラインのギャップを見事に切り裂くと、カバー防御に入った代表キャッパーSOベン・ドナルドソンを更に加速して外で抜き去りインゴールへ駆け込んだ。

 

昨季6月、新生エディージャパンの初陣となったイングランド戦で衝撃スタメンデビューを果たし、4試合連続で「15」を背負うなどテスト5試合に先発。新たなスター誕生の期待感を印象付けたが、所属する早稲田大との話し合いや負傷もあり、秋はNZ戦のみと国内限定の招集となった。久しぶりの代表系復帰のゲームで結果を残したのは評価出来るが、チームが自身の1トライだけの大敗に終わったこともあり、本人は終始淡々とした表情だった。

 

それでも、エディーの若手重用方針もあり、今回も矢崎を始め多くの成人式前後の世代がチャンスを得てきた中で、やはりこの15番は群を抜く非凡さを持つことを、1年ぶりの復帰戦で強く印象付けた。ランメーターのスタッツ71mは、WTBハラトア・ヴァイレア(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の94mに次ぐ2位だったが、ラインブレーク2回は双方合わせての1位タイ。おそらくオーストラリアも、昨季のプレーから要マークと頭に入れていただろうが、それでも「らしさ」を発散出来ているのが凡人、否凡プレーヤーとの格差になる。

 

 

 

 

アタック面で可能性を輝かせる一方で、自身のトライ目前の20分には、相手CTBにウイークショルダーを突かれてトライの要因となったタックルミスなどテストマッチレベルでは〝粗さ〟もある。ジャパン基準(ティア1テストマッチ基準か)で見れば〝定番選手〟ではなく、まだまだ〝可能性組〟の範疇にある。昨季通り秋は期間限定か、世界トップクラスへの挑戦が待つテストシリーズ居残りかは後日発表されるが、現状の大学と代表を行き来する起用法の中で、どう自分を磨き上げていけるかを期待するしかない。

 

スタッツでの議論では、もう1人特筆するべき選手がいた。人生初の主将を務めた奥井は、タックル回数15でチーム1位、両チーム合わせても首位タイをマークしている。失敗数6はそこそこのマイナスポイントではあるが、試合を通して接点勝負で優位に立っていた相手に果敢に挑んでいることは数字が物語る。会見に出てきた時には、初主将での大敗に落胆の色も感じさせたが、プレーヤーとしてのパフォーマンスでは期待されるエリアでチャレンジを続けていることが読み取れる。先に挙げたヴァイレアも、フィジカルの強さはすでにキャップホルダーの実績通り。ワラビーズ〝1.5軍〟程度のチームなら、自身のフィジカリティーで十分に戦える印象を残した。

 

とはいえ、やはりこれだけの大敗だ。選手も理解しているはずだが〝足りないもの〟が数多あるのは否定のしようがない。敵陣22mライン内に攻め込んだ回数は「A」の14に対して「XV」は10。スコアに比べるとよく攻めこんでいるが、実際のスコアを見れば遂行力・決定力の低さが如実に浮かび上がる。22内に攻め込んでのスコア率も「A」5.0点(1回の22m内侵攻で5点をマーク)に対して0.7点という大差になっている。

 

日本がいかに早いスピードで連続攻撃が出来ているかに重要なラックスピ―ドを見ると、0-3秒間での球出しで相手の49%に対して68%と上回るが、6秒までを見ると86%対89%対と似たような数字になる。実際のゲームでの印象でも、1つの接点で理想としたスピードではラックからボールを展開出来ない「XV」に対して「A」のテンポのいいパスアウトが印象的だった。スクラム成功率(80%対88%)、ラインアウト成功率(67%対100%)という差も、ゲーム支配に直結する数値だった。タックル成功率でも相手91%に対して77%と大差をつけられている。

 

数値に加えて、両チームの選手、コーチが揃って口にしたのは「トランジション」。攻守の切り替えという意味だが、この単語が、この勝者と敗者の格差を物語っている。正代表がティア1クラスと対戦する時も目にする格差だが、「A」がカウンター攻撃や、ファンブルボールなどから仕掛けた時には、ボールを手にした選手の反応の速さと同時に、複数のフォローする選手も即時に動き、アタックに厚みを創り出している。この速さは俊敏さだけではなく、様々な状況の中で選手が個々にどうプレーするべきかという選択肢を常に持ち、想定することで生み出されている。その一方で、「XV」は1人が動き出すのをサポート選手が見て、判断して動き出すぶん遅れが生じ、サポートの厚みも不十分だ。ここは今週末からのテストシリーズでも差を見せつけられる危険性を孕んでいるはずだ。

 

この若手投資試合を、あたかも〝準テストマッチ〟のように盛って開催することの議論は、改めての機会に考えていきたいところだが、まずはピッチで起きたこの大敗を、この先にどう生かしていけるかが直近の課題だ。「A」だけの問題と考えれば、この試合の意義や価値を薄めてしまうことになる。この日は、どう持ち上げても「準備不足」を露呈したプレーを、この大敗の間もテストシリーズメンバーたちは宮崎で準備を進めている〝本チャン〟がどこまで熟成・修正を加えていけるのか。「回答」の時間が近づいている。

 

▲牧歌的な雰囲気の中で、リーグワントッププレー

ー、若手原石が鎬を削るゲームが繰り広げられた

 

 

パースとロンドンですこし睡眠不足気味の中で、日曜日は遠出を。

 

節分と鰻くらいしか印象にない成田でのリーグワンライジング第2週。開幕週は土日とも大学生に〝浮気〟したので、今週が初のライジング観戦。結果は昨季リーグワン順位に順じたものにはなったが、開幕2連勝以上に勝者スピアーズに収穫があったと印象づける80分だった。

 

 

 

ゲームの前に、第2節で初体感した「ライジング」について触れておこう。かなり〝仕切〟は個々のチームに委ねている大会だが、このカードはホストのスピアーズが成田市恒例のラグビーイベント「ナリタラグビーフェスティバル2025」と連携した大会に。だいぶ常套手段化しているがキッチンカーなどが並ぶ雰囲気の中の開催となったが、他にもスピアーズ選手による体験会、フォトセッションなどのファンサービスも盛り込まれた。その中で再認識させられたのはカテゴリーを越えた交流の価値だった。

 

 

▲ポスターお借りしたが、来季への〝課

題〟は「ソ」のような「リ」の修正か?!

 

 

スピアーズの試合前にはスピアーズジュニアvs川口Rスクール、八千代松陰高vs清真学園というゲームが行われたが、リーグワンを4シーズンに渡り観戦してきて、ジュニア世代や高校生たちと同じ日、同じピッチでリーグワンチームも試合をすることを、一つの〝あるべき姿〟のように受け止めた。

 

プロ野球やJリーグなら、他のカテゴリー(高校、ジュニア)と完全分離での試合開催も当然だが、この2競技ほどプロ化が進んでいるわけじゃなく、残念ながら人気やチーム、選個々の収益性をみても、まだまだプロ化どころか事業化すら程遠のが現状だ。その中で野球、サッカーと同じような、様々なものから遮断される試合(観戦)環境で試合を開催することが、あるべき姿なのか…

 

もちろん選手のセキュリティー、試合の円滑な運営などを考えれば、現状のやり方が「適当だ」という判断はアリだろう。だが、プロ野球ほどの収益性、運営規模にラグビーが及ばないのなら、野球やJにはない〝身近さ〟を「個性」として持つのも悪くないのではないだろうか。リーグワン選手と子供たちが、同じ会場で写真を撮り、プレーのアドバイスもする日常。もっとリーグワンが、選手が、子供たち、高校生ラガーと近い位置にいる――。そんな形態でリーグを運営することも真剣に検討、検証していいという思いが、スピアーズ選手の横を通り過ぎる清真学園の部員たちを見ながら沸き起こって来た。

 

公式戦でのこのような運営形態が難しいとしても、ラインジングという若干緩い運営の中では、今回のフェスのように地方協会、自治体と連携しながら、80分のゲーム以外の付加価値、ラグビーマッドなファン以外も楽しめる環境を創ることの価値は大きい。小生も然りだが、リーグワン関係者、ラグビー関係者は、キックオフからノーサイドの80分でけではなく、その前後に何が起きているのか、起きている現実が「これから」にどんな意味や可能性を持ち、ラグビーは何が出来るのかを見た方がいい。

 

そんな妄想に駆られながらキックオフを迎えたスピアーズvsダイナボアーズ。SH岩村昂太、SOジェームス・グレイソンのHB団を筆頭に〝ライジング〟には似つかわしくないほどの経験値の高い布陣で挑んだビジターに対して、ホストはチームキャップ数で1桁の選手が主体。ちなみにこの〝キャップ数〟で比べるとスピアーズが11.2だったのに対してDボアーズは27.4とキャリアの差はあったが、経験値とは異なる結末に終わった。

 

スピアーズのメンバーを見れば、試合に出たいというハングリーさが力の源のような顔ぶれだ。入団5シーズン目を迎える4キャップのHO福田陸人(明治大)、同7シーズン目7キャップのLO堀部直壮(同志社大)ら昨季まで以上にプレータイムを伸ばしたいメンバーに加えて、ルーキーFL上ノ坊悠馬(天理大)、そして控えには以前コラムでも紹介したFLハリー・ウィラード(ダラム大)、練習メンバーのFBディビッド ・ヴァカウタカカラと、ここから輝きたいと野心を漲らせる原石が居並ぶ。

 

そんな若手が、リーグワン経験者が揃う相手に外連味の無いプレーを仕掛けた。帝京大から入団3シーズン目の二村莞司は、前節のCTBからこの日はWTBで先発。開始直後の右オープンでボアーズ防御を切り裂いた。180㎝、87㎏。サイズだけだと「大型BK」とは言い難いが、ダイナミックなランが観る側を惹き付ける。二村と〝行って来い〟でWTBからCTBに回った183㎝、93㎏の松下怜央も、早稲田大での活躍をワンステージ上のピッチでも見せ始めようとしている。

 

昨年イングランドの名門ダラム大で学びながらスピアーズに練習メンバーとして参加したハリーは、途中出場で正式なメンバーとしてのデビューを果たした。派手なプレーこそなかったが、190㎝、110㎏のサイズを武器にした接点でのファイトでFLとして公式戦を目指す。同期になるFL上ノ坊悠馬(天理大)も相手を一発で仕留めるタックルでアピールした。

 

まだ練習メンバー扱いのヴァカウタカカラは、FBとして途中出場。すでに日本代表も経験するPRオペティ・ヘル同様キリスト教の布教活動のために選手キャリアにはブランクがあるが、未知の原石としての可能性を秘める。まさにBK版オペティという存在だ。スペースのある所でボールを持つ機会は少なかったが、ドラム缶のような図太い体でパワーランナーとして正式契約→リーグワンデビューに挑む。

 

沸々と沸き上がろうとする若手の戦いぶりの一方で、代表組の江良、藤原、そしてルアン、バーナ―ド、リカス、ハル、本格参戦のショーンという主力の顔ぶれを見ると、彼らがリーグワンでジャージーを掴むのは容易なことではない。だからこそ、この日のゲームのように多くのリーグワン主力選手を相手にプレータイムを伸ばせたことが、掛け替えのない財産になる。この日のダイナボア―ズのようなチーム相手に、自分たちがしっかりと戦えることを、フランさんはじめコーチ陣に証明することが、分厚い岩盤のようなスピアーズ主力という壁を切り崩して、自分がプレーチャンスを掴む糧になる。そんな思いを浮かび上がらせる成田での1日だった。

 

 

最後に〝追伸〟で書き残すが、スピアーズ入りが発表されたばかりのHO安江祥光は、この日は残念ながらノンメンバー。コンディションを考えての判断だったようだが、古巣とのは公式戦へ持ち越しに。いじれにせよ「ライジング」出場は反則とも思える年齢だが…。それでも、Dボアーズファンからの人気は絶大で写真や握手を求める人たちに囲まれていた。

 

 

 

 

会場に設けたスピアーズのファンクラブ入会受付にも、「安江さん入ったから入会したい」というやっさんファンが多くやって来たという。人気だけではなく、チームにとってもメンバー編成上の若干の手直しが必要な状況の中で、計算できる即戦力のベテランと契約出来たことが戦略上プラスに働いた。

 

41歳という異例の新人は「ありがたいですよね。でも、僕がやることは1つだけ。チームが優勝するために貢献することです」と帝京大-IBM-神戸-相模原とプレーを続けてきて初の「優勝」への思いを真っ先に語っていた。

 

 

 

Ⓒリコーブラックラムズ東京

 

https://x.com/RUGGUTs/status/1974330734782611883

 


(FBで十分と書き始めたら、そこそこの長さになったのでコチラで)

地球の裏でのTRC最終節キックオフまで時間があったので、今日は小雨混じりの中を季節外れの花火大会(会場)を素通りして〝ニコタマ〟の河川敷横へ。

ゲームはD(ディビジョン)1が意地を見せて面目を保ったが、《D1の1.8本目vsD3の1本目》前半は、昨季D3初参入が押し込んだ。

積極的にボールを動かし、ゴール前では局地戦でもFWが圧力を掛け、セットピースでのスクラムコラプシングで反則を奪いトライに繋げた。

 

 

▲大花火大会前の静けさ…断続的な雨の下、今年はどうかな…

 


まだ互いにシーズン2戦目という段階だが、昨季参入1シーズン目でのD2昇格を「2点差、3点差」で逃したチームは、この編成でのゲームならD1昨季7位ともしっかりと組み合えるポテンシャルを証明した。

 

要所に経験値のある外国人選手を配して、彼らがフィジカル面では勿論、窮地、チャンスにいい判断をしているのも大きな検討、否健闘材料だが、アタック大好きなスコッティHCながら、防御面でも個々の選手がしっかり体をシンクさせてのタックルなど、攻守にスタンダードを上げている印象だ。

 

日本選手でも、チカバの八幡山で鳴らしたSO忽那健太くんら、実力・実績のある選手が入るとチーム力がワンステップ上がるようだ。キヤプテンのFL飯田光紀も相変わらずねちっこく、しぶとく絡み、新鋭FL河瀬悠河も190㎝近いサイズながら高いワークを見せる。助っ人だけじゃなく、いい補強が出来ている。

 

 

▲本日マジメに写真を撮らなかったので、

なフマジメな人でも載っけておきましょか

 

 

このチームにとってのテーマは、開幕前だがもう明白だ。リーグ戦(D3)ではなく、入替戦でD2チームに勝ち切れるのか――。欲を言えばD2でやり合える戦闘能力と選手層のの厚みをどこまで持てるか。

 

前半のファイトを見れば「そう出来る」立ち位置まで行ける期待感は十分にある。

〝宿題〟は後半増殖させてしまった反則数。上位とのゲームでは、ここらへんが課題になりそうだ。

 

既に14時台には、ニコタマ界隈で大規模な交通規制が始まっている。早々にこのエリアを脱出しよう!