今日の準々決勝第2戦。主役は本来、後半を圧勝したスピアーズなのだが、やはり書き残しておくべきはリッチー・モウンガだろう。

 

リッチーの日本での挑戦が終わった。

 

ブレイブルーパスの一員としての、最後の試合での囲み取材。

左瞼を縫い合わせた姿で現れた#10 は、チームを離れることに Yeah,Really Sadという言葉から語り始めた。その思いは、御託を並べるよりも、話したこと全てをお伝えした方が、皆さん喜ばしいだろう。どこかで、あらためてコラとも考えるが、取り急ぎ12分を超えるリッチー最後の言葉を書き残しておこう。

 

【リッチーQ&A】

「先ず、負けたことは寂しいですが、何よりも東芝での日々が終わってしまったことが一番寂しかった。振り返るといい記憶がたくさんあって、特に東芝で作り上げた友情が何よりも素晴らしいものだと思っています。

 

日本での経験は、人生を変えたと本当に考えていて、記憶を思い返してみると、全てが素晴らしい。特に家族と一緒に日本に来て、新しいライフスタイルを、新しい場所でやっていくのは本当に良かった。最初の2年で言えば、まるで夢の中にいるような経験でした。何もかもが上手くいって、本当に最高でした。

 

(試合後にリーチとハグ)

もうこれで終わりなんだと思うと寂しくて、その思いだけでハグをしていた。もしかしたら、これで二度と一緒にプレーすることは無いかも知れないということもあって、寂しく感じたんです。

 

(試合直後はグラウンドに座り込んでいた)

そうですね、ベストを尽くしました。今回の試合に勝てるように、本当に持っている物全てを自分自身出し切ったし、チームの皆もそうだったと思います。けれども3連覇するというのは、本当に簡単に出来るようなものじゃない。だから、勝てなかったが、全力を出し尽くして終われたのは誇りに思います。

 

(マルコム・マークスへの好タックルもあった)

大きな選手だからね。マークスは勿論そうだし、クボタは本当に素晴らしいチーム。リーグのスタンダードを高めてくれた存在で、対戦する時はこちらも常にベストを尽くさないと勝てないのは分かっている。なので、そういう気持ちで頑張ったし、その点は感謝をしています。力を引き出してくれるいい相手でした。

 

(終盤、ご自身のいいランもあった)

疲れたよ。正直、疲れ過ぎて何も言えないが、3年間(メディアの)皆さんにも本当に感謝したい。日本でのラグビーの普及にすごくいい影響を与えられたと思うし、自分にも、東芝にも興味を持ってくれた。それを更に発展してもらうことで、リーグワンのこの3年を振り返ると、すごくいいエリートレベルのリーグになってきていると思います。その一端を担っていると思うので、すごく感謝しています。僕自身も、そこに少しでも関わることが出来たことを嬉しく思います。

 

(この先のキャリア)

正直、先の事は分からない。何故なら、まず一番大事なことは、次のシーズン1年間頑張って、オールブラックスに選ばれることが大きな目的になる。そのために、ベストな状態で新シーズンに臨むには、コンディションを整えていくことに全力を尽くすことしか今は考えていないからです。なので、その先はまだ分からないのです。

 

(日本のファンはまたリッチーのプレーを観たいと思っている)

そうですね。まだ先の事は分からないですが、何度も言うように、この3得年間の日本でのプレーは本当に最高の経験であり、最高の記憶でした。いつもNZに帰ると皆に話しているが、日本に行く機会があれば、絶対に行くべきだと。生活様式はすこし違うが、日本での生活も素晴らしいし、リーグもいい。ファンの人たちもいつも話しているように最高で、自分のことをすごく応援してくれて、スタジアムに来るといつも自分のホームのように思わせてくれる素晴らしい人たちです。皆、僕の子供のギフトまで準備してくれるようなファンたちがいるので最高のリーグだと思っています。

 

(何が一番恋しいのか)

食べ物かな。それとビールね。それに生活様式かな。すごくシンプルでチルなライフスタイルをしやすい環境だと思う。NZに帰ると、まだすこし違うことになるけれど、それが一番恋しいかな。

 

(府中の馴染みの店ますだやにも行けなくなる)

そうだね。僕が沢山お金を使ったから、居なくなると残念だが閉店すると思うよ(笑い)。

 

(日本のファンへのメッセージを)

本当に感謝してもし切れないくらい最高の経験をさせていただきました。NZに帰る時には、自分の心の中に日本の心を持って帰ろうと思っているくらい本当に日本が大好きになりましたし、家族も含めて最高の時間を過ごせたと思います。すごく感謝しています。

 

(東芝に来季どんなチームになってほしいか)

それは分からない。でも、NZで東芝ブレイブルーパスファンとして見ていきたい。ファン目線でこれからの東芝が楽しみです」

(以上)

 

 

試合終盤の独走を見ても、リッチー自身のスタンダードでは、切れ味のあるランではなかった。股関節の痛みがあったと聞いたが、その影響もあっただろう。もし、この試合で勝利しても準決勝、そして決勝ないし3位決定戦でも、そのパフォーマンスは変わらなかったように思う(本人は否定するだろうが)。ノーサイドのホーンで、ピッチに胡坐をかくような姿勢で座り込んだ姿を見て、やはり足に来ていたと感じざるを得なかった。そんな意味では、リッチー自身が認めたように、出し切った80分だったのだろう。

 

ただ、社交辞令も、母国では支払われないほどのサラリーも踏まえた上で、この3年間の府中でのピッチ内外の生活が、リッチーには予想した以上に満足のいくものだったのは間違いないだろう。

 

日本への復帰には、一切言及しなかったのは、なにやらこの先を想像させたが、この3年間の日本への、そしてブレイブルーパスへの愛着は、実は1シーズン目の言動、形振りでかなり感じられたものだった。

 

手前味噌ではあるが、文末に2年前のコラムを参考文献代わりに――

 

 

 

 

 

                   ▲写真提供:東芝ブレイブルーパス東京

 

 

まだまだダウンジャケットが有難い頃に聞いたハナシをコラムに上げた。

 

「渡邊拓斗ですけど、春に出てくると思います。おもしろいですよ」

 

秩父宮のメーンスタンド。リーグワン公式戦を並んで観戦していた時に、こんな話をしてくれたのは東海大の木村季由監督だった。

 

遥か昔の、あの男の姿が思い浮かぶ。その息子が、東海大のレギュラージャージーを掴もうとしている?

東芝関係者との過去の雑談から、本格的にはラグビーはしていないとは認識していたのが、思わぬ成長をしているのか? あの男〝万吉〟の息子なら、もしかしたらもしかするのか?

そんな思いから、5月の半ばに、東海大キャンパスを訪れた。

 

会っての印象は、そこまでに聞いた相手の誰もが口を揃えた「真面目なヤツ」と同時に、こういう大男の「あるある」である寡黙さは感じさせない話ぶり。おしゃべりという点では、親父は遥かに上ではあったが、言葉を探しながらも、ストレートに自分の思いを伝えようとする少年のような実直さは、どこか親父を彷彿とさせた。

 

 

 

 

コラムでも再三触れたように、まだまだ俄かPRだ。厳しく書けば、PRどころかラグビープレーヤーとしても俄かの領域だろう。そんなレベルのアスリートではあるが、様々な関係者に話を聞く中で、印象深かったのは木村監督の言葉だった。

 

「努力する才能はある」

 

一言で表現すれば、その実直さ、一途さが、渡邊拓斗という男が、誰からも愛される理由だろう。だが、さらに一歩踏み込むと、指揮官が語った「努力する才能」を、会う人誰もが感じ、認めるからこそ、この俄かPRに手を差し伸べてくる。

 

 

 

 

占い師ではないので、「おそらく」の話は差し控えたいが、来春の進路についてはほぼほぼ固まろうとしていると考えている。素材としてはまだまだ未知数の領域ではあるが、〝伸びしろ〟への期待感と〝他の理由〟から、採用の判を押すチーム(企業)があるだろう。そこで、夢破れて仕事に専念するのも一つの生き方だ。だが、どこまで自分で高みを這い上がって行けるのかというスタートラインには、是非立ってほしい。

 

そのためには、木村監督が東海大で与えてくれた挑戦のチャンスを、この1年でどこまでモノにして、結果を残せるかも重要な意味を持つ。次のステージで輝くためにも、この1年の努力は大きな意味を持つ。

 

昨日の自分より今日の自分を進化させる――。誰も強制しないそんなチャレンジを、逃げずに毎日挑戦し続けることが出来るか。いつでも、どこにでも、探せば逃げ道は幾らでもある。だからこそ、真っ向から向き合う事に価値がある。

 

渡邊拓斗の挑戦が楽しみだ。

 

▲昨季はこんな顔ぶれだったけど、今季はどうかなぁ~

 

 

リーグ側から「投票せい!」というお知らせあったので、送ったモノを備忘録代わりにこちらにも挙げておこっと。

 

 

■LO Div.1 BestXV

① 高尾時流(スティーラーズ)

② マルコム・マークス(スピアーズ)

③ パディー・ライアン(ブラックラムズ)

④ エセイ・ハアンガナ(ワイルドナイツ)

⑤ ブロディ・レタリック(スティーラーズ)

⑥ タイラー・ポール(スピアーズ)

⑦ ティアナン・コストリー(スティーラーズ)

⑧ ワイサケ・ララトゥブア(スティーラーズ)

⑨ TJペレナラ(ブラックラムズ)

⑩ 山沢拓也(ワイルドナイツ)

⑪ ジョアぺ・ナコ(ダイナボアーズ)

⑫ ジェシー・クリエル(イーグルス)

⑬ ロブ・トンプソン(ブレイブルーパス)

⑭ メイン平(ブラックラムズ)

⑮ ショーン・スティーブンソン(スピアーズ)

新 上ノ坊駿介(スティーラーズ)

 

 

毎シーズン、投票結果とはかなりかけ離れた顔ぶれになるのだが、今季もそうなるだろう。

 

まぁ、カタカナばかり。でも、それも当たり前。

 

今季は、いつも以上に、自身で選びながらも頭の中で「異論」も多かった。

何故かと言うと、チーム毎の観戦試合に偏りが多く、やはり生観戦した選手のほうに評価が傾いている。なので、この記したベストはベストではない。「観た人ベストXV  」と表現するのが適切だろうね。

 

なので、ご覧になって「?」も多いとは思いますが、取り急ぎ。

中途半端なお知らせにはなりましたが、また時間ある時にでも選考理由は挙げとく、、、かなぁ~

 

 

 

 

備忘録代わりにすこし書き残しておこう。

 

昨夜のJRFU理事官ブリーフィング。通常7割5分は、お堅いハナシに終始するのだが、すこし〝おもしろい〟発表があった。

 

既に、ご存知の方も多いと思うが、日本代表エディー・ジョーンズHCへの処分問題だ。事案の詳細はJRFUオフィシャルサイトや報道もされているが、簡単に書き留めておこう。

 

4月のU23日本代表のオーストラリア遠征中の3試合における、レフェリー等への不適切な発言に対して、JRFUとして同HCに下記の処分を科したというもの。

 

・4月24日に遡り、6月5日までの日本代表HCとしての指導の自粛

・下記代表系の向こう4試合への関与禁止

  5.22  日本選抜 vs 香港選抜

  5.29       同

  6.27  ジャパンXV vs マオリオールブラックス

  7.4     日本代表 vs イタリア代表

・減俸

 

当事者であるエディー本人、そして任命責任のあるJRFUにとっては由々しき問題で、スタンスとしては平身低頭といった姿勢だったが、不謹慎ながら第3者からみると笑えるハナシだった。

 

残念ながら、事態の詳細は明かされていない。だが、オーストラリア協会サイドからもわざわざ文句が来たこと、日本サイドの深刻な受けとめ方を鑑みると、相当に酷い暴言だったのだろう。言われた側は、まさに看過できないというレベルと考えられる。

 

今後は、余程の状況ではない限り、エディーがピッチレベルで騒ぎ立てる状況もないだろうから「再発」の恐れは、そう多くはない。だが、ブリーフィングでの岩渕健輔専務理事の説明を聞きながら感じたのは、エディーの〝狼藉ぶり〟を嘆いたり憤ったりという感情ではなかった。

 

すこし(それこそ)暴論と思いつつも、頭の中では「それぐらい勝負や、勝負に関わるジャッジに対して噛みつくようなボスのほうがいい」と感じていた。以前から暴言や、論争好きというイメージもあるエディーだが、それもこのコーチの負けず嫌いの性格が為せる業だ。そこで感情的にならずに、どう振る舞うのが大人の判断であり、自分たちの利益なのかと冷静に考え、より適切な行動や発言が出来るのがあるべき姿かも知れない。

 

現に、この暴言で、今後のエディーが、例え正当性のある批判でも口に出来ないことになるだろう。そうだとしたら、エディー本人は勿論だが、日本代表というチームにとっても損失になる。だが、今回が「やり過ぎ」だったとは推察しながらも、勝つためには食って掛かるくらいのパッションがあるのは、あくまで個人の意見だがOKだ。

 

今回もおそらく着火点となったレフェリングを考えると、これも個人的な見解だが、ジャッジにミスがあっていいと思っている。勿論、極力ないほうがいいが、それでもミスジャッジは存在する。何故ならスポーツだから。でも、だからと言って、そのミスジャッジを聖域にするかと言えば、そうでもない。ミスジャッジもOKだが、それに対する選手、チームからのクレームもあっていい。

 

ただし、ジュニア、ユースレベルの試合は注意するべきだろう。この世代は、不利なジャッジなどが起きても、ブレずにプレーを続けるメンタリティーを養うべきだからだ。この育成段階でジャッジで自分たちの行動や心理が悪い方向に変化するなら、批判、暴言は避けるべきだ。

 

レフェリーと選手の関係性について再認識させられるような、非常に興味深い動画を先日目にしていた。リコーブラックラムズ東京がアップしたものだが、試合後のロッカールームに今季限りで引退する滑川剛人レフェリーを招いて、タバイ・マットソンHCが感謝の思いを伝える動画だった。だが、そこには敬意や社交辞令だけではなく、チーム、レフェリー双方が、これまでの様々なゲームで衝突した過去も認め、踏まえながら、レフェリーという立場から退こうとしている「仲間」を労い、認め合う空気に包まれていた。それは祝福された滑川レフェリー自身も同じだった。選手vs選手だけじゃなく、選手vsレフェリー、チームvsレフェリーでも、相克があり、やはりノーサイド精神はあるのだ。

 

説明を聞く限り、今回エディーもいくつかのミスを犯したと感じられたが、とりわけ拙かったのは、この動画のように、全てが終われば、互いに認め合い、尊重する配慮に欠けていたことだろう。2試合目後にはエディーから謝罪の姿勢もあったと説明されたが、現場で詳細を観ていたわけじゃないが推測するに試合後も怒りが収まらず、いつものエディーなら得意なはずのウイットのあるやり取りも出来なかったのだろう。そこで、相互理解、尊重の働きかけがあれば、ここまで事は重大にならなかったかも知れない。

 

捉え方次第で、そう受け入れられない方もいるだろうが、エディーが自分が責任を持つチームを、例え練習試合でも、今回のような若手選抜チームでも、徹底して勝ちに拘る姿勢は日本でプロコーチを始めた1990年代から変わらない。おそらく来日以前のオーストラリア時代からそうなのだろう。やり方、振る舞い方、そして起きてしまったことへの事後対応などを、もうすこし思慮深く考え、行動すればいい。

 

勿論、今回の案件について、ここからさらに炎上させるべきではないし、その必要もない。今回のことは、協会発表およびエディー自身のコメント通り、額を地面に擦り付けて謝罪し、再発防止を誓いながら、勝利への飽くなき執念は、今まで通り滾らせる指揮官であってほしいものだ。

 

追記しておけば、この夜のJRFUの謝罪の一部は、エディー自身の振る舞いと同時に、それを抑えられなかった代表スタッフの組織としての至らなさにも向けられていた。具体名は出さなかったが、代表の統括責任者でもある永友洋司チームディレクターを筆頭にしてマネジメントスタッフらにも非があるという指摘だが、本来は許されるべきではないが、実際にそのような状況でエディーにもしっかりと意見して、オーガナイズ出来る人物はまだまだ配置出来ていないのがJRFUの現状でもある。

 

いずれにせよ、JRFUとしては、金輪際このような振る舞いはやめてくれという思いなのは間違いないし、冗談で済まされないハナシだろう。エディーもそうするべきだろう。だが、特効薬があるとしたら、常に指揮官に紙袋を持たせて、今回のような怒り心頭な場面では、グラウンドの隅まで行って、袋に向かって暴言を吐き散らさせればいい。

 

 

 

 

リーグワンはレギュラーシーズンが終わりプレーオフ、入替戦という最終コーナーへ。

週末は、皆さまどのスタジアムへ出向きましたか?

 

各々、楽しめる80分だったようだが、観戦ゲームのおさらいを、先ず土曜日から。

 

熊谷らしい強風、否豪風の中でのプレーオフ前哨戦①は、スコア上では期待外れではあったが「見応え」という意味では、十分遠出の価値はあったと感じるゲームだった。

 

書き残しておきたいのは、勝者の#10山沢拓也のパフォーマンス。ここは唸らされた。

 

先ず興味深かったのは、横殴りの風の中で両チームがどんな戦いを見せるか。

伏線になったのは同じワイルドナイツがD-Rocksによもやの黒星を喫した1週前の試合だった。ゲーム自体は、デビュー戦で28タックルを敗者に食らわしたFLオスティンなどのトピックスがあったが、港区北青山では異例の強風がインパクトを残した。

 

ワイルドナイツの風下からのキックオフでスタートした80分。セオリー通り、通常以上にキックを抑えてパス&ランで仕掛けた中で、首位チームの12-17で折り返した。試合前の時点で最下位だったチーム相手に、よもやのビハインドでのハーフタイム。とはいえ、逆転が信条であり、猛烈な風上に立つはずだった後半に〝まくる〟のは、そう難しくない見通しでもあった。

 

だが、後半が始まると、1時間前に吹き荒れていた風は凪に転じていた。これが決定的な敗因とは言えなかったが、個人的には非常にシンプルかつ短絡的な〝学び〟を感じていた。

 

強風の日は前半風上を取るべし

 

これが不変の定理だとは主張しない。だが、いつ何時どう変化するか判らない自然現象に関しては、その時点=キックオフ時の状況を優先するべきだと実感した。。

 

それから8日後の熊谷も、さらに強い風の中でのゲームとなったが、ワイルドナイツは再び風下からのキックオフでゲームを始めたのだ。しかし、前週と違っていたのは「10」が齊藤誉哉から山沢に代わっていたことだ。

 

スタンド最上段の記者席からキックオフのカウントダウンを聞きながら頭の中で、こう呟いていた。

 

「この風下からのスタート。ワイルドナイツと山沢はどうゲームをデザインするのか」

 

その回答が、キックオフから見て取れた。山沢の右足から蹴り上げられた楕円球が、強烈な向かい風で押し戻されながら落ちて来る。それを身長198㎝の#5エセイがキャッチしてラック。そのまま左展開して、CTB長田智希がラインブレークしてそのままインゴールへ。電撃トライは開始20秒の出来事だった。

 

向かい風は一般的には厄介なものではあるが、ハイパントに限れば〝いい選択肢〟になる。それをものの見事に体現したキックオフだった。

 

このキックだけなら「よくできました」レベルだが、この#10は15分には自陣22mライン内から逆風を突いて50mのエリアキックを繰り出し、1分後にもロングキックとは言い難いものの再び22m内からエスケープキックでハーフライン後方まで押し戻すなど「風下=不利」というセオリーを蹴散らした。

 

勿論、ここが山沢にとってのホームスタジアムという利点はあった。本人は見事なエリアキックについては「風が舞っているので、どのエリアならどんな方向に吹いているかも意識しながら蹴った」と振り返る。ピッチの上で、どの位置でどんなキックを蹴ればいいのかをしっかり頭にインプットし、同時に刻々と変化する風も読みながらゲームを組み立てていたのだ。

 

足だけではない。21分の自らのトライは、敵陣右展開でのフラットパスで、縦に走り込んできたHO坂手淳史に防御ラインを崩させてから、次フェーズでのCTB長田への内返しから再びパスを受けてと、ハンドリングワークで仕留めた。この個人技で、スコアは21-0。ここまで1試合平均19.8失点しか許していないチームとしては〝セーフティーリード〟として、流れを引き寄せた。

 

エディー第一期政権の時に、高校生で練習生として代表に呼ばれた山沢だが、エディー→ジェイミー→再びエディーと、代表に呼ばれては外されるという憂き目を味わわされてきた。天性のアタックセンス、足技を持ちながら、防御、フィジカル面を中心とした不安定さを嫌われてきたが、この日のパフォーマンスを見ると、やはり魅力溢れるアタッカーだ。この試合がリーグワン100キャップのメモリアルマッチとなり、特製Tシャツで祝福された山沢に、敵将リーチマイケルは試合後の会見で「大きな怪我をしながら山沢が100キャップを獲得したのは本当に嬉しい」と称えたが、度重なる怪我の中で「100」に到達出来たのは、健在ならスタート、ベンチに関わらず常にメンバーに選ばれていたことも窺い知れる。

 

勿論、このワンサイドは山沢1人がゲームを支配したわけじゃない。大きな要因は接点でホストが優位に立ったこと、敗者がセットで不安定さを見せ、シーズン通しての課題だがディシプリンの低さ(それも接点が要因ではあるが)、徹底し続けてきたキックを使わないアタックなどの要素があっての45-0ではあるが、次のステージ=プレーオフでも、野武士の#10のファンタジスタぶりは楽しみな要素になる。

 

あまりにワンサイドになった土曜日とは対照的に、日曜のプレーオフ前哨戦②はスリリングな展開になった。

 

と、書きながら、実はスコアや試合展開以上に「1位通過」側の強さを印象付けた80分だった。

 

最終スコアは神戸の24-19。「いい試合じゃん」でいいスコアではある。だが、レッドゾーン侵略=22mライン突破を軸にした〝数字あそび〟に勝敗の明暗が読み取れる。

 

スタッツ上でのレッドゾーン侵入回数(カッコ内は22m侵攻回数分のスコア率)は下記の数字だ。

 

スティーラーズ 9(2.3)

スピアーズ   7(2,7)

 

スコア率ではむしろ敗者が上回っている。だが、さらに詳細を深掘りすると、興味深い差が見えてくる。

 

手元のメモでは、22m侵攻は少し違う数字が残る。

 

スティーラーズ 7

スピアーズ   6

 

これはあくまでもゲームを見ながらのメモ書き、つまり見落としもあれば、厳密な22mラインを越えた回数ではなく、一連の攻防の中で何度かラインを前後したようなプレーは「1回」とカウントしているものだ。

 

この数字の中でスティーラーズは、前半2回のレッドゾーン侵攻で2トライをマークしている。対するスピアーズは、前半を19-17で折り返しながら、5回の22m突破で3トライ。悪い数字ではないとしても、神戸の効率には及ばない。そして後半を見ると、22m突破は神戸5回、船橋1回と逆転。しかも、神戸が初めて船橋を自陣22m内に入れたのは後半35分のことだった。

 

戦前にSNSですこし呟いた数字をおさらいすると、1試合平均反則数9だったスピアーズのこの敗戦での反則は13。平均12から10に抑えた勝者とは差をつけられた。同じく「優等生」数値だった1試合平均得失点差21も、スコアが示す通りの結果だった。神戸がよく守り、ディシプリンでも上回ったという結果は、勝ち進めば再び相まみえる決勝戦でも少なからず影響を及ぼす数字になるだろう。

 

その一方で、かなり地力のある神戸に対して肉迫するスコアを残した船橋も十分〝圏内〟という力を示した。数字が全てを支配するものではないが、この日に計測されたものを覆して船橋が悲願の覇権を掴むには、何かの上乗せがマストになる。