
前後半に分けたため、こちらのアップが遅くなりました。
「その1」が洋モノに終始したため、今回は国内モノ。先ずは金曜日のナイトゲームから。
まだ夜間試合はちょっぴりビールの有難みはなさそうだが、ゲームもそこそこ〝涼し気〟な内容に終わった。
兎に角、前半に尽きる勝負。
すこしディビジョン1を掴みつつある兆しを感じていた12位だったが、久しぶりの観戦は一言で言い表せば、なんだか逆戻りという印象だった。
0-28というスコアが良く物語っているが、その内容が厳しい。
ゲーム主将も務めた#8 ヤスパー、#10 オテレ、#12 サム、そして#15 亮平さんと、インタナショナルを要所に配しながら、1つ1つのコンタクトで数センチではあっても、確実に負けている。ポゼッション、テリトリーで上回っていても、スコアの起点としたい敵陣でのラインアウトをミスで潰し、前半インジャリータイムの相手レッドゾーンでの攻撃も、あまりに残念すぎるハンドリングエラーで終えるなど、仕留める力の無さがモロにスコアに表れた。敵陣22mエントリー侵入時の平均スコアは静岡の4.4得点に対して浦和は1.4。攻めていても得点に繋げられないチーム状態が読み取れる。
後半なんとか反撃に転じたが、それも開始4分であっさりと7点を奪われてから。35失点の時点で、ほぼほぼ詰んでいたゲームだった。80分を観て感じるのは、ヤスパー、サムという実力者だけが接点で戦い、相手防御をブレークして、その後は〝その他〟がフィニュシュ出来ず、フィニッシュされたゲーム展開だった。シーズン序盤の観戦で、昨季以上に接点で戦えるかとポジティブにみていたが、チーム力はなかなか上がってこないまま終盤を迎えている印象だった。
勝者の方も不動のリーダー・クワッガ、得点源&チャンスメーカーのヴァレンス、そして司令塔家村くんを欠く布陣での戦いを強いられている。ここらのメンバーが健在なら、さらなる惨劇が繰り広げられていただろう。
そんな実質ワンサイドの80分だったが、試合後の囲みで感銘を受けたのは、敗者の〝重鎮〟でもあるサムだった。
この選手との付き合いは結構長く、直接コンタクトをしたのは2016年のブリスベンだった。個人的にはあまり気が進まなかった、五郎丸歩の取材のため、複数回この湿気に満ちた町に滞在したが、そこで力を付けてきたのが、このフィジー生まれ、オーストラリア育ちのミッドフィールダーだった。

取材対象の塩対応(これはゴローちゃん本人ではなくエージェントの問題だが)とは対照的に、いつも極東の島国からなにやら偏った取材目的でやってきたメディアにもフレンドリーに接してくれたのがサム・ケレビだった。空港などでの移動の際にも、1人ポーズを作ったり、あまり気の進まないゴローちゃんの肩を組んで、カメラの前まで引っ張り出したりと、いろいろ助けられた。
その一方で、大型タイフーンで深刻な被害を受けた祖国のために、同じフィジアンメンバーたちと、試合前のサンコープスタジアムのエントリーエリアで募金・支援活動を続けるなど「イイ奴」ぶりを発揮していた。
府中市是政のチームでも、ワラビーズの名に相応しい活躍を見せて浦安へと渡って来たが、今季で日本でのプレーは6シーズン目を数える。このキャリアながら年齢はまだ32歳。ブリスベンでは若くして主力メンバーとなったことで〝ベテラン感〟は強いのだが、年齢的にはまだまだ十分活躍出来る世代だ。
先に触れたように、この日のゲームでもBKラインで一際存在感を見せ続けたパフォーマンスに、いまさらながらこのポテンシャルを維持し続けることが出来る秘訣を聞いてみると、興味深い答えが返って来た。
「自分が大切にしているのは、モチベーションというより規律なんです。モチベーションに頼るのではなく、自分が日々やっていくルーティーンをこなす規律を大事にしている。それはD-Rocksでもインタナショナルでも変わらないので、例えば朝クラブハウスに来て、リハビリ担当コーチといつもいろいろなエクササイズをして、誰よりも早くに来てトレーニングしているという自負もある。そういう陰で見えてないところもあるからこそ、週末へいい準備が出来る。なので、試合でのいいパフォーマンスというのは、その副産物に過ぎないんです。朝ですか? 5時半に起きて6時半には来ています。これは若い頃から続けています。家は貧しかったので、ラグビーで成功することをモチベーションにしていたのですが、それが途中から規律を守る規律に変わったんです。これはレッズや様々なチームでメンターから学んだことでもあるんです」
ここまでトップリーグ→リーグワンと最前線でプレーしてくれば、概ねの相手チームや選手のことは掌握済みだろうが、それでも奢らず、自分自身のスタンダードを保ち続ける。この継続の力こそ、サムを32歳の今でもトッププレーヤーとして輝かせていると感じさせられた。同時に胸中に思い浮かんだのは、日本の選手たちがどこまでサムのような姿勢で自分と向き合い、ラグビーに向き合っているのだろうかという思いだ。こんな取り組みにチャレンジし続けることが出来れば、シーズン3試合しかスタメン出場出来ない選手は、スターターを10試合に伸ばせるかも知れない。この「6年生」から学ぶものは、まだまだ沢山あると再認識させられた金曜日の80分だった。
翌土曜日の観戦はBL東京vs横浜E。このゲームは、7連敗のトンネルから下位チーム相手ながら2連勝と息を引き返した連覇中のホストへの期待感があったが、予想外の展開となった。
兎に角防御が淡白過ぎる。そこには成功率でスクラム50%、ラインアウト73%というセットピースの苦闘も響いているが、イージーにブレークを許しての失点の多さは、残り2節での6位以上確保に不安を感じさせた。そんなパフォ―マンスが勝者を助けてしまったが、攻撃でインパクトを残した新鋭を称えるべき試合でもあった。今季アーリーエントリーから出場5試合目を迎えた#15 武藤航生だ。
U20、ジャパンXVらユース世代、次世代ジャパンでも〝走り屋〟の資質は十分に見せつけてきたが、リーグワンでも脚は武器になる。序盤のファーストタッチから外連味の無いランを繰り返し、8分には自慢の加速力とフットワークで防御を外しながらインゴールへ飛び込んだ。本人が「最初見えてなかった。いい先例でした」と苦笑したように、背後から追走してきたトイメン松永拓朗のタックルにグラウンディングを阻まれたが、この立ち上がりのアタックでこの試合の要注意人物という存在感は漂わせた。
「最初のノートライの場面でちょっと動揺してしまったが、そこで悪いプレーにゆくんじゃなくて、自分らしさをしっかり出せたのが良かった」

▲脚も凄いがイケメンぶりもエース級。関東エリア
での知名度はまだまだだがスターの資質は十分だ
すこし晴れやかに振り返った。175㎝、84㎏のサイズは、日本に多い小兵アウトサイドBKの領域だが、その仕掛けるアグレッシブな意識がいい。強いて例えるなら、復活を目指すウェールズで若き#15 として可能性を光らせるブレア・マレーを彷彿とさせるアタッカーだ。
「スピードは通用すると思ったが、それだけじゃ走れないので、最初のポジショニングの部分だったりをもっと伸ばしていきたい。それとタックルの部分はまだ課題がある」
結果この試合もスコアレスで5試合トライはないままだが、幻のトライから10分余りで、再び快足をトップギアに上げた。中央スクラムからの1次フェーズで今度は3人抜きで防御ラインを抜け出し、#12ジェシーのトライをアシストすると、折り返し後の44分には自陣からの右オープンで再び防御を抜き去り、またもジェシーのトライをお膳立てした。横浜で武藤といえば、天才肌の司令塔「ゆらぎ」だったが、このヤング武藤は脚で存在感を発散する。
WTBでも観たい脚だが、本人は自由度の高い〝しんがり〟がいいと言う。同じ#15でオールブラックスでも鳴らしたレオンHCは、この若き15番をこう評価する。
「FBとしては、先ず勇敢なところが大事だと思います。でも航生は今まで通りのパフォーマンスを出してくれれば明るい未来がある。コンテストのあるところで体を張ってくれる選手だと思うので、ここから先も楽しみだ」
チームはこの日の勝利で、かろうじてトップ6入りの可能性だけは残した。とはいえ、現在6位のBL東京との勝ち点差は9。つまり残り2節でBL東京が勝ち点2を手にするか、7-9位の3チームが勝ち点を上積みすればプレーオフの夢は断たれる。最後まで可能性は追求してほしい一方で、レオンHC1年目は立ち上がりの苦闘も踏まえれば、終盤ポテンシャルを出し始めたことが収穫としていいだろう。紹介した航生に、ゆらぎというダブル武藤に、こちらもスピードスターの15人制代表WTB石田吉平と、若い力がメンバーに食い込み始めている。#9 ファフの帰国は大きなマイナスだが、この2連勝から、来季へどこまでギアを上げていけるかに期待することにしよう。
そして、週末最終日の日曜日。この試合もリーグ4位と好調のBR東京を、7位のトヨタが圧倒した。試合は、前日の秩父宮同様にホストの上位チームが防御を崩壊させたゲームになったが、試合前のある〝出来事〟を書き残しておこう。
キックオフ前の練習は、時としてそのチームを知るためのヒントがある。日によっては、試合とは関係ない記事作成や、両チームスタッフとの情報交換などで、じっくりと見ることが出来ない場合もあるが、早目に記者席に着いたこの日は、トヨタの練習で、すこし「?!」なシーンがあった。
一通りの練習を消化して、多くのチームがタックルの軽いメニューを行うのが基本メニューだが、この日のヴェルブリッツは、1対1のいわゆる「生タックル」をしていたのだ。通常はウレタン製のタックルダミーに当たるのが常道なのを、敢えて「生」でやり続ける。確かに、生身の1v1タックルのメニューは皆無ではないし、タックルとはいえ強度は70%程度、タックルの姿勢や入るタイミング、ヒットポイントを確認するのを主眼としたメニューなので、あまり際立ったメニューでもドリルでもないのだが、どうにも引っかかっていた。タックルが勝負を決めた訳ではなかったが、勝者会見に臨んだスティーブ・ハンセンHCに敢えてこの生タックルについて聞くと、こんな説明をしてくれた。
「試合では生タックルが実際に起こる状況なので、やろうということです。また、フィジカルにプレーするというマインドセットの構築だとか、やはりコリージョンのスポーツなので、それに合ったウォームアップのメニューを導入しているので、ヒットパッドは使いません」
些細なメニューのチョイスではあるが、タックルをダミーでやるか生身でやるかのいずれが勝つためにはベターなのかと考え、拘るところも積み重ねから、この名将はウェールズ、母国NZでの黄金時代を築いたのではないか。そんな思いにさせられた、短いコメントだった。当初は、オールブラックス同様にイアン・フォスターに陣頭指揮を委ねた名将だったが、チームの苦闘に自ら前に出てきて、ようやく浮上の光が見え始めている。不勉強で、この名将がいつまで豊田市に滞在するかは関知していないが、ここから本気モードに入れば、来季以降のリーグも楽しみが1つ増えることになる。