専門外のスクラムについてのおはなし。

 

みちのくへの旅など〝寄り道〟したため、3月に予定していたネタを遅ればせながらアップした。せっかく遅らせたので、4月にも実は北与野にあった〝虎の穴〟を再訪問して、付け足しをしてから編集サイドに最終稿を手渡した。

 

2年前に〝開校〟した後、この教室の存在を知り「おや」と思っていたが、失礼ながら、企画倒れに終わる可能性も考えていた。開校1年以上が過ぎ、運営も出来ているのかという思いもあり、ペコさんに直接連絡。「先ず概要を聞かせて」とお会いしたら、概要のヒアリングがそのまま取材になってしまった。裏を返せば、それほど聞き応えのあるハナシだった。

 

 

 

 

今や堀江翔太や稲垣啓太がスポットを浴びる時代だが、それでもまだまだフロントローの〝市民権〟は十分とは言い難い。誰もに持て囃される時代じゃない。まぁ、それが出来ているのはジョージアだけかも知れないが…。

 

個人的にはフロントローという稼業は、究極的には縁の下の力持ちでいいとは思う。独り歩きするイメージで褒め称えられるのではなく、いかに仕事をやり遂げられたか。その中で、ペコさんが訴える通り、このポジションでも「輝ける場」はあるのは真理でもある。いや、むしろTBやバックロー以上に構造的であり理論的、そこに情緒的な要素が加わるのがフロントローの、そしてスクラムの世界だろう。

 

 

▲ペコさん曰く「昭和の練習ですよ」。その通りのメニューでスクラム師を育てる

 

 

普段は寡黙でシャイな男たちだが、スクラムを組むことにかけては雄弁だ。そして、組み合う瞬時に、両サイドがどう相手より優位に組むのか、個々にはどう首をとるのか、駆け引きと権謀術数を巡らせるフィジカル且つサイコロジカルな勝負を、80分の中で刻々と繰り返す。味わい深い、尚且つ人間臭いポジションだ。

 

今は亡き岡仁志監督を同志社に訪ねると、よくこうこぼしていたのを思い出す。

 

「もう今は、新入生は怖くてスクラムをよう組ませられんわ」

 

高校で1.5mルールーが導入され、中学では実質上ノンコンテスト。そこで、いきなり大学に入って先輩らとフルコンタクトで組み合うのは、当時でも危険なことと認識されていた。幸いなことに、大工大高(現常翔学園)ら全国トップクラスの強豪高校の指導者たちがスクラム練習を怠らないために、まだ組み合う経験を持ちながら大学に進学してくる新入生もいるのが救いだが、多くの高校ではそこまでスクラムを学ばないまま進学してくるのも現実だ。

 

2歩も3歩も引いてみれば、今でも、否今だからこそ更に、テストラグビーでも重要なファクターのスクラムを、大学1年で初めて本格的に組み始めるという現実は、代表強化には大きな疑問符が付く。勿論、安全面、とりわけスクラムの場合は、頚椎を痛める深刻な怪我も間違いなくある中で、ユース世代においそれとハードに組むことを求められないという世の流れもある。

 

 

▲コラム内に登場する南部くん。〝颯2世〟を目指す

 

 

だが、発想を「組ませない」から「安全に組む」という転換が、1.5mルール導入後、ここまで長きに渡り手付かずのまま放置されているのは議論の余地はあるだろう。

 

より安全に、そしてペコさんが唱えるように、よりスクラムを組むことを楽しめる環境をどう作っていくか。これは、未来を担う世代から「いま」の大人たちへ突き付けられた宿題のようなものだ。

 

 

かなり消化試合の様相に転じた日曜日。なので、すこしライトなお話しでのおさらいを。

 

とはいえ、秩父宮のカードは、入替戦回避を賭けた80分。

両チームには重要な1戦ではあったが、土曜日同様に下剋上なしの結果に終わった。

 

相模原にとっては、後半途中で4点差まで迫りながら、詰め切れない悔しい敗戦。だが、元を辿れば勝負のキーでもある立ち上がりに、3連続トライ献上が致命的過ぎた。〝追う側〟であるはずのチームが、何度かのソフト〇ックなタックルから崩されては、もう弁解の余地はない。

 

0-21から覚醒したように攻守に奮闘して、上手く試合を運べば勝てる圏内まで迫れたことは、苦い黒星の中での収穫だ。確定した〝大一番〟での自信に繋げられれば。

 

で、脚光の浴びるものは他の記者諸兄に任せがちではあるが、今回は浴びる方をおさらいしておこう。

 

1週間前の試合会場で、事前にチーム広報からお知らせがあったものだが、相模原戦後に横浜の至宝ファフ・デクラークの退団会見が行われた。

 

「日本での思い出は」「再び日本でプレーする機会は」というありがちな質問は、最初から興味なし。そこらは、諸々の記事に書かれているだろうから、そちらをご覧あそばされて、聞きたかったのは1点だけ。なるべく多くの記者に質問してほしいと思いつつ、こんな質問をファフにぶつけた。

 

「昨秋のスプリングボクス戦をみても、日本は遥かに格差があった。すこしでも近づけるために、4年間経験した日本のラグビーには何が必要なのか。感じるものがあれば教えてください」

 

コメント力の高いファンも、すこし時間を置きながら「う~ん、難しいなぁ」と呟き、こんな話をしてくれた。

 

「インターナショナルのラグビーはフィジカルの強さとセットピースがより大事になる。日本はスキルの高い選手もいるし、いい選手も沢山いて、どのチームもハードワークするけれど、厳しい戦況になると、そういうフィジカルとセットピースのところですこし疲れてしまうイメージがある。そこを改善出来れば、本当に素晴らしいチームになり、接戦が出来ると思うよ」

 

このレベルの選手になると、誰も言葉選びが慎重になるのだが、その中でも明確に「フィジカル」「セットピース」と指摘してくれたことがありがたい。誰でも分かっているような事ではあるが、ファフのような百戦錬磨のボカが指摘することの重みはある。

 

ファンの〝さよならゲーム〟が入替戦にならなかったことが、この日のポジティブファクターではあった。シーズンはクライマックスを迎えようとしている段階だが、その先に、否クライマックス途中からワールドカッププレイヤーが動き出す。

 

ファフの残した日本ラグビーへのヒントを、どう克服していけるか。新たに始まるRNCで7月に当たるイタリア、アイルランド、フランスは、その試金石としては最良の相手だ。7割方固まりつつあるジャパンスコットの中で、さらにどんなインパクトを加えて、戦術を構築していけるか。

 

ファフも今年10月で35歳の齢を迎える中で、会見でもボカを目指す気持ちも語っていた。深緑のジャージーを掴んだとしても、組み合わせ上、日本との対戦が実現するのは最速でも決勝トーナメント準々決勝と、かなり先の朧げな夢ではあるが、この世界屈指の#9が残してくれた金言を桜のジャージーが実現出来れば、2015年の衝撃を再現するような80分になるかも知れない。

 

 

【おまけ】

ファフについて書いたので、もう一つ小噺を。

試合後の囲み取材。横浜のCTB梶村祐介くんに話を聞いた際、最後にこんな冗談ばなしをした。

 

「じゃ、ファフ無き後は金髪ロン毛は梶村くんが継承するということで!」

 

ご本人、笑いながらこう冗談を切り返してくれた。

 

「金髪は無理ですが、来週の最終戦は皆でファフブランドのブリーフでも履いていきますよ」

 

ファフといえば、ワールドカップ制覇の後のロッカーでの南アフリカ国旗のブリーフ姿で注目を浴びたが、話題に乗じてオフィシャル・ブリーフ等を販売する副業にもチャレンジ中だ。ファフが去った後も、ブリーフは日本ラグビー界に残されるか。梶村くんには「じゃあ、日本のブリーフ総代理店でも副業にして頑張って!」と囲み取材を終わらせた。

 

 

 

結論からいうと、土曜日のリーグワンでは〝風〟は吹かなかった。

 

3試合全てが〝トップ6〟生き残りに関わるゲーム。金曜日の下剋上に続く変化を期待したのだが、全て上位チームの勝利に終わったため、戦前の混戦模様が80分後にはプレーオフ進出チーム確定という結末になった。

 

観戦したのは秩父宮でのBL東京(6位)vs静岡BR(8位)。3カードの中でも最も〝勝者が笑う〟一発勝負度の高い試合だったが、リーグ連覇中の6位が力の差を見せた。

 

勝負の肝はブレークダウンに尽きる。

 

ターンオーバー獲得数のスタッツだけを見れば7対6と大差はない。だが、試合が進み、個々の選手の消耗も進む中で、勝者が接点でのファイトで優位に立った。スタッツに残るターンオーバー、そしてジャッカル以外にも、BL東京の接点でのファイトに重圧を受けた静岡がサイドエントリー、オフフィートとミスを繰り返し、数値以上の格差を生んでいた。

 

脳震盪での長期離脱から復帰2戦目のCTB眞野泰地、LOジェイコブ・ピアース、途中出場のFL木戸大士郎もヘッドオンで突っ込むような必死のブレークダウンファイトで気を吐いた。今季が終われば府中を去るリッチー・モウンガの50キャップを称えるにはいい戦いぶりになった。

 

中でもインパクトを残したのはSH高橋昂平。長らく1年後輩の杉山優平の控えとしてベンチスタートを続けてきたが、今季第4節相模原DB戦から「9」を背負ってきた。

 

この1歳差の2人は同じポジションでも明確にキャラクターが異なる。優平がパスワークを軸に攻撃的な9番として筑波大時代から注目を浴びた一方で、昂平は防御とブレークダウンでのファイトというSHらしからぬ強みをみせてきた。その「らしからぬ」プレーが、この日はいつも以上に勝利へのエッセンスになっていた。

 

167㎝、79㎏。典型的な和製SHの規格だが、この日のターンオーバー数はジェイコブと並ぶ両チームトップの3回。15-22とリードされた直後の前半36分は、一度はラックでターンオーバーされたボールに絡んでPKを奪い、その後のWTBジョネ・ナイカブラのトライに繋げた。62分には、自陣22mライン内で3度スクラムを選択した静岡の右展開で、CTBセミ・ラドラドラの突進に、眞野のハードタックルに続くジャッカルで窮地を救った。73分にも、猛反撃を仕掛けた相手に、今度は木戸のタックルとシンクロして再び絵に描いたような3度目のジャッカルを決めた。

 

「FWの後ろに立っているので、絡み易いポジションだと思うし、僕の強みにしている武運。真っ向勝負は最初から分かっていたので、僕らも1週間準備してきた。ここまでちょっと僕らが受けてしまう試合があったので、今日は本当に皆が熱を持っていいディフェンス出来たかな。静岡は1人ひとりいいキャリー出来る選手がいるが、すこし孤立してしまうケースもあったので、僕個人としては狙えるところは狙っていこうと意識していました」

                          

本人はこう両チーム最多のターンオーバー(全てジャッカル)を振り返ったが、先発起用を決めたトッド・ブラックアダーHCはこう評価する。

 

「いままでパスだったりSHとして課題があるかなと思っていた。その中で強みは、今日見せたようにジャッカル。タフに。しんどいところに頭突っ込んでいける選手だが、課題が残っていて去年まで入ったり出たりだったが、シーズンオフは9番を自分のものにするぞという気構えで取り組んできた。課題を克服してチャンスをしっかりと掴んでいる」

 

恩師でもある専修大監督・村田亙は華麗な個人技で日本代表でも不動の9として活躍したが、その華やかさとは正反対の〝武器〟で魅了する。本人は今季「9」を背負い続ける成長をこう振り返る。

 

「僕自身、パス、キックのクオリティーをしっかり見つめ直して、スキルコーチと一緒に取り組んできた。シーズン前の鹿児島合宿あたりで、トディ(ブラックアダーHC)からも『自分らしさを出していったら』と話してもらった。(試合に)出られないときはチームに合わせようという気持ちだったが、自分の強みを出していかないと出られないなと考えて、それが上手く繋がっています」

 

優平もここで「21」に甘んじる選手でも才能でもない。歴史を紐解けば、その村田亙を筆頭に、伊藤護、藤井淳、吉田朋生、現役の小川高廣ら歴代府中の9番は日本代表にも選ばれてきた。この個性の全く異なる2人の9番も、十分にジャパンを狙える圏内だ。昂平、優平の争いの先に、桜の9番も見えてくる。

 

高橋が象徴するこの日の接点ファイトは、主将リーチマイケルがチーム全体に対していいリードをしてきたようだ。前週、勝てばプレーオフ進出にリーチがかかる10位横浜E戦で26-50と大敗。黒星もさることながら、その不安定さに先行きの不透明感を残した。結果的に一騎打ち状態となった静岡戦へ向けては、「ディフェンスもアタックもコリージョンエリアに拘ってやってきた」と振り返るように、相手も身上とするブレークダウン勝負をキーポイントに置いて再始動したが、火曜日のフィジカルなセッションの出来が悪く、スキッパーは練習メニューの〝追試〟を指示。翌日のオフを跨いで、木曜日の練習で再びブレークダウンメニューをハードにやり直して、チームも激しさを取り戻したという。

 

ゲームを見ての印象では、単なる激しさよりも、ダブルタックルや接点でのセカンドマン、サードマンの寄りとサポートも意識、反応で相手を凌いでいた。攻撃権を持っても接点からのボールリサイクルで微妙に精度を欠いた静岡と僅かな差が、トップ6入りとプレーオフ進出失敗という大き過ぎる差に結びついた80分だった。

 

無事PO進出で3連覇への可能性を残した勝者だが、諸手を挙げて喜んでいる状態ではない。静岡が目立っていたものの、イージーにボールを手離すシーンは少なくない。トップ4チームに比べると、この日の2チーム同様「微差」ではあっても、明らかに差がある。その一方で、意識してフィジカルエリアでのバトルで善戦したこと、攻守と左足キックでキーになる眞野、アタックの軸になるCTBロブ・トンプソン、1年ぶりに復帰したWTBジョネ・ナイカブラの見事な回復ぶり、ラインアウトの精度アップなど、勝つための素材は整いつつある。立ち上がりのスコアチャンスなどで、さらにキャリーとチャンスも作れるHOアンドリュー・マカリオを、さらにキャリーとして生かすフェーズを作れれば、戦闘力はさらに上がるだろう。

 

参考までにだが、前半14分のジョネの自らのグラバーキックを好捕してのトライは、今季奮闘するFL山本浩輝の超絶オフロードの為せる業。こういう脇役(失礼ながら)が働き始めると、この先の戦いには大きなプラス材料だ。

 

主将マイケルが会見で呟いた一言が、いまのチーム状態をよく物語っている。

 

「特別なことはしていない。初めてちゃんとラグビーをしたという感じ」

 

 

▲今日のヒーロー、オスティン。昨季のU23代表、ジャパンXVでの経験を新チー

初陣でも見事に見せつけた。この先、このサイズでどこまで進化を続けられるか

 

 

今回は早めに〝おさらい〟を。

金曜ナイトゲーム。予期せぬ結果で、週末がスタートした。

 

浦安D 〇27-24● 埼玉WK

 

ここまで15勝1敗の首位が、3勝13敗の最下位に敗れるとは。

 

それでも、番狂わせにも正当な理由はある。

埼玉の攻撃が立ち上がりから少々強引過ぎた。

フィジカルにダイレクトに。激しいヒットを見せたが、この戦い方が浦安の勝機を導いた。

 

数字が物語る。

 

       浦安  埼玉

テリトリー  41%  59%

ポゼッション 42%  58%

パス     149回   212回

ランメーター 275m  462m

 

どの数値からも敗者が優位に立っていることを示している。

だが、この数字を上回ったものがある。

 

タックル回数 浦安209回 埼玉127回

 

一般的にはタックル回数が多い=防御シーンが多い=負け試合という3段論法が成り立つが、この試合ではセオリーは通用しなかった。成功率を見ると両者80%前後と、決して「エクセレント」な数値ではないが、この圧倒的な回数が勝負を分けたと感じている。首位とはいえ、あまりにも真っ向勝負をしてきたチームは、最下位とはいえ、決意を込めたタックルの餌食と化した。

 

タックル回数では上位10番までを浦安勢が独占。その象徴がトップのタックル28回をマークした森山海宇オスティンだ。因みに2位のイオアネとは5回の差をつけた断トツだった。

 

この日が正真正銘のリーグワンデビュー。東洋大からやって来たルーキーだが、181㎝、107㎏と、決して大型FWではないが、相手のFLベン・ガンター、No8ジャック・コーネルセンという190㎝台のジャパン勢としっかりと渡り合った。

 

勝者が80分間浴びせ続けたタックルも響いて、敗者は高いポセッション、パス回数を残しながらボールをトライラインまで、勝者と同じ4回しか運べなかった。

象徴的な数字は、敵陣22mライン内侵攻回数での得点率にも読み取れる。

 

22m内侵攻  6回  10回

得点率    4点   2.4点

 

つまり浦安はわずか6回のレッドゾーン侵入で平均4点を奪ったのに対して、埼玉は10回攻め入りながら平均2.4点しか奪えなかったのだ。勝者は、前週致命傷の一つだったラインアウトでもノーミスと改善を見せている。

 

惜しむらくは、この勝敗でも、両雄ともに決定的な順位変動は起こらないこと。強いて言えば、敗者は3位以上で挑むプレーオフへすこし引き締まり、勝者は入替戦へ向けて自信を一歩進めたことが収穫か。

 

残る土日。この試合に並ぶ好ゲーム、予期せぬ結末がどれだけ見られるか。

期待したいものだ。

 

 

 

前後半に分けたため、こちらのアップが遅くなりました。

「その1」が洋モノに終始したため、今回は国内モノ。先ずは金曜日のナイトゲームから。

 

まだ夜間試合はちょっぴりビールの有難みはなさそうだが、ゲームもそこそこ〝涼し気〟な内容に終わった。

 

兎に角、前半に尽きる勝負。

すこしディビジョン1を掴みつつある兆しを感じていた12位だったが、久しぶりの観戦は一言で言い表せば、なんだか逆戻りという印象だった。

 

0-28というスコアが良く物語っているが、その内容が厳しい。

ゲーム主将も務めた#8 ヤスパー、#10 オテレ、#12 サム、そして#15 亮平さんと、インタナショナルを要所に配しながら、1つ1つのコンタクトで数センチではあっても、確実に負けている。ポゼッション、テリトリーで上回っていても、スコアの起点としたい敵陣でのラインアウトをミスで潰し、前半インジャリータイムの相手レッドゾーンでの攻撃も、あまりに残念すぎるハンドリングエラーで終えるなど、仕留める力の無さがモロにスコアに表れた。敵陣22mエントリー侵入時の平均スコアは静岡の4.4得点に対して浦和は1.4。攻めていても得点に繋げられないチーム状態が読み取れる。

 

後半なんとか反撃に転じたが、それも開始4分であっさりと7点を奪われてから。35失点の時点で、ほぼほぼ詰んでいたゲームだった。80分を観て感じるのは、ヤスパー、サムという実力者だけが接点で戦い、相手防御をブレークして、その後は〝その他〟がフィニュシュ出来ず、フィニッシュされたゲーム展開だった。シーズン序盤の観戦で、昨季以上に接点で戦えるかとポジティブにみていたが、チーム力はなかなか上がってこないまま終盤を迎えている印象だった。

 

勝者の方も不動のリーダー・クワッガ、得点源&チャンスメーカーのヴァレンス、そして司令塔家村くんを欠く布陣での戦いを強いられている。ここらのメンバーが健在なら、さらなる惨劇が繰り広げられていただろう。

 

そんな実質ワンサイドの80分だったが、試合後の囲みで感銘を受けたのは、敗者の〝重鎮〟でもあるサムだった。

 

この選手との付き合いは結構長く、直接コンタクトをしたのは2016年のブリスベンだった。個人的にはあまり気が進まなかった、五郎丸歩の取材のため、複数回この湿気に満ちた町に滞在したが、そこで力を付けてきたのが、このフィジー生まれ、オーストラリア育ちのミッドフィールダーだった。

 

 

 

 

取材対象の塩対応(これはゴローちゃん本人ではなくエージェントの問題だが)とは対照的に、いつも極東の島国からなにやら偏った取材目的でやってきたメディアにもフレンドリーに接してくれたのがサム・ケレビだった。空港などでの移動の際にも、1人ポーズを作ったり、あまり気の進まないゴローちゃんの肩を組んで、カメラの前まで引っ張り出したりと、いろいろ助けられた。

 

その一方で、大型タイフーンで深刻な被害を受けた祖国のために、同じフィジアンメンバーたちと、試合前のサンコープスタジアムのエントリーエリアで募金・支援活動を続けるなど「イイ奴」ぶりを発揮していた。

 

府中市是政のチームでも、ワラビーズの名に相応しい活躍を見せて浦安へと渡って来たが、今季で日本でのプレーは6シーズン目を数える。このキャリアながら年齢はまだ32歳。ブリスベンでは若くして主力メンバーとなったことで〝ベテラン感〟は強いのだが、年齢的にはまだまだ十分活躍出来る世代だ。

 

先に触れたように、この日のゲームでもBKラインで一際存在感を見せ続けたパフォーマンスに、いまさらながらこのポテンシャルを維持し続けることが出来る秘訣を聞いてみると、興味深い答えが返って来た。

 

「自分が大切にしているのは、モチベーションというより規律なんです。モチベーションに頼るのではなく、自分が日々やっていくルーティーンをこなす規律を大事にしている。それはD-Rocksでもインタナショナルでも変わらないので、例えば朝クラブハウスに来て、リハビリ担当コーチといつもいろいろなエクササイズをして、誰よりも早くに来てトレーニングしているという自負もある。そういう陰で見えてないところもあるからこそ、週末へいい準備が出来る。なので、試合でのいいパフォーマンスというのは、その副産物に過ぎないんです。朝ですか? 5時半に起きて6時半には来ています。これは若い頃から続けています。家は貧しかったので、ラグビーで成功することをモチベーションにしていたのですが、それが途中から規律を守る規律に変わったんです。これはレッズや様々なチームでメンターから学んだことでもあるんです」

 

ここまでトップリーグ→リーグワンと最前線でプレーしてくれば、概ねの相手チームや選手のことは掌握済みだろうが、それでも奢らず、自分自身のスタンダードを保ち続ける。この継続の力こそ、サムを32歳の今でもトッププレーヤーとして輝かせていると感じさせられた。同時に胸中に思い浮かんだのは、日本の選手たちがどこまでサムのような姿勢で自分と向き合い、ラグビーに向き合っているのだろうかという思いだ。こんな取り組みにチャレンジし続けることが出来れば、シーズン3試合しかスタメン出場出来ない選手は、スターターを10試合に伸ばせるかも知れない。この「6年生」から学ぶものは、まだまだ沢山あると再認識させられた金曜日の80分だった。

 

翌土曜日の観戦はBL東京vs横浜E。このゲームは、7連敗のトンネルから下位チーム相手ながら2連勝と息を引き返した連覇中のホストへの期待感があったが、予想外の展開となった。

 

兎に角防御が淡白過ぎる。そこには成功率でスクラム50%、ラインアウト73%というセットピースの苦闘も響いているが、イージーにブレークを許しての失点の多さは、残り2節での6位以上確保に不安を感じさせた。そんなパフォ―マンスが勝者を助けてしまったが、攻撃でインパクトを残した新鋭を称えるべき試合でもあった。今季アーリーエントリーから出場5試合目を迎えた#15 武藤航生だ。

 

U20、ジャパンXVらユース世代、次世代ジャパンでも〝走り屋〟の資質は十分に見せつけてきたが、リーグワンでも脚は武器になる。序盤のファーストタッチから外連味の無いランを繰り返し、8分には自慢の加速力とフットワークで防御を外しながらインゴールへ飛び込んだ。本人が「最初見えてなかった。いい先例でした」と苦笑したように、背後から追走してきたトイメン松永拓朗のタックルにグラウンディングを阻まれたが、この立ち上がりのアタックでこの試合の要注意人物という存在感は漂わせた。

 

「最初のノートライの場面でちょっと動揺してしまったが、そこで悪いプレーにゆくんじゃなくて、自分らしさをしっかり出せたのが良かった」

 

 

▲脚も凄いがイケメンぶりもエース級。関東エリア

の知名度はまだまだだがスターの資質は十分だ

 

 

すこし晴れやかに振り返った。175㎝、84㎏のサイズは、日本に多い小兵アウトサイドBKの領域だが、その仕掛けるアグレッシブな意識がいい。強いて例えるなら、復活を目指すウェールズで若き#15 として可能性を光らせるブレア・マレーを彷彿とさせるアタッカーだ。

 

「スピードは通用すると思ったが、それだけじゃ走れないので、最初のポジショニングの部分だったりをもっと伸ばしていきたい。それとタックルの部分はまだ課題がある」

 

結果この試合もスコアレスで5試合トライはないままだが、幻のトライから10分余りで、再び快足をトップギアに上げた。中央スクラムからの1次フェーズで今度は3人抜きで防御ラインを抜け出し、#12ジェシーのトライをアシストすると、折り返し後の44分には自陣からの右オープンで再び防御を抜き去り、またもジェシーのトライをお膳立てした。横浜で武藤といえば、天才肌の司令塔「ゆらぎ」だったが、このヤング武藤は脚で存在感を発散する。

 

WTBでも観たい脚だが、本人は自由度の高い〝しんがり〟がいいと言う。同じ#15でオールブラックスでも鳴らしたレオンHCは、この若き15番をこう評価する。

 

「FBとしては、先ず勇敢なところが大事だと思います。でも航生は今まで通りのパフォーマンスを出してくれれば明るい未来がある。コンテストのあるところで体を張ってくれる選手だと思うので、ここから先も楽しみだ」

 

チームはこの日の勝利で、かろうじてトップ6入りの可能性だけは残した。とはいえ、現在6位のBL東京との勝ち点差は9。つまり残り2節でBL東京が勝ち点2を手にするか、7-9位の3チームが勝ち点を上積みすればプレーオフの夢は断たれる。最後まで可能性は追求してほしい一方で、レオンHC1年目は立ち上がりの苦闘も踏まえれば、終盤ポテンシャルを出し始めたことが収穫としていいだろう。紹介した航生に、ゆらぎというダブル武藤に、こちらもスピードスターの15人制代表WTB石田吉平と、若い力がメンバーに食い込み始めている。#9 ファフの帰国は大きなマイナスだが、この2連勝から、来季へどこまでギアを上げていけるかに期待することにしよう。

 

そして、週末最終日の日曜日。この試合もリーグ4位と好調のBR東京を、7位のトヨタが圧倒した。試合は、前日の秩父宮同様にホストの上位チームが防御を崩壊させたゲームになったが、試合前のある〝出来事〟を書き残しておこう。

 

キックオフ前の練習は、時としてそのチームを知るためのヒントがある。日によっては、試合とは関係ない記事作成や、両チームスタッフとの情報交換などで、じっくりと見ることが出来ない場合もあるが、早目に記者席に着いたこの日は、トヨタの練習で、すこし「?!」なシーンがあった。

 

一通りの練習を消化して、多くのチームがタックルの軽いメニューを行うのが基本メニューだが、この日のヴェルブリッツは、1対1のいわゆる「生タックル」をしていたのだ。通常はウレタン製のタックルダミーに当たるのが常道なのを、敢えて「生」でやり続ける。確かに、生身の1v1タックルのメニューは皆無ではないし、タックルとはいえ強度は70%程度、タックルの姿勢や入るタイミング、ヒットポイントを確認するのを主眼としたメニューなので、あまり際立ったメニューでもドリルでもないのだが、どうにも引っかかっていた。タックルが勝負を決めた訳ではなかったが、勝者会見に臨んだスティーブ・ハンセンHCに敢えてこの生タックルについて聞くと、こんな説明をしてくれた。

 

「試合では生タックルが実際に起こる状況なので、やろうということです。また、フィジカルにプレーするというマインドセットの構築だとか、やはりコリージョンのスポーツなので、それに合ったウォームアップのメニューを導入しているので、ヒットパッドは使いません」

 

些細なメニューのチョイスではあるが、タックルをダミーでやるか生身でやるかのいずれが勝つためにはベターなのかと考え、拘るところも積み重ねから、この名将はウェールズ、母国NZでの黄金時代を築いたのではないか。そんな思いにさせられた、短いコメントだった。当初は、オールブラックス同様にイアン・フォスターに陣頭指揮を委ねた名将だったが、チームの苦闘に自ら前に出てきて、ようやく浮上の光が見え始めている。不勉強で、この名将がいつまで豊田市に滞在するかは関知していないが、ここから本気モードに入れば、来季以降のリーグも楽しみが1つ増えることになる。