
PNCものは、大会トータルでのコラムと軌道修正。なので、途中経過という意味合いでカナダ戦をすこしメモ書きしておこう。
夏のウェールズ・シリーズをドローで終えた後の最初のテスト。
「キョウハゼンブワーナーネ」
会見スタート前のエディーさんのおどけぶりが、この試合の評価と受け止めた。勿論、コメントは人生初主将を勝利で飾ったスキッパーをいじったものだ。
その新米主将に、メンバー23人中ノンキャップ4人、1桁キャップ8人という若い布陣で57-15快勝でのPNCスタート。指揮官としては、安堵の気持ちもあったとは思うが、スタジアムを出て夜風に吹かれての帰路は、モヤモヤした思いに包まれた。
開始3分でNo8ファカタヴァ・アマトがPK速攻からの先制トライ(ゴール)と幸先いいスタートを切ったものの、立ち上がりからポール・ウィリアムズ・レフェリーの笛が鳴り続けた。前半だけで、10-17ビハインドのメイプルリーフスの反則5に対してブレイブブロッサムスは8個の反則を積み上げた。
エディーは「ウェールズ戦以降試合から遠ざかっていた影響もあった」とチームの実戦でのコンビネーションの不十分さや力みも響いたと話したが、ゲームの主導権を握るために重要な序盤でなかなかゲームをオーガナイズ出来ないのは、段階的に上位国と対戦する「これから」への深刻な課題でもある。前後半トータルの反則数は敗者の1.5倍の12個。特に前半笛を連発させたことは、新米リーダー・ワーナーを筆頭に、ウィリアムズの笛の傾向に上手くアジャスト出来なかったという猛省材料だ。前半のスコア17-10は、23年ワールドカップ出場を逃したチーム相手では負けに等しい数字だった。
後半15分のアマトの2本目のトライ、直後のワーナー主将の独走あたりでメイプルリーフスがガス欠になって勝負は決まってしまった。快勝に多くのメンバーがにこやかに引き上げる中で、13キャップながらすでに中堅になろうとするSH藤原忍も顔を顰めた。
「この(前半の)試合をやったら、強豪にはやられますね」
確かに世界ランク13位が24位を圧倒した80分間だった。だが、手元のメモで前半でジャパンが相手22mライン内へ侵入したのは7回。だが、スコアをして自陣に返って来たのは3回(2トライ、1PG)に過ぎない。対する敗者は2回の侵攻で1トライ、1PGと効率性では勝者より上だった。
この前半のスコア決定力の差は、指摘した反則数と、これは新生エディージャパン始動からの課題でもあるすこし無理な状況でのパスによるハンドリングミスが響いた。敵陣ゴール前でのラインアウトミスも、相手次第では致命傷に成り兼ねないものだった。ちなみにジャパンの失点は、自陣ゴール前マイボールラインアウトのミスから逆にカナダにラインアウトモールを押し込まれたトライ(ゴール)と、カウンター攻撃からゴール前に攻め込まれてのノットロールアゥエーでと、自分たちのミスから許したものだった。
「ミスなら修正すればいい」。こんな意見もあるだろうが、主導権争いの大事な時間帯に自分たちのミスでスコアチャンスを逸して、同様にミスで相手にスコアを献上したのが前半の有様だ。前半でいえば、浅く蹴ってマイボールにしようと狙ったキックオフも相手に簡単に捕球を許した。ここは、カナダのスキルの低さで、深刻な状況には陥らなかったが、上位国相手にはまだまだ熟成が必要だと印象付けた。
後半修正してしっかり勝ち切れたのは「めでたしめでたし」だったが、おそらく決勝で当たるフィジー(世界ランク9位)、そして10月のワラビーズ(同6位)、そして欧州でのスプリングボクス(同2位)、そしてシャムロック(同3位)と段階的に上がっていく強豪との対決では、かなり厳しい戦いを強いられることになる。
目を向けるべきは、若手の経験値を上げるにはもってこいの世界24位とのテストや、その24位にやられた次週の世界18位、準決勝で当たるアイランダー辺りの〝弱い者いじめ〟ではなく、年末に行われるRWC2027のドローに影響する世界ランキングをどこまで上げることが出来るか、或いはどこまで下げずにいられるかだ。
勿論、テストマッチという重要な試合で若手投資が出来るPNCのメリットはあるが、「初主将快勝発進」などと浮かれるよりも、立ち上がりから40分間で起きたことを冷静に考えるべきだろう。
その一方で、日本が武器とするべきアタック面では、これから完成度を高めていけば武器になりそうな萌芽も見れた。SO李承信の外側にフラット気味のラインを敷き、ここからダイレクトにポイントを作る、内返し、バックドアの深いラインからのオープン、そして大外への飛ばしパスと、バリエーションのあるアタックを創り出そうと意図しているように見えた。そこにバックローのサポートを加えれば、アタックの厚みは更に増していく。真新しい戦法というよりは、ジャパンのスピードを生かしながら、そのバリエーションの多さで相手防御を惑わせ、防御の何処にスペースを生み出させようという試みと感じ取れた。
防御でも、前半20分からの自陣ゴール前で2回連続でラインアウトモール、そしてライン攻撃を封じ込んだのは、世界20位台相手には十分守り切れるのは証明した。ちなみに2回目のモールでは、サイドを崩そうとした相手HOの懐に小さなWTB石田桔平が喰らいいてタッチへと押し出している。その後のマイボールラインアウトミスからの先に触れたトライ献上は反省材料ではあるが、この防御を段階的にレベルが上がっていくこれからのテストマッチでどこまで見せられるかも注目だ。
選手個人にスポットを当てると、やはり派手なタックル、ジャッカルで魅せたのはFLベン・ガンター。タックル回数(15)、うち完璧に相手を封じ込んだドミナントタックル(3)、ボールターンオーバー(4)とコンタクトエリアでチーム最高数値を叩き出した。ガンターが〝陽〟のプレーで活躍したが、地味に仕事を続けたのはLOで出場したワイサケ・ララトゥブア。常にボール近くを走り続け、ラックスイープなどのランナーのサポートプレーで仕事人ぶりを発揮。ボールキャリーはスピードが武器のNo8アマトの9回に次ぐFW2位の8回を数えた。彼のワークレートを生かすには、ベストポジションがバックローか?
BKではWTB石田桔平が、自慢の快足を飛ばす派手なランこそ多くはなかったが、ボールキャリー(15)、キャリーメーター(85)、ラインブレーク(4)、完璧に相手を抜く突破(4)と気を吐いた。本人は前半2度のトライチャンスをフィニッシュ出来なかったことを課題に挙げたが、エディーは「自分からボールを貰いに行くプレーで終盤トライを獲ったのは評価出来る」と、サインプレーも含めた終盤3分での2トライを評価した。