皆さん、昨夜はオオタニさんの大活躍に大はしゃぎ?

こちらはハミルトンとシドニーの計160分を満喫しました。

 

今週はSRPに6Nも開催ながら、国内(D1)が順延開催1試合のみと、恐怖を感ぜず過ごせそうな中で、南半球から週末がスタートした。

 

最初のキックオフはハミルトン。ゲームは3節修了で1敗のホストと1勝のヴィジターという成績通りの展開になってしまった。

 

敗者が余りにもイージーにラインブレークを許し、格差を印象付けた試合になったが、それを差し引きながらも勝者の流れるような(いい意味で)アタックラインが印象に残る80分だった。

 

このラインアタックのキーになったのが、ホストチームの強みとするスタイル。しっかりとコンタクトで体を当て、そのひたむきな繰り返しから防御ラインにスペースをクリエートして攻撃ラインで突く。最終的にはタッチ際でゴールラインを割ってスコアするラグビーを貫いた。

 

先ず目を惹いたのは#12クィン・トゥパエア。自身の先制トライはご愛敬ながら、次のトライでは中盤での左展開での好判断のパスでラインブレークをアシストすると、TMO→幻のトライ直後のチーム3本目のトライでは左サイドへの好オーバーラップでアシストした。

 

ABsキャップは24と若手→中堅へとステップアップしようとしている立ち位置に居るミッドフィールダー。日本では黒衣の〝予備軍〟としての来征でお馴染みの選手でもあるが、自分自身がどう走ればBKラインでボールが動くかを考えたプレーが光る。アントンが神戸に引っ越したが、この熟成への入り口に近づいている#12の成長が、コアメンバー離脱のリスクを最少のものに留めている。

 

そのクィンが中心に立つアタックラインを見ると、1stトライをフラットなラインへの飛ばしパスで奪うと2ndトライは見事なバックドアで仕留め、さらに3本目は再び浅いラインでの飛ばしパスと、状況に応じて柔軟にアタックをモディファイしながら、美しくデザインされた攻撃でモアナを叩きのめした。

 

褒め称えた#12以外にも、幻のトライにはなったが、華麗なスワーブから1度はトライのジャッジとなったランを見せた実績十分の#14エモ二・ナラワ、独特の(チームオーダーだろうが)内側のポジショニングからチャンスボールへ駆け込むプレーが光ったパリ五輪代表#11レロイ・カーターと危険なBKが並ぶ。先に触れたアントンと共に船橋へ本格的に引っ越したショーンと主力が抜けても、戦力ダウンを感じさせない強さを印象付ける。 

 

昨季はプレーオフ目前の7位まで浮上した敗者だが、アントン同様神戸へ戻ったアーディーらが抜けて、再び苦難のシーズンを迎えている。#9には、日本のファンには懐かしきオーガスティン・プルがモアナデビューを果たしたが、気の利いた50/20を狙ったキックやジャッカルを見せる一方で、動きのシャープさでは年相応なパフォーマンスでもあった。

 

敗者でインパクトを感じさせたのは、FWでは#8セミシ・トゥポウ・タイロア。22歳の若手だが、とにかく縦の勝負に圧倒的に強い。自身のトライは、レフのチーフス#9ラティマへの〝オブストラクション〟に助けられたが、真っ向勝負は185㎝、113㎏のサイズを遥かに上回る破壊力を持つ。今風の機動力の高いBRではないが、まだ馬力系のパワー・エイトが欲しいチームにはもってこいだ。

 

そしてもう1人が#15グレン・ヴァイフ。メルボルンでプレーしていたようだが、チーム消滅後はリーグ・チームを経て昨秋に日本の丸和入り。すでに公式戦でもプレーをして、オフにモアナに参加中という選手だ。まだ24歳と若手だが、この劣勢のゲームでも、アタックシーンで自らのボディーターンで2度防御をかわして1回はトライに繋げた。ターンのボディーバランスと、ターン後の加速力はアタッカーとして可能性を秘める。

 

金曜の〝第2試合〟も、初戦に続きワンサイドの惨劇になった。このゲームを悲惨なものにしたのは、ハミルトン同様勝者のアタックと言いたいところだが、一重にホストである敗者の防御に尽きる。

 

兎に角、「点」で戦えたとしても線ではザルの防御では話にならない。期待した日本代表主将がワークを見せる前にボールがインゴールへ運ばれるようなゲームに終始した。勝者も幾つかの脆い防御を見せたが、それも薄らぐほどのホストチームの穴だらけの防御は、システムの再構築が必要だろう。

 

その中で個人にスポットを当てると、敗者の#11、お馴染みのMaxの脚はこの日も輝いた。30分のトライは、パスを受けて左隅にグラウンディングするだけのシンプルなものだったが、あの相手防御が正対して左サイドはタッチラインという間隙でインゴールに潜り込めるだけで非凡さを印象づける。このゲームは後半フルボッコという展開だったが、その中でインタセプトから2本目のトライを決めたのも、やはり「持って」いる。これで3節で6トライ。以前にも触れたが、今夜エディンバラで戦う、ステージの異なるブルーのシャツの#11とのトライ競演が楽しみだ。

 

まだ第3節たけなわのSRPだが、序盤の印象だと、上位争いの常連、ハミルトンの完成度が高く、ウェリントンも善戦、そこにタスマン海を挟んだライバルたちの中ではキャンベラが頭一つ抜けている。ここに、昨季のようにジワリとクライストチャーチが浮上してくるのか、はたまたオークランドの覚醒はあるのか。こんな展開で、シーズンは秋口へと進んでいく。

 

 

 

会見に参加したのは左から西村弥部長(やはり政経学部教授!)、高野新監督、神鳥監督 

 

 

オールブラックス次期HC発表と時を合わせて? 紫紺の監督も就任会見を開いた。

 

こちら、すこしややこしいのは現状の高野くんの肩書きは「HC」。つまり明治大は監督・HC2頭体制でここまでやって来たのだ。で、今回は神鳥裕之監督が今月末で退任して、高野くんがHCから監督に就任する。

 

新監督本人も、所属先のスピアーズ率いるフランさんは「HCがいて監督というのは理解してないと思います」と苦笑したように、現行の国内チームでは、あまり見かけない体制ではあるが、グラウンド内外で様々な向き合い方が求められる昨今の学生スポーツ事情を考えると、管理者としての「監督」とグラウンド上での指導に重きを置く「HC」を分けるのは比較的理に適った人事でもある。ちなみに、現状〝空位〟になるHCを置くかは、これからのアシスタントも含めたコーチ人事をお待ちあれ。

 

で、高野彬夫新監督だ。

 

一時は、後継者として23年にコーチングスタッフ入りした杉本晃一ACという声もあったが、今季限り所属先のトヨタへ戻ることになった。会見では、新旧両監督から、1年前のオフには決まっていたと説明があったが、神鳥監督は「学生チームをまとめていく人材はそういない。ラグビーを教えるだけなら、多くの優秀な指導者はいるが、学生のメンタリティーだとか、人間的な成長の部分であったりとか、そういうところも含めてしっかり指導できる人材が後継者として少ない中で、高野新監督と出会えたことは一番大きかった」とエールを贈った。

 

大学名と1月の結果をみれば、誰でも重圧を感じる仕事を実質スタートしている新監督は、こんな就任挨拶をしている。

 

「神鳥さんを日本一にして送り出そうという思いでやってきて、それを実現出来たのが嬉しい。いろいろな人にプレッシャーになるんじゃないかと言われるが、私としてはこんなありがたいことはないなと思っています。常々学生にはチャレンジしろとかエラそうなこと言ってますので、僕も一つの大きなチャレンジになりますけれど、何より明治大学とラグビー部のために全力を注ぎたい」

 

この名門大学ラグビー部については、先月のタイソンくんに続き今月目処にもう一本コラムを構想中。そのため高野新体制については後日あらためてコラムを考えているので、今回は、すこしだけ触れておこう。今回の会見についての諸々は、各メディアの記者諸兄が健筆を振るってくれるだろう、たぶん、おそらく、きっと…。

 

 

会見場は八幡山ではなく駿河台。トイレの貼り紙もさすがである👍

 

 

接点は、勿論彼が奈良県天理市から世田谷区八幡山の住人になってから。とりわけ、まだまだ「最強」を取り戻そうとしていた時代だ。在学時代のチームの成績は

 

対抗戦    大学選手権

 3位  1回戦敗退

 4位  2回戦(プール戦)敗退

 3位  2回戦敗退

 4位  1回戦は至逢

 

ライバル早稲田大が清宮克幸監督の下で猛威を振るっていた時代に、このライバル校は指導体制の紛糾などによる低迷から、なんとか再起を図る真っ只中の時代だった。そんなチームの中で、天理仕込みのタックルとボールを動かすパスワークで、チームを引っ張り続けたのが高野くんだった。

 

記者時代の当時は会社からは早稲田だ清宮だと日々注文が来ていたが、監督人事も不安定さを残す中で、なんとか紫紺の威光を取り戻そうとした真摯な姿が印象深く、必要以上に八幡山で、このリーダーの話を聞いた。クボタでの挑戦でも、会えば声を掛け合う関係で取材を続けてきた。

 

派手なプレーや言動ではなく、常に実直で飾らない性格は、プレー面にも表れていた。当時既に決して大型とは言えない体躯で体を張り続け、個人技よりもBKラインを生かすパスでチームを支えた。他人を押しのけてスポットが当たる場所を求める選手、コーチもいる中で、この脚光よりも本質を求めるようなタイプのミッドフィールダー、コーチが、大学屈指の素材が集まる名門軍団をどんなチームに作り上げるかも興味深い。

 

会見で新監督として何に拘るのかを聞くと、こんな話をしてくれた。

 

「神鳥監督が凡事徹底という言葉を掲げられていたが、僕も久しぶりにスポットコーチで明治に戻った時に最初に目に入ったのが、A4の紙に書かれていたのを見たのが記憶に残っています。それが結局神鳥体制での5年目でこういう結果に繋がったと思っていますので、小さい事を積み重ねる大切さを学生にも説いていきたい。ラグビーだけじゃなく生活もそうですし、学業も同じように積み重ねる大切さを教えていきたい」

 

すでに、チームは月曜日から連覇への再始動を切っている。近く、主将人事や、スローガンも発表されるだろう。選手層では引けを取らない〝赤井旋風〟や、2季連続で頂点を獲り損ねた〝アカクロ〟のライバルと、居並ぶ捲土重来を狙う障害物をどう乗り越えて、再びピナクルに辿り着けるのか。新生紫紺の新たなチャプターが楽しみだ。

 

(日本製鉄釜石SW HPより)

 

 

 

北の鉄人での挑戦を始めるルーキーについてのコラムをアップした。

 

そのストレングスは、185㎝、105㎏という書かれた数字を上回る。

では何故「鉄と魚とラグビーの町」へ赴くのか。

 

概ね頭に入っていた知恵からも容易には想像できた。

秋田出身、仙台育英高卒。

それでも、このレベルのラグビープレーヤーが、ネームヴァリューはあれど長く2部カテゴリーで苦戦するチームを進路に決めるのは、生業とする「聞きたい根性」を搔き立てられるものだった。

 

 

 

 

丁度週末にこの〝就職先〟が千葉県柏市に来征してくることもあり、取材申請先を切り替えて、つくばエクスプレスに乗り込んだ。先月アップした、ホストチーム側の「美幌キャッパー」とのインタビュー以来の再会とそのパフォーマンス観戦という楽しみもあった。

 

生憎、キックオフ前のゲリラ降雪で試合はお預けになったが、事前に連絡して〝ラバさん〟こと釜石SW桜庭吉彦GMから、太尊獲得については直接話を聞けることになっていたため、白銀の柏の葉公園を散策しながらスタジアムへ向かった。

 

チームに帯同していれば太尊くん本人から直接話を聞きたかったが、八幡山サイドからは、この日がチームの「追い出し試合」と聞いていた。ラバさんだけでも先に聞いておこうという魂胆で、両チームが引き上げ、雪原と化したスタジアムで話を聞いた。

 

後日、太尊くん本人に話を聞いて、「何故」は比較的すんなりと「なるほど」になったが、こういう選択もあっていいだろう。話を聞くまでは、彼レベルでは、さらに高いステージで負荷をかけて自分を進化させるべきという思いでいた。だが、確かに22歳の大学生が、自分の立ち位置が正確には分らない、そして彼自身の想う将来の設計図を考えれば、かのUSスチールをすったもんだの挙句ながら買い取るほどの企業の中でラグビーに打ち込むことは、そう不思議な選択肢ではない。そう思う背景には、日本のラグビーが、完全にプロ化という波に乗り切れていない現状もある。

 

勿論大学日本一チームの選手1人(正確には2人)の加入が、いままでチームが辿り着けなかった〝高み〟に登り詰めることを保証するものではないが、釜石SW、そして地域にケミカルチェンジを起こす可能性を秘めているという点で期待がある。チームの活性化、選手個々がさらに高い目線を持てる何か、そして釜石を中心としたコミュニティーの熱量を増すにも、最上太尊というプレーヤーの活躍が触媒になればいい。

 

一昨夏、あまり釜石関係者には声を掛けずに、仙台から釜石に向かい、町の佇まいだけ〝横目〟で確認した。町は日々確実に日常を取り戻しているとはいえ、「あの日」から既に10年を優に超える時間が流れても、何か埋めきれない空洞を感じてならない。

 

応えは1つではないが、その穴を埋める1つのピースがラグビーだと感じるのは勝手な思い込みだろうか。そのラグビーも、チーム、関係者の努力の中でもなかなか思い描いた位置には立てていない現実もある。だからこそ、太尊のようなポテンシャルのラグビープレーヤーが、このチームに、この地にやって来ることに価値があると思いたい。

 

 

6Nのバイと「ミラコル」閉幕で、すこし恐怖が緩和された今週末は、皆様どの

ゲームへ?

 

すでに南半球では〝週末〟が始まっているのだが、前週おさらい込みの展望を。

だいぶ遅めのアップになったので、キックオフ前の暇潰しにでも。

 

9節明けの酒場で〝肴〟になったのは、やはり土曜の神戸ユニバーと瑞穂だろう。

先ずはヘビー級の対決となった神戸の試合から。

 

全勝野武士と1敗鉄人の激突だったが、予想以上にスコアが離れた試合。ここ数試合の(否開幕からか?)浪速の鉄人の出来栄えは、関係者の中でもかなり高評価だったが、その前評判通りの戦いを見せた。秩父宮で行われた8節ブレイブルーパス戦のハーフタイム、久しぶりに話をしたの増保輝則アドバイザーに、からかい気味にこんな声を掛けた。

 

「レタリックにサベアがいて、レイナートブラウンじゃ何しても勝てるよね」

 

苦笑気味の元トライゲッターではあったが、この新加入のオールブラック・ミッドフィールダーの加入が、BKラインを先鋭化させているのは互いに納得している。派手さはないが、適確な判断でラインを加速して、隙あらば自ら仕掛けてチャンスの起点となる。もう前々HCになるイアン・フォスターが、ABsでも不動の位置を与えた男は、防御の嗅覚でもチームのスタンダードを上げている。リーコ・イオアネがアタックで強みをみせるのに対して、このCTBはオールラウンダーとして、〝最強軍団〟でここまでキャップを重ねてきたことが、その評価の証明だ。個人的には、〝すこし地味目のコンラード・スミス〟と呼びたい立ち位置に見ている。

 

スティーラーズの今季の強さについては、試合数日後に会ったさる神戸元首脳との話も興味深いものだった。

 

「デイブ・レニーが、すこし変わって来た。昨季まで自分のラグビーをやらせようとしていたが、神戸のスタイルを生かせるようになってきた」

 

おそらく本人は、この指摘に素直に「Yes」はないかも知れない。あれだけの実績のあるコーチだ。だが、あまり型にはめ込みすぎる、プラン在りきというラグビーからの〝緩和〟がチームをいい方向に進めているのは間違いないだろう。

 

野武士相手の80分を観ても、先ず大前提として接点で十分圧力を掛けてスコアまで行かせない。22mライン突破は、敗者が上(9対7)ではあったが、22m突破に於ける得点率では野武士の「2.6」対「5.7」とエクスキューションで大きな差をつけた。裏返して見ると、野武士の個々のスキル精度が勝者と比べるとかなり低いのは、実は昨季から引きづる課題でもある。リーグナンバーワンの失点数と反則の少なさは間違いなく強みである一方で、強さの中に粗さも含有するのが、いまのワイルドナイツだろう。ここは、プレーオフの4強クラスのぶつかり合いでは、再び致命傷に成り兼ねない。この苦杯から、どう収穫に結び付けられるかを見守りたい。

 

勝者に戻れば、ボールを持てれば、アタック陣は充実している。アントンを軸に、大外には松永貫太、昨秋の代表戦でも成長著しい植田和磨に上ノ坊駿介。野武士戦急遽欠場となったイノケも、パワー系ランナーとして存在感をみせる。過去に何度がSNS等でも触れてきたCTBタリも、エリジビリティ―クリアが待ち遠しい。

 

そこに、先に挙げたABs勢に加えて、スピードに加えてフィジカルバトルでも輝き始めたFLティアナン、反則魔ではあるがワークレート、フィジカルゲームが強みのNo8/FLワイサケ、舌嚙み注意の〝巨大な拾い物〟カウリートゥィオティとワークが出来るFW勢が揃う。野武士戦ではLO/FL今村陽良もハイワークレートで貪欲に絡み、刺さり続けた。

どうしてもベンチメンバーが多い存在だが、いい味を出している。

 

勿論、〝戦う課長〟山下裕史を擁するスクラムも充実。後半途中までは、野武士を嫌という程押し込んでいた。今週末(明日)の対戦相手は9位のD-Rocks。まだまだ「ブレーク」出来ていないながら、スクラムを中心に強みも見せ始めている。勝ち点差3で2位に浮上する鉄人が、上位チームとの戦いで見せたスタンダードをどこまでしっかりと見せられるかが注目の80分だ。

 

そして、名古屋での番狂わせ。

開幕の〝車屋ダービー〟に勝って以来負け続だった古豪が、2連覇王者を殴打した試合だった。

この試合までの2試合で6点差負けと〝兆し〟を感じさせていたヴェルブリッツに対して、関西勢に2連敗で臨んだブレイブルーパスという激突が、下剋上という結末に繋がった。

 

3連覇を目指すチームながら、ここまでの戦いでルーパスが露呈したのは反則数の多さ、そして立ち上がりの不安定さ。順位としては、かなり下位の相手にも、この課題がモロに出た。そしてキックを使わずハンドリングで挑んでいく特有のスタイル。個人的には大好きだが、同時に難しさは多分にある。相手からすれば、防御でほとんどキックという選択肢を考えないのは、かなり有難いことでもある。とりわけ、この日の試合のように相手が十分に防御を崩しきれないアタックをしてくれば。

 

このゲームも裏を返せば、徐々に戦闘力は整えつつあるホスト側が、立ち上がりに様々な局面で自分たちが主導権を握れたことで、ゲーム中に自信を積み上げていったような戦いぶりだった。接点で確実に相手に圧力をかけ、Absのレジェンド#9 の抑えの利いた鋭いパスから積極的に仕掛けた。チーム、桜のジャージーとメンバーに入りながら、ここ数シーズン精彩を欠いていた#13もこの日は何度も攻撃の起点になった。前線でもLOローレンス、FL奥井章仁という仕事人が働き続けた。

 

敗者に目を転じれば、不動のメンバーと目される2人のパフォーマンスが気懸りだ。先ずは司令塔のリッチー。酷いプレーでも、致命的なミスをしたわけではない。だが、彼自身のスタンダードを出せているかと考えると、そうは思えない。故障を抱えているとは思えないが、ここ数試合どこか精彩を欠いている。

 

同じ印象を感じるのはリーチだ。昨秋の代表戦の怪我から復帰して数試合だが、こちらも、彼自身の「スタンダード」には達していないように思えてならない。リーチの場合はテストマッチでもジャパンの欠かせない存在と考えられている一方で、やはり年齢の陰りがあるのかと思う瞬間が何度かあった。秋の遠征から離脱する時には、選手達から残って欲しいと直訴されるほどの男だが、何度も繰り返すように、自身のスタンダードとしては疑問を感じる時がある。その真相、パフォーマンスを最上級の対戦相手とのテストマッチで確かめたかったのも、敢えて欧州遠征にも帯同取材した理由の一つだったが、残念ながらマイケル本人がダブリンでの途中離脱という結末になった。

 

 

 

 

今のチーム状態を考えれば、不動の司令塔、チーム不動のリーダーを外すのは難しいのは当たり前の判断だ。そして、今週もメンバーにその名前がある。だが、ようやく折り返し地点という道程の中で、終盤の勝負どころを考えれば思い切って〝充電〟させるのも重要ではないか。リッチーに関しては、1、2週しっかりとオフタイムを与えリフレッシュさせ、リーチには再度コンディショニングの時間を作って、もう一度体を整える。彼らが不在で、さらに勝ち星を落とす恐怖はもちろんあるが、いちばん悪い方のシナリオが進むことを考えると、思い切った決断も必要だろう。

 

 

 

 

振り返りばかリになったが、この週末のことを考えると、3連敗中の〝王者〟は、野武士への惜敗後、大量得点で連勝中の二子玉の黒衣軍と相まみえる。十分要警戒の相手だ。そして、初黒星を喫した野武士は、前節の〝バイクダービー〟をうっちゃった鈴鹿のヒートを迎え撃つ。力関係を見れば、ホストスタジアムに戻る野武士がスタンダードを見せれば安泰かもしれないが、ヒートの勢いは警戒が必要だ。現場観戦回避は残念ながら、日野、丸和時代からパスワークを中心に異彩を放ち、2戦連続のスターターを託された#10 北原璃久が、得意のスペースに放り込むような必殺パスで野武士自慢の防御に破綻を創り出せば、試合展開は俄然面白くなる。

▲相変わらず若いもん好きなエディーさん。この日もガンガンに走らせていました👍

 

 

恐怖の週末〝ミラコル五輪〟付きバージョンが終わった。

皆さん、どんな観戦だったろうか。

 

五輪自体はほぼ終焉であったので助かったが、それでも

6N=3試合

SRP=5試合

LOD1=6試合

プラスU20だ23だというヘビーローテーション。

 

既に、日曜にLO中心の「おさらい」を書いたが、この週末、ゲーム毎に見れば、やはり6Nの3試合が見応えのあるものだった。

 

すこしチーム力を落としたと感じたアイルランドが、タックルと素早い攻守の切り替えでイングランドを粉砕。我々も親しみを持つイングランドHCの横顔から見えた厳しい眼差しが、スコア以上の大敗感を物語っていた。その一方で、ベンチスタートだったSOマーカスのパフォーマンスは、チーム再起のヒントかも知れない。当然、スピードに長けた選手として、フレッシュレッグで強みはあるが、スピード+パスの間合いの作り方が光った。

 

従来のスティーブのラグビーでは、SOはスタートのジョージが適材だが、より攻撃的でスピードのあるラグビーを考えると、マーカスを生かすことも検討材料かも知れない。

 

イングランドどうこう以上に、これはSNSでも呟いたが、勝者の#9ジャミソンがパス、ラン、キックと全ての選択肢で質の違いを見せ、#6タイグが勝負の際の部分でジャッカル、タックルを決めてイングランドの勢いを作らせなかった。

 

カーディフでの80分は、これもSNSで触れたが、果たして何人の地元民がこの展開を想像していたのかと思わせる展開。終盤力尽きたが、1つ1つのプレーを正確に、丁寧に、体を打ち込むような戦いぶりを見せれば、こんな展開に持ち込めたことが敗者の収穫だろう。

 

赤竜の惜敗もインパクトはあったが、やはり印象深いのは日曜深夜の、珍しいリールでの戦いだろう。終盤、強烈なブローを喰らってスコア差を広げられたが、敗れたアズーリのフィジカル、アタック、そしてスクラムと、そのスタンダードの高さに驚かされた。ティア1の実力は従来からだが、この日のファイトは、もうこのチームが世界トップ5ともがっぷり四つ相撲を組める領域まで来ていることを証明する。

 

この試合を戦った2チームは、どこぞの代表が共に7月に試合が組まれているという点で注目された試合。見る側も、5か月後のゲームがどうなるかという観点での視聴ではあったが、その敗者の方から見ると、ホストチームがようやくハイハイから立ち歩きがおぼつかない足取りながら出来るようになったことも鑑みると、一昨年の札幌での14-42というスコアでは済まされないエライ試合になるだろう。このハイレベルな戦には、エディーも「6か国対抗は、かなりハイレベルな凄い試合をしている」と7月がタフな戦いになると認めている。

 

 

▲JTSキャンプの〝目玉〟にもなったSO大塚誠

 

 

勝者のほうは、もう書くまでもないポテンシャルを備える。従来のコアメンバー、グレゴリ、ロマン、ダミアン、ガエルらが不在で、この破壊力と創造性。世界最高の#9 は相変わらず溜息の出るようなプレー、とりわけ後半途中の自陣からのエスケープで見せたフィジカルとスキル、そして視野は、この男の資質を過分なく見せつけたが、フレンチラグビーの真髄を見せたのは、おそらく#13 エミリアンのランだろう(背番号判読できずなので、おそらくではあるが)。

 

中盤でのキックからのカウンターだったが、捕球の瞬間に、迷わず大きく左サイドへ加速して、防御を抜き去りながら、内を猛加速でサポートしてきた#10トマへのフィニッシュパス。これは、捕球前から、捕球した瞬間、直後と自分がどんな角度で、どんなスピードで駆け込むかをしっかりとインプットした上でプレーしているとしか思えない。そうじゃないと、あの思い切ったトップギアから適切なコースを駆けこむのは難しいはずだ。

 

昨秋のヨーロッパ遠征でも対戦相手との比較で痛感するのは、日本の選手の場合は、ボールを手にして相手を見て、動き出すようなプレーが目立つこと。経験値の高い欧州のプレーヤーも、ほぼ似たような作業、動作でプレーはしていても、おそらく相手を「目視」する前段階で、すでに戦況から情報収集した、複数の選択肢が頭の中に用意され、ボールを手に相手を観た瞬間には、その中の適切なプレーを選んで遂行するコンマ数秒の優位性が、より効果的なアタックを生み出しているように感じていた。そんな脳内と身体的なパフォーマンスが、状況によっては「フレア」を創り出し、観る側を魅了する。

 

このリールでの試合の、エミリアンの動作は、まさしくフレンチフレアの為せる業だろう。例え、このミッドフィールダーがイングランド生まれであっても。あの視野と判断、そしてパフォーマンスを日本が身に付けるのはどれだけの時間がかかるのか…。

 

スクランブルの#10ながら、世界トップクラスの司令塔ぶりを見せたトマ、そして相変わらず文句なしのスピードで、テストマッチトライを重ね続ける#11ルイと、個人技で圧倒的なパフォーマンスを見せる選手が続出した80分だったが、幾試合かの観戦をさぼって後回しにする中で、個人技でこの週末最もインパクトを残したのはオーストラリアの至宝(となろうとしている)ワラタズの#11Maxだろう。

 

テストマッチと比べるのはどうかとも思うが、フランスのルイが毎試合のトライを重ねるのに挑むように、Maxは今季のSRPでは開幕2戦で4トライを量産する。とりわけ、金曜日のシドニーでのフィジアン・ドゥルア戦の前半終了前に見せたトライは凄まじかった。

 

敵陣での左飛ばしパスで、フィジー代表キャップも持つWTBタニエラと1v1となったが、正対した位置からフェイントの光速3ステップで体に触れさせずにタッチライン際を抜き去りスコアを決めている。これは相手には屈辱的なトライで、カバーに入ったドゥルアBK陣も、よもやタッチ際を抜けて来るとは思わなかったため詰め切れなかった。

 

これで開幕からの2試合とも2トライずつ。しかも日本でいえば大学3年生の世代だ。まだあどけない風貌だが、リーグのスター選手で、代表も含めてユニオンと両コードでプレーした父ピーターを抜くほどの存在感をみせる。

 

フィジカリティーの課題を踏まえれば、トータルのポテンシャルでは、先に挙げたルイが上だろうが、この週末最高の〝足〟はシドニーの若きフィニッシャーだった。一方のルイも、実はまだ22歳。この2人は昨秋のサンドニで対峙してトライもルイ×2、Max×1とスコアしているが、この先10年近くのブルーとゴールドのゲームは2人の快足の競演がラグビー界最高峰のスペクタクルになる期待感が溢れる。

 

トライ数を見るとMaxの派手さに隠れた存在だが、好スタートを切った豪州首都圏チームの#8 チャーリーが目を惹く存在だ。こちらも同じく2戦で2トライを決めている。195㎝、105㎏という数字からも想像出来るように、従来の強豪国のエイトマンではスリムなシルエットの持ち主だが、そのスピードとスコアを決め切るフィジカルがいい。Maxらよりはすこし上の25歳だが、ポテンシャルを輝かせるのはこれからだ。最近見え始めたスピード系の#8 としての可能性を秘める。

 

こんな最先端の#8のプレーを見ながら連休最終日に向かった府中の片隅でのU23候補合宿。正式にはジャパン・タレント・スコッド(JTS)プログラムなるものだが、チャーリー―よりはすこしダウンサイジングしてはいるが、筑波大のFL中森真翔も、同じタイプのスピード系バックローとして楽しみな存在だ。昨季も参加する中森くんだが、今季は早々に発表された日本代表候補にも入っているのが注目された。

 

 

▲コチラ資質抜群の中森くん。新時代のバックローになれるか

 

 

新しもの好きなエディーが、2024年の矢崎由高、25年の竹之下仁吾に続きピックアップした若手だが、この圧倒的なスピードが生かせるスタイルにジャパンが進化すれば興味深い。

 

この月曜のセッションでは、中森くんと共に、京都大医学部から自己推薦で呼ばれたSO大塚誠(じょう)も取材に応じたが、そちらは物珍し隙のメディア諸兄が紹介しているだろう。選手イジリに長けたエディーからは早くも「京都ジョー」と呼ばれているというが、個人的にウンザリするのは、ラグビーをしながら医者、弁護士などという経歴に対する憧憬まがいの奉り方をする扱い方だ。

 

確かに、勉強で努力しながらラグビーも頑張っているのは賞賛するべきだろう。そしてこの時代のラグビーは、昭和と異なり「頭を使え!」と言われて頭突きする時代より遥かに頭の回転が必要だ。頭脳明晰な選手がいい選手なのは間違いない。だが、取材をすればすぐわかるが、いわゆる進学校ではなくても、頭脳明晰な選手は数数多いる。それに、難関校へ入るために猛勉強をしていなくても、家庭が困窮して新聞配達をしながらラグビーに打ち込むのも同等に賞賛できる挑戦だ。

 

灘高から京大という勉学では無双の経歴だが、楕円でどこまでトップに喰らいつけるかは、ここからの挑戦になる。来季は京都大主将も務めると聞いたが、関西リーグ2部という環境の中で、今回のJTSでの学びをどう自身の進化に役立てていけるか。そこには、強みの賢さも十分役立つはずだ。