
▲大東文化の写真を使わせていただいたが、昨季のチームウェアに開催されたスポ
ンサーロゴ。これが、今季の大学公式戦では試合ジャージーで見られることになる
日曜日はリーグワンを敢えて回避して大学生に。今週末から始まる関東大学春季大会の〝幕開け〟を告げる「東日本大学セブンズ」へと赴いた。
荒天の中では好ゲームが続いたが、お目当ては不謹慎ながら筑波大が頂点に立ったトーナメントではなく監督・首脳陣の皆さま。先週末にアップしたコラムでもでも触れたジャージーへの広告掲出についてゲンバの声を聞きたかった。
しつこいようだが詳細は下記コラムで。
コラムでは大東文化大にスポットを当てたが、では他のチームはどこまでヤル気なのか。伝統校は? 中堅・下位チームは? さまざま境遇のチームが一同に会する大会は、実施の可否や意見を聞くには格好の延縄漁場のようなものだった。
そんな諸々のチームの声を紹介したいが、チーム名は伏せたままでという書き方をご理解いただきたい。幾つかのチームが、現時点では大学側、チーム・OB会、そしてスポンサー間での協議中で公言できない状況だからだ。一部チームについては、会場ではなく監督への電話で聞いたものであることも付け加えておく。
そんな匿名シリーズの最初は強豪A大学。いわゆる伝統校というチームの監督は、「やる方向で準備を進めている」と前向きだ。ただし、広告がプリントされたジャージーの手配を考えると、「秋の公式戦に間に合うかどうか…。すこし難しい可能性もある」と今季からの導入にこだわらない。ちなみに大学側は、「他の部でも既に導入されているので、比較的スムーズに受け入れてもらえる」という。伝統校だけあって、広告掲載に関心を持つ企業は既にあるという。
この伝統校よりも詳細を詰めていく必要を感じているのは、中堅と位置付けられるB大学だ。毎シーズン大学選手権出場に挑み続けているチームだが、社会人強豪チームでもプレーして、現在も社員として勤務する幹部OBは、「法人でもないウチのチームが収益を得ることになるので、税金としてどう計上していくかをなど制度上の問題を考えている。他大学がやっているように法人を立ち上げて、そこで管理、スポンサー契約などをしていくことを考えているが、実際に動き出すことが今季中に出来るかは難しい」と指摘。実際に広告付きのジャージー導入はA大学と同等、ないしはそれよりも遅れそうな感触だった。
B大幹部OBが指摘した「法人」は、チームによって違いはあるが大学ラグビー部がチームグッズの販売や、OBなどからの寄付行為など、商業活動に触れるエリアを委託するために立ち上げている組織だ。現時点で、慶應義塾大など複数のチームが導入していて、B大のように今回の広告スポンサー案件を受け持つケースも聞いている。
このような法人ではないが、スポンサー大歓迎で掲出へ準備を進めているチームもある。大学選手権にも数度の出場を果たすC大学は、「大学側も交えて話し合いを進めています」と話したが、A大学同様に、他クラブが既に広告掲載したユニフォームを着用しているために、大学当局も〝同じケース〟と解釈してGOサインをもらっているという。さらに、スポンサーとの契約、税処理なども一括して大学側が受け持ち、広告収入も大学に振り込まれた中からチームへと配分されるため、監督等チーム側の広告掲載に関する仕事、事務作業が大幅に軽減されることになる。
ちなみに、スポンサー候補となる企業をオフレコで聞くと、テレビCM等も目にする名立たる会社だったが、「大学側との学術提携でのお付き合いから、ラグビー部の応援もしたい」という意向だという。このような産学連携の恩恵で広告掲出が実現するケースは多くはないかも知れないが、大学本部との繋がりでの契約はあるのかも知れない。
主要大学リーグには属さない地方チームはどう受け止め、どんな方針なのかも聞いた。部の活動規模は大きくないと推察されるが、既に大学選手権出場もあるD大学の監督も、広告掲載には前向きだ。
「急な決定だったので、スポンサー探し、決まった場合のジャージーデザインや作成など、時間のネックはあるが、進めていくことは間違いない」
現役時代は高校、大学とトップクラスの強豪で活躍してきた同監督によると、さすがに一部上場のような大企業ではなくても、地域に根差した地場産業や地元企業の中で、大学やチームを支援したいという感触は得ているという。C大のような大手企業との繋がりからの広告もあるが、多くのチームがD大のような地域性や、OBが経営するような企業からの〝応援〟が理由の掲出になるだろう。
現時点では広告に否定的なチームももちろんある。大学選手権トップ4も常連の強豪E大の監督は、こんな意見を持つ。
「大学側も交えてだが、すでに従来から大学、運動部への支援、寄付を頂いている企業も多い。そこに対して、新たな企業がスポンサーとして広告をジャージー入れるとすると、長く支援をいただいてきた企業との関係、バランスを考えると、そう安易にスポンサーを集めることには議論が必要だ。今の時点では、やるべきではない」
一方で、E大監督によると、従来の寄付の場合は企業側が求められる法的な手続き、税処理などで相当手間がかかるという。今回のスポンサー提携が、企業側にとって「広告費」として容易に処理出来るのであれば、ラグビー部支援行為のバリエーションの一つとして認めていいものだと捉えている。
同じく否定的な解釈をしているF大学監督は「大学側がおそらく積極的ではないだろう。部活とはいえ、大学教育の一環にどこまで一企業が入り込むのかという観点でも学内での議論があるだろう」と指摘する。古豪という位置づけのF大では、他の強豪運動部でも監督が指摘したようにユニフォーム等に大きな企業名が掲出されるような事案はないようだ。このF大のような、大学当局の価値観、広告・スポンサー活動へのスタンスも、広告賛否に大きく影響することになりそうだ。
嬉しい事に、ある強豪大学の監督からは、想定していなかったアイデアを聞いた。社会人強豪でも活躍したG大監督に聞くと明快な答えが返って来た。
「はい、やる方向です。企業名ではなく自分たちの大学名、大学内の機関の名を入れたい」
なるほど確かに大学当局もスポンサーといえばスポンサーだ。だが、その一方で、ジャージーへの校名掲出に直接支払いが生じていないと考えると、純粋な広告とも言い難くもある。この校名掲出に関して、JRFUに問い合わせると、こんな見解を示している。
「広告枠にチームが所属する大学組織法人名を掲載することに関しては協会としては問題ない。広告掲出の一つとして許可されるものと解釈する」
あくまでも「広告」であるとは明示している一方で、大学名もOKとなると、G大と同じ判断をするチーム、大学もあるかも知れない。G大自体は大学強豪校という認知度は高いが、校名前をいままで以上に告知したい、認知度を高めたいという大学にとってはメリットのある〝広告〟だろう。
コラムでも触れたが、今回の大学指導者への取材でも、やはり概ね賛成・容認が多数で、制度上、大学側の方針などで見送る、実施までに時間を要するという意見を聞いた。感触としては幾つかのチームは秋の公式戦までに間に合わない中で、7割前後は企業名を胸につけて公式戦に臨みたいという印象だ。まだ模索中のチームが多いので、夏前あたりにその趨勢は見えてくるかも知れない。
同時に、取材の中で多くの意見を聞いたのは、協会側が今回の案件に対して十分に意見交換したかのように説明する大学チーム側とのコミュニケーションについての不満の声だった。会議が躍るばかりなのも問題ではあるが、最終的にいいロードマップを描くには、やはり議論を重ねることは欠かせない。
最後に紹介したG大監督の考えからは、今回は「広告スポンサー」という案件での是非論ではあったが、更にもっと柔軟性を持たせてもいいのかという思いも浮かぶ。自分たちの母体である大学の名称を胸に大きく展示することを「広告活動」と捉え、スタジアム使用で金銭を求めるというのも、コラムでも使った表現を借りれば世知辛いようにも思える。広告活動ではない社会貢献のような目的での掲載もがこのご時世、重要な意味と価値をもつ場合もある。
そして、これまた繰り返しになるが、統括団体としてラグビー協会が更に考えていく必要があるのは「持てるチーム」「持たざるチーム」の格差、分断をどう回避していくかだろう。この懸念についても、日曜の雨の中で話を聞いた多くの大学指導陣が同意していることも付しておこう。
このような大きな変革を行うのなら、どんな弱小チームにでも「変更があってよかったね」と感じてもらえるものがあっていい。
ビジネスなら独り勝ちはOKかも知れないが、スポーツでも、スポーツビジネスでも独り勝ちだけでは、いつか成り立たなくなるのだから。