
リーグワンプレーオフに入替戦、サクラフィフティーンにJXVとラグビー三昧の週末をいかがお過ごしでしたか?
小生はもちろん自転車通勤圏内のスタジアムへ。
詳細はいずれまとめてとも考えていたが、試合後の会見待ちの時間に、とある知り合いから「もっと書いてよ」とお叱りもいただいたので、ファイナル前打ちも兼ねて、少々週末のおさらいを。
SFという舞台、そして2日間で33988と、なんとか体裁は保てた観衆の期待には応えた160分(かな?)。とりわけ、日曜の2位vs3位はなかなかに見応えのあるバトルになった。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイと埼玉パナソニックワイルドナイツ。この2チーム、わずか3週間前には同じ会場で、おそらく今季取材した中でベストバウトを演じた連中だったが、1か月に満たない再戦でも、最上級の80分を演じてくれた。
ご存知だろうが、参考までに今季のユニコーンvs野武士を。
Week 2 12.28 熊 谷 ●24-26
Week17 5. 3 秩父宮 △29-29
SF 5.25 秩父宮 〇28-24
2点差負けに引き分け、そして4点差の勝利。凄まじいバトルの中で、ユニコーンが最後に常勝軍団をねじ伏せた。
「おさらい」なので簡単に。勝因をシンプル言えばディフェンスの勝利。
初代リーグワン王者の野武士軍団は、2シーズン連続でのファイナル敗退という苦い終焉の中で、伝統の堅守からのカウンター攻撃命という、野武士というより〝百姓一揆〟スタイルから、得点力でもトップを目指せるアグレッシヴなラグビーに段階的に転じてきた。だが、この日のバトルを見ると、自分たちの信条でもあった防御で優位に立ったのは、今季2戦負けなしの対戦相手のほうだった。
主導権争いが続く前半をみると、ワイルドナイツの仕掛けたアタックが、フェーズを重ねながらもスピアーズ防御をほぼ崩せていない状態が続いた。唯一のトライとなったのは、No8ジャック・コーネルセンのゴール前スクラムからのサイド突破だが、スピアーズが見せた明らかな綻びはこのシーンだけだった。
リーグ戦を振り返っても、スピアースは得点数では12位中5位だったのに対して、失点数(少なさ)ではトップ(1試合平均13.5)に立つ。この堅い防御については、準決勝後でも選手、スタッフ誰もが名を挙げたのが〝ストーミー〟ことスコット・マクラウド。前職オールブラックスでの防御担当から船橋にやってきた男は、日本のファンには東芝府中不動のCTBとしても知られているが、チームをワールドカップファイナルまで支えた実績は伊達じゃない。
しかしその一方で、イニシアティブ争いが続いた線半の防御を観ていて感じるのは、システムとしての完成度と同時に、個々のタックルスキルの高さ。巨漢選手もおおい船橋の男たちだが、しっかりと腰を落として、相手の懐から臍あたりに体を食い込ませたヒットが目立った。勿論、こんなベーシックスキルも前オールブラックスコーチによる賜物かも知れないが、ここ数年、つまりフラン・ルディケHCの下で、フラン、そしてコーチングスタッフが丁寧に仕込み、積み重ねた財産なのかという印象だった。
PMOはSH藤原忍。前半のキックチャージからのトライも然ることながら、後半のスライディングで奪い獲ったフェアキャッチに、このチームの防御の意識、質の高さを感じさせた。文句なしの受賞だった一方で、主導権争いという勝つには大切な時間帯、スコア帯で、チームの防御力を象徴するように接点での戦いで何度も野武士のアタックを寸断したFLタイラー・ポールに〝ご褒美〟をあげたい。
野武士も流石なのは、前半の相手のオレンジの壁を、早い展開からのWTB竹山晃輝、SO山沢京平の連続トライで1点差まで追い詰めたこと。このスコアを見ると、やはりこのチームは攻撃に転じてからの早い仕掛けでチャンスを作るのが強みと再認識させられるが、そのカラーが重要なファーストクオーター、ファーストハーフに存分に見せられなかったのは痛かった。
ボールキャリー回数はスピアーズの89に対してワイルドナイツは136。パス回数も131対195、ゲインメーター131対330、そして22mライン内侵入も6対10と、アタックの数値は勝者よりポジティブだった。
だが、両チームのプレーを見比べると、僅かではあるがプレー精度を欠いていたのは敗者の方だった。22分にワイルドナイツが敵陣22mを超えてゴール前まで攻め込んだシーンでも、スピアーズに14フェーズを守り切られ、後半立ち上がりでも22m内で19フェーズをスコアに結び付けられなかったが、接点での重さ、強さも含めて、野武士のアタック陣が若干焦りを感じながらプレーしていたことが、無理なパスなど精度の乱れに繋がったと感じられた。22mライン内に攻め込んでのスコア率を見ても、勝者の3.6点/回に対して野武士は2.4点/回と遂行力で劣り、反則数に目を向けてもスピアーズの6に対して11と敗者の数値だった。
それでも1点差まで詰めたのはワイルドナイツの底力を感じさせたが、〝逆転のパナ〟を完遂できなかったのは、後半のセットピースでの致命的な反則&ミス。スクラムに関しては、この日のスピアーズにとってはディフェンスに次ぐ第2の強みであり、このチームをここまで勝ち上がらせたプライドでもある。そこで野武士が太刀打ちできなかったのは、運ではなく明らかな自力差と言っていいだろう。そして、終盤勝負のかかったラインアウトでのミスも致命的だった。過度に注目されるのも大変だが、若きHO佐藤健次にとっては痛恨の一投にはなった。しかし、いまこのヒリヒリする大舞台で起用されたというコーチ陣の〝投資〟に感謝して、この日の経験を糧にするしかない。
敗者にとっては2022年のリーグワン誕生から初めてファイナリストを逃したことになったが、この日の苦杯の中で敗者に感じるのは「次の黄金時代」のための投資を続けながらここまで勝ち上がって来た姿だ。過去にはベリック・バーンズというリーグ最高峰の司令塔を擁し、その後は円熟期に入った松田力也を手離して今季から26歳の山沢京平をゲームメーカーに据えた。
だが、抜群のポテンシャルを持つ一方で、この若い10番が歴代司令塔の演じてきた勝つためにゲームを組み立て、窮地にどうチームを動かしてゆくかをオーガナイスして行くのは容易な事ではない。それは、昨季の日本代表での経験値を積んだとはいえ、長らく田中史朗、内田啓介という代表SHの陰で十分にプレー時間を伸ばせなかった小山大輝も然り。先に触れた佐藤も同じように投資段階の選手だ。この日のように、相手が強烈な強みを前面に出しながら仕掛けてくる展開の中で、彼ら経験値蓄積中の素材組で戦った準決勝でもあった。
そして、誕生から4回のファイナル全てが異なるカードというのも興味深い。
20221 ワイルドナイツ 18-12 サンゴリアス
22-23 スピアーズ 17-15 ワイルドナイツ
23-24 ブレイブルーパス 24-20 ワイルドナイツ
24-25 ブレイブルーパス ? スピアーズ
敢えて決勝スコアをアップしておいたのは、全ての決勝が王者を争うのに相応しい白熱の闘いだと再認識したかったから。平均得失点差4。今週末も、こんなクロスゲームは期待されるカードだが、日曜の試合を観た限りでは、スピアーズの分厚いオレンジの壁による防御力と、総合力、なかでもリーグナンバーワンの得点力(1試合平均41.2)、リーグ唯一の3ケタトライ(111)の攻撃力を誇る狼軍団の真っ向勝負を期待したい。
日曜日のゲーム同様に、スピアーズの分厚い防御、そして重量感あるスクラムに対して、ブレイブルーパスが、どこまで遂行力を見せられるか。この強みの部分で、序盤の主導権争いで優位に立ち、もし期待通りに後半もクロスゲームの様相になった時に、強みを出し切れるかが勝負になる。いずれにせよ、レコードブレーキングな観客を集めるのに相応しい30人がピッチに立ちつ試合になるのは間違いない。
後は、リーグがどこまで席を埋められるかだ。