もう一つのフットボールの大一番が片付いてからということで、すこし遅めのアップにはなったが、尾張での今季最初の〝代表〟戦について。

 

本来は、例の北中米での喧噪も踏まえて、簡単にゲームに触れておこうという趣旨。本格的にはイタリアとのテストからの腹積もりだった。書き進めるとあれやこれやとくっついてきそうな欲望を押さえつつ、こんな分量のものに。それこそ「アレコレ」を遮断して「10番」に特化して、行数を抑え込んだ(つもり)。

 

多くの方が、良し悪しは置いておいて、観戦して感じるものではあるだろうが、やはり21歳の新鋭司令塔のパフォーマンスには、心が動かされた。なので、あまり〝変化球〟ではなくド直球のおはなしだ。

 

 

 

 

本来は6月10日のエディーによるメンバー会見から、構想の中にあったコラムのネタが、ワールドカップ前年というシーズンに、エディーが何をチームに求め、強化のための上乗せをしていくのかだった。

 

この観点から、非常に興味深かったものの一つがSOをどうするのか。

 

コラムで紹介した通り、エディーが10番に期待するものは「当たり前」のものでもある一方で興味深い。この言葉を聞きながら、では世界のトップチーム、選手の中で、エディーの唱える「10」として最適な人材は誰なのか? こんな自問をしてみると、そう長い時間をかけずに一人の男の姿と名前が浮かんできた。

 

サシャ・ファインバーグ=ウンゴメズル

 

泣く子も吹っ飛ばされる南アフリカ代表スプリングボクスの次世代スターと期待される司令塔こそ、理想の10番だ。

 

だが、残念ながら日本にはサシャはいない。〝ボカ〟と比べるのも僭越ではあるが、それじゃ〝日本のサシャ〟は誰なのか――。そんな思いを巡らせる。本物と比べると承信だとすこしオーソドックスか、山沢拓也だと個人技に走り過ぎか…。などと勝手に名前を浮かべては消す中で、多少の〝先物買い〟ではあっても、この名前に行き着いた。

 

伊藤龍之介

 

まだまだ若いし、172㎝、77㎏のサイズもテストラグビーでどうなのか? こんな脳内の〝反論〟を浴びながらも、その選択に迷いはなかった。世界ランキング12位あたりを徘徊して、なかなかトップ10内には入って行けない。そんな立ち位置の国で、もしサシャのようにプレー出来る10がいるとしたら、足りない物も沢山含有していてもおかしくない。

 

確かに、この名古屋でのナイトゲームでも、コンタクトエリアではまだまだひ弱さも露呈した。だが、それ以上に、コラムでも書いた通り、相手防御ラインと正対して前へ仕掛け、アタックラインを引っ張り上げることが出来る司令塔って、実はそう居るもんじゃない。

 

コラムで記したライリーへの狙いすました「アウト」へのパス、そして数回見せたCTB李智寿とのシザースも、一見すると「教科書通り」で片付けられるプレーではあるが、この若き10番の振る舞いには〝スペースをどうクリエートするか〟、言い換えればレシーバーのためにどうスペースを作り出すか――という意図が盛り込まれているのが興味深い。

 

自身がどう動くかで相手防御がどう釣られるかをしっかり認識し、履行出来るか、もしくは出来ないか。その違いで、パスを受けた選手の可動範囲が大きく異なるケースがある。伊藤龍之介が名古屋の夜にみせたいくつかのプレー(パス)から伝わるのは、こんなアタックラインを生かそうという、ボールと選手のドライバーとしての姿勢であり非凡なる能力だ。

 

しっかり自分へマークを引き付けスペースを作り出し、閃光の如きボールを放つことで「ただのパス」になるか「キラーパス」になるかが変わってくる。XVの挙げた全5トライ中3本をアシストして、1本はトライへの起点となったという結果は、この21歳がいかに「仕留めのパス」、「〝仕留め〟を生み出すパス」が出来る10番かという一つの証明でもある。

 

とはいえ、持ち上げ過ぎは禁物だ。コラムでも触れた通り、まだまだテストラグビーに足りない物がこの才気あふれる21歳にも沢山ある。本人には怒られるかも知れないが、まだ〝日本のサシャ〟ではなく、おそらく〝八幡山のサシャ〟、もしかしたらあの夜で〝世田谷のサシャ〟くらいになったかも知れない。これからのテストでも物足りなさや、場合によっては失望させられるプレーがあっても不思議ではない。それでも、あの名古屋市瑞穂区で、この〝ルーキー〟が演じたものは称えて余りあるものだった。

 

初めての、そして未知の舞台で21歳の大学4年生が演じた80分。これが、いつか〝伝説の始まり〟と語れるようになれば、この国のラグビーにとっての救いにもなる。

 

▲快足にハードタックルも魅せるWTB内田くん。ルックスもなか

かだが、そのポテンシャルを世界の舞台でどこまで開花出来るか

 

 

週始めの6月16日に湾岸エリアを東へ遠出をしてきた。

目的地は千葉県長生郡。

未来の桜の戦士がジョージアへ飛び立つ前の合宿がお目当てだ。

 

改めてFIFAワールドカップの関心度を再認識させられたのは、この日の千葉の山奥くんだりまで来た記者の数。いわゆる「新聞記者」という括りでは「0人」。新聞各社から、見事なまでに〝取材対象外〟だと突き付けられた。ラグビー惨敗である。

この業界出身者としての基準では仕方のないことではある。勤務していた時代以上に記者数も潤沢とはいえないであろう中で、〝北中米案件〟のために国内外で人手が必要な状況は間違いない。房総半島の里山まで書き手を1人出すことも意味がないという判断だ。もちろん上記した「記者」以外に数名の取材者はいたのだが、なんとも寂しい限りだ。U20というタグビー強化には重要な世代の〝ワールドカップ〟でも、この有様だ。ここは、彼ら大学生ではなく、実質上国内の「楕円景気」を引っ張り上げる役割を担う、シニア代表の関心度がモロに影響していると考えていいだろう。

 

で、記者数とラグビー人気の能書きはほどほどにして、参加メンバーの中で真っ先に話を聞きたかったのが、WTB内田慎之甫くん(筑波大2年)だった。

 

先ずは、本番の日本戦情報だけお伝えしておこう

 

■ジュニアワールドチャンピオンシップPool B日本代表試合日程

月,日 現地(日本)   対戦相手(開催地)

6.27 15:30(20:30)  ニュージーランド(クライン)

7. 2      20:30(25:30)  イタリア(同)

7. 7      15:30(20:30)  スコットランド(同)

 

👇メンバーについては、ここいらへんで

 

 

 

〝桜の蕾たち〟は、既に20日に決戦の地へと飛び立ち臨戦態勢に入っている。

で、名前を挙げた内田くんは、既に佐賀工高、そして昨季の所属大でも、如何なくそのスピードを見せつける存在だが、わざわざ山奥まで出向いて話を聞きたかったのは、先の遠征で行われたNZU(ニュージーランド学生代表)との最終戦でのパフォーマンスだった。

 

チーフスの本拠地FMGスタジアムを決戦の舞台に用意してもらった一戦では、18分のキックチェイスから、かのミルズ・ムリアイナの甥で、既にハイランダーズとも契約する天才肌のNZU#10ミカに走り勝ち、ルーズボールを浮かせてSO丹羽雄丸くん(同志社大2年)のトライアシスト。自身も2トライと持ち味の快足も如何なく見せたが、それ以上に、サイズに似合わない所謂「えぐいタックル」で何度もデカいNZUメンバーに突き刺さっていた。

 

「デカい相手に低いタックルいって、いい場面もあったが、下にいっても上(上半身)で繋がれちゃってピンチになる場面も多かった。そこはチャンピオンシップへ向けて課題で、ボールを殺しに行くタックルがもっと出来たかな思います。大学の試合では弾かれてしまう場面も多いが、NZUがフィジカルに任せたアタックをしてきたので、いい感じでタックルには入れました」

 

ご本人は、決して満足していないのだが、確かに多くの好タックルの後に相手にボールを繋がれるシーンが何度もあったが、そこはNZ本場仕込みのオフロードの巧みさと組織防御のマターにもなってくる。この大学2年生のタックル自体の質は悪くはない。17分の自陣レッドゾーンでの右サイドを崩してきた相手への一撃や、23分のラッシュアップして相手WTBを仰向けに倒すプレーなど、大きな相手の懐に入り込むような低さとパックの強さが光る。167㎝、73㎏というサイズを考えれば、インターナショナルのステージでコーチから関心を持たれるのは容易ではないが、一見するとハンディキャップと思える〝小ささ〟を武器に出来ていると感じさせた。

 

勿論、いいタックルとスピードの「正当な理由」も持つ。

オンラインの観戦でも、その鍛えあげられたマッシヴさが芸術的な領域の太腿が印象に残った。これが、あの初速から一気にギアをトップに上げる加速力を生み、低く鋭く突き刺さるタックルの源泉だろう。その尋常ではない加速力で、防御の1歩目2歩目が遅れて、結果的には抜き去られている。本人も「下半身、背中の筋肉が大事だと学んで、そこを大事にして鍛えてきた」と自己鍛錬の効果を実感する。

 

スピードに関しては、高校、大学と正確なスプリントタイムを計測していないため、自分自身では分からないというが、50m5秒台クラスの足を持つ。本人は「レベル違い過ぎますよ」と苦笑したが、見た目の印象では筑波の先輩でもある福岡堅賢樹の領域のフィニッシャーだ。

 

大分のスクールで小1から楕円球を追い、父親の母校でもある佐賀工、関東の強豪・筑波大とキャリアを積んできた。初めて挑む〝大会形式の国際舞台〟へは「ここで活躍出来ないともっと上のカテゴリには呼ばれないと思うので、自分のスピードだったり、小さくても戦える自分の強みを見せていきたい」。自分のリミットまで持ち味を発揮する舞台が近づいている。

 

U20ジャパンを率いる大久保直弥HCは、この快足ランナーについて「日本のチェスリン・コルビなれる存在」と評価する。シニア代表を見ても、ようやく怪我からの復調を感じさせるジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)、昨秋のヨーロッパ遠征でも負傷離脱まで攻守にインパクトを残した石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)と同じ系譜の〝コンパクトWTB〟が存在感を見せる中で、その後を継ぐランナーとして注目の存在だ。トレーニングスコッドとして宮崎に呼ばれる武藤航生(横浜E)も含めて、この若いアウトサイドBKたちが、この先どこまでトップチームに食い込んでいけるか。こんな観点からでも、ジョージアでのパフォーマンスが楽しみだ。

 

 

 

 

上記した名前に加えて「若手」という括りで考えれば、シニア代表のスコッドとして初めて宮崎に入った22歳のFB上ノ坊駿介、23歳のWTB植田和磨(ともにコベルコ神戸スティーラーズ)ら才能を発散させるアウトサイドがふつふつと浮上してきている。ここはJRFUおよびエディーの中期的な思惑が上手く実を結ぼうとしている(一部には「若手投資よりもいまのベストを選ぶべき」という不満も聞こえるが…)。当然ながら、この顔ぶれの中から最終的にジャージーを掴む者、掴めない者も出て来るだろうが、彼ら20代前半の才能が、自分の持ち合わせた能力をどこまで磨き上げることが出来るかは、これからの日本ラグビーには欠かせないテーマだ。

 

もう一人、自身を磨き上げる存在としてこの〝山奥〟で話を聞いておきたかったのはPR本山佳龍くん(静岡ブルーレヴズ)。先日のコラムで話を聞いたこともあり、「その後」のご自身の感触を知りたかった。途中出場したNZU最終戦では、最初のスクラムこそ上手く組めなかったが2度目のセットはしっかり相手に重圧を掛けてPKを獲得するなど、すこし〝お兄さん〟の、サイズのある相手ともしっかりと組み合えていた。8分のラインアウトからのモールでもドライブの軸となりトライを生み出すと、33分の敵陣22mライン手前での空中戦ではモールでいいエッジを作り出してゴール前まで25m近くを押し込んだ。

 

この1年は、高校日本代表合宿での怪我から、前半の半年はリハビリ、後半はようやく実戦復帰してゲーム勘を掴みつつあると感じたが、本人は「フィジカル面でもスクラムでも通用する場面もあったが、ボールキャリーで高くいってしまうと持ち上げられたり、そこからボールを奪われたりしたのを肌身で感じた。そこを改善していきたい」と実戦での感触を話している。内田くんも同じだが、ジョージアで結果を残すことも十分に重要な一方で、それ以上にこの経験を自身の成長の糧として、さらにシニア代表でも活躍出来るプレーヤーとしてU20カテゴリーから先へ進むことが最も重要だ。

 

 

 

 

 

NZU戦のパフォーマンスで、この2人に加えて印象に残ったのは、CTB福田恒秀道(帝京大1年)、SO丹羽くん、そしてこのツアーから主将を担うNo8坪根章晃くん(帝京大3年)あたりだろう。西野誠一朗山崎大雅という慶應義塾LOコンビのワークレートも、流行りのオフザボールでのエフォートとしては興味を惹くものだった。

 

福田くんに関しては、父・恒輝さんが早稲田大SO時代に取材してきた経緯もある。当時の、この伝統チームの中では、あまり型に嵌らない発想とプレーが印象的な司令塔だった。そんな個性に惹かれて、記事にする以上によく話をした選手だった。その型に嵌らなさもあり、就職した社会人の強豪は早々にチームを離れてしまったが、ポジションこそ1つズレるものの息子は父にも通じるスキルフルなミッドフィールダーとして高校、大学、そしてユース代表として存在感を発揮している。

 

サイズは、今のインターナショナルでは決して恵まれないが、NZU戦では意図的にSOの位置でボールを持つアタックが多い中で、パスを受けながら前に出れるプレーぶりが印象に残った。本人は「父からは、タッチフットとかでの抜き合いなどで学びはあります。相手と正対しながら前に出るのは、ジャパンでの攻め方として、相手の内肩(ウイークショルダー)にしっかり仕掛けるのは教えてもらってきた」と振り返ったが、この福田くんの動きが、アタックラインを引っ張り上げて、日本らしい攻撃的なラグビーを作り出していた。こういうボールもラインもドライブさせられるCTBが居ることで、先に触れた内田くんら快足アウトサイドがスピードを発揮出来るラグビーが見せられれば、27日に開幕する大会も面白い。

 

丹羽くんは桐蔭学園時代にゲームメーカーとして注目した存在だったが、西の伝統校に進学したこともあり、なかなか大学でのプレーを観られなかった。オンラインながらNZU戦で久しぶりにプレーを観たが、フラットパスを使いながらラインを動かし、自ら相手防御のギャップに仕掛ける目敏さは高校時代から変わらない。話を聞くと、「紺グレ」のチームではポジション争いでなかなか苦戦を強いられているようだが、まだ2回生や。このハミルトンでの試合も、いい仕掛けをしながらコンタクト後にボールを奪われるなどのミスもあったが、ここはこの先のゲーム勘と国際経験の上乗せで十分補える部分。U20で国際ステージでの経験値を上げ、〝何か〟を掴んで、西の古豪、そして若手が浮上しつつあるシニア代表での10番争いへも進んでいってほしい才能だ。

 

坪根主将についても、開始早々からストロングキャリーを見せて、NZUレベルのサイズとフィジカルには十分戦えることを証明した。生涯初のスキッパーに、本人は「しゃべるタイプじゃないので、背中で、プレーで見せてくれと言われています」と控え目に語ったが、饒舌なタイプではない一方で、南半球からの映像からはプレーで引っ張るタイプのリーダーとしての仕事は十分果たせていると感じた。「NZ遠征では、体は大きいけれど1個1個のスキルの部分では日本の低さであったりスピードは効くと思った。一人ひとりがそこをしっかり出来れば、チームは更によくなる」という。格上ばかりのジョージアでの〝本番〟で、どこまで前へとボールを運び、チームを引っ張れるか。将来へ向けた試金石になる。

 

NZU戦では個々の選手がそのポテンシャルを輝かせた部分があった一方で、地面のボールへの絡み方、ボールが止まった時の反応の速さとモーション・スキルの的確さは、流石に〝オープンサイドの産地〟に一日の長があった。それがU20ジャパンのポゼッションを低下させることに繋がった。さらに、密集サイド、所謂チャンネル0から1にかけてのエリアを簡単に突破されて、一気にインゴールまで持っていかれる失点が目についた。

 

ここは、とあるチーム関係者の指摘で納得したが、今の国内大学レベルのラグビーでは、インターナショナルレベルでは当たり前の密集サイドでのねちっこいフィジカルな攻防がそこまで多くないという傾向がある。いいテンポ、流れでボールが出れば大きくボールを動かす選択肢も多いため、NZUが仕掛けてきたエリアでの防御に若干の淡白さがあったのだという理屈だ。

 

このチャンネル0-1での防御破綻は坪根主将も「ラックサイドを崩されたのが多かった。FWで負けているのは事実です。そこは鍛えていきたい」と指摘する。ジョージアでの本番では、対戦相手はNZU戦のビデオやU20ジャパンのサイズを観れば、明らかにこのチャンネルに仕掛けてくる。NZU戦であからさまになった〝宿題〟を、本番キックオフまでにどこまで修正して臨めるかも鍵を握ることになる。

 

そのジョージアでの戦いを考えると、坪根主将が初戦のNZに関しては、かなり分析も進み、ゲームプランも選手の中に落とされていると語っている。いきなりプール最強の相手との対決にはなるが、2015年W杯の南アフリカ戦、7人制の16年リオ五輪NZ戦に倣って勝負どころに置いていい。最初に当たる最強の相手こそ、本気で倒しに行くべきターゲットだろう。例に挙げた「歴史的金星」の時は、周到過ぎるほどに技術面、戦術面、メンタル面で勝つべき正当性まで掴んだ上で臨んだ試合だった。今回も、この1年以上に及ぶU20のキャンペーンの全てを賭けるようなキックオフまでの準備が出来れば、動かないはずの山も動く可能性はある。

 

全ては準備と彼ら自身の決意にかかっている。

 

 

 

昨日の出来事で既に「旬」ではないが、リヨンのおはなしを少々書き残しておこう。

 

曇天の湾岸をぶっ飛ばして東へ。

船橋・栄町の〝怪物〟オペティ・ヘルの移籍会見を覗いてきた。

 

縦・横・奥行きと相変わらず分厚い「立方体」に、柔和な笑顔での登壇が、なんとなくオペティの移籍への本音を物語る。

 

大きな理由はスクラム。

「フランスのレベルの高いリーグで成長を目指したい」と更なる進化を求めての決断だという。数年前から日本以外のさらにハイレベルなリーグでの挑戦は頭の隅にはあったという。チームやエージェント、さらに仲間からの誘いを認めているが、「まだその当時は、僕自身にそこまでの実力はなかった」と説明する。この発言からも判るのは、スピアーズとジャパンでの進化があったからこそ、結果的にオペティを海外へと後押しすることになったということだ。

 

そのジャパンでのプレーが〝ショーケース〟となり、海外強豪クラブの目に留まることになったのも間違いない。本人、笑顔で詳細は語らなかったが、複数海外クラブからのオファーがあったことは認めている。その中で、繰り返しになるが、スクラム強化には最適という判断で、フランスが誇るグルメタウンでのプレーを選んだ。

 

受け入れ先のクラブにも少々触れておこう。

 

スピアーズの公式リリースでは「LOU」。通称、略称だが、先に書いたように所謂リヨンだ。正式名称は「リヨン・オランピック・ウニベルシテル」。創部は1896年と、パリに次ぐ大都市のクラブに相応しいが、実力的には歴史のほとんが〝中堅〟という印象だ。この日の会見でも、スピアーズ関係者と「オタク(クボタ)が強くなり始める前の位置づけくらいかな」なんて雑談をしていた。現時点でのフランスTOP14でも、14チーム中11位という実力だ。

 

この順位を考えると、オペティにとってポジティブ要素は「プレー時間」だ。トゥール―ザンを退団した齋藤直人は、世界最高峰の#9と同じチームでプレーすることで、自身の成長を目指したが、プレータイムという観点では苦戦を強いられた。「学び」か「プレー時間」か――。この議論に正解はないが、自分が何を求めて強豪クラブに挑むかによってその価値は変わるものだ。

 

個人的には、より高いステージでプレーするなら、いかに長くピッチに立ってプレー出来るかは、選手個々が得るものを考えると相当価値のあるものだと感じている。もしオペティが、他の名立たる強豪クラブ以上に、リーグ11位のチームでプレータイムを稼げるとしたら、その恩恵はかなり大きなものになるだろう。まぁ、その成長が、オペティをさらなるフランスの強豪や、プレミアシップなどでの挑戦へと後押しするなら、日本代表とスピアーズにとっては大きな損失になるかも知れない。それでも、数シーズンとはいえ日本でインパクトを残した選手が、さらにステップを上がって行けるとしたら、その選択肢を尊重するべきだろう。個人としては、信条的にも心情的にも「個」を優先するべきだという価値観だ。

 

リヨンのハナシに戻るが、23年RWCでは、9月28日にトゥールーズで日本vsサモアの一夜明けで、そこそこ強行軍でこの町を訪れ29日のNZvsイタリアを観戦した。残念ながら試合会場のPO=パルク・オランピックはサッカーの本拠地だが、完成10年あまりの6万級スタジアムは壮麗な建造物ではあった。ただし記憶に焼き付くのは、試合後の〝事件〟だ。

 

主催者側からは、遅い時間帯に中心地までのメディア用シャトルバスがあるというインフォメーションがあったが、予定の時間を過ぎても一向にバスはやってこない。イタリアンのベテランジャーナリストも同じ〝罠〟にかかっていたが、そもそもフランス人の話を100%信じるのは間違いなのだ。だがそれでも、ご丁寧にメディアインフォメーションにも書かれていたことだ。そんな状況の中で、日付も変わった時間帯になり、既にスタジアム内外もゲームの後始末、清掃のするスタッフ程度しか残っていな状況になった時に、数名の帰宅しようとしたWR(ワールドラグビー)、組織委スタッフと遭遇。状況を説明すると、諸々連絡をとった挙句に、「どうやらシャトルはないようだ」と説明するのと同時に、「申し訳ないので、俺たちの車でホテルまで送るよ」と思わぬ提案をもらった。

 

おそらくホスト側としても、メディアに「噓の説明をされた」と書き立てられるのは得策ではないという思惑もあったのだろう。深夜のリヨンをかなり懇切丁寧に降りたい場所まで送り届けてくれた。実はこのリオンのNZ戦翌日はアルゼンチンの〝事前偵察〟も兼ねてvsチリを取材する魂胆だったため、深夜のリヨン駅で時間を潰して朝イチの列車でナントに向かう計画だった。そのため、ホテルではなくリヨン駅まで送ってもらい、始発を待ったのが事の顛末ではあった。

 

かなり脇道に逸れてしまったが、スタジアムのハナシに戻ろう。

ラグビーは、やや小ぶりなスタッド(ドゥ)ジェルランが本拠地ではあるが、それでもキャパシティは4万超となかなかのもの。観戦し易さでは、むしろこちらの器のほうがベターかも知れない。願わくは、オペティがリヨン人の不確かな情報で深夜~未明に路頭に迷うことがなければいいのだが…。

 

そして、ファンは気になるオペティの移籍の詳細だが、結論から書くと完全移籍になる。府中のワーナー、原田のような、いわゆるレンタルで日本国内での契約を継続しながらの挑戦ではないのだ。代理人マターということもあり、本人はあまり詳細には触れなかったが、2年契約というよりはむしろ1プラス1、つまり2シーズン目はオプションないし要相談という内容だという。

 

勿論、本人は「戻って来てスピアーズでプレーしたい気持ちはある」と話しているが、その気持ちに偽りがない一方で、彼が望むような活躍が出来れば〝復帰〟の可能性は遠ざかるという皮肉な現実もあるだろう。そして「代表」については、今回メンバーから外れているように、当面はリヨンでの順応に注力することは、エディーとも相談済みだという。気掛かりは、ジャパンがオペティもプレーするヨーロッパへ出向く秋のテストウィンドウに参加が出来るのか。そして、育ったオーストラリアが舞台となる1年後に、桜のジャージーを着るのか。全ては、新天地でプレーを始めてから見えてくるだろう。

 

 

 

今季のリーグワンは、長く日本ラグビーを支え、盛り上げてきた男たち、個人的には様々な形で長い付き合いになった選手たちが、数多くジャージーを脱いだ。

 

その中で、コラムに書いたのは、この男だった。

 

 

 

 

コラムの中でも触れたが、あの一言への〝回答〟をしなければならないという気持ちもあった。だがそれ以上に、完璧な聖人君主でも極悪人でもない、独特の人間臭さは書き残す価値は十分あると判断した。勿論、今季の引退者の多くは同様に人間臭い男ばかりでもあるが。

 

垣永真之介というラグビープレーヤーの全てを書き尽くしたというものでは到底ないが、東京にやって来てから見つめてきた足跡はなんとか認めた。多くの選手同様に、その活躍を新聞記者として、フリーランスライターとして充分には文章に出来なかった申し訳なさは痛切に感じる。そんな罪滅ぼしとまではいかないが、最後の〝一行〟は活字で残しておきたかったし、残すべき存在だっただろう。

 

パッションを持ちながら、ヘンにウエットにならず、どこまで真剣でどこまで受け狙いか――というコメントが次々と口を突く。だが、本気か冗談かは問わず、その言葉には、偽りのないストレートな思いが籠る。自分の想ったこと、感じたことを表現する――それは言葉でもだが、コラムでも紹介した行動=事業でも、特有の感受性を感じさせる。そんな話ぶりも、カッキーの大きな魅力かも知れない。

 

同時に、エリート畑を突き進んできた経歴の中でも、ファン、選手への眼差しは決して下向きにならない。ここは根っからの人間性も大きいが、ラグビー選手としてのキャリアの後半の苦節も影響しているのかも知れない。コラムでも紹介した立川ハルさんとのラジオの下りは、そのおかげでファンの声をダイレクトに聞けたこと、そんな声に有難みを感じたカッキーの感受性がそうさせているのだろう。

 

まぁ向上はほどほどに、概ねはコラムに書き残したので、拙文ご一読を。

 

 

 

認識されてるのはいかほどの人たちか…。

 

なんてエラそうに書く前にオマエがしっかり書いておけと怒られそうだが、東芝ブレイブル―パス東京は唯一定期的に「定例会見」を行ってきたチームだ。

 

「なんじゃそれ⁉」

 

という輩もいるかも知れないが、まだに文字通り「定例の会見」だ。

6月11日に府中くんだりまで行ってきた。

薫田真広社長(兼GM)が事業面を中心に、会社の状況や取り組み、新たな戦略を語り、状況に応じてHCやキャプテンが登壇して、チームの近況や前節の振り返り、次戦への意気込みを語る。先ずは強面(失礼)社長のシーズン総括の挨拶を。

 

「クラブとしましては3連覇がかかったシーズンでしたが、結果は中々満足いかない1年だった。初めての7連敗も喫しましたし、開幕と最後の埼玉パナソニックワイルドナイツとの2試合をみても、決して満足いく試合じゃなかった」

 

この発言は、GMという立場を踏まえたものだったが、社長としてのコメント、つまり事業面での説明は興味深いものだった。親会社(東芝)からの提供資金こそ非公開だが、毎回、事業に関わるそこそこ踏み込んだ数字も明らかにしているのが、このチームの定例の特徴でもあるが、この日公開された数字=2025-26年収支の一部をお伝えしておこう。

 

 

【2025-26年シーズン事業売上高】

総額 11億970万円 154%

(スポンサー、母体企業支援除く)

《内訳》

スポンサー収入 7億5300万円  210%

チケット収入  1億9800万円    98%

(1試合入場者数     12781人      126% ※リーグ最多)

グッズ収入      8800万円    87%

ファンクラブ収入   4470万円  126%

アカデミー収入    2600万円  124%

※%は前シーズン比

 

 

売上が2桁億円というのは、スポーツビジネスを広く見渡せば大した額ではないかも知れないが、薫田社長が「聞いたことは無い、おそらくウチだけだと思う」と語ったように、ラグビー界ではエポックな数字だろう。ラグビーもようやく20億、30億という数字を目標に掲げる時代になった。

 

錚々たる――という表現はすこし持ち上げ過ぎだろうか。

しかし、薫田社長も「グラウンドの結果に反し、事業の数字では成長出来た。数字狙いにいって取れたという意味では事業スタッフよくやった」と評したようにリーグ6位、準々決勝敗退に終わったチームとしてはかなり善戦と見ていい数字だろう。昨季まで連覇を遂げていたチームという恩恵を踏まえた上でも。

 

マイナス成長となったのはチケット収入とグッズ販売。ここはチームの不振が如実に表れたようだ。見方を変えれば、成績的にはかなり落ちたところで、下落をこの程度に抑えることが出来たのは上々かも知れない。

 

収益のバランスがスポンサーに大きく依存しているとも解釈出来るが、ここはリーグワンという事業の現状が反映されている面もある。先ず、致命的にチケット総数=座席数が少なすぎる。確かに集客力(ホストゲーム)もリーグ最高位のこのチームでも1万2000人台程度ではるが、2万~3万人というキャパのスタジアムが安定的に確保出来ない国内&ラグビー事情では、この数字を拡大するには、そこそこの努力が求められる。

 

同時に、開幕戦でチームが実施した「4万人プロジェクト」のような取り組みでは、どうしても収益以上に集客を重視するため、地元小学生などの招待の比率が高まり、結果的にチケット収入にも影響するからだ。

 

そのため、まだまだ事業化過渡期のリーグワンでは、やはりスポンサー収入に依存せざるを得ない。理想としては、この売上の中でリーグ側の収入や分配が、チームに還元されることが増えれば。このリーグの収益性は、NTTグループ等の大口なスポンサーでリーグも善戦する一方で、放映権など海外リーグでは大きな収入になるフィールドに開拓の余地がある。ま、ここらのハナシはまたあらためて。

 

ピッチ上の総括はトッドさん自らが登壇。優勝から6位へ転げ落ちたシーズンを受けて、こう発言している。

 

「望んだ結果にはならなかったが、来季へ向けてこの4項目を準備していきたい」

 

その4項目は、

①     セットピースの改善

②     ハイボール

③     スキル、遂行力の改善

④     ディシプリン

 

④ディシプリンに関しては数シーズンに渡る課題で、今季もワーストの235。勝敗にも大きく響いた。伝統的にはスクラムにこだわってきたチームだが、その破壊力は年々薄れ、ストーバーグは獲得したもののワーナーのような「高さ」を欠いたのも響いた。注目は②。従来、トッドさんがこのチームに落とし込んだスタイルは、パス重視のボールを展開するラグビー。しかし、シーズンを重ねる毎に相手は「基本蹴ってこない」という防御を敷くことで、強みを期待通りに生かせない試合も何度もあった。リーグワン参画チームの、相手の戦術に対する対応力はシーズン毎に高まっているのも響いた。③の遂行力の低さも、この防御し易いチームに転じたことも大きな要因だ。勿論、ここまでもキック0で戦ってきた訳ではないが、アタックバリエーションにキックを増やすことで、自分たちの強みを生かせることが出来れば、再び対戦相手の〝厄介度〟は高まるはずだ。

 

トッドさんの振り返りの中で、こう語っている。

 

「前シーズンまでに感じないプレッシャーがあった」

 

様々に想像は出来るものだが、本人に具体的にどんな部分がチームにプレッシャーとなったのかと聞くと、こんな説明をしてくれた。

 

「連覇した2シーズンはリーグで一番ボールをキープして攻め続けて、キックは最小でした。でもことしは一番ではなかった。相手にアタックを分析され、読まれる中で、どこかで手詰まりになる中で蹴る判断に踏み切れるか踏み切れないかと迷いがあった。2連覇をするところで機能していた部分、自分たちを高みに連れて行ってくれた要素を信じ続けるのか、すこし課題は残るが、もしかしたら何か糸口になる戦術を採用するのはというところは、ものすごく難しい判断を1年通して強いられました」

 

この4項目とコメントから想像力を掻き立てられるのは、捲土重来を目指す来季は、勿論いきなりキッキングチームは在り得ないが、トッドさん流のアタッキングチームを貫きながら、キックも上手く混ぜ込みながらのアグレゥシブさ溢れる新生ルーパスを見せてくれる期待感だ。

 

HCマターはここらへんで、会見最後に登壇したマイケル主将にも、自身のパフォーマンスに関してすこし触れておこう。

 

なんども触れてきたが、今季のマイケル。否、今季前からだが、彼の持つポテンシャルとしてはベストじゃないと個人的には感じてきた。今回のシーズンを終えての会見では、こうぶつけてみた。

 

「個人の数字的にはいいものもあるが、観ている側としてはパーソネルベストとは言えないシーズンだと思うが、本人はどう感じているのか」

 

それに対するマイケルは、こんな振り返りをしている。

 

「過去3年間自分の中ではパフォーマンスは上がって来た。今年は、シーズン前の代表での怪我で、その期間出来なかったものも感じていて、それが影響しているかなと思う。パフォーマンスはシーズン通して少しずつ良くなったと思うが、ベストではないなと。アスタッツは良くても、質はまだまだ上げないといけない。特にコリージョンエリアはかなり下がっている。理由がフィジカルなのか、スキルなのかそこはいま探しています」

 

アスリートの宿命ではあるが、確実に年齢による〝減退〟は免れない。だが、その一方で、リーチマイケルというアスリートを舐めてはいけない。彼の持つポテンシャル、経験値は、まだまだこの男を磨かせるものを備え持つ。何を磨き込み、鍛え上げ、新たに付け足していくのか。この選択を正しくすることが、マイケル再生の大きなテーマになる。ここは、もう一つの〝所属チーム〟日本代表での活躍、そしてチームのパフォーマンスにも大きく影響するだけに、是非、上手く克服して、バージョンアップを求めたい。

 

帰り際には、思わぬ遭遇もあった。

昼過ぎという時間帯もあり、チカバで昼食をと思いながら歩いていると、なにやら複数の人影が…。近づいていくと、大男と標準サイズの外国人。さらに近づくと、見覚えのある風体だ。

 

「どうしたの? チーム会見? どんなこと話すの?」

 

気軽に話しかけてきたのは、5週間程前に府中でのキャリアを終えたリッチー・モウンガだった。一見用心棒風の大男はセタ・タマニバル。この2人だけじゃなく、チームで〝オキニ〟の定食屋に入ろうとしているところだった。

 

「そう。きょうが最後の〇〇屋なんだ」

 

なにやらしみじみと、名残惜しそうに話したリッチー。

プライベートな時間を尊重したかったので、早々に立ち去ろうと「寂しくなるよ」と右手を差し出すと「俺もだよ」と応じてくれた。

 

別れ際の挨拶はお互いに「また会おう!」

立ち去りながら「来年のオーストラリア。その後はまた府中で!」と声を掛けると、ニカっと笑って手を振った。週末に予定されている「ファン感」の後に故郷へと帰る。イベント取材は現状ペンディングのため、場合によっては本当に来年秋のオーストラリアで再会かも知れないが、心の中では、どうせなら日本復帰で再会したいものだと思いながら、昼メシ物色へと気持ちを切り替えた。