▲会見に臨んだ神戸デイブHC(左)とレタリック主将。サンゴリアスの
完敗を嘆いて手を顔に当てている訳じゃないが、凄まじい圧勝劇だった
興味深いセミファイナル①ではあったが、結果は上位が上位らしい勝ちっぷりに終わった。どこかのタイミングで、コラムにまとめたいが、取り急ぎ土曜の80分をおさらいしておこう。
戦前には、こんな関心を持ちながらキックオフを迎えた。
・「フロントロー平均年齢」スティーラーズ35.3歳vsサンゴリアス28歳の激突
・奇しくもリーグワンでは数少ない九州共立大の先輩後輩の直接スクラム対決
・2列目はNZ代表で百戦錬磨のブロディと日本代表を牽引する期待のハリーの空中戦
・#6は1年後は同じ桜のジャージーでコンビを組む可能性の選手同士がやり合う
・No8が東海大なら、SHは帝京大の先輩後輩決戦
・インサイドCTBは未来のジャパンの〝隠し球〟vs和製最高峰のレジェンドが対峙
・しんがり#15も未来のジャパンと経験豊富な元ジャパンの激突
興味深いマッチアップが山積みだったが、戦前のスタッツにはかなりシビアな数字が並ぶ。
神戸 サン
リーグ戦順位 1位 4位
総得点 750① 625④
総トライ数 112① 87④
総失点 456③ 625④
反則数 251⑦ 168④
※丸数字はディビジョン1順位
個々のポジションでは注目ポイントが多いカードだが、数字の上では上位チームの優勢をかなりしっかりと示されている。サンゴリアスの主要なスタッツが全てリーグ戦順位に〝相応しい〟ランキングではあった。この日も、結果的にそれに順じた結末に終わってしまった。
前半の24-16というスコアだけを見れば、サンゴリアスがかなりいい戦いを見せたゲームのように見える。だが、実際のゲームパフォーマンスを見ると、数字(スコア)に誤魔化される内容だった。キックオフ直後から、接点で1歩でも1ミリでも前に出ていたのはリーグ戦1位チームだった。個々のフィジカル、体の大きさを存分に生かして、スタートから接点を制圧していたのは明らか。司令塔のSO李承信も「そこ(フィジカルの優位性)は感じていました」と振り返る。
かなりの優位性がありながら、折り返し時点で混戦気味のスコアになったのは、スティーラーズの個々のスキルの精度不足と、それに伴う反則の多さが響いた。象徴的だったのは、前半25分のサンゴリアスLOジョージ・ハモンドのトライまでの流れ。神戸が自陣からボールを左ワイドに振って、WTBイノケ・ブルアのパワフルなキャリーからCTBタリ・イオアネが左サイドをブレーク。ここまでは、この2人の身体能力の凄まじさを感じさせたが、タリさんがそこまでプレッシャーを受けていない状況から放り投げてしまったパスをカウンターされたのが〝起点〟だった。その後のラインアウトから自陣ゴール前へ押し込まれて、ハモンドが逆転のトライを奏でた。
それでも、ゲームが神戸にとって〝良からぬ方向〟へ大きくは傾かなかったのが、この勝者の底力だろう。勢いづくサンゴリアスがアタックのギアを上げて再び神戸陣レッドゾーンまで攻め込んだが、〝NZの至宝〟FLアーディ・サベアが見事なジャッカルで攻撃を寸断。そこから切り返して、11フェーズ攻め立ててNo8ワイサケ・ララトゥブアがトライ奪い返すまで7分しかかからなかった。スコアされてもスコアを獲り返すという必勝パターンは、接戦モードの前半40分間繰り返された。
接点の重量感、そして取られても取り返す神戸の得点力を見て、勝手に「勝負は時間の問題」と感じていたが、後半はそんな「地力通り」の展開に終始した。
ゲームスタッツも神戸圧勝を物語る。
敵陣22mライン内への侵入回数はサンゴリアスの9に対して神戸は14。22侵入しての得点率も敗者の2.2点に対して4.9点と明暗を分けた。アタッキングラグビ―を標榜するサンゴリアスだが、この得点率では厳しい。ラックから何秒でボールを出せるかの「ラックスピード」も、3秒でボールを出せた割合を見るとサンゴリアス53%、神戸59%と、敗者が強みを存分に発揮できなかったことが判る。ランメーターもサンゴリアスの129m対278m、ラインブレーク回数3対10など、攻撃面でのスタッツは悉く勝者が上回り、タックル成功率でもサンゴリアス78%、神戸87%と明暗を分けた。
結果圧勝劇というゲームで、輝きを放ったのは勝者の1シーズン目FB上ノ坊駿介と2シーズン目WTB植田和磨の若手アウトサイドBKコンビだった。
最初の見せ場は、キックオフからわずか6分。ミッドフィールドでの連続攻撃で、右展開からパスを受けた上ノ坊が防御の薄さを察知して蹴り込んだボールを、トップギアの植田がキャッチしてそのまま先制トライ。アーリーエントリーでデビューした今季、不動のFBに定着するルーキーは、アシストの後は前半21分にアクロバチックなコーナーへのトライも決めている。
▲いつも爽やか、朗らか上ノ坊君。写真を
見返すと、なにやら自信も浮かび上がる⁈
後半その勢いは加速する。開始3分のキックカウンターから中盤でパスを受けた上ノ坊が、一瞬の溜めから駆け込んできた植田にパスを放つ。そのまま植田はトップギアへの加速から華麗なステップで相手SOケイレブ・トラスクを抜き去り、SH上村樹輝にラストパスを放った。
上ノ坊は、4分後の右展開でも詰めてきた防御のプレッシャーを受けながらの高速タップパスで承信にボールを渡しトライをアシスト。相手防御にとっては、このルーキー#15がボールを持つと自身で仕掛けられるランと、ラインを生かす判断力とパス能力という、2つの攻め手を頭に入れる必要があるため、かなり厄介な存在になっている。現時点で、エディーはジャパンXVも含めた代表系メンバーには選ばれてないが、この日のパフォーマンスも含めてどう評価するかも注目の存在だ。
それにしても上ノ坊22歳、植田23歳、そして粗さも見せたがリーグワン屈指のダイナミックなミッドフィールダーとしての魅力を湛えるタリは21歳と、すでに輝きを放ち始める原石が神戸のBKラインに並んでいる。願わくば、桜のジャージーに袖を通すまでには後1年以上かかるタリを、優勝を手土産にオールブラックスの指揮官に就任しようとしているデイブHCが、自分の新天地へ持ち帰らないでほしい。科の国には、他に才能あふれるCTBが五万といるいるはずだ。まだ粗削りとはいえ、この21歳とディランのミッドフォールドコンビは、是非桜のジャージーで拝みたいものだ。
そして、思いは1週間後の国立へ向く。FWの重量感、圧倒的なフィジカルに、BKも強さとスピードを併せ持つ西の鉄人は、リーグ戦1位の地力を見せつけた。この最強のファイナリストと国立の舞台で対峙するのは熊谷の野武士か、はたまたベイエリアの〝槍〟か。野武士が勝ち上がれば、リーグ随一の防御と圧倒的な攻撃力を持つヘビー級チームとの一騎打ち、〝槍〟ならヘビー級同士の重厚な〝殴り合い〟のような決戦になる。
何れが勝ち上がるのか、そしてキャラクターの異なるどちらとの決勝も、楽しみでならない80分だ。









