
そこで、7月26日に喜びに沸く美濃市の「美濃和紙の里会館」を訪ね、美濃和紙の歴史や製造工程、和紙の素晴らしさや現代における展開と未来への可能性などを学んできた。独特の光沢をもち、そして強靭な「美濃紙」は、日が経つにつれ純白色に輝き、人々に独自の温もりと安らぎを与えてくれる。美濃市牧谷地区で生産される最上級の書院紙「本美濃紙(ほんみのし)」は、約1300年余りの歴史を誇る紙漉き技術が継承され、「和紙:日本の手漉き和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録されている。
かつて和紙づくりが盛んに行われていた美濃市牧谷地区は「和紙の里」と呼ばれる。その和紙の里の板取川に沿って端正な姿を見せるのが「美濃和紙の里会館」。紙漉きを体験できるワークショップや、常設展、企画展、手すき和紙をはじめとする和紙製品の売店などを備え、様々な角度から美濃和紙にアプローチできる。

美濃和紙ができるまで(美濃和紙の里会館のパンフから)。
原料から、紙になるまで、大体10日かかる。また、原木から取れる原料の量は、約8%、紙になるのはその半分といわれるので、100kgの楮の原木から出来る美濃和紙はわずか4㎏ほどということになる。

第1展示室では、美濃和紙の歴史や製造工程、紙漉きに使う道具などを紹介している。左上の左は楮(こうぞ)の束(原木)、右は剝皮した川晒し前の紙料(白皮)、右上は川晒しする、楮の繊維だけを取り出すため大釡で煮る、ちりとりするの工程を経て、木槌で原料を叩いてほぐす叩解(こうかい)の様子、左下は数千本の竹ひごと生糸を撚り合わせた特製の糸で編んだ簀(す)で、紙の表面を決定する大切な道具、右下は叩解した紙料と水を入れる漉舟(すきぶね)。

簀桁(すけた)で紙漉きをする様子(美濃和紙の里会館のパンフから)。

紙漉き体験コーナー。美濃和紙職人も使用する道具と天然の原料で本物の紙漉き体験ができ、持ち帰ることもできる。

手漉き和紙のいろいろ。原料処理の段階ですでに施されたものから、漉き上げた後に施されるものまで多種多様な和紙を展示、その手法も長く受け継がれた伝統的なものから、ニーズに応える新しい手法も開発されている。

第2展示室では、生活空間の中で和紙をどんな風に使うかを具体的に提案している。お洒落なランプシェード、障子、行燈や提灯などの他、スピーカーの振動板(優れた音響特性を有することから、Hi-Fiステレオ、車載用など多くのスピーカーに採用)、和紙糸(強靭で細く切れ難いことから編み物や織物用糸に採用)にも使われている。

売店・ショールームにはアート作品からはがき便箋など、美濃和紙製品が並んでいる。

日本の和紙産地は100ヶ所以上あるが、「本美濃紙(ほんみのし)、岐阜県美濃市」、「石州半紙(せきしゅうばんし)、島根県浜田市」、「細川紙(ほそかわし)、埼玉県小川町、東秩父村」の3地域にて伝承されている「和紙:日本の手漉和紙技術」がユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産に登録されている。伝統的な製法による手漉き和紙技術(重要文化財)を構成要素とし、長い年月の間世代間で継承されてきたことによって醸成された、地域社会との結びつきや、後継者育成、品質管理などの保護措置が評価され、2014年に登録。この3つの和紙は全て、原料に「楮」のみが使用されており、伝統的な技法を用いて作成される。

2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は7月24日、各種目1~8位の入賞者に授与する表彰状に岐阜県産の美濃手すき和紙を使うと発表した。大会組織委は産地に、予備などを含めA3判で計1万7600枚の和紙を量産してもらう計画という。五輪エンブレムの透かしを入れることも検討されている。組織委の発表を伝える7月25日朝刊各紙(中日、毎日、朝日、岐阜、日経新聞)。

岐阜県美濃市蕨生1851-3 美濃和紙の里会館のMAP