こんにちは、Hiroです。
今回もアルゼンチンです。
ただ、今回は食べ物ではなく、言葉について書こうと思います。
アルゼンチンはスペインの植民地であった関係でスペイン語を話しますが、そのスペイン語、特にブエノスアイレス(Buenos Aires、直訳すると良い空気)とその周辺地域のスペイン語はかなり独特です。
アルゼンチンではスペイン語のことを”castellano”と呼び、他の国のように”español”と呼びません。それは、昔、スペインいう国が現在の英国のように複数の国で成り立っていた名残で、今でもスペインでは地方ごとに話す言葉が違います。
有名なところでは、バルセロナがあるカタルーニャ地方でしょうか。そこでは、スペイン語ではなく、カタルーニャ語(Catalán)が話されています。カタルーニャ語はスペイン語とフランス南部の方言の間のような言葉です。
ここで、アルゼンチンに多いガリシア系の”ガリシア語”についても少し触れておきます。ガリシア語(Gallego)はポルトガルの北隣にある、ガリシア地方で話されている言葉です。
この言葉は、スペイン語とポルトガル語の間のような言葉です。スペイン語とガリシア語の違いの例を一つ挙げると、”日本”はスペイン語では、”Japón”と書いて、”ハポン”と読みますが、ガリシア語では、”Xapón”と書いて、”シャポン”と呼びます。因みにポルトガル語では、”Japão”と書いて、”ジャパァゥン”と言います。
ここで本題に入ります。今のアルゼンチン(特にブエノスアイレス)のスペイン語は、イントネーションや使う発音、単語や文法が他のスペイン語とはっきりと違う特徴があります。
まず、イントネーションですが、言語学の研究では、イタリアのナポリ方言の影響を受けています。簡単にいうとイタリア語のような高低差の激しい抑揚が、一般的なスペイン語よりあります。実際、私の元同僚のスペイン人は、アルゼンチンのスペイン語はイタリア人が話すスペイン語のようだと言っていました。
次に発音ですが、他国の人が特にアルゼンチン的と感じるのは、”yo”や”ya”、”llo”や”lla”の発音の違いです。アルゼンチン(アルゼンチンに近いウルグアイの一部も)以外の国では、”yo”と”llo”(この2つは同じ発音)は、”ヨ”か”ジョ”、”ya”と”lla”(この2つは同じ発音)は”ヤ”か”ジャ”と発音されるのですが、アルゼンチンでは、”yo”と”llo”は”ショ”、”ya”と”lla”は”シャ”になります。
これをシェイスモ(sheísmo)と言います。
スペイン語にはショ、シャの発音がないので、移民国のアルゼンチンとしては、これは他の言語からの影響と考える方が自然でしょう。歴史的にアルゼンチンはイタリア移民の方がスペイン移民よりも多かったので、イタリア語の影響という可能性はありますが、イタリア語ではショ、シャという発音はあまり使わないので、スペインからの移民で特に多かった、ガリシア人のガリシア語からの影響と見る方が自然のように思います。
ガリシア語では”ショ”や”シャ”の発音はよく使います。先に挙げた例のように、ポルトガル語との比較でよくわかるのは、ポルトガル語で”ジャ”と言うところをガリシア語では”シャ”と言います。
アルゼンチンスペイン語の”V”の発音はイタリア語の影響だと思います。他のスペイン語や上に挙げたガリシア語では”V”は”B”の発音と同じになるのですが、アルゼンチンのスペイン語では”V”は”B”とは分けて、英語の”V”と同じように上の前歯を下唇に軽くつけて発音します。イタリア語では分けて発音します。
あとは、今のアルゼンチンがある場所に最初に入植したスペイン人は、スペインの南部にある、フラメンコで有名なアンダルシア地方から来たのですが、そこの特徴的な発音が、単語の語尾にある”S”や”Z”、例えば、スペイン系の苗字に多い、Lopez(ロペス)、Diaz(ディアス)、Gomez(ゴメス)などのZがほぼ無音になります。なので、Lopezはロペ、Diazはディア、Gomezはゴメのように聞こえます。día(英語で言うとday)の複数形、díasもディアのようになります。
語中にある、子音の前のSとZも同様です。例えば、estación(英語で言うとstation)は、エスタスィオンではなく、エッタスィオンのようになります。
私がこのように発音していたら、スペイン人に、アンダルシアの人みたいと言われたことがあります。
このほぼ無音になる発音の特徴は、中南米ではアルゼンチンの他、隣国のウルグアイやパラグアイ、カリブ海のプエルトリコやキューバでも見られます。
次に単語ですが、代表的なアルゼンチンスペイン語の単語と言えば、”che”ですね。
有名なのがErnesto ”Che” Guevara(エルネスト・チェ・ゲバラ)でしょう。キューバ革命で重要な役割を担っていた、アルゼンチン人革命家です。
cheとは英語で言うと、”hey”と言うような、呼びかけに使います。私の経験では、女性は使わないようです。女性に対しても使わないように思います。
語源は諸説あり、アルゼンチンの先住民、グアラニ族の言葉からとか、スペイン語の古い二人称の目的格の代名詞”che”(現在は”te”)からとか、とにかくはっきりしていません。
ガリシア語では今でも古い”che”を使うようなので、もしかしたらガリシア語から入ってきたのかもと個人的には思っています。
チェ・ゲバラはキューバでも頻繁にこの単語を使っていたようですが、キューバ人は使わないので、それが理由で彼の代表的なニックネームになったようです。
実は、”che”はウルグアイとブラジル南部のリオ・グランデ・ド・スール州(ブラジルでは、チェ”tchê”と綴る)でも使われます。
ただ、チェ・ゲバラの影響で、”che”と言えば、アルゼンチンというイメージが強いですね。
あと、文法面での違いは、二人称にトゥ(tu)ではなく、ヴォス(vos)を使うところです。
例えば、あなたはアルゼンチン人ですか?と聞く時、(Tu) eres argentino(a)? と聞くところを、(Vos)sos argentino(a)? と言います。
前者を、トゥテオ(tuteo)、後者を、ヴォセオ(voseo)と言います。
まだまだありますが、延々と続きそうなので、今回はここまでにします。
今回もお読み頂き、ありがとうございました!