永遠の姉妹 第16話『新しい始まり』
平成十年四月―
知香子との修羅の季節から早十年。知永子は無事大学を卒業し、丸の内にある商社のOLになっていた。
あの時の約束通り、夜は母の店を手伝いながら、充実した毎日を送っている。
その夜も仕事を終え、帰宅した知永子は織江とふたり、カウンターに立っていた。
「そう言えば、今日は和彦さんとデートじゃなかったの?いいのよ。そちらを優先させて。店は、あたしひとりでも何とかなるんだから」
一段落つき、洗い物をしていた織江が、思い出したように言う。
「違うのよ。あっちに急な接待が入ってしまったの」
知永子は笑った。
「あらまぁ、大変なのねえ…」
「何でも社運をかけた一大プロジェクトらしくて、最近やけに張り切ってるわ」
「そうなのね。じゃあ、しばらくはまだなのかしら」
織江はカウンターに肘をつき、た溜め息を吐いた。
「えっ!?」
「結婚よ、結婚。あんたたちだって、付き合い始めてもう三年でしょう?何も急かすわけじゃないけど、そろそろそうゆう話が出てもいいんじゃないかしら」
「そんな、わたしたちはまだ…」
「何言ってんの。あんただって、もう二十七なのよ。あたしだって今のあんたの年には、とっくにあんたを産んでたんだからね。いつそうなったって、ちっともおかしくないんだから」
「お母さんの頃とは、時代が違うのよ」
そう言いながらも、本音では当然考えている。実際、和彦との間でも、そのような話が出ないでもなかった。
ただ、母にはきちんとした形で報告したい。そう思い、今回ははぐらかしたのだ。
<あれから十年。知永子は母とふたり、平穏な生活を送っていた。まさかこの幸せが、波間に築かれた砂の城のように、もうすぐ跡形もなく消え去ろうとは、夢にも思わずに…。
新たな修羅の季節は、確実に迫っていた。>
「ふざけないでよ!この泥棒猫が!!」
六本木の高級クラブ『花宴』の控え室でメイクをしていた知香子は、同僚の彩華に詰め寄られる。彼女の恋人と寝たのは、三日前だった。
「何よ。いきなり」
知香子は、悠然と微笑み返す。彩華は息を荒げ、知香子を睨んだ。怒りのためか、鼻の頭に油が浮かんでいる。
「聡と寝たんでしょ。客との旅行から帰って来てから、様子がおかしかったんで問い詰めたの。始めの内はしらばっくれていたけど、最後には認めたわ。一体、どうゆうつもりなのよ!!」
「そんな形相で詰め寄られたら、さぞかし彼も恐ろしかったでしょうね」「ふざけないで!聡と寝たんでしょう」
「ええ、寝たわ」
知香子は、あっさりと認めた。逆に面食らった彩華は、一瞬言葉を失う。
「三日前だったかしら。あなたが、ちっぽけな零細企業を経営していることだけが自慢の小銭入れとグアムだか、サイパンだか行ってる間に、たっぷりと愛し合ったわ」
「何でよ!」
彩華に聞かれ、知香子は返答に困る。
別に、彼女の男に惹かれたわけでは、けしてなかった。あえて理由を挙げるとするならば、彩華が前々から気に食わない女だった、ということぐらいだ。
「何で黙ってるのよ。何かしら、言ったらどうなの」
「…悪いけど、何もいうことがないの。別に、あなたに悪いことしたとも思ってないし、彼とどうこうなろうとも思ってないから…」
瞬間、知香子の頬が鳴る。彩華が、思い切り知香子の頬を張ったのだ。
すかさず、知香子はやり返す。彩華は、衝撃で床に倒れ込んだ。ドレスが捲れ上がり、下着が露わになる。
「見苦しいわね。あたしに絡んでくる前に、自分を磨き直したらどうなの?彼、言ってたわよ。あんたとセックスしても、腐ったこんにゃくにいれてるみたいで、ちっとも気持ちよくなんかないって」
知香子の言葉に、彩華が泣き出す。
「あら、失礼」
知香子は周囲のホステス達からの非難の視線を背に、控え室を出た。
女達から嫌われるのには、とっくに慣れている。そしてそれは、夜の世界を生きる女にとって、ある種の称号だった。
「知香さん。五番テーブルご新規様お願いします」
ボーイの仁が、知香子を呼ぶ。知香は、知香子の源氏名だ。
客は、上司とその部下らしい、年の離れた二人組の男だった。
「はじめまして、よろしくお願いします。知香です」
上司らしき男の隣に腰を滑らせる。ドレスの胸元に忍ばせたライターを取り出し、男の煙草に火をつけた。
「今日は、お仕事帰りなんですか?」
言いながら、さりげなく男の社員証に探りを入れる。丸の内に本社がある、一流商社のものだった。
「あぁ、大事な接待の帰りだよ。とりあえず、上手くいったんで、頑張ったこいつにご褒美を、と思ってね」
「まあ、素敵。じゃあ、ぜひあたしも乾杯に加わらせて頂いてもよろしいかしら?」
知香子は、男の太ももに手を置き、上目遣いに見上げて見せた。あからさまに鼻の下を伸ばした男は、知香子の胸元を覗き見ながら頷いた。
「最近、お仕事はどうなんですか?バブルが弾けてからこっち、ここいらもさっぱり静かになってしまって…寂しいんですよね」
「まあ、うちは何とか持っているよ。お陰で、こんなところにも来れるってわけだよ」
「あら、景気のいいお話だこと。じゃあ、足繁く通って頂かなくちゃ」
知香子は、笑いながら男のグラスに自分のグラスを合わせた。
「おいおい。それはご挨拶だなあ、知香ちゃん」
「だって…ねえ、そちらなお兄さんからも、また連れて来て下さいってお願いして下さらないかしら?」
知香子は、ヘルプの恵美に相手されている部下の男に話を振った。男は、戸惑ったように
「えっ…」
と言い、頭を掻いた。
「知香ちゃん、残念だけどそいつに言っても無駄だよ。何しろ、我が社切っての堅物でね。愛しの彼女ひと筋なんだ」
「ぶ、部長。やめて下さいよ。俺は別に…」
「何だ。照れることもないだろう」
「そうよ。素敵なことじゃないかしら。彼女ひと筋だなんて…羨ましい限りだわ」
一瞬、呆れた顔を覗かせた恵美の足をテーブルの下で踏みつけ、知香子は、うっとりとした表情でそう宣う。
「そんなこと言って…どうせ部屋に帰れば二枚目の彼氏がいるんだろう?知香ちゃん」
「まさか、彼氏なんていないですよ。それに、実はあたし、男運がなくて…自分でも困っているんです」
知香子は言いながら、男にしなだれかかった。
「はい」
トイレから出て来た部下の男に、知香子はハンカチを差し出した。こういった店に慣れていないらしい男は、面食らったようにハンカチを受け取る。
「それから、これも…」
知香子はポーチの中から名刺を抜き取り、男の背広の内ポケットに滑りこませた。一般の客には渡さない、プライベートの携帯番号が書かれた方だ。
「お連れの方には内緒にしておいてね。特別な名刺だから…」
「えっ…!?」
「ねえ、あなたのも下さらない?」
「あっ…はい」
男は、慌てて名刺を差し出す。
「あら、その若さで主任だなんて。よっぽど有能な方なのね」
「いや、そんな…」
言いかけた男の唇を、知香子は自らの指で塞いだ。
「あっ…あの…」
「ねえ、また会って下さらない?」
「いや…そう言われても…」
「別に、強引に店に来いとは言わないわ。ただ、和彦さんにまた会いたいの。駄目かしら」
「……」
「あたしのプライベートの番号も書いてあるから、気が向いたらかけて来て。待ってるわ」
知香子は、そう言って和彦に背を向ける。
その刹那、知香子がつけている香水の甘い香りが、和彦の鼻孔を刺激した。
「あの…」
「知香子よ。覚えておいて」
クラブの薄明かりの中、知香子は怪しく笑った。
<十年の歳月を経て、それぞれの道を歩んでいた姉妹。彼女達はまだ知らなかった、新たなる修羅の季節が今、静かに幕を開けたことを。
和彦という男を通して、すでに姉妹は再会を果たしていたのだ。>
つづく
知香子との修羅の季節から早十年。知永子は無事大学を卒業し、丸の内にある商社のOLになっていた。
あの時の約束通り、夜は母の店を手伝いながら、充実した毎日を送っている。
その夜も仕事を終え、帰宅した知永子は織江とふたり、カウンターに立っていた。
「そう言えば、今日は和彦さんとデートじゃなかったの?いいのよ。そちらを優先させて。店は、あたしひとりでも何とかなるんだから」
一段落つき、洗い物をしていた織江が、思い出したように言う。
「違うのよ。あっちに急な接待が入ってしまったの」
知永子は笑った。
「あらまぁ、大変なのねえ…」
「何でも社運をかけた一大プロジェクトらしくて、最近やけに張り切ってるわ」
「そうなのね。じゃあ、しばらくはまだなのかしら」
織江はカウンターに肘をつき、た溜め息を吐いた。
「えっ!?」
「結婚よ、結婚。あんたたちだって、付き合い始めてもう三年でしょう?何も急かすわけじゃないけど、そろそろそうゆう話が出てもいいんじゃないかしら」
「そんな、わたしたちはまだ…」
「何言ってんの。あんただって、もう二十七なのよ。あたしだって今のあんたの年には、とっくにあんたを産んでたんだからね。いつそうなったって、ちっともおかしくないんだから」
「お母さんの頃とは、時代が違うのよ」
そう言いながらも、本音では当然考えている。実際、和彦との間でも、そのような話が出ないでもなかった。
ただ、母にはきちんとした形で報告したい。そう思い、今回ははぐらかしたのだ。
<あれから十年。知永子は母とふたり、平穏な生活を送っていた。まさかこの幸せが、波間に築かれた砂の城のように、もうすぐ跡形もなく消え去ろうとは、夢にも思わずに…。
新たな修羅の季節は、確実に迫っていた。>
「ふざけないでよ!この泥棒猫が!!」
六本木の高級クラブ『花宴』の控え室でメイクをしていた知香子は、同僚の彩華に詰め寄られる。彼女の恋人と寝たのは、三日前だった。
「何よ。いきなり」
知香子は、悠然と微笑み返す。彩華は息を荒げ、知香子を睨んだ。怒りのためか、鼻の頭に油が浮かんでいる。
「聡と寝たんでしょ。客との旅行から帰って来てから、様子がおかしかったんで問い詰めたの。始めの内はしらばっくれていたけど、最後には認めたわ。一体、どうゆうつもりなのよ!!」
「そんな形相で詰め寄られたら、さぞかし彼も恐ろしかったでしょうね」「ふざけないで!聡と寝たんでしょう」
「ええ、寝たわ」
知香子は、あっさりと認めた。逆に面食らった彩華は、一瞬言葉を失う。
「三日前だったかしら。あなたが、ちっぽけな零細企業を経営していることだけが自慢の小銭入れとグアムだか、サイパンだか行ってる間に、たっぷりと愛し合ったわ」
「何でよ!」
彩華に聞かれ、知香子は返答に困る。
別に、彼女の男に惹かれたわけでは、けしてなかった。あえて理由を挙げるとするならば、彩華が前々から気に食わない女だった、ということぐらいだ。
「何で黙ってるのよ。何かしら、言ったらどうなの」
「…悪いけど、何もいうことがないの。別に、あなたに悪いことしたとも思ってないし、彼とどうこうなろうとも思ってないから…」
瞬間、知香子の頬が鳴る。彩華が、思い切り知香子の頬を張ったのだ。
すかさず、知香子はやり返す。彩華は、衝撃で床に倒れ込んだ。ドレスが捲れ上がり、下着が露わになる。
「見苦しいわね。あたしに絡んでくる前に、自分を磨き直したらどうなの?彼、言ってたわよ。あんたとセックスしても、腐ったこんにゃくにいれてるみたいで、ちっとも気持ちよくなんかないって」
知香子の言葉に、彩華が泣き出す。
「あら、失礼」
知香子は周囲のホステス達からの非難の視線を背に、控え室を出た。
女達から嫌われるのには、とっくに慣れている。そしてそれは、夜の世界を生きる女にとって、ある種の称号だった。
「知香さん。五番テーブルご新規様お願いします」
ボーイの仁が、知香子を呼ぶ。知香は、知香子の源氏名だ。
客は、上司とその部下らしい、年の離れた二人組の男だった。
「はじめまして、よろしくお願いします。知香です」
上司らしき男の隣に腰を滑らせる。ドレスの胸元に忍ばせたライターを取り出し、男の煙草に火をつけた。
「今日は、お仕事帰りなんですか?」
言いながら、さりげなく男の社員証に探りを入れる。丸の内に本社がある、一流商社のものだった。
「あぁ、大事な接待の帰りだよ。とりあえず、上手くいったんで、頑張ったこいつにご褒美を、と思ってね」
「まあ、素敵。じゃあ、ぜひあたしも乾杯に加わらせて頂いてもよろしいかしら?」
知香子は、男の太ももに手を置き、上目遣いに見上げて見せた。あからさまに鼻の下を伸ばした男は、知香子の胸元を覗き見ながら頷いた。
「最近、お仕事はどうなんですか?バブルが弾けてからこっち、ここいらもさっぱり静かになってしまって…寂しいんですよね」
「まあ、うちは何とか持っているよ。お陰で、こんなところにも来れるってわけだよ」
「あら、景気のいいお話だこと。じゃあ、足繁く通って頂かなくちゃ」
知香子は、笑いながら男のグラスに自分のグラスを合わせた。
「おいおい。それはご挨拶だなあ、知香ちゃん」
「だって…ねえ、そちらなお兄さんからも、また連れて来て下さいってお願いして下さらないかしら?」
知香子は、ヘルプの恵美に相手されている部下の男に話を振った。男は、戸惑ったように
「えっ…」
と言い、頭を掻いた。
「知香ちゃん、残念だけどそいつに言っても無駄だよ。何しろ、我が社切っての堅物でね。愛しの彼女ひと筋なんだ」
「ぶ、部長。やめて下さいよ。俺は別に…」
「何だ。照れることもないだろう」
「そうよ。素敵なことじゃないかしら。彼女ひと筋だなんて…羨ましい限りだわ」
一瞬、呆れた顔を覗かせた恵美の足をテーブルの下で踏みつけ、知香子は、うっとりとした表情でそう宣う。
「そんなこと言って…どうせ部屋に帰れば二枚目の彼氏がいるんだろう?知香ちゃん」
「まさか、彼氏なんていないですよ。それに、実はあたし、男運がなくて…自分でも困っているんです」
知香子は言いながら、男にしなだれかかった。
「はい」
トイレから出て来た部下の男に、知香子はハンカチを差し出した。こういった店に慣れていないらしい男は、面食らったようにハンカチを受け取る。
「それから、これも…」
知香子はポーチの中から名刺を抜き取り、男の背広の内ポケットに滑りこませた。一般の客には渡さない、プライベートの携帯番号が書かれた方だ。
「お連れの方には内緒にしておいてね。特別な名刺だから…」
「えっ…!?」
「ねえ、あなたのも下さらない?」
「あっ…はい」
男は、慌てて名刺を差し出す。
「あら、その若さで主任だなんて。よっぽど有能な方なのね」
「いや、そんな…」
言いかけた男の唇を、知香子は自らの指で塞いだ。
「あっ…あの…」
「ねえ、また会って下さらない?」
「いや…そう言われても…」
「別に、強引に店に来いとは言わないわ。ただ、和彦さんにまた会いたいの。駄目かしら」
「……」
「あたしのプライベートの番号も書いてあるから、気が向いたらかけて来て。待ってるわ」
知香子は、そう言って和彦に背を向ける。
その刹那、知香子がつけている香水の甘い香りが、和彦の鼻孔を刺激した。
「あの…」
「知香子よ。覚えておいて」
クラブの薄明かりの中、知香子は怪しく笑った。
<十年の歳月を経て、それぞれの道を歩んでいた姉妹。彼女達はまだ知らなかった、新たなる修羅の季節が今、静かに幕を開けたことを。
和彦という男を通して、すでに姉妹は再会を果たしていたのだ。>
つづく
永遠の姉妹 第二部・人物紹介
倉内知永子―商社に勤務するOL。27才。社内の先輩である伊原和彦との結婚を考えていたが、知香子の出現により暗礁。再び、愛憎の渦へと飲み込まれていく。
倉内知香子―六本木のクラブ『花宴』のホステス。26才。他人の恋人を奪うことを生きがいとし、多くの恋人達を破滅させてきた。客として知り合った和彦が知永子の恋人だと知り、闘志を燃やす。
伊原和彦―知永子の先輩で恋人。29才。上司からの信頼も厚く、部下からも尊敬されるエリート。知永子の妹とも知らず、知香子に惹かれていく。
山岡美和―知永子の同僚。26才。知永子とは同期で、親友を装っているが、実は密かに和彦を狙っている。知香子の存在を、知永子に仄めかす。
仁―『花宴』のボーイ。30才。知香子の悪魔的な魅力に魅入られた、彼女のような存在。知香子の頼みであれば、犯罪行為ですら厭わない。
伊原和明―和彦の弟。25才。優秀な兄に対して、人知れずコンプレックスを抱えている。兄の恋人である知永子に、密かに想いを寄せている。
伊原那代子―和彦の母。58才。早くに夫に先立たれ、女手ひとつで和彦と和明を育ててきた。長男である和彦を溺愛していり。
倉内澄江―知香子の母。55才。十年前に失踪した知香子の帰りを、今もまだ待ち続けている。知永子から、知香子の連絡先を知る。
長谷部織江―知永子の母。51才。知永子とふたりで『長谷倉』を切り盛りしている。知永子の幸せを誰よりも願っていて、知香子の出現を危惧している。
倉内浩二郎―姉妹の父。62才。再三の離婚要求にも耳を貸さない澄江を、苦々しく思っている。姉妹の確執がなくなることを願っているが…。
倉内知香子―六本木のクラブ『花宴』のホステス。26才。他人の恋人を奪うことを生きがいとし、多くの恋人達を破滅させてきた。客として知り合った和彦が知永子の恋人だと知り、闘志を燃やす。
伊原和彦―知永子の先輩で恋人。29才。上司からの信頼も厚く、部下からも尊敬されるエリート。知永子の妹とも知らず、知香子に惹かれていく。
山岡美和―知永子の同僚。26才。知永子とは同期で、親友を装っているが、実は密かに和彦を狙っている。知香子の存在を、知永子に仄めかす。
仁―『花宴』のボーイ。30才。知香子の悪魔的な魅力に魅入られた、彼女のような存在。知香子の頼みであれば、犯罪行為ですら厭わない。
伊原和明―和彦の弟。25才。優秀な兄に対して、人知れずコンプレックスを抱えている。兄の恋人である知永子に、密かに想いを寄せている。
伊原那代子―和彦の母。58才。早くに夫に先立たれ、女手ひとつで和彦と和明を育ててきた。長男である和彦を溺愛していり。
倉内澄江―知香子の母。55才。十年前に失踪した知香子の帰りを、今もまだ待ち続けている。知永子から、知香子の連絡先を知る。
長谷部織江―知永子の母。51才。知永子とふたりで『長谷倉』を切り盛りしている。知永子の幸せを誰よりも願っていて、知香子の出現を危惧している。
倉内浩二郎―姉妹の父。62才。再三の離婚要求にも耳を貸さない澄江を、苦々しく思っている。姉妹の確執がなくなることを願っているが…。


