モノトーンポップネイル☆

SサンのNEWネイルでっす
白×黒のバィカラー斜めフレンチベースに
ポィントでゴールドの
シールを貼りましたぁ

それ以外ゎ
シルバーのグリッター
でダブルフレンチになってまつ
以前Eサンにしたののァレンジデザィンなんでつが
色味を変ぇるとだぃぶ印象も変わりますネ
ポップな感じになりましたぁ


永遠の姉妹 第35話『母の反対』
「どうしたの、和彦…」
知永子は、半分以上も夕食を残した和彦に問いかける。
「あの日の電話以来、何か様子が可笑しいわよ」
「いや…最近夏バテらしくて、食欲がないだけだよ」
和彦は笑ってごまかしたが、それだけではないことは明らかだった。
「…そう。なら別にいいんだけど。何か、悩み事があったら打ち明けてね」
「あぁ…」
和彦は、そう言って黙り込む。それ以上、和彦にかけるべき言葉が見つからない知永子は、和彦の俯き顔をただ見つめた。
気まずい沈黙が、ふたりを包む。
<和彦は、苦しんでいた。知永子との結婚を決めた矢先に発覚した知香子の妊娠。
しかし、和彦のその優柔不断さこそが、姉妹の愛憎劇の元凶なのである。>
「ママ、体調はどう?」
知香子は、出勤前に澄江が入院している病院に出向く。
「あぁ…、知香子ちゃん」
知香子の問いかけに、澄江は小声で応える。ベッドの上に横たわる母は、ひと回りもふた回りも小さく見えた。
「何気の抜けた声を出しているのよ。ママらしくもない。もっと元気を出しなさいよ」
知香子は、澄江の肩を揺する。
「…だって、これからあたしはどうやって生活して行けばいいって言うのよ。倉内が代々引き継いで来たあの家まで奪われて…もう、どうすればいいのか解らないわ」
澄江は、そう言って泣いた。
滝の裏切り以来、澄江は一気に弱くなった。態度にも言葉にも、今までの高慢さが見受けられない。
「心配しなくていいわ」
知香子は、澄江の顔を見据えにんまりと笑った。
「…えっ!?」
「あたしは…いつまでもあのちんけな小悪党を、のさばらせておくつもりはないわ。あの男を、社長の座から引き擦り下ろしてやるの。あたし達母娘をこけにした報いとして…たっぷりと辛酸を舐めてもらうわ」
「で、でも…そんなことができるのかしら…」
「当たり前じゃない。このあたしを、誰だと思っているの。あたしに任せておいて。あの会社も、和彦も…全てを手に入れて見せるわ」
弱気な澄江に活を入れるように、知香子は力強く言い放つ。
「知香子ちゃん…」
知香子は、澄江の手を握った。
「だから、ママは以前のママに戻ってちょうだい!こんな気弱なママなんて…あたしが知ってるママじゃないわ!!」
「えぇ…」
澄江は、知香子の手を握り返す。その瞳には、僅かながら以前の獰猛さが戻っていた。
ふたりは、ひしと抱き合う。燃えるような夕焼けの朱が、ふたりの影を染め上げていた。
翌日、知香子は伊原家の近くにある喫茶店にいた。どうやったら、和彦の母那代子に上手く近づけるかを画策している。
和彦には、たっぷりと発破をかけておいた。後は、じわじわと外堀を埋めて行けばいい。その為にも、那代子を丸め込むのは、必要不可欠だった。
ふいに、目の前を両手に買い物袋を持った那代子が通り過ぎる。
知香子は慌てて会計を済ませ、那代子の後をつけ始めた。ふいに、那代子の買い物袋から林檎が零れ落ちる。
「あの、これ…」
知香子は、拾い上げた林檎を那代子に手渡した。
「あら、どうもご親切に。ありがとう」
礼を言いながら、那代子は受け取る。
「もしよろしかったら、荷物をひとつ持ちましょうか?両手が塞がっていたら、何かとご不便でしょう」
「そんな…ご迷惑でしょう。悪いわ…」
「いえ、遠慮なさらずに」
恐縮する那代子を押し切るように、知香子は半ば強引に荷物のひとつを受け取った。
「お宅までお持ちしますわ」
那代子の警戒心を解くように、にっこりと笑う。
「じゃあ、お願いしちゃおうかしら」
「えぇ…」
知香子は、那代子に連れられて伊原家に向かった。
「本当に助かったわ。ぜひ、お茶でも飲んでらして」
伊原家に荷物を届けた知香子は、那代子から訪問を許される。
リビングのソファに促された知香子は、さりげなく室内を見回した。テレビの横にあるサイドボードには、いくつか写真立てが飾られている。その中には、和彦の写真もあった。
「あら、これ…」
知香子は、言いながら写真立てを持ち上げる。
「あたしの長男よ。もしかして、和彦とお知り合いだったかしら?」
「…はい。と言うか、あたしの知り合いが、彼の婚約者なんです」
「あら、あなた知永子さんのお知り合いだったの。すごい偶然ね」
「ええ。だから、あたしも驚いてしまって…」
「つい先日、初めてお会いしたんだけど、本当に綺麗で上品なお嬢さんで…あたしもふたりの結婚を楽しみにしているのよ」
那代子は、嬉しそうに目を細めた。知香子が、目頭を熱くする。
「あら、どうかしたの?」
「いえ。彼女が…幸せを掴めると思ったらつい…」
「あなたは…本当に心の優しいお嬢さんなのね」
知香子に釣られるように、那代子が目を潤ませた。
「いいえ…けしてそんなことは。ただ…彼女の辛い境遇を思えば、彼女の幸せが我がことのように嬉しくて…」
「…本当にそうよね。お母様が、最近お亡くなりになったそうね。可哀想に…」
「えぇ。しかも、あんな亡くなり方をされて…」
知香子の言葉に、那代子の表情が強張る。
「まさか…お母様が男性と無理心中をしただなんて…」
「な、何ですって!?そんな…破廉恥極まりないこと、あたしは聞いてないわ!!」
思わず、那代子が声を裏返らせた。
「あら、嫌だ。あたしったら、告げ口みたいなことをしてしまって…。てっきり、知永子が告げているとばかり思っていたから。本当に、すいません…」
知香子は、白々しく口元を押さえる。那代子に向かって、頭を下げた。
「いいのよ。あなたは、何にも悪くないわ。それより…一体どうゆうことなの!?教えてちょうだい!!」
「実は…彼女の母親は、長年家庭のある男性とお付き合いをしていたんです。詳しくは、あたしもよくは解らないんですが、その痴情の縺れから…」
「…知永子さんが、そんな重大な秘密を隠していただなんて。まさか…あの知永子さんが、そんなふしだらな血を引いていただなんて…」
那代子は、あまりの衝撃に言葉尻を震わせる。
「白紙よ!そんな汚らわしい女との結婚なんて…あたしには、けして認められないわ!!」
立ち上がり、叫んだ。
「あたしったら…なんてことを…」
知香子はそう言ったが、その実、那代子の視線から逃れほくそ笑む。
その夜、和彦は那代子からの電話を受けた。那代子はひどい興奮状態で、言葉が聞き取り辛い。
「母さん…一体、何だって言うんだ?」
「破談よ、破談!あたしは、絶対に認めないわ!!」
「…えっ!?」
「知永子さんとの結婚話よ。あんな女との結婚なんて…誰が認めるもんですか!!」
電話越しに、那代子は喚き散らした。突然の母の反対に、和彦は途方に暮れる。
つづく
知永子は、半分以上も夕食を残した和彦に問いかける。
「あの日の電話以来、何か様子が可笑しいわよ」
「いや…最近夏バテらしくて、食欲がないだけだよ」
和彦は笑ってごまかしたが、それだけではないことは明らかだった。
「…そう。なら別にいいんだけど。何か、悩み事があったら打ち明けてね」
「あぁ…」
和彦は、そう言って黙り込む。それ以上、和彦にかけるべき言葉が見つからない知永子は、和彦の俯き顔をただ見つめた。
気まずい沈黙が、ふたりを包む。
<和彦は、苦しんでいた。知永子との結婚を決めた矢先に発覚した知香子の妊娠。
しかし、和彦のその優柔不断さこそが、姉妹の愛憎劇の元凶なのである。>
「ママ、体調はどう?」
知香子は、出勤前に澄江が入院している病院に出向く。
「あぁ…、知香子ちゃん」
知香子の問いかけに、澄江は小声で応える。ベッドの上に横たわる母は、ひと回りもふた回りも小さく見えた。
「何気の抜けた声を出しているのよ。ママらしくもない。もっと元気を出しなさいよ」
知香子は、澄江の肩を揺する。
「…だって、これからあたしはどうやって生活して行けばいいって言うのよ。倉内が代々引き継いで来たあの家まで奪われて…もう、どうすればいいのか解らないわ」
澄江は、そう言って泣いた。
滝の裏切り以来、澄江は一気に弱くなった。態度にも言葉にも、今までの高慢さが見受けられない。
「心配しなくていいわ」
知香子は、澄江の顔を見据えにんまりと笑った。
「…えっ!?」
「あたしは…いつまでもあのちんけな小悪党を、のさばらせておくつもりはないわ。あの男を、社長の座から引き擦り下ろしてやるの。あたし達母娘をこけにした報いとして…たっぷりと辛酸を舐めてもらうわ」
「で、でも…そんなことができるのかしら…」
「当たり前じゃない。このあたしを、誰だと思っているの。あたしに任せておいて。あの会社も、和彦も…全てを手に入れて見せるわ」
弱気な澄江に活を入れるように、知香子は力強く言い放つ。
「知香子ちゃん…」
知香子は、澄江の手を握った。
「だから、ママは以前のママに戻ってちょうだい!こんな気弱なママなんて…あたしが知ってるママじゃないわ!!」
「えぇ…」
澄江は、知香子の手を握り返す。その瞳には、僅かながら以前の獰猛さが戻っていた。
ふたりは、ひしと抱き合う。燃えるような夕焼けの朱が、ふたりの影を染め上げていた。
翌日、知香子は伊原家の近くにある喫茶店にいた。どうやったら、和彦の母那代子に上手く近づけるかを画策している。
和彦には、たっぷりと発破をかけておいた。後は、じわじわと外堀を埋めて行けばいい。その為にも、那代子を丸め込むのは、必要不可欠だった。
ふいに、目の前を両手に買い物袋を持った那代子が通り過ぎる。
知香子は慌てて会計を済ませ、那代子の後をつけ始めた。ふいに、那代子の買い物袋から林檎が零れ落ちる。
「あの、これ…」
知香子は、拾い上げた林檎を那代子に手渡した。
「あら、どうもご親切に。ありがとう」
礼を言いながら、那代子は受け取る。
「もしよろしかったら、荷物をひとつ持ちましょうか?両手が塞がっていたら、何かとご不便でしょう」
「そんな…ご迷惑でしょう。悪いわ…」
「いえ、遠慮なさらずに」
恐縮する那代子を押し切るように、知香子は半ば強引に荷物のひとつを受け取った。
「お宅までお持ちしますわ」
那代子の警戒心を解くように、にっこりと笑う。
「じゃあ、お願いしちゃおうかしら」
「えぇ…」
知香子は、那代子に連れられて伊原家に向かった。
「本当に助かったわ。ぜひ、お茶でも飲んでらして」
伊原家に荷物を届けた知香子は、那代子から訪問を許される。
リビングのソファに促された知香子は、さりげなく室内を見回した。テレビの横にあるサイドボードには、いくつか写真立てが飾られている。その中には、和彦の写真もあった。
「あら、これ…」
知香子は、言いながら写真立てを持ち上げる。
「あたしの長男よ。もしかして、和彦とお知り合いだったかしら?」
「…はい。と言うか、あたしの知り合いが、彼の婚約者なんです」
「あら、あなた知永子さんのお知り合いだったの。すごい偶然ね」
「ええ。だから、あたしも驚いてしまって…」
「つい先日、初めてお会いしたんだけど、本当に綺麗で上品なお嬢さんで…あたしもふたりの結婚を楽しみにしているのよ」
那代子は、嬉しそうに目を細めた。知香子が、目頭を熱くする。
「あら、どうかしたの?」
「いえ。彼女が…幸せを掴めると思ったらつい…」
「あなたは…本当に心の優しいお嬢さんなのね」
知香子に釣られるように、那代子が目を潤ませた。
「いいえ…けしてそんなことは。ただ…彼女の辛い境遇を思えば、彼女の幸せが我がことのように嬉しくて…」
「…本当にそうよね。お母様が、最近お亡くなりになったそうね。可哀想に…」
「えぇ。しかも、あんな亡くなり方をされて…」
知香子の言葉に、那代子の表情が強張る。
「まさか…お母様が男性と無理心中をしただなんて…」
「な、何ですって!?そんな…破廉恥極まりないこと、あたしは聞いてないわ!!」
思わず、那代子が声を裏返らせた。
「あら、嫌だ。あたしったら、告げ口みたいなことをしてしまって…。てっきり、知永子が告げているとばかり思っていたから。本当に、すいません…」
知香子は、白々しく口元を押さえる。那代子に向かって、頭を下げた。
「いいのよ。あなたは、何にも悪くないわ。それより…一体どうゆうことなの!?教えてちょうだい!!」
「実は…彼女の母親は、長年家庭のある男性とお付き合いをしていたんです。詳しくは、あたしもよくは解らないんですが、その痴情の縺れから…」
「…知永子さんが、そんな重大な秘密を隠していただなんて。まさか…あの知永子さんが、そんなふしだらな血を引いていただなんて…」
那代子は、あまりの衝撃に言葉尻を震わせる。
「白紙よ!そんな汚らわしい女との結婚なんて…あたしには、けして認められないわ!!」
立ち上がり、叫んだ。
「あたしったら…なんてことを…」
知香子はそう言ったが、その実、那代子の視線から逃れほくそ笑む。
その夜、和彦は那代子からの電話を受けた。那代子はひどい興奮状態で、言葉が聞き取り辛い。
「母さん…一体、何だって言うんだ?」
「破談よ、破談!あたしは、絶対に認めないわ!!」
「…えっ!?」
「知永子さんとの結婚話よ。あんな女との結婚なんて…誰が認めるもんですか!!」
電話越しに、那代子は喚き散らした。突然の母の反対に、和彦は途方に暮れる。
つづく
永遠の姉妹 第34話『知香子の逆襲』
「ねえ、おじさん。時間ある?」
渋谷の道玄坂を歩いていた滝は、ふいに後ろから声をかけられる。
振り返ると、制服姿の少女が立っていた。茶髪に黒い肌、短いスカートから伸びる足を、当然のようにルーズソックスが包んでいる。
いわゆる、今時のコギャルだ。
「一体、何の用だい?」
「いいことしたくない?」
少女は、言いながら滝の肩に手を置く。滝の耳たぶに、息を吹きかけた。
「…君、いくつなんだ?」
「十六。ねえ、いいでしょ。エッチなことさせてあげるから、お小遣いちょうだい」
少女の言葉に、滝の鼻の下がだらしなく伸びる。奇怪なメイクをしていた為、すぐには解らなかったが、なかなかの美少女だ。
「いくら欲しいんだい?」
滝は、少女に訪ねる。少女は、笑って三本指を立てた。
「そんなもんでいいのかい?一緒にホテルに行ってくれたら、もっとお小遣いあげるよ。おじさん、こう見えても社長なんだ。お金はいっぱい持ってるんだよ」
滝は相好を崩しながら、少女の肩を抱く。
渋谷や新宿などの繁華街に赴き、女子高生との交際を楽しむのは、滝の密かな趣味だった。いつもなら自分から声をかけて回るのだが、こんな上玉が自ら寄って来るなんて、今日はついている。
最近、運気が上昇しているのかも知れない。滝は、状況を都合よく解釈した。
「え~!?マジでぇ。超ラッキーなんだけど。どこへでも着いてっちゃうよ」
少女は、そう言って滝に腕を絡ませる。少女のつけている甘ったるい香水の匂いが、滝の鼻孔をくすぐった。
滝は、舌っ足らずな少女の口調に、ますます鼻の下を伸ばす。
打算的な大人の女達とは大違いだ。これだから、女子高生は扱い易い。
滝は、少女の肩を抱いたまま、ラブホテルのネオンの中に吸い込まれて行った。
まさか、その様子を知香子が撮影しているとは、夢にも思わずに。
「どうかしら?」
更衣室の中から、ウェディングドレス姿の知永子が姿を現す。
「まあ、お綺麗。まるで、お客様に誂えたようにピッタリですわ」
店員は、大袈裟な程に知永子を誉めそやした。
「いいんじゃないかな。すごい似合ってるよ」
「そうかしら…ちょっと派手じゃない?」
知永子は、恥じらいながら和彦に問いかける。
「そうかな。俺は、別にそんな風に思わないけど…」
「そうですよ。何たって、結婚式の主役は花嫁様なんですもの。これくらい普通ですわ。それに、お客様はお上品な顔立ちをしていらっしゃるので、多少肌の露出が多いデザインをお召しになられても、けして品は損なわれません。さあ、もっと大きな鏡でご自分をご覧になって」
饒舌な店員は知永子の手を引き、鏡の前へと促した。
「ほら、お綺麗でしょう。まるで、ドレスカタログのモデルさんみたいだわ」
「…本当に、似合ってると思う?」
知永子は、声を潜めて和彦に尋ねる。
「あぁ…綺麗だよ」
和彦は、鏡越しに知永子を見つめ答えた。知永子は、鏡の中に映った自分を見つめる。
確かに、悪くはなかった。胸元や背中が大胆に露出しているのに多少の気後れはするが、マーメイドラインのすっきりとしたドレスは、知永子の楚々とした美貌を引き立てている。
「わたし、決めました。このドレスにします」
「もう決めちゃっていいのか?もう少し、試着させてもらえば」
「ううん、いいの。最初は、ちょっとだけ恥ずかしい気がしたけど…このドレスが気に入ったわ。」
「そうか…」
「ありがとうございます。では、さっそくドレスの手配にかかりますわね」
店員は、甲高い声を捲くし立ててバックルームへと姿を消した。
ほっとしたように、和彦がソファに座り込む。
「ごめんなさいね。長い時間付き合わせたりして…疲れたでしょう」
知永子は、和彦を気遣った。
「いや、いいんだ…」
和彦は、手を振り笑う。
先週末、和彦の母那代子との顔合わせを済ませて以来、知永子と和彦の結婚話は、一気に現実味を帯び始めた。ふたりは沢山の準備に追われ、目まぐるしい日々を過ごしていた。
ふいに、和彦の携帯が鳴る。和彦は、知永子に詫びてから店の外へと出た。
「…ごめん。今からちょっと、行かなきゃいけなくなった」
帰って来た和彦は申し訳なさそうに言った。心無しか、顔が蒼醒めている。
「いいのよ、別に。後はもう、家に帰るだけなんだし。今日は、付き合ってくれてありがとう」
知永子は、恐らく知香子とのことだろうとピンと来たが、そんなことはおくびにも出さず了承した。
「あぁ…済まない。なるべく早く帰るから」
「解ったわ。和彦の好きなもの用意して待っているわ」
そう言って、和彦を送り出した。
しかし、和彦を待ち受けていたものは、知永子の想像を遥かに超えていた。
「こ、これは…」
あまりの衝撃に、和彦は言葉を失う。目の前に差し出された母子手帳。表紙には、確かに伊原知香子と記されていた。
「もちろん、母子手帳よ。あたし、あなたの子供を身籠もったの」
知香子は、微笑みながら答える。何の膨らみもない腹部を撫でて見せた。
「まだ八週目に入ったばかりらしいから、見た目には何も解らないけれど、この中に…和彦の赤ちゃんがいるのよ」
「そ、そんな…」
和彦は、ようやっと声を絞り出す。
「あたし達は、あんなに激しく愛し合っていたのよ。それこそ…互いの境目が無くなって、とろけてしまうくらいに。赤ちゃんを授かったって、何の疑問もないわ」
知香子は、歌うように続けた。
「もちろん、あたしはこの子を始末するつもりは毛頭ないわ。あなたは…どうするつもり?」
「俺は、知永子と…彼女と結婚するって決めたんだ…」
和彦は、掠れた声で呟く。知香子は、和彦の言葉を鼻で笑った。
「散々あたしの体を玩具にしておいて、子供が出来たらトン面かまそうだなんて…。そんな非道が許されるとでも思ってるわけ?」
「君には…本当に、一体何と詫びたらいいか解らないが…どうか、その子のことは諦めてくれないか…」
「ふざけんなよ!この子を…殺せって言うわけ?よくも…よくも、そんな恐ろしいことが言えるわね!!」
知香子は、声を荒げた。
ふいに、十年前に照矢の子供を永遠に失ったと知った時の、圧倒的な喪失感と絶望が蘇る。実際に、自分が和彦の子供を孕んでいるかのような錯覚に陥った。知香子の背すじが、ぞわぞわと粟立つ。
「…ち、知香子…」
知らず、知香子は涙を流していた。
「と…とにかく、考えておいて。あたしは…たとえ何があったとしても、この子を諦めはしないから」
自らの感情の波に飲まれそうになった知香子は、そう言って店を出て行く。
残された和彦は、頭を抱えた。
「ありがとう。面倒をかけたわね」
言いながら、知香子は少女に封筒を手渡す。滝に迫り、ラブホテルへと連れ込まれたあの少女だ。
「別に~。お姉さんからもらった睡眠薬飲ませたら速攻で寝ちゃったし…。チョロいバイトだったよ」
少女は、笑いながら知香子から渡された封筒の中味を確認する。
「頼んでた写真も、撮って来てくれたわよね」
「もちろんよ」
少女は鞄を漁って、現像された写真とそのネガを知香子に渡した。写真の中では、上半身裸の滝がベッドの上で寝息を立てている。
「でも…あんな写真が、一体何の役に立つってわけ?」
少女は、興味深げに聞いて来た。知香子は、笑顔でそれを受け流す。
「とにかく、これさえあれば…あいつを破滅に追いやれるわ」
知香子は、にんまりと笑った。その壮絶な笑顔に、少女はぞっとする。
「これからも、よろしくね。あなたにはもうひとつ、大事な大仕事が残っているんだから」
知香子は、恐れを成す少女に向かって、笑顔のままそう続けた。
<ついに、知香子の本格的な逆襲が始まった。全てを手に入れる為、文字通り彼女は鬼に変わったのである。
姉妹の骨肉の争いは、今まさにひとつの佳境を迎えようとしていた。>
つづく
渋谷の道玄坂を歩いていた滝は、ふいに後ろから声をかけられる。
振り返ると、制服姿の少女が立っていた。茶髪に黒い肌、短いスカートから伸びる足を、当然のようにルーズソックスが包んでいる。
いわゆる、今時のコギャルだ。
「一体、何の用だい?」
「いいことしたくない?」
少女は、言いながら滝の肩に手を置く。滝の耳たぶに、息を吹きかけた。
「…君、いくつなんだ?」
「十六。ねえ、いいでしょ。エッチなことさせてあげるから、お小遣いちょうだい」
少女の言葉に、滝の鼻の下がだらしなく伸びる。奇怪なメイクをしていた為、すぐには解らなかったが、なかなかの美少女だ。
「いくら欲しいんだい?」
滝は、少女に訪ねる。少女は、笑って三本指を立てた。
「そんなもんでいいのかい?一緒にホテルに行ってくれたら、もっとお小遣いあげるよ。おじさん、こう見えても社長なんだ。お金はいっぱい持ってるんだよ」
滝は相好を崩しながら、少女の肩を抱く。
渋谷や新宿などの繁華街に赴き、女子高生との交際を楽しむのは、滝の密かな趣味だった。いつもなら自分から声をかけて回るのだが、こんな上玉が自ら寄って来るなんて、今日はついている。
最近、運気が上昇しているのかも知れない。滝は、状況を都合よく解釈した。
「え~!?マジでぇ。超ラッキーなんだけど。どこへでも着いてっちゃうよ」
少女は、そう言って滝に腕を絡ませる。少女のつけている甘ったるい香水の匂いが、滝の鼻孔をくすぐった。
滝は、舌っ足らずな少女の口調に、ますます鼻の下を伸ばす。
打算的な大人の女達とは大違いだ。これだから、女子高生は扱い易い。
滝は、少女の肩を抱いたまま、ラブホテルのネオンの中に吸い込まれて行った。
まさか、その様子を知香子が撮影しているとは、夢にも思わずに。
「どうかしら?」
更衣室の中から、ウェディングドレス姿の知永子が姿を現す。
「まあ、お綺麗。まるで、お客様に誂えたようにピッタリですわ」
店員は、大袈裟な程に知永子を誉めそやした。
「いいんじゃないかな。すごい似合ってるよ」
「そうかしら…ちょっと派手じゃない?」
知永子は、恥じらいながら和彦に問いかける。
「そうかな。俺は、別にそんな風に思わないけど…」
「そうですよ。何たって、結婚式の主役は花嫁様なんですもの。これくらい普通ですわ。それに、お客様はお上品な顔立ちをしていらっしゃるので、多少肌の露出が多いデザインをお召しになられても、けして品は損なわれません。さあ、もっと大きな鏡でご自分をご覧になって」
饒舌な店員は知永子の手を引き、鏡の前へと促した。
「ほら、お綺麗でしょう。まるで、ドレスカタログのモデルさんみたいだわ」
「…本当に、似合ってると思う?」
知永子は、声を潜めて和彦に尋ねる。
「あぁ…綺麗だよ」
和彦は、鏡越しに知永子を見つめ答えた。知永子は、鏡の中に映った自分を見つめる。
確かに、悪くはなかった。胸元や背中が大胆に露出しているのに多少の気後れはするが、マーメイドラインのすっきりとしたドレスは、知永子の楚々とした美貌を引き立てている。
「わたし、決めました。このドレスにします」
「もう決めちゃっていいのか?もう少し、試着させてもらえば」
「ううん、いいの。最初は、ちょっとだけ恥ずかしい気がしたけど…このドレスが気に入ったわ。」
「そうか…」
「ありがとうございます。では、さっそくドレスの手配にかかりますわね」
店員は、甲高い声を捲くし立ててバックルームへと姿を消した。
ほっとしたように、和彦がソファに座り込む。
「ごめんなさいね。長い時間付き合わせたりして…疲れたでしょう」
知永子は、和彦を気遣った。
「いや、いいんだ…」
和彦は、手を振り笑う。
先週末、和彦の母那代子との顔合わせを済ませて以来、知永子と和彦の結婚話は、一気に現実味を帯び始めた。ふたりは沢山の準備に追われ、目まぐるしい日々を過ごしていた。
ふいに、和彦の携帯が鳴る。和彦は、知永子に詫びてから店の外へと出た。
「…ごめん。今からちょっと、行かなきゃいけなくなった」
帰って来た和彦は申し訳なさそうに言った。心無しか、顔が蒼醒めている。
「いいのよ、別に。後はもう、家に帰るだけなんだし。今日は、付き合ってくれてありがとう」
知永子は、恐らく知香子とのことだろうとピンと来たが、そんなことはおくびにも出さず了承した。
「あぁ…済まない。なるべく早く帰るから」
「解ったわ。和彦の好きなもの用意して待っているわ」
そう言って、和彦を送り出した。
しかし、和彦を待ち受けていたものは、知永子の想像を遥かに超えていた。
「こ、これは…」
あまりの衝撃に、和彦は言葉を失う。目の前に差し出された母子手帳。表紙には、確かに伊原知香子と記されていた。
「もちろん、母子手帳よ。あたし、あなたの子供を身籠もったの」
知香子は、微笑みながら答える。何の膨らみもない腹部を撫でて見せた。
「まだ八週目に入ったばかりらしいから、見た目には何も解らないけれど、この中に…和彦の赤ちゃんがいるのよ」
「そ、そんな…」
和彦は、ようやっと声を絞り出す。
「あたし達は、あんなに激しく愛し合っていたのよ。それこそ…互いの境目が無くなって、とろけてしまうくらいに。赤ちゃんを授かったって、何の疑問もないわ」
知香子は、歌うように続けた。
「もちろん、あたしはこの子を始末するつもりは毛頭ないわ。あなたは…どうするつもり?」
「俺は、知永子と…彼女と結婚するって決めたんだ…」
和彦は、掠れた声で呟く。知香子は、和彦の言葉を鼻で笑った。
「散々あたしの体を玩具にしておいて、子供が出来たらトン面かまそうだなんて…。そんな非道が許されるとでも思ってるわけ?」
「君には…本当に、一体何と詫びたらいいか解らないが…どうか、その子のことは諦めてくれないか…」
「ふざけんなよ!この子を…殺せって言うわけ?よくも…よくも、そんな恐ろしいことが言えるわね!!」
知香子は、声を荒げた。
ふいに、十年前に照矢の子供を永遠に失ったと知った時の、圧倒的な喪失感と絶望が蘇る。実際に、自分が和彦の子供を孕んでいるかのような錯覚に陥った。知香子の背すじが、ぞわぞわと粟立つ。
「…ち、知香子…」
知らず、知香子は涙を流していた。
「と…とにかく、考えておいて。あたしは…たとえ何があったとしても、この子を諦めはしないから」
自らの感情の波に飲まれそうになった知香子は、そう言って店を出て行く。
残された和彦は、頭を抱えた。
「ありがとう。面倒をかけたわね」
言いながら、知香子は少女に封筒を手渡す。滝に迫り、ラブホテルへと連れ込まれたあの少女だ。
「別に~。お姉さんからもらった睡眠薬飲ませたら速攻で寝ちゃったし…。チョロいバイトだったよ」
少女は、笑いながら知香子から渡された封筒の中味を確認する。
「頼んでた写真も、撮って来てくれたわよね」
「もちろんよ」
少女は鞄を漁って、現像された写真とそのネガを知香子に渡した。写真の中では、上半身裸の滝がベッドの上で寝息を立てている。
「でも…あんな写真が、一体何の役に立つってわけ?」
少女は、興味深げに聞いて来た。知香子は、笑顔でそれを受け流す。
「とにかく、これさえあれば…あいつを破滅に追いやれるわ」
知香子は、にんまりと笑った。その壮絶な笑顔に、少女はぞっとする。
「これからも、よろしくね。あなたにはもうひとつ、大事な大仕事が残っているんだから」
知香子は、恐れを成す少女に向かって、笑顔のままそう続けた。
<ついに、知香子の本格的な逆襲が始まった。全てを手に入れる為、文字通り彼女は鬼に変わったのである。
姉妹の骨肉の争いは、今まさにひとつの佳境を迎えようとしていた。>
つづく
