BAI,BMI,腹囲,臀囲…糖尿病の最も優れた指標は何か | 二子玉川ライズ ひろ内科クリニックのブログ

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日本の特定健診・保健指導の妥当性を裏付ける? ドイツ研究

 脂肪蓄積の簡便な指標がいくつかあるが,本当に有用なのはどれだろうか。M. B. Schulze氏らドイツ栄養研究所(ポツダム-Rehbrücke)のグループは,body adiposity index(BAI),BMI,ウエスト周囲長(腹囲),臀囲の4つの指標について,体脂肪および2型糖尿病発症の予測因子としての有用性を比較し,Diabetologia 2012年2月17日オンライン版 に発表した。昨年(2011年),“BMIに代わる新肥満度指数”として提唱されたBAIだが,今回の研究ではBMIに軍配があがった。そして,糖尿病発症の予測因子として最も優れていたのは…研究者が意図したわけではないが,日本の特定健診・保健指導の妥当性を裏付けるような結果が示された。

体脂肪率との相関は男性では腹囲,女性では臀囲が最も強い

 BAIは昨年(2011年),南カリフォルニア大学(米国)のRichard N. Bergman氏らによって提唱された指標で,下記の計算式により算出される。同氏らはBAIを“BMIに代わる新肥満度指数”だと主張していた。


BAI =臀囲(cm) / 身長(m1.5 -18

 今回,Schulze氏らは,BAIを含む4つの指標の臨床的有用性を比較する目的で,まずチュービンゲン生活習慣介入プログラム参加者(男性138人・平均年齢46歳,女性222人・同45歳)を対象に,各指標と(1)MRIで評価した体脂肪率,(2)インスリン感受性―との相関の強さを比較した。MRIは近年,体脂肪量および体脂肪分布を測定するのに非常に正確なツールとの評価がなされているという。

 その結果,体脂肪率について最も高い相関を示したのは,男性では腹囲,女性では臀囲であった。男女ともにBAIはBMIに比べ相関が弱いことが分かった。BAIは男性において体脂肪率を過大評価しがちで,その傾向は体脂肪率が高い場合により顕著だった。


 インスリン感受性については,各指標間にあまり大きな違いは見られなかったが,男女ともに最も強い相関を示したのは腹囲で,男女ともにBAIはBMIに比べ相関が弱かった。

2型糖尿病発症との相関は男女ともに腹囲が最も強い

 次にSchulze氏らは, EPIC-ポツダム研究(男性9,729人・平均年齢52歳,女性1万5,438人・同48歳),KORA研究(男性5,573人・同49歳,女性5,628人・同48歳)の参加者を対象に,各指標の2型糖尿病発症予測能を比較した。

 EPIC-ポツダム研究においては7年の追跡期間中に849人(男性492人,女性357人),KORA研究においては9年の追跡期間中に574人(それぞれ340人,234人)の2型糖尿病が発症した。いずれの指標も糖尿病発症に有意な相関を示したが,多変量調整後の相対リスクが最も高かったのは,男女ともに,いずれのコホートにおいても腹囲であった。BAIはBMIに比べ糖尿病発症予測能の点でも劣ることが示唆された。


 今回の研究から,腹囲は脂肪蓄積の良好なマーカーで,糖尿病の発症を鋭敏に予測することが示された。特定健診・保健指導においては,腹囲測定を起点に心血管系疾患予防のための対策が進められている。糖尿病に特化した制度ではないが,糖尿病は同制度の理論的背景となるメタボリックシンドロームの重要な構成因子なだけに,今回の結果は同制度の妥当性を裏付けるといえるかもしれない。