私が少年事件でいつも相談させてもらって、時には自分が関わった少年事件の少年を預ってもらったりしている、アドラムキリスト教会の野田詠氏牧師が、先月に「私を代わりに刑務所に入れてください」という本を出版され、その出版記念の講演会があったので、参加してきた。

 約1時間の講演だけど、野田さんの講演はところどころ自虐的な笑いも入れて、聴いていて飽きない。ただ、笑いの中にも、自分が加害者だったことを忘れずに話しているのは好感が持てると思う。

 なお、「私を代わりに刑務所に入れてください」の出版社による販売会があり、私もようやく買って読んだのだけど、私が実名で登場していてビックリした。まぁ、こういう形で登場するのは光栄なことです。みなさんも買って読んでください。

 今日は、和泉学園で約80名の少年に対し、法律の講演をしてきた。1月には浪速少年院で法律の講演をしてきたのだけど、その時は、もうすぐ仮退院する出院準備期の少年11名だけだった。これほど多くの少年院の少年の前で話すのは、少年院を退職して初めてなので、約11年ぶりになる。

 和泉学園は、浪速少年院よりも収容されている少年の年齢が若く、一番若い少年だと中学2年生がいる。なので、なるべく簡単な言葉を使って話すようにした。人数が多いこともあって、こちらから質問を振ると、常に何人かが挙手してくれたので、講演を進めやすかった。講演後にも質問が多く出て、関心を持って聴いてくれたことがわかり、ホッとしている。

 大阪弁護士会では、来年度(といっても、もうすぐ来年度だけど)から大阪府下にある少年院(浪速少年院、交野女子学院、和泉学園)に対し、定期的に弁護士を派遣して、法律に関する講話、少年の個別法律相談を実施したい旨、申し入れることになっている。少年院法も6月に新法が施行される予定であり、なかなかカリキュラムが忙しくなるが、なんとか定期的な法律講話、個別相談を実現させて、仮退院後の更生支援にシームレスに繋げるきっかけにしたい。
 今日は、とある「子ども家庭センター」(大阪では児童相談所のことを「子ども家庭センター」という。)に出張した。子ども家庭センターが関わっている少年について、知的障害があるため成人年齢が近くなって社会生活を始めるにあたり、後見申立をする準備のためである。

 まだ未成年者であり、親権者もいないので、未成年後見申立をするのが本筋ではないか、と思っていたのだけど、成人が近づいた年齢になった場合、未成年後見ではなく成年後見申立をするのが通常の運用のようである。

 そうであれば、費用の関係で市町村長申立をしてほしいのだけど(市町村長申立の場合、後見報酬について厚労省から補助が出る)、少年の居住地の市町村は申立に消極的であるとのこと。

 結局私がコーディネイトして、保佐の申立をして、私が保佐人に選任されるようにすることにした。ほぼ、ボランティアでの活動になるが、このような実績を積み上げて、後見申立の重要性を行政機関に認識してもらえる契機になればいい。
 川崎の中学1年生が河川敷で遺体になって発見された事件をきっかけに、少年法を改正すべき、少年犯罪が凶悪化している、という意見が聞かれるようになっている。一方でそれを否定する意見も聞かれる。

 そんな中、今年4回目の講演をする機会があった。今回の講演は、「大阪総合医学・教育研究会」という、必ずしも少年事件の専門家ではない方が参加される講演会だったので、「少年犯罪が凶悪化しているか」というテーマについても話すことにした。印象論で話すわけにはいかないので、最新の「犯罪白書」(平成25年まで統計資料が載っている)の統計資料を使うことにした。

 改めて「犯罪白書」の統計資料をきちんと見ると、興味深いことがわかった。 いくつかまとめると以下のとおり。

①この10年で少年の検挙数、少年院への入院数は、それぞれ約半分に減っている(少子化により減っているのではなく、人口比あたりで半減している。)
②ぐ犯、暴走族も同様のペースで減っている
③薬物非行は激減している(10年前の10分の1以下)
④少年院に入院する少年の約半数は不良集団に属していない(非行の孤立化、潜在化)
⑤家庭内暴力の認知件数は増えている(10年前の約1.5倍)
⑥少年による殺人事件(既遂のみ)は、平成25年は12件。近年は5件~15件で推移している。
⑦ちなみに成人含めた殺人事件が統計上一番多かったのは昭和30年で、現在の6倍以上。

 これらの統計を見ると、少年犯罪が増加している、凶悪化しているという話が間違っていることがわかる。では、にもかかわらず「少年犯罪が凶悪化している」と言われるのか。個人的には、事件が少なくなったことで、一件一件の事件のニュース価値が増加し、犯行態様、背景まで詳しく報道されるようになったこと、殺人事件に限らず、交通事故の減少(死亡者はピーク時の4分の1程度)、医療技術の進歩、70年近く戦争をしていないことなどから、「人の死」そのものが身近でなくなってきていることが原因ではないか、と思っている。

 非行少年の更生支援をしたいと考えている私にとって、少年事件に対する厳罰化を主張する方々に対する説得力のある主張をしなければならない。「人の死」が身近でなくなっているとしたら、その辛い体験をされた遺族の方々に対する支援をもっと社会全体で行う必要があると思う。

 2時間近くの審判の結果、在宅試験観察。

 被疑者段階から関わっている女子少年だけど、何だかつかみどころのない少年で、少年の問題性を十分に把握できた自信がないまま審判に臨んだ。

 調査官とは事前に保護観察意見で一致していたので安心していたのだけど、審判で少年の問題性を浮き彫りにする質問をしてしまい、少年の答えに頭を抱えてしまった。

 保護観察処分で審判を終えるために質問するなら、この話題を続けることはリスクが大きい。取り繕うために話題を変えようか迷ったけれど、少年にきちんと問題点を吐き出させようと思いそのまま質問を続けた。

 その後の質問に対する答えも少年の問題点が浮き彫りになる答えばかり。少年院送致になってしまうのではという心配と、少年の問題点を把握できていなかった自分の非力さで、頭がグチャグチャになった。

 もとから裁判官は厳しい意見を持っていたらしいけど(調査官談)、何とか在宅試験観察で収まった。これで少年院送致になっていたら、私の質問が引き金になっているわけで、弁護過誤だと批判されてもやむを得ない。

 審判後、少年、保護者、調査官との面談、さらに調査官との面談が計1時間半。心理学系のアプローチをする調査官と、社会学系のアプローチをする私とは、議論が噛み合わない部分もあったが、とても勉強になった面談だった。

 予定よりも長く付き合うことになってしまった彼女に、自分の非力さを詫びるためにも絶対この試験観察は成功させなければならない。なにをもって「成功」というのか、その答えは持ち合わせていないけれど。

 最後に、家裁送致後から共同受任してくれた弁護士さん、大変な事件に巻き込んでしまい、ゴメンなさい。いい経験だと思ってくれればありがたいです。