子供の頃、家族で外食することはあまりなかった。父が家で食べるのが好きだったらしい。


その日は珍しく、家族3人でカフェに入った。カフェに入ることもほとんどなかったので、雰囲気に緊張したのを覚えている。


キョロキョロしていると父が慣れた手付きでさっと手を上げ店員さんを呼び止め、


「ザッハトルテひとつ☝」


と注文した。



チーン「(ザッハトルテってなんだ...?)」



家でコロンと寝転がっている時と違って、オシャレな父。聞き慣れない異国の響き、謎の単語「ザッハトルテ」。


その日から、私にとってザッハトルテは大人の食べ物ひとつとなった...。



数年前、ウィーンに旅行に行った。市内にある老舗ホテル・ザッハーがザッハトルテ生誕の地だそう。食べないわけにはいかない!


ウィーン国立歌劇場の裏。観光客でできた長蛇の列に並ぶ。


テラス席に通され、やっとでてきた元祖ザッハトルテ。






表面のチョコレートの光沢が美しい。



周りに座る客、全員ザッハトルテを注文している。一日に何台作っているんだろう。



厳かにフォークで一切れすくい上げる。



口に入れた瞬間いっぱいに広がるアプリコットジャムの風味。




チーン「美味しい!」




チョコレートの味にいっさい引けを取ることのないアプリコットジャムの主張が楽しい。



添えられたホイップクリームと一緒に食べると味がまろやかに。



あっという間に食べ終わりそうになるのをこらえて、大事に大事に食べきったのだった。



周りを見渡すとホイップクリームはもちろん、ザッハトルテも半分ほど残している人がたくさんいた。



普段チョコレートケーキを自分で選んで食べることがほとんどないので、もっと美味しいザッハトルテはいろいろあるのかもしれない。



それでもザッハトルテ生誕の地でオリジナルを食べたという事実だけで、私自身は大満足なのであった。




父は今もザッハトルテが好きらしい。


この前母から「お父さんが作って言うけぇザッハトルテ作ったんよ!」と写真つきでラインが来た。


ザッハトルテって自分で作れる物なのか。意外と簡単だったよ等と母は言う。


チーン「よぉやるわ!」




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