学生の頃、なんでだか知らないけど、良い音楽は善い人間がやっているもんなんだと思っていた。だって音楽はこんなにも美しいから...。



初めて音楽の美しさに衝撃を受けたのは中2の秋。


その日は学校の授業の一環で近所のモスバーガーに職場体験に行き、昼過ぎには家に帰ってきていた。秋風の気持ちいい晴れの日だった。


前日に吹奏楽部の顧問の先生から借りて帰ったCDをステレオにセットする。曲はモーツァルトのクラリネット五重奏曲。吹いているのはヨーロッパのとあるオーケストラのレジェンド・プレイヤーだ。


この動画の演奏はザビーネ・マイヤー様。
以下のエピソードとは一切関係ございません...


ベッドにコロンと横になり、リモコンの再生ボタンを押す。絹より滑らかで美しい弦楽四重奏の前奏がスピーカーから流れ出し、雲間から射し込む一筋の陽光か、はたまた若葉を撫でる一吹きの風かのようなクラリネットのアルペジオが現れる。



チーン「ここが天国か...。」



過去最高に気持ちのいいお昼寝タイムとなったのだった...。


それから、サックスがやりたかったのにクラリネットを割り当てられ、しゃーなしでやっていたこの楽器のことが大好きに。もちろんこのCDのレジェンドは私の永遠のスターとなった...。


のだが!!!先日こんな話を聞いた。


レジェンドが講師を務めたとあるクラリネットの講習会。そこに参加した生徒さんの密告によると、レジェンドが自分の過去に使っていたリードを参加者に売りつけていたという!


クラリネットのリードというのは、音を出すための肝。葦を削ってできたもので、これがなければ音は出ない。これに水を含ませ(オーボエやファゴットの人は水につけるけど、クラリネット吹きは基本舐める...)楽器に装着。


吹くときは口の中に含んでいるので、もちろんばっちぃ。何度も使っているとどんどん黒くなる。これを何箱も買って、どんどん使い回し消費していく。使えなくなったら捨てる。


そんなリードを、件のレジェンドは講習会で「これはカラヤンとやった時のやつ〜」なんて言いながら売っていたという。いったい何十年前のやねん!(ちなみにカラヤンとは20世紀を代表する指揮者、楽壇の帝王)


渡仏後、レジェンドのあまりよろしくないお噂はちらほら聞いていたけれど、まさかここまで金に汚かったとは...。ついでに若かりし頃の私なら喜んで買っていそうなところもまた恐ろしい...。


天国にいるかのような演奏で私を音楽の世界へ導いたレジェンドは、神でも天使でもなかったのだ。あんなに澄んだ音で吹いていたのに...。大学に入ってから薄々、「もしや性格の良し悪しは音楽に関係ない...?!」と思い始めていたのだが、まあ結局そういうことなのだ。


しかし私はいつも「振り子理論」というのを勝手に掲げている。良いことも悪いことも、小さく振れるより大きく振れた方が深くなる。レジェンドは嫌なやつであればあるほど、同じくらいのエネルギーで純真無垢な部分を持ち合わせてたってことなんだろう。しらんけど。


この振り子理論を調べてみたら、ビートたけしも同じようなことを著書に書いていたらしい。わたし、たけし大好きなのでうれしい。

暴力表現を突き詰めるほど、次には暴力の反対側にある愛や笑いをより深く表現できるようになる
そうして深めた愛や笑いの表現を、次にまた暴力へと振れば、以前よりもさらに深い表現ができるようになるのだ



たけしの偉いところは、突き抜けた正と負を作品で表現し昇華してるところだ。負を実際の行動に移すのは良くない場合が多いけど、作品で表現するのは自由だ。ついでに心の中だって治外法権、自由だ。正と負はいつだって背中合わせ。どっちも蔑ろにしてはいけない。



チーン「振り切った先に得るものがある?!」






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